contents memorandum はてな

目次とメモを置いとく場

『脱アルコールの哲学――理屈でデザインする酒のない人生』(前田益尚 晃洋書房 2019)

著者:前田 益尚[まえだ・ますなお](1964-) 社会学、メディア論。
装画:北村 昭[きたむら・あきら](クオリアデザイン事務所・代表)
NDC:368.86 社会病理(アルコール中毒者)
備考:書名について注意。この本の中身は、依存症についての随筆・体験記であって、哲学の要素は含まれておらず、出版社・図書館的に分類するなら社会病理か社会福祉のはず。



【メモランダム】
 同著者と同出版社のタッグは、その後も『……政治経済学』『……心理学』『……の人文学』と名付けられた本を刊行しているため、著者が万学を修めた博覧強記であることが分かる。
 なおこの著者に限らず、日本の出版物においては、たとえ専門家の書いた本であっても、「……の哲学」「……の社会学」という書名だけでは内容が分からないことがざらにある(タイトル通りこともあれば、まったく関係ないこともある)。この怪現象はほぼ人文系に偏っている。



脱アルコールの哲学 - 株式会社晃洋書房


【目次】
はじめに [i-iii]
目次 [iv-v]


プロローグ 001
 超病の発端、がん
 赤くなる恐怖の毒素
 難しいアルコール依存症の啓蒙法
 アルコール依存症超克への取り組み
 余談:道化としてのゾンビ像(案) 


I  (天国のような)地獄 017
 誰にでもなる病
 心を癒すアルコール
 万能感の時代
 良くも悪くも、巻き込む病
 天国に一番近い病
 みんな知らない脳の病気
 最初のワーカーは誰だ?
 回復につながる! 最前線の野戦病院 


II 回復(蘇り) 037
 真横にいるケースワーカー
 サバイバル集団
 ポスト・アルコホリズムの構築(回路の上書き)
 自助グループは、ハイスクール
 酒は「命の恩人」の意味
 贖罪のステップを踏んで
 回復は、ゴールではない


III 成長(日常) 061
 愉しみとしてのポスト・アルコホリズム
 偏見を解く授業
 教育現場の最前線
 断酒をデザインする
 教壇のポスト・アルコホリズム
 世間のポスト・アルコホリズム
 逆風も、生きがいにできてこそ、成長
 成長も、ゴールではない


IV (達観を経て)超人の域へ 083
 AIにはなれない依存症
 AIに代わられるかもしれない支援者
 メディアの思い込みを正す
 影響力のある依存症者、募集!
 模範解答では終わらせない
 問題のあるメディア表現には、"CRAFT"に準じた対応を
 そして、納得できる授業を
 やめ続ける地平
 やっぱり、みんな知らない否認の病
 科学のゆくえ
 そして、ポスアルの哲学を、AIが可視化できるか
 ブレイクスルー


エピローグ 111
 大学への提言
 実業界への提言
 それでも、最も危険な病気
 未開の依存症
 パラレルワールドを《選択》するすすめ


謝辞 [122]
あとがき [123-124]
参考文献 [125-129]
出席記録一覧表 [130-140]

『溺れる脳――人はなぜ依存症になるのか』(M.Kuhar[著] 舩田正彦[監訳] 東京化学同人 2014//2012)

原題:The Addicted Brain: Why We Abuse Drugs, Alcohol, and Nicotine
著者:Michael J. Kuhar (1944-) 神経科学。脳、精神疾患、脳に影響を及ぼす薬物の構造とその機能解析。
監訳者:舩田 正彦[ふなだ・まさひこ](1965-) 神経薬理学。薬物依存の研究。
訳者:太田 英伸(7、8章)
訳者:斎藤 顕宜(1、2、3章)
訳者:嶋根 卓也(10、11、12章)
訳者:富山 健一(4、5、6章)


溺れる脳 - 株式会社東京化学同人


【目次】
コロフォン [ii]
監訳者序(二〇一三年十二月三日 舩田正彦) [iii-v]
献辞 [vii]
謝辞 [viii]
目次 [ix-x]
はじめに [xi-xiv]


第1章 この本の内容――なぜ読まなければならないのか? 001
  ○ 言葉の定義
  薬物とは何か?
  なぜ人は薬物を摂取するのか
  薬物経験
  薬物使用は「高くつく」
  嗜癖アディクション
    他の薬剤
    脳構造と機能
  この本からわかること
注 015


第2章 脳の神経基盤――ヒトの薬物欲求について動物が教えてくれること 017
  これまでの経験
  ○ 酒、人間、サルの場合
  不確実あるいは不定期の報酬は依存性が高い
  拡張された動物モデル
    新しいアイデアの例
    再発、渇望、回復
    他の動物モデル
    思考の転換
  まとめ
注 033


第3章 超気持ちいい!――脳内報酬システム 035
  優れた観察者と大発見
  ○ ジェームス・オールスの話から
  ヒトでも生じる作用
  深部脳刺激
  驚くべき影響
  薬物どの接点!
  まとめ
注 044


第4章 脳内における薬物作用のABC 047
  神経細胞
  脳――生きるための臓器
  ○ 神経伝達物質の合成と貯蔵
  ○ 多様な神経伝達物質
  ○ 受容体――こうして神経伝達物質は作用する
  ○ 神経伝達物質の除去
  化学的情報伝達の概要
    乱用薬物は神経伝達を狂わせる
    コカインの作用――その一例
    薬物の脳内流入速度はおそろしく速い!
    可塑性――重要な能力!
  まとめ
注 066


第5章 支配される脳! 071
  脳の中の悪魔――常習性と退薬
  もっと欲しい!
  ○ 脳の中で何が起こっているのか?
    分子基盤
    エピジェネティク制御
  ○ エピジェネティクス――脳が変化する方法
  解剖所見
  変化する脳
  まとめ
注 086


第6章 なぜ薬物はそんなにも強力なのか? 089
  ドーパミンと食事
  ○ ドーパミントランスポーターと過食症
  ドーパミンと性行為
  ドーパミンと生存
  ドーパミン以外の神経伝達物質
  ドーパミンは何をする?
  まとめ
注 100


第7章 長期間にわたって脳は変化してしまう! 103
  薬物依存者の脳を見る
  ○ PETスキャン
  どうしてそんなに回復が遅いのか
  そこで私達たち何がてきるのか? この知見がどのように薬物依存患者に役立つのか?
  いつか脳は正常な状態に戻るのか?
  まとめ
注 115


第8章 私は薬物依存者になってしまうのだろうか? 117
  「脆弱性」――誰が薬物に手を出すのか?
    脆弱性を形成する要因
    遺伝子とタンパク質
  ○ 遺伝子追跡
  ○ 全ゲノム相関解析
    心理学的問題
    気質と性格特性
    薬物の入手可能性
    学童、十代の子どもたち、そして大人
  薬物は私たちの判断能力を乱し、そして薬物摂取を持続させる
  私には危険性がないのか?
  象とその使い手
  まとめ
注 133


第9章 ストレス、社会的地位と薬物 135
  ストレスに対する身体の反応
  ストレスと薬物使用
    幼少時代のストレス
    社会的地位がコカイン摂取に影響を与える!
    社会的敗北!
  豊かな環境――コインの表と裏
  まとめ
注 147


第10章 ギャンブル、セックス、食べ物 149
  ○ いにしえより続くギャンブル依存
  性的依存(性的嗜癖行動)
  摂食障害
  恐怖と言い訳
  まとめ
注 158


第11章 薬物はほかにどのような作用があるのか? 161
  アルコール
  ニコチン
  マリファナ(カンナビス)
  コカイン
    メタンフェタミン覚せい剤
  ザナックス(アルプラゾラム)、バリウムジアゼパム)、その他の鎮静剤
  オキシコンチンとその他のオピオイド
  エクスタシーとクラブドラッグ
  PCP(フェンシクリジン)
  カフェイン
  まとめ
注 180


第12章 女性と思春期 183
  研究結果による裏づけ
    異なる治療を行うべきか?
    思春期
    高齢者
  まとめ
注 193


第13章 治療――どうすれば良くなるだろうか? 195
  なぜ治療なの? 高すぎない?
  治療の成功とは?
  なぜ彼らを治療するの? 彼らはただのヤク中だ!
  私は治療を受けたいだろうか?
  行動療法
  治療の場面
  薬物療法
  依存性は代謝性疾患か?
  予防こそ最善の治療である
  どのように援助を求めるか?
  まとめ
注 215


第14章 将来はどうなるのだろうか? 217
  治療、治療そしてまた治療
  依存にかかわる分子
  ワクチン
  RTI-336
  薬物依存者であるという不名誉!
  合法化もしくは非刑罰化
  どのような態度をとるべきか、そしてどのような協力が可能か?
  まとめ
注 232


用語解説 [6-10]
索引 [1-5]

『アルコール・薬物依存症を一から見直す――科学的根拠に基づく依存症の理解と支援』(William R. Miller, Kathleen M. Carroll[編] 森田展彰[監訳] 佐藤明子[訳] 誠信書房 2020//2006)

原書:Rethinking Substance Abuse: What the Science Shows, and What We Should Do about It (The Guilford Press, 2006)
編者:William R. Miller 心理学、精神医学(アディクションに対する行動療法)。
編者:Kathleen M. Carroll 精神医学(物質使用障害に対する行動療法)。
監訳者:森田 展彰[もりた・のぶあき] 精神科医。司法精神医学、精神衛生学。
訳者:佐藤 明子[さとう・あきこ] 翻訳家。
装幀:吉田 憲二[よしだ・けんじ] 装丁家
NDC:493.156 内科学 >> 全身病.一般的疾患 >> 中毒症 >> アルコール中毒
備考:抄訳。


アルコール・薬物依存症を一から見直す - 株式会社 誠信書房


【目次】
はじめに [iii-v]
謝辞 [vi-vii]
目次 [viii-xii]


  第 I 部 序論 001

第1章 問題の定義と取り組み[Kathleen M. Carroll,William R. Miller] 002
一から見直すべき時があるとしたらそれは今だ 002
話は変わって…… 004
どんな用語を使うかは重要だ 005
幅広い見方 006


第2章 森と木々――複雑な自己組織化システムとしてのアディクション[Warren K. Bickel,Marc N. Potenza] 009
起源 011
遂行能力と相互作用 015
自己組織化 017
多モジュール自己組織化系の発生――モデル案 020
問いへの答え 022
結論 024
確かな原則 024
推奨文献 026


  第II部 生物学的要因 029

第3章 アディクションの神経生物学――快楽に関するカルヴァン主義の見方[George F. Koob] 030
アルコール・薬物に対する乱用と依存の動物モデル 030
  静脈内薬物自己投与
  脳刺激報酬
  場所選好
  薬物摂取量の増大
  薬物離脱の動機づけ作用の動物モデル
  渇望の動物モデル
中毒の神経薬理学 038
  ドーパミン
  オピオイドペプチド
  γ-アミノ酪酸
  エンドカンナビノイド
依存の動機づけ作用の神経薬理学 043
  脳内報酬機能の低下――アディクション
  脳内ストレス系の活性化
再発の神経薬理学 046
  薬物誘発性の薬物探求行動の再開
  キュー誘発性の薬物探求行動の再開
  ストレス誘発性の薬物探求行動の再開
アディクションへの脆弱性――遺伝的標的 047
アロスタシスから見たアディクションの神経薬理学 049
  対抗適応
  神経適応とアロスタシス
今後の展望 051
要約と結論 052
確かな原則 053
謝辞/推奨文献 054


第4章 ヒトの脳画像が教えてくれるアディクションの発症と再発に対する脆弱性[Anna Rose Childress] 056
当事者に目標を持たせ,依存症になったことに関する責任から解放すること 057
生まれたときから始まる脳の違い――遺伝はアディクション脆弱性を高める脳の違いを作り出す可能性がある 058
思春期――脳の「進め!」回路と「止まれ!」回路の発達がアンバランスな時期 059
脳画像を用いてアディクションのある人の脳の中を「見る」ことができる 061
  脳画像はアディクションのある人の「進め!」システムにおける違いを示している
    D_2ドーパミン受容体の少なさ
      【結果なのか原因なのか】
      【まとめ】
      【予防や治療のための意味づけ】
    乱用薬物および「進め!」と命じる薬物キューに対する脳の反応
      【乱用薬物に対する脳の反応】
      【「進め!」と命じる薬物キューに対する脳の反応】
脳画像はアディクションのある成人における「止まれ!」システムの弱点も示している 068
    原因なのか結果なのか
    予防や治療のための意味づけ
確かな原則 071
推奨文献 072


  第III部 心理学的要因 075

第5章 自然変化と「やっかいな」物質使用――ライフコースの観点から[Carlo C. DiClemente] 076
自然変化と問題使用の発現 079
物質乱用歴 082
自然変化と意図的行動変化のプロセス 084
結論 091
確かな原則 092
謝辞/推奨文献 093


第6章 物質使用障害と精神障害の併存[Kim T. Mueser,Robert E. Drake,Win Turner,Mark McGovern] 095
併存症の有病率と結果 095
  精神障害と物質使用障害の併存率
  併存症がもたらす結果
高い併存率を理解する 097
  二次的精神病理モデル(Secondary Psychopathology Models)
  二次的物質乱用モデル(Secondary Substance Abuse Models)
  共通因子モデル(Common Models)
  双方向モテ(Bidirectional Models)
  まとめ
全体的アプローチ 104
  統合治療モデル(Integrated Treatment Models)
  4象限モデル(Quadrant Models)
  まとめ
思春期の子どもたちにおける併存障害 109
  包括的な反復評価
  有病率
  併存症がもたらすまいなすの影響
  予防の機会
  思春期の子どもたちにおける併存障害治療
  まとめ
確かな原則 115
推奨文献 116


第7章 アディクション行動における動機づけ要因[William R. Miller] 118
個人内の動機づけ 119
  心理測定学的な概念構成体
  自然言語からの推測
  行動からの推測
  何に対する動機づけなのか
  まとめ
対人的な動機づけ 122
  治療者効果(Therapist Effect)
  コミットメント(Commitment)
  動機づけ面接
  家族を介した介入
  まとめ
背景(コンテクスト)からの動機づけ 126
  規範(適切な飲酒量の認識)
  変化の障壁
  随伴性
  まとめ
変化を予測する 129
  まとめ
変化への動機づけに影響を与える 131
  何がうまくいかないのか
    啓発(Enlightenment
    対決
    罰
  何がうまくいくのか
  まとめ
断片をつなぎ合わせる 136
確かな原則 138
推奨文献 139


  第IV部 社会的要因 141

第8章 家族などの親密な人間関係[Barbara S. McCrady] 142
前置きとして 142
  親密な関係を定義する
  広範な問題
家族,社会的ネットワーク,そして物質使用障害についてわかっていること 145
  アルコールや他の薬物の使用障害を抱えている人たちは,家族や友人のネットワークの中で生活しており,また家族や友人のネットワークとの関係性を持っている
  家族関係は,アルコール問題や薬物問題の発生を防ぐ役割を果たすことがある
  飲酒者や薬物使用者の家族や他の親しい人たちは,物質使用・物質使用障害の発症や維持の一因となることがある
  飲酒者や薬物使用者の家族や他の親しい人たちは,本人の問題認識と援助希求を助けるうえで役割を担う
  飲酒者や薬物使用者の家族や他の親しい人たちは,変化のプロセスや治療の成功に重大な影響を及ぼす
  飲酒者や薬物使用者の家族や他の親しい人たちは,変化の維持に重要な役割を果たす
  物質使用障害を抱えている人がいる家庭では,暴力が蔓延しており,このことを治療や予防における主要な懸念事項とすべきである
何がうまくいくのか 154
  効果的な予防的家族介入
  物質乱用者のための効果的な家族/社会的ネットワークアプローチ
    問題認識と援助希求
    治療/能動的変化を促す積極的な関わり
  家族を巻き込んだ方がいい場合,巻き込まない方がいい場合
確かな原則 158
推奨文献 159


第9章 社会的背景と物質使用[Rudolf H. Moos] 161
理論的視点 161
家族と物質使用・乱用 163
  家族と思春期の子どもたち
    絆の形成とモニタリング
    親によるモデリング(モデル提示)
    ストレスと対処
    相互的影響のプロセス
    長期的影響
  家族と若い成人および成人
    役割の移行と社会的絆
    選択的配偶と配偶者モデリング
    夫婦家族における絆の形と社会的統制
  家族と治療開始および治療転帰  
友人・仲間集団と物質使用・乱用 167
  友人・仲間集団と思春期の子どもたち
    ピア・クラスター理論とピア・モデリング
    学校での規範,モデリング,そして社会的統制
    仲間の影響の調整因子
    相互的影響のプロセス
  友人・仲間集団と若い成人および成人
    仲間集団の影響の源
    ピア・モデリングと大学生の物質使用
    ピア・ネットワークと成人における大量飲酒
    相互的影響のプロセス
    友人・仲間集団と寛解・再発のプロセス
仕事と物質使用・乱用 173
  アルバイトと思春期の子どもたち
  若い成人および成人における仕事
    モデリング,規範,入手しやすさ
    モニタリングと監督
    職業ストレッサーと対処
居住地域と物質使用・乱用 175
  物質使用の規範とモデリング
  モデリングと社会的統制
  居住地域の貧しさとストレッサー
  領域横断的な影響
介入と予防のプログラム 177
  社会的絆とモニタリング
  モデリングと仲間意識
確かな原則 179
  理論的視点
  家族
  友人・仲間集団
  仕事
  居住地域
  介入と予防のプログラム
謝辞/推奨文献 182


  第V部 介入 185

第10章 行動療法――グラスさえあれば半分は満たせるのに[Bruce J. Rounsaville,Kathleen M. Carroll] 186
背景と概要 186
問題のある物質使用の根底にある基礎的プロセス 188
  古典的な条件づけおよびオペラント条件づけによる連合学習に基づく過剰な動因
  神経適応,神経毒性,発症前から存在する脳内報酬回路の弱点のうちいずれか,あるいはすべて
ブレーキを補強し動因を弱める――行動療法の有効性 190
  短期療法(ブリーフセラピー)モデルと動機づけモデル
  随伴性マネジメントモデル
  社会的学習,スキルトレーニング,認知行動モデル
  社会的支援,社会的ネットワーク,家族モデル
物質依存における行動療法と基本プロセス 196
  ブレーキの補強
  動因の低減
今後の展望 199
確かな原則 202
  行動療法的介入の有効性
謝辞/推奨文献 204


第11章 宗教,スピリチュアリティと,「やっかいな」物質使用[Keith Humphreys,Elizabeth Gifford] 206
序論と背景 207
  定義
  宗教とその物質使用に対する見解
  スピリチュアリティを志向する相互支援団体とその物質使用に対する見解
  社会科学と宗教・スピリチュアリティを志向する団体
「やっかいな」物質使用の発症予防 211
  宗教との関わりがもつ保護的作用
  宗教と予防政策
  予防におけるパートナーとしての宗教団体と科学者
  スピリチュアリティを志向する相互支援団体と予防法
宗教/スピリチュアリティを志向するアディクション治療 215
  宗教は活発なアイデンティティを抑えられるのか
  宗教/精神性に基づく治療の評価
  宗教やスピリチュアリティの治療転帰への貢献
  断酒・断薬達成後の宗教やスピリチュアリティ
  治療と回復におけるパートナーとしての宗教団体や聖職者
アディクションからの回復の開始因子および維持因子としてのスピリチュアリティを志向する相互支援グループ 220
  アラノン【Al-Anon】への参加の転帰
  アルコホーリクス・アノニマス(AA)
  コカイン・アノニマスとナルコティクス・アノニマス
  12ステップグループが物質使用に与える影響の仲介因子
  12ステップグループへの参加のスピリチュアリティに関する転帰
  結論
確かな原則 226
謝辞/推奨文献 227


第12章 必要なのはシステムだ――柔軟で有効な物質乱用治療システムを構築する[A. Thomas McLellan] 229
治療コンポーネントに関する研究結果の概略 230
  治療場所の提供
  治療機関の長さと治療へのコンプライアンス
  アルコホーリクス・アノニマスなどのピアサポート型治療への参加
  治療者またはカウンセラー
  薬物療法
    オピオイド依存に対する薬物療法
    アルコール依存に対する薬物療法
    精神刺激薬依存に対する薬物療法
    薬物療法について一般的にいえること
  専門分野別サービスの提供
  患者と治療のマッチング
現在のアディクション治療システムの概略 243
  アディクション専門部門による成人を対象としたアディクション治療システム
  専門部門による思春期の子どもたちを対象としたアディクション治療システム
    専門資格をもつスタッフの不足
    サービス提供のための資金の不足
まとめと考察 247
確かな原則 249
謝辞/推奨文献 249


第13章 科学的知識を統合して全体像を描く―― 10の原則,10の提言[William R. Miller,Kathleen M. Carroll] 251
アルコールや薬物の使用およびアルコール・薬物問題に広く適用できる原則 253
  〈原則1〉アルコールや薬物の使用は選択された行動である
  〈原則2〉アルコール・薬物問題は徐々に現れ,重症度連続体の全域で起こる
  〈原則3〉いったん確立されてしまうと,アルコール・薬物問題は自己永続的になる傾向がある
  〈原則4〉動機づけが予防と介入の中核をなす
  〈原則5〉アルコールや薬物問題は
  〈原則6〉アルコール・薬物問題は単独で起こるのではなく,行動クラスターの一部として起こる
  〈原則7〉問題となるアルコール・薬物の使用には特定可能かつ修正可能な危険因子と保護因子がある
  〈原則8〉アルコール・薬物問題は家族的背景の中で生じる
  〈原則9〉アルコール・薬物問題はより大きな社会的背景に影響される
  〈原則10〉治療者とクライアントの関係性は重要だ
介入と社会政策のための提言 263
  〈提言1〉介入は,専門家に任せるべき問題ではなく,多くの公共・民間セクターで共有すべき幅広い社会的弱者責任である
  〈提言2〉最も深刻化したケースだけではなく,さまざまなレベルの問題をもつ事例の全般に対して,その問題をスクリーニングし,対処すること
  〈提言3〉アルコールや薬物の使用およびアルコール・薬物問題をより大きな人生背景の中で理解し,包括的なケアを提供すること
  〈提言4〉アルコールや薬物の使用とアルコール・薬物問題の解決法を探る際には,個人の背後にあるものまで視野に入れること
  〈提言5〉変化への動機づけとコミットメントを高めることが介入の早期目標かつ主要要素でなければならない
  〈提言6〉しっかりと確立されてしまったアルコールや薬物の使用パターンに変化を起こすプロセスは,通常,パターンを中断して断薬(断酒)の最初の期間を作り出すことから始まる
  〈提言7〉不使用に対する正の強化を高め,アルコール・薬物使用に代わる報酬源へのアクセスを充実させること
  〈提言8〉アルコールや薬物の使用の報酬としての側面を弱めること
  〈提言9〉サービスを,アクセスしやすく,低負担で,歓迎的で,助けになり,強力で,迅速で、魅力的なものにすること
  〈提言10〉科学的根拠に基づくアプローチを用いること
推奨文献 276


監訳者あとがき(2020年2月 筑波大学医学医療系 森田展彰) [277-280]
索引 [281-286]
編者紹介 [287]
執筆者紹介 [288-289]
監訳者紹介 [290]




【メモランダム】
・原著の版元サイトから、編者と寄稿者の紹介。

◆ABOUT THE EDITORS
William R. Miller, PhD, is Distinguished Professor of Psychology and Psychiatry at the University of New Mexico. A recipient of the Jellinek Memorial Award for alcoholism research, he is fundamentally interested in the psychology of change, and has focused in particular on the development, testing, and dissemination of behavioral treatments for addictions. Dr. Miller's publications include more than 30 books and 300 articles and chapters spanning behavior therapies, motivation, self-regulation, and the interface of psychology with spirituality and religion. He is named by the Institute for Scientific Information as one of the "world's most cited scientists."
All titles by William R. Miller

Kathleen M. Carroll, PhD, is Professor of Psychiatry at the Yale University School of Medicine. The author of over 180 journal articles and chapters, her research and clinical interests lie in the area of developing and evaluating behavioral therapies for substance use disorders, and combining therapies to maximize treatment outcome. Dr. Carroll is the past president of Division 50 (Addictions) of the American Psychological Association, and holds both Senior Scientist and MERIT awards from the National Institute on Drug Abuse, the latter being awarded to the top 1% of National Institute of Health investigators.


◆CONTRIBUTORS
Warren K. Bickel, PhD, Department of Psychiatry and Center for Addiction Research, University of Arkansas for Medical Sciences, Little Rock, Arizona

Robert G. Carlson, PhD, Center for Interventions, Treatment, and Addictions Research, Department of Community Health, Wright State University Boonshoft School of Medicine, Dayton, Ohio

Kathleen M. Carroll, PhD, Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut; Department of Psychiatry, Veterans Affairs Connecticut Healthcare Center, West Haven, Connecticut

Anna Rose Childress, PhD, Addiction Treatment Research Center and Department of Psychiatry, University of Pennsylvania School of Medicine, Philadelphia, Pennsylvania

Carlo C. DiClemente, PhD, Department of Psychology, University of Maryland, Baltimore, Maryland

Robert E. Drake, MD, Departments of Psychiatry and Community and Family Medicine, New Hampshire-Dartmouth Psychiatric Research Center, Dartmouth Medical School, Hanover, New Hampshire

Elizabeth Gifford, PhD, Program Evaluation and Resource Center, Veterans Affairs Health Care System, Menlo Park, California

Deborah Hasin, PhD, Departments of Epidemiology and Psychiatry, Columbia University, New York, New York; Department of Research Assessment and Training, New York State Psychiatric Institute, New York, New York

Mark Hatzenbuehler, BA, Department of Psychology, Yale University, New Haven, Connecticut

Michie N. Hesselbrock, PhD, University of Connecticut School of Social Work, West Hartford, Connecticut

Victor M. Hesselbrock, PhD, Department of Psychiatry, University of Connecticut Health Center, Farmington, Connecticut

Harold D. Holder, PhD, Prevention Research Center, Pacific Institute for Research and Evaluation, Berkeley, California

Keith Humphreys, MD, Program Evaluation and Resource Center, Veterans Affairs Health Care System, Menlo Park, California

George F. Koob, PhD, Department of Neuropharmacology, The Scripps Research Institute, La Jolla, California

Thomas R. Kosten, MD, Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut; Department of Psychiatry, Veterans Affairs Connecticut Healthcare Center, West Haven, Connecticut

Barbara S. McCrady, PhD, Graduate School of Applied and Professional Psychology and Center of Alcohol Studies, Rutgers University, Piscataway, New Jersey

Mark McGovern, PhD, Department of Psychiatry, New Hampshire-Dartmouth Psychiatric Research Center, Dartmouth Medical School, Hanover, New Hampshire

A. Thomas McLellan, PhD, Treatment Research Institute, Philadelphia, Pennsylvania

William R. Miller, PhD, Departments of Psychology and Psychiatry, University of New Mexico, Albuquerque, New Mexico

Rudolf H. Moos, PhD, Center for Health Care Evaluation, Veterans Affairs Health Care System, Menlo Park, California; Department of Psychiatry and Behavioral Sciences, Stanford University, Stanford, California

Kim T. Mueser, PhD, Departments of Psychiatry and Community and Family Medicine, New Hampshire-Dartmouth Psychiatric Research Center, Dartmouth Medical School, Hanover, New Hampshire

Stephanie S. O'Malley, PhD, Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut

Marc N. Potenza, MD, Problem Gambling Clinic, Connecticut Mental Health Center, New Haven, Connecticut; Women and Addictions Core of Women's Health Research and Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut

Bruce J. Rounsaville, MD, Department of Psychiatry, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut; Department of Psychiatry, Veterans Affairs Connecticut Healthcare Center, West Haven, Connecticut

Win Turner, PhD, Department of Psychiatry, Dartmouth Medical School, Hanover, New Hampshire

Rachel Waxman, BA, Department of Research Assessment and Training, New York State Psychiatric Institute, New York, New York


・つづいて簡易目次。

,TABLE OF CONTENTS,
   I. Introduction
1. Defining and Addressing the Problem, Kathleen M. Carroll and William R. Miller

2. The Forest and the Trees: Addiction as a Complex Self-Organizing System, Warren K. Bickel and Marc N. Potenza

   II. Biological Factors
3. The Neurobiology of Addiction: A Hedonic Calvinist View, George F. Koob

4. What Can Human Brain Imaging Tell Us about Vulnerability to Addiction and to Relapse?, Anna Rose Childress

5. Genetics of Substance Use Disorders, Deborah Hasin, Mark Hatzenbuehler, and Rachel Waxman

   III. Psychological Factors
6. Natural Change and the Troublesome Use of Substances: A Life-Course Perspective, Carlo C. DiClemente

7. Developmental Perspectives on the Risk for Developing Substance Abuse Problems, Victor M. Hesselbrock and Michie N. Hesselbrock

8. Comorbid Substance Use Disorders and Psychiatric Disorders, Kim T. Mueser, Robert E. Drake, Win Turner, and Mark McGovern

9. Motivational Factors in Addictive Behaviors, William R. Miller

   IV. Social Factors
10. Racial and Gender Differences in Substance Abuse: What Should Communities Do about Them?, Harold D. Holder

11. Family and Other Close Relationships, Barbara S. McCrady

12. Social Contexts and Substance Use, Rudolf H. Moos

13. Ethnography and Applied Substance Misuse Research: Anthropological and Cross-Cultural Factors, Robert G. Carlson

   V. Interventions
14. Behavioral Therapies: The Glass Would Be Half Full If Only We Had a Glass, Kathleen M. Carroll and Bruce J. Rounsaville

15. Pharmacotherapy of Addictive Disorders, Stephanie S. O'Malley and Thomas R. Kosten

16. Religion, Spirituality, and the Troublesome Use of Substances, Keith Humphreys and Elizabeth Gifford

17. What We Need Is a System: Creating a Responsive and Effective Substance Abuse Treatment System, A. Thomas McLellan

18. Drawing the Science Together: Ten Principles, Ten Recommendations, William R. Miller and Kathleen M. Carroll



【抜き書き】

・「監訳者あとがき」の冒頭部(p. 277)。

 本書は,William R. Miller and Kathleen M. Carroll (Eds.). Rethinking Substance Abuse: What the Science Shows, and What We Should Do about It. Guilford Press, 2006 の抄訳である。原書は5部構成の全18章から成っており,そのうち邦訳を出版するうえでの分量・価格のバランスをとるために,断腸の思いで5章(遺伝的要因,エスノグラフィー,社会的文脈など)を省略している。興味のある方はぜひ原書にあたってほしい。



・本書の成り立ち。

〔……〕米国でアディクションに関する研究や臨床を中心になって進めてきた26人が2004年にニューメキシコで会合し,3日間のブレーンストーミングを通じて,今行われているアルコール・薬物依存の理解や働きかけをいったん棚上げして,純粋にこれまでの研究を基にしたら,どのような支援や治療が考えられるのかが話し合われた。たとえば,診断名として「物質依存」という言葉もいったんはやめて,あえて「やっかいな使用:troublesome use」という言葉を用いており,依存症というのがくっきりと分けられる疾病だということを前提にしない立場をとっている。本書はその会議の成果としてまとめられたものである。
 生物学,薬理学,心理学,社会学などの視点から,アルコール・薬物依存が生じるメカニズムそして,それに対する有効な介入を述べたのちに,それらを総合して,最後の章では,原則や提言にまとめている。その原則や提案は,一般に日本の社会で信じられがちな依存症への偏見と大きく異なるものであり,さらに臨床家でもやや混乱している考え方を正してくれるものになっている。


・「監訳者あとがき」末尾から(p. 280)

 本書は,上述のようにアルコール・薬物問題への厳罰主義と異なっているのみではなく,日本の臨床家が用いている依存症=病気モデルとも異なる幅広い視点を提供している。つまり,一部の危ないアルコール・薬物中毒者の治療を考えるのではなく,各個人のアルコール・薬物使用の裏にある多様なリスクを取り上げ,それに対処する力を促進する支援や情報提供を行うものである。これはアルコール・薬物使用を取りしまる「ユースリダクション(使用の低減)」の限界を超えるために世界的に用いられるようになった社会全体の損害=ハームを減らす「ハームリダクション(損傷の低減)」というアルコール・薬物政策に通じるものである。このハームリダクションは日本でも近年注目され始めているが,十分に理解されているとはいえず,注射針やコンドームを配る方法や単純に節酒を認める方法だと勘違いしている者も多い。監訳者としては,多くの人に,本書の示すエビデンスに基づく原則や提言にふれていただき,それがエビデンスを基にした広い視点からの,アルコール・薬物依存問題への対応や支援に関する議論の契機になることを期待している。



・「はじめに」から(p. iv)。あるカンファレンスの開催と本書のもつ特徴。

私たちは,2004年にニューメキシコ州で「シンクタンク」会議を開催した。「やっかいな物質使用と闘うためのアプローチに関する会議」(Conference on Approaches for Combating the Troublesome Use of Substances: CACTUS)と題されたこの会議の開催は,ロバート・ウッド・ジョンソン基金からの資金援助も受けて実現した。本書に寄稿している執筆者たちは全員,CACTUS に参加したメンバーである。〔……〕会場での発表は各レビューのごく簡単な要約のみで,ほとんどの時間を複数分野の研究成果の相互関係について議論したり,実践のための意味づけをブレーンストーミングしたりすることに充てた。〔……〕その後,執筆者たちは,CACTUS での議論をもとに自分のレビューを修正した。この本を構成する各章は,その最終産物である。
 本書は,いくつかの点で型破りだ。私たちはまず,科学の伝統である文献引用を禁止した。参照項目をはさむと文の流れが途切れてしまうからだ。その代わりに,私たちは,各執筆者の専門分野でわかっていることや,少なくとも安当なエビデンスが得られている事柄の要約を提供してくれるようお願いした。〔……〕私たちはまた,介入に関連づけることができそうな科学的知見から,一連の原則を導き出してほしいともお願いした。最後に私たちがお願いしたのは,有名な治療法や,慣れ親しんだサービスモデルやサービスシステムをいったん脇に置いてほしい。そして,介入のための具体的な勧告も差し控えてほしい,ということだった。したがって,本書の各章は,個々の実践よりも原則に焦点を当てている。



・「第1章 問題の定義と取り組み」から、本書の用語法について。

  どんな用語を使うかは重要だ
 われわれが取り組んださらに複雑な問題の一つは,アルコールや他の薬物の使用に関連した概念や,一連の問題を記述するために使う用語の問題だった。現象を描写するために用いる名称は,人が問題をどのように考え,それに対処するかに影響を与える。この分野は,多くの意味を帯びてしまっている用語であふれている。長いあいだ,飲み過ぎに関連する問題を抱える人々には「飲んだくれ」 ,〔……〕「アルコール乱用者」といった名称が使われてきた。違法薬物使用者は「嗜癖者」,〔……〕「薬物乱用者」と呼ばれてきた。これらの用語には,それぞれ特定の付加された意味[注 付加された意味としては、たとえば道徳的に悪いものであるとする偏見などがある。]が含まれている。同じように,「治療」(これ自体がある種の前提を含む概念である)という言葉も,矯正,リハビリテーション,回復,しらふでいること,再発防止,そしてハームリダクションにつながるものとして,さまざまな捉え方をされてきた。
 このような取り組みには,この分野にありがちな隠語やレッテルや軽蔑的表現を避けようと自らを律する以上の意味がある。政治的に正しい婉曲表現を見つけることが目的だったわけではなく,目的はむしろ,自分たちが取り組んでいる問題のもっと幅広い本質について,別の見方をするよう自らに強いることだった。われわれは,CACTUS会議の標題に「『やっかいな』使用」(troublesome use)という表現を使うことにした。それが望ましい表現だからではない。それが馴染みのない言い回しで,快適な慣習からわれわれを引き離してくれたからだ。このことが,次にいくつかの基礎的な前提を明確にする助けとなった。


・薬物問題の背後にある、人間の問題(pp. 6-7)。

いくつかの意味で,この分野の中心的な問題が示してきたのは,昔からある人間のジレンマの縮図といえるものである。そのなかには,なぜ明らかに破壊的な結果を招く行動パターンに固執してしまうのかということや,生物学的自己・個人的自己・社会的自己のあいだの緊張関係,感情調節の可否や方法,そしてどのように目先の欲求充足と個人・家族・地域のより長期的な幸福のあいだで折り合いをつけてきたのか,ということを含んでいる。このように,「やっかいな」物質使用は,より広範な個人的・社会的・生物学的ドラマの一つの表れにすぎないのである。根底にある同じような問題や脆弱性がある人には薬物依存として,他の人には悲しみや引きこもりとして,別の人には攻撃的行動や犯罪行為として,さらに別の人にはそれらすべてを含むものとして表出する。〔……〕そのような人間共通の問題が,ときにアルコールや薬物の「やっかいな」使用として表出するだけのことなのである。

『依存症――ほどよい依存のすすめ』(伊藤洸 サイエンス社 2011)

著者:伊藤 洸[いとう・こう](1943-) 精神医学、精神分析
カバーイラスト:ディグ
シリーズ:ライブラリこころの危機Q&A;3


依存症 - 株式会社サイエンス社 株式会社新世社 株式会社数理工学社


【目次】
シリーズ紹介(編者 松井豊) [/]
目次 [i-iv]


第1章 依存症の時代 001
Q1 依存症とはどんな病気ですか 002
  (1) 酒の飲み方の変化 
  (2) アルコールに対する態度の変化 
  (3) 身体レベルの変化
    ①耐性の変化
    ②離脱症状の出現
  (4) 社会生活の変化 


Q2 ギャンブル依存症などのようなものもアルコール依存症と同じように考えてよいのでしょうか 009
  (1) 依存症の定義 
  (2) 依存症の分類 
    ①物質依存
    ②プロセス依存
    ③関係依存
  (3) イネイブラー 
  (4) コデペンデンシー 


Q3 依存症には脳の中の仕組みも関与しているのでしょうか 019
  (1) 報酬系 
  (2) 神経伝達物質 
  (3) ドーパミン神経路 
  (4) 探索行動 
  (5) ランナーズ・ハイ 


Q4 若者たちの薬物依存が問題視されていますが、その実態はどうなっているのでしょうか 029
  (1) 広がる薬物汚染 
  (2) 難しい統計調査 
  (3) 初めはトルエンだった 
  (4) 無動機症候群とフラッシュバック現象 


Q5 アルコール依存症にはどんな合併症がありますか 037
  (1) 多量飲酒者 
  (2) さまざまな合併症 
  (3) 睡眠障害の併発 
  (4) 記憶と認知の障害 


第2章 依存症の心理的問題 045
Q6 そもそも人はなぜリスクを知りながら、アルコールなどに手を出すのでしょうか 046
  (1) アルコール不耐性 
  (2) 酩酊の精神医学 
  (3) 酩酊と退行 
  (4) 「自我による自我のための退行」 


Q7 依存症を理解する上で役立つ精神分析の理論について教えてください 054
  (1) 移行対象 
  (2) フェティッシュな対処 
  (3) コデペンデンシー(病的な依存) 
  (4) 依存と共感 


Q8 現代社会にはさまざまなストレスがありますが、依存症はストレスとどのように関係しているのでしょうか 061
  (1) ストレス社会 
  (2) ストレス対処法(コーピング) 
  (3) 家庭ストレス 
  (4) 依存症――短絡的ストレス解消法 
  (5) サポート体制 


Q9 依存症には現実からの逃避があるように思われますが、どのような心理的カニズムが働いているのでしょうか 070
  (1) 臭いものに蓋をする――抑圧の心理 
  (2) 過少申告 
  (3) 馬耳東風――否認の心理 
  (4) 躁的防衛 
  (5) 嘘と二重生活 


Q10 ワーカホリック(仕事中毒)も依存症の一つでしょうか 078
  (1) 仕事人間 
  (2) ワーカホリック(仕事中毒) 
  (3) 日曜神経症 
  (4) ワークライフバランス 


第3章 治療の実際 085
Q11 依存症治療の基本原則を教えてください 086
  (1) 節酒か、断酒か 
  (2) ブリーフ・インターベンション 
  (3) 涸れ井戸現象 
  (4) 己を超える力 


Q12 家族のあり方と依存症は影響し合っているのでしょうか 094
  (1) 家族の機能 
    ①休息を求める場所
    ②感情表現の自由
    ③子どもの社会化を促進する
    ④性的欲求を充足する
  (2) 機機不全の家族 
  (3) アダルト・チルドレン 
  (4) 自己愛家族 
  (5) 求心性と遠心性 


Q13 ギャンブル依存症とはどんな病気ですか 103
  (1) 女性にも広がる依存症 
  (2) ポーカーゲーム 
  (3) エンドレスになりやすい 
  (4) 数百万円の借金 
  (5) 空虚感を埋めるために 
  (6) 教会 


Q14 ギャンブル依存症から抜け出すにはどうしたらよいですか 111
  (1) なぜ診断が重要なのか 
  (2) エアポケット 
  (3) セルフ・ケアへの導入 
  (4) サバイバーがスポンサーになる 


Q15 依存症と関係の深いパーソナリティ障害は何ですか 119
  (1) 自我親和的か、自我違和的か 
  (2) パニック障害 
  (3) 発病時の状況 
  (4) 幼児期の過酷な環境 
  (5) 自己愛病理 


Q16 自己愛性パーソナリティ障害の治療について教えてください 126
  (1) 治療現場の整備 
  (2) 自己愛性パーソナリティ障害の治療 
    ①共感できること
    ②共感できないこと(逆転移反応)
    ③治療関係の中での起こったこと
  (3) 身体表現性障害と自己愛 


第4章 現代文化と依存症 135
Q17 小説や物語ではどのように依存症の心理を描いているのでしょうか 136
  (1) 貴族の遊び 
  (2) ルーレテンブルグ 
  (3) 賭博とイネイブラー 
  (4) 投影同一視 


Q18 最近のマスメディアには依存症という言葉がよく登場しますが、何か現代社会を映し出しているのでしょうか 144
  (1) 依存症時代 
  (2) 映画『セックス依存症だった私へ』(2008年) 
  (3) ボーダーライン 
  (4) 関係依存 
  (5) セックス依存症 


Q19 うつ病も依存症と関連することがあるのでしょうか 153
  (1) スパルタ教育 
  (2) 「プロザックが売れる国」 
  (3) 第2世代の抗うつ剤 
  (4) 診断の重要性 
  (5) 医原性疾患 


Q20 最近、インターネット依存症とか携帯電話依存症という言葉を聞きますが、これらも依存症でしょうか 160
  (1) インターネット・パラドックス 
  (2) ハーツ著『インターネット中毒者の告白』 
  (3) サイバー空間の特性 
    ①ボーダレス空間
    ②タイムレスな生活
    ③ネームレス社会の罠
    ④虚実の逆転
  (4) 子どもへの影響 


Q21 自分がアルコール依存症ではないか、と不安になるときがありますが、どこに行って相談したらよいのでしょうか 172
  (1) 不安は回復への一里塚 
  (2) 自己診断テスト 
  (3) 親の意見と冷や酒 
  (4) 相談の窓口 


Q22 アルコール依存症などに陥った家族メンバーがいる場合、ほかの家族はどのように接したらよいのでしょうか 178
  (1) 家族教室 
  (2) イネイブラーをやめる 
  (3) 家族が変わる 


あとがき(平成23年5月 武田病院 伊藤 洸) [183-186]
引用文献 [187-191]
著者略歴 [192]

『アディクションサイエンス――依存・嗜癖の科学』(宮田久嗣,高田孝二,池田和隆,廣中直行[編] 朝倉書店 2019)

[執筆者](五十音順)
相澤 加奈  手稲渓仁会病院
池田 和隆  東京都医学総合研究所
稲田 健   東京女子医科大学
入江 智也  北翔大学
尾崎 米厚  鳥取大学
木戸 盛年  大阪商業大学
木村 永一  手稲渓仁会病院
小林 桜児  神奈川県立精神医療センター
近藤 あゆみ 国立精神・神経医療研究センター
齋藤 利和  幹メンタルクリニック
坂上 雅道  玉川大学
白坂 知彦  手稲渓仁会病院
高田 孝二  帝京大学
高野 裕治  東北大学
高橋 英彦  東京医科南科大学
田辺 等   北星学園大学
常田 深雪  手稲渓仁会病院
永井 拓   名古屋大学
成瀬 暢也  埼玉県立精神医療七夕一
西澤 大輔  東京都医学総合研究所
原田 隆之  筑波大学
廣中 直行  株式会社LSIメディエンス
藤原 淳   株式会社イナリサーチ
松田 正彦  国立精神・神経医療研究センター
松本 俊彦  国立精神・神経医療研究センター
三原 聡子  久里浜医療センター
宮田 久嗣  東京慈恵会医科大学
森 友久   星薬科大学
森田 展   彰筑波大学
和田 清   埼玉県立精神医療センター

装丁:長久 雅行


アディクションサイエンス |朝倉書店


【目次】
口絵(①〜⑧)
序(2019年5月) [i-ii]
執筆者一覧 [iii]
目次 [iv-ix]


  第1部 薬物依存研究の基礎


イントロダクション  [廣中直行] 001


1 薬物自己投与[藤原淳] 004
1.1 薬物自己投与とは? 004
1.2 薬物自己投与の歴史 004
1.3 薬物自己投与に用いる動物 005
1.4 薬物自己投与の実際 006
  1.4.1 薬物自己投与の実施 006
  1.4.2 ラットの薬物自己投与 006
    a. 薬物自己投与前の手続き
    b. 自己投与訓練
    c. 自己投与試験
  1.4.3 アカゲザルの薬物自己投与 008
    a. 薬物自己投与前の手続き
    b. 自己投与訓練
    c. 自己投与試験
文献 010


2 薬物弁別[高田孝二] 012
2.1 状態依存学習 012
2.2 薬物弁別学習 013
  2.2.1 弁別訓練法 13
  2.2.2 般化テスト 13
  2.2.3 般化の判別 14
  2.2.4 累積用量投与法 14
2.3 自覚効果 015
2.4 ヒトにおける薬物弁別実験:弁別刺激効果と質問紙による自覚効果 015
  2.4.1 ヒトにおける薬物弁別実験 15
  2.4.2 弁別刺激効果の変動要因 16
  2.4.3 強化効果と自覚効果 17
2.5 薬物弁別実験の有用性 017
  2.5.1 作用メカニズムの解明・薬物乱用能の予測 17
  2.5.2 創薬への応用 18
2.6 おわりに 019
文献 019


3 身体依存性試験[森友久] 021
3.1 身体依存性試験を行うにあたり 021
3.2 身体依存の形成と退薬症候に関して 021
3.3 身の回りにある退薬症候 022
3.4 身体依存性試験 023
  3.4.1 モルヒネによる身体依存の形成法 24
    a. 注射法
    b. Pellet法およびslow release emulsion(SRE)法
    c. Infusion
    d. 薬物混入飼料法(drug-admixed food:DAF
  3.4.2 バルビツール酸系薬物の身体依存性試験 25
    a. Drinking(含水)法
    b. その他の方法
3.5 モルヒネの身体依存のモデルの作製と評価:実践編 025
  3.5.1 モデル作製法に関して 25
  3.5.2 退薬症候観察に関して 26
3.6 モルヒネの身体依存を検討することによる臨床への還元と新知見 026
3.7 今後の研究展開 028
3.8 おわりに 029


4 条件付け場所嗜好性[舩田正彦] 030
4.1 はじめに 030
4.2 条件付け場所嗜好性試験 030
  4.2.1 CPP法の実験手法と意義 30
  4.2.2 実験実施の留意点 32
  4.2.3 CPP法の有効活用法 32
4.3 脳内報酬系の役割 034
4.4 身体依存と CPP 036
4.5 遺伝子改変動物モデルの利用 036
4.6 薬物依存再発の評価 037
4.7 おわりに 037


5 依存性薬物の行動薬理[廣中直行]038
5.1 行動薬理総論 038
  5.1.1 行動薬理とは 38
  5.1.2 研究方法 38
5.2 本章の構成 039
5.3 各論 039
  5.3.1 アヘン類 39
  5.3.2 バルビツール類 41
  5.3.3 アルコール 41
  5.3.4 ベンゾジアゼピン系薬物 42
  5.3.5 有機溶剤 43
  5.3.6 大麻 43
  5.3.7 コカイン 44
  5.3.8 アンフェタミン類 44
  5.3.9 LSD 45
  5.3.10 ニコチン(タバコ) 45
5.4 おわりに 046



  第2部 基礎研究の展開 


イントロダクション:薬物依存の基礎研究の今後の方向性,課題と可能性,期待するところ[池田和隆] 055


6 報酬予測と意思決定の神経機構[坂上雅道] 057
6.1 はじめに 057
6.2 モデルフリープロセス 057
  6.2.1 条件付けと意思決定 57
  6.2.2 価値の生成と大脳基底核-ドパミン回路 57
  6.2.3 報酬予測とハビット形成 58
6.3 モデルベースプロセス 058
  6.3.1 行動主義と認知主義 58
  6.3.2 モデルフリーとモデルベース 59
  6.3.3 状態遷移学習とモデルベースシステム 59
6.4 前頭前野と推論 060
  6.4.1 間接的報酬予測実験 60
  6.4.2 状態遷移と報酬予測ニューロン 61
  6.4.3 推移的推論と報酬予測 62
  6.4.4 カテゴリー化と報酬予測 63
  6.4.5 情報の抽象化と推移的推論 64
6.5 2つの神経回路と向社会性 064
6.6 おわりに 066


7 遺伝子転写カスケードと神経可塑性[永井拓] 069
7.1 はじめに 069
7.2 側坐核を構成する中型有棘神経細胞 069
7.3 サイクリックAMP応答エレメント結合
タンパク質(CREB) シグナル 071
7.4 △FosB シグナル 072
7.5 核内因子-κB (NF-κB) シグナル 073
7.6 MEF2シグナル 075
7.7 HDAC5-Npas4 シグナル 076
7.8 その他の転写因子 076
7.9 神経可塑性 077


8 薬物感受性の分子生物学的基礎[西澤大輔,池田和隆] 081
8.1 はじめに 081
8.2 アルコール(エタノール) 081
8.3 タバコ(ニコチン) 083
8.4 覚醒剤 084
8.5 その他(オピオイド,コカイン,大麻,カフェイン) 085
8.6 おわりに 087


9 薬物依存と記憶――その神経機構[高野裕治] 090
9.1 はじめに 090
9.2 心理学における記憶の考え方 090
9.3 記憶の神経機構 091
9.4 海馬における情報のコード化:空間表象と選好 091
9.5 記憶を形成するために必要な海馬のシータリズム 092
9.6 薬物依存と記憶を研究するための実験課題 093
9.7 CPPにおける海馬の神経活動記録 093
9.8 CPPにおける海馬のドパミン受容体の変化 096
9.9 薬物依存における宣言的記憶ネットワークの変容 097
9.10 脳機能ネットワークへの介入方法の開発 098
9.11 薬物依存と記憶研究における今後の課題 098


10 依存症の脳画像解析[高橋英彦] 100
10.1 はじめに 100
10.2 依存症の脳研究の背景となる心理・行動学的仮説 100
10.3 依存症のstructural MRI研究 101
10.4 依存症のfMRI研究 102
10.5 fMRI研究によるギャンブル障害と物質依存との共通点 102
  10.5.1 衝動性 102
  10.5.2 報酬と間への感受性 103
  10.5.3 手がかり刺激への反応 103
  10.5.4 報酬予測時の脳活動 103
10.6 依存症におけるドパミン神経系に関するPET研究 104
10.7 依存症に対する経頭蓋磁気刺激法 106
10.8 おわりに 107



  第3部 依存・嗜癖問題の諸相 


イントロダクション  [高田孝二] 109


11 アルコール[白坂知彦,常田深雪,相澤加奈,木村永一,斎藤利和] 111
11.1 アルコール依存とは 111
11.2 合併症 111
11.3 アルコール依存と生物学 112
11.4 アルコール依存の診断基準 112
11.5 アルコール依存の現状と課題 113
11.6 アルコール依存治療の実際 114
11.7 関わり方のコツ 115
11.8 アルコール依存の薬物治療 116
  11.8.1 依存に対する薬物療法 116
  11.8.2 アルコール離脱の薬物療法 117
  11.8.3 アルコール離脱の症状別の薬物療法 119
  11.8.4 精神症状の合併に対する薬物療法 119
  11.8.5 身体症状の合併に対する薬物療法 119
11.9 アルコール依存と地域述携 119
11.10 最後に 120


12 タバコ[入江智也] 121
12.1 タバコに関連する障害 121
  12.1.1 タバコ使用障害 121
  12.1.2 タバコ離脱 121
  12.1.3 他のタバコ誘発性障害 121
12.2 タバコ使用障害に対する治療 122
  12.2.1 医学的治療 122
   a. NRT【nicotine replacement therapies】
   b. 非ニコチン製剤による治療
  12.2.2 心理学的介入 123
   a. 動機付け面接
   b. 認知行動療法
12.3 タバコ使用を維持・促進する要因 124
  12.3.1 生理的要因 125
  12.3.2 心理学的要因 125
   a. ストレス緩和効果
   b. リラックス効果
   c. 気分の転換
  12.3.3 社会的要因 126
   a. 関係性の持続・強化
   b. 社会生活の満足感の向上
12.4 タバコの多様化 127
12.5 おわりに 127


13 鎮静・睡眠・抗不安薬 [稲田 健] 130
13.1 鎮静・睡眠・抗不安薬とは 130
13.2 依存一般 131
13.3 BZ-RAs【benzodiazepine receptor agonists ベンゾジアゼピン受容体作動薬】依存の特徴 132
  13.3.1 BZ-RAsの渇望 132
  13.3.2 BZ-RAsの耐性 132
  13.3.3 BZ-RAsの脱症状 133
13.4 DSM-5における BZ-RAs 離脱の診断基準 134
13.5 離脱症状の出現頻度 134
13.6 BZ-RA5依存に関連する危険因子 134
13.7 BZ-RASによる社会機能の原害 135
13.8 BZ-RAS依存の予防・治療 135
  13.8.1 BZ-RAs O FW 135
  13.8.2 BZ-RAs依存の治療 135
  13.8.3 BZ-RAsを必要とした病患の治換が不十分である場合 136
  13.8.4 BZ-RAsに対して渇望を抱いている場合 136
  13.8.5 艇脱症状のために中止が困難となっている場合 136
13.9 おわりに 137


14 覚醒剤大麻[廣中直行] 139
14.1 化学物質使用障害と社会 139
14.2 覚醒剤 139
  14.2.1 覚醒剤の薬理 139
    a. 歴史
    b. 薬理効果
    c. 作用機序
  14.2.2 覚醒剤の乱用問題 140
    a. 歴史的変遷と現状
    b. 診断
    c. 覚醒剤乱用の背景
    d. 乱用の影響
  14.2.3 覚醒剤精神病 142
14.3 大麻 143
  14.3.1 大麻の薬理 143
    a. 歴史
    b. 薬理効果
    c. 作用機序
  14.3.2 大麻の乱用問題 145
    a. 歴史的変遷と現状
    b. 診断
    c. 大麻乱用の背景 
    d. 乱用の影響
  14.3.3 大麻をめぐる議論 147


15 「危険ドラッグ」の過去・現在・未来[和田 清] 150
15.1 はじめに 150
15.2 いわゆる「脱法ドラッグ」とは何か 150
15.3 いわゆる「脱法ドラッグ」乱用の変遷 150
  15.3.1 1回目:「マジックマッシュルーム」問題 151
  15.3.2 2回目:ラッシュ, 5-MeO-DIPTを中心とする新規精神活性物質乱用問題 151
  15.3.3 3回目:「脱法ハーブ」を中心とする新規精神活性物質乱用問題 152
15.4 「脱法ハーブ」乱用の劇的拡大 154
15.5 「脱法ドラッグ」乱用の劇的拡大理由 155
15.6 事の顛末 156
15.7 「脱法ドラッグ」問題からの教訓と
今後の課題 158
15.8 おわりに 158


16 ギャンブル[木戸盛年] 160
16.1 ギャンブル(gamble)とは 160
  16.1.1 ギャンブル行動(gambling)の定義 160
  16.1.2 ギャンブル行動の分類 161
16.2 日本のギャンブル産業の現状 161
  16.2.1 日本のギャンブル産業の市場規模と参加実態 161
  16.2.2 日本のギャンブル産業の今後 162
16.3 ギャンブル障害(gambling disorder)
とは 163
  16.3.1 ギャンブル障害の診断基準の変遷と診断基準の内容 163
  16.3.2 ギャンブル障害の有病率 164
16.4 ギャンブル障害への対策 165
  16.4.1 海外におけるギャンブル障害への対策 165
  16.4.2 日本におけるギャンブル障害への対策 165


17 インターネット[三原聡子]168
17.1 はじめに 168
17.2 ネット嗜癖のわが国の現状 168
17.3 ネット嗜癖の各国の現状 169
17.4 ネット嗜癖は依存なのか? 169
17.5 診断基準収載への動き 170
17.6 ネット嗜癖者の状態像 171
17.7 ネット嗜癖の合併精神障害 171
17.8 ネット嗜癖の治療の実態 172
17.9 韓国におけるネット嗜癖問題への
取り組みと合宿治療 172
17.10 わが国におけるネット嗜癖の対策 173
17.11 久里浜医療センターでの治療 174
17.12 合宿治療プログラム 174
17.13 ネット嗜癖の症例 174
17.14 おわりに 177



  第4部 治療と回復の取り組み


イントロダクション  [成瀬暢也] 191


18 治療・回復支援総論[成瀬暢也] 193
18.1 はじめに 193
18.2 依存症が精神科治療者から嫌われる理由 193
18.3 依存症の治療 194
    a. 治療関係づくり
    b. 治療の動機付け
    c. 精神症状に対する薬物療法
    d. 解毒・中毒性精神病の治療
    e. 疾病教育・情報提供
    f. 行動修正プログラム
    g. 自助グループ・リハビリ施設へのつなぎ
    h. 生活上の問題の整理と解決法援助
    i. 家族支援・家族教育
18.4 これまでのわが国の依存症治療の問題点 194
18.5 エビデンスに基づいた新たな依存症治療 195
18.6 海外で実践されている心理社会的治療 196
  18.6.1 動機付け面接法 196
  18.6.2 認知行動療法的対処スキルトレーニング 196
  18.6.3 随伴性マネジメント 196
  18.6.4 12ステップ・アプローチ 196
  18.6.5 コミュニティ強化と家族訓練(community reinforcement and family training : CRAFT) 196
18.7 埼玉県立精神医療センターにおける
具体的治療 197
  18.7.1 外来での治療継続:「ようこそ外来」の実践 197
    a. 調査対象
    b. 結果
    c. 考察
  18.7.2 入院治療を成功させるコツ:「渇望期」の適切な対応 198
  18.7.3 患者への動機付け:「ごほうび療法」の積極的活用 198
  18.7.4 介入ツールの積極的活用:LIFE シリーズの作成 199
  18.7.5 外来での継続した集団治療プログラムの実施:LIFE プログラムの実践 200
18.8 依存症患者の特徴を理解した基本的対応 200
18.9 物質使用障害とどう向き合ったらよいのか 201
18.10 当事者中心の依存症治療・回復支援
202
  18.10.1 患者意識調査 202
    a. 方法・対象
    b. 結果
    c. 考察
18.11 これからの依存症治療・回復支援 203
  18.11.1 ハームリダクションの考え方 203
  18.11.2 アルコール依存症の治療改革 204
    a. 治療者・支援者の意識改革:「アルコール依存症は病気であること」の徹底した啓発・教育の推進
    b. 診断名の改革:「アルコール依存症」から「アルコール使用障害」への診断名使用の変更
    c. 治療構造の改革:「これまでの中核群(重症群)」から「新たな中核群(軽症群)」を重視した治療構造への転換
    d. 治療スタンスの改革:「不寛容・直面化・矯正・強要・一律・断酒一辺倒」から「受容・動機付け・治療・協働・個別重視・飲酒量低減」への転換
    e. 人材開発の改革:「アルコール問題支援コーディネーター」の新規育成・資格化の推進
    f. 地域連携の改革:地域保険・産業保険・メンタルヘルス領域との連携システム構築の推進
    g. 家族支援の改革:「患者の回復支援目的の家族支援」から「家族自身を直接の支援対象とした家族支援」への転換
    h. インセンティブ保障の改革:予算化・資格化などのインセンティブ保障の実現
18.12 おわりに 206


19 薬物療法[宮田久嗣] 209
19.1 はじめに 209
19.2 依存・嗜癖薬物療法の治療ゴール 209
19.3 摂取欲求(渇望)の構造 209
  19.3.1 1次性強化効果(報酬効果) 210
    a. 1次性強化効果とその神経学的機序
    b. 1次性強化効果を標的とした治療薬
       ①ナルトレキソン,ナルメフェン,アカンプロサート
       ②ブプロピオン,バレニクリン
       ③ブプレノルフィン
       ④抗精神病薬
       ⑤臨床的意義
  19.3.2 離脱時の不快感 211
    a. 離脱時の不快感とその神経学的機序
    b. 離脱時の不快感を標的とした治療薬
      1) 脳内報酬系の代償性機能低下を軽減させる薬物
        ①ナルメフェン(アルコール依存)
        ②アカンプロサート(アルコール依存)
        ③ブプロピオン,バレニクリン(ニコチン依存)
        ④アリピプラゾール
        ⑤臨床的意義 
      2) 置換療法によって離脱症状を軽減させる薬物 
        ①メサドン(オピオイド依存)
        ②ブプレノルフィン(オピオイド依存)
        ③ベンゾジアゼピン系薬物(アルコール依存)
        ④ニコチン製剤(ニコチン依存)
        ⑤臨床的意義 
  19.3.3 物質や行動の報酬効果と結びついた環境刺激 214
    a. 環境刺激の2次性強化効果獲得と,その神経学的機序
    b. 環境刺激の2次性強化効果獲得に対する薬物治療
19.4 衝動性 215
19.5 おわりに 215


20 認知行動療法[松本俊彦] 218
20.1 はじめに 218
20.2 再発防止モデルの治療理念と効果 218
  20.2.1 治療理念 218
  20.2.2 治療効果 218
  20.2.3 マトリックスモデル 219
20.3 Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program(SMARPP) 219
  20.3.1 マトリックスモデルとSMARPP 219
  20.3.2 SMARPPの構造 220
  20.3.3 SMARPPワークブック 220
  20.3.4 各セッションの中核的内容 221
    a. トリガーの同定
    b. 対処スキル
    c. スケジューリング(日課の計画を立てる)
  20.3.5 SMARPP実施にあたっての工夫 221
  20.3.6 SMARPPによる介入効果 222
20.4 SMARPP プロジェクトの展開 223
  20.4.1 SMARPP の普及状況 223
  20.4.2 治療プログラムの意義とは 225
20.5 おわりに 225


21 未成年者を取り巻く薬物環境[尾崎米厚] 227
21.1 未成年者の喫煙に関する環境 227
  21.1.1 中高生の喫煙実態と家庭内の環境 227
  21.1.2 中高生の喫煙とタバコの価格との関係 229
  21.1.3 未成年者の喫煙とタバコの入手に関する環境 229
  21.1.4 中高生の喫煙を取り巻く学校環境 230
  21.1.5 未成年者の喫煙行動に影響を与える
環境要因 230
  21.1.6 未成年者の喫煙防止対策 230
21.2 未成年者の飲酒に関する環境 232
  21.2.1 中高生の飲酒実態と家庭内の環境 232
  21.2.2 中高生のアルコールの入手に関する
環境 233
  21.2.3 中高生の飲酒に関する社会的環境 234
  21.2.4 中高生の飲酒防止対策 234
21.3 未成年者のその他の薬物に関する環境 235


22 物質使用障害に伴うさまざまなリスクとその対応[森田展彰] 237
22.1 自殺リスクのある事例 237
  22.1.1 SUDと自殺の発生状況 237
  22.1.2 物質使用と自殺行動の相互関係 237
  22.1.3 SUDの自殺のリスクファクター 237
  22.1.4 対応 238
    a. 予防
    b. SUDの事例への介入・治療
22.2 家庭内の暴力のリスク 238
  22.2.1 家庭内の暴力とSUDの重複状況 238
    a. 配偶者間暴力(domestic violence:DV)とSUD
    b. 子ども虐待とSUD
  22.2.2 物質使用の問題と家庭内の暴力が
重複する機序 239  
  22.2.3 アルコール薬物問題が子どもに与える影響および世代間連鎖 239
  22.2.4 対応 239
22.3 被害体験・トラウマ体験のある事例 240
  22.3.1 SUDとトラウマ体験・PTSDの合併について 240
  22.3.2 トラウマがアルコール・薬物依存に結びつくメカニズム 240
    a. トラウマによる急性の痛みの自己治療としてのアディクション
    b. 複雑性トラウマによる認知・行動の問題としてのアディクション
  22.3.3 対応 240
    a. 安全な環境や治療関係をつくり出すこと
    b. トラウマに伴う感情・認知・対人関係の問題
    c. 過去の体験の表出と意味付け
    d. 社会へのつなぎ
22.4 妊娠・出産期のリスク 242
  22.4.1 アルコール使用障害が妊娠・出産に与える影響 242
    a. 胎児性アルコール症候群および胎児性アルコール・スペクトラム障害
    b. 流産・死産
  22.4.2 違法性薬物が妊娠・出産に与える影響 243
    a. メタンフェタミン覚醒剤)の影響
    b. 大麻マリファナの影響
    c. コカインの影響
    d. ヘロインなどのオピエートの影響
  22.4.3 対応 244
    a. 評価
    b. 予防・介入
22.5 薬物使用障害者における感染症のリスク 245
  22.5.1 薬物使用障害では、HIV/AIDSとC型肝炎をはじめとする感染症を生じることが多い 245
  22.5.2 対応 245
    a. 予防と検査
    b. HIV/AIDsやC型肝炎ウイルスに感染していた場合は治療の開始や継続を支援する
文献 246


23 司法・矯正領域における依存・嗜癖対策[原田隆之] 248
23.1 はじめに 248
23.2 依存・嗜癖と犯罪 248
  23.2.1 検挙者に関するデータ 248
  23.2.2 再犯防止への対策:法制度の改革 249
  23.2.3 再犯防止への対策:治療サービスの改革 249
  23.2.4 RNR原則 249
    a. リスク原則
    b. ニーズ原則
    c. 治療反応性原則
23.3 覚醒剤依存症治療の実際 251
  23.3.1 日本版マトリックス・プログラム 251
    a. 引き金の特定
    b. コーピング訓練
    c. 渇望へのコーピング
    d. ラプスへの対処
  23.3.2 J-MATのその他の治療要素 252
  23.3.3 覚醒剤依存症治療プログラムのエビデンス 253
23.4 性犯罪治療の実際 253
  23.4.1 性的アディクションの概念 253
  23.4.2 性的アディクションリスクアセスメント 253
  23.4.3 治療プログラム 253
  23.4.4 性的アディクション治療のエビデンス 254
  23.4.5 性的アディクションへのその他のアプローチ 254
23.5 薬物依存症に対するパラダイムシフト 255


24 社会復帰[近藤あゆみ] 257
24.1 社会復帰を目指す薬物依存症者に対する生活支援のあり方 257
24.2 薬物依存症者の生活支援を行う際の
留意点 258
  24.2.1 居住 258
  24.2.2 就労 258
  24.2.3 余暇 259
  24.2.4 家族 259
  24.2.5 ピア・サポート 260
24.3 薬物依存症者の生活支援を行う主な機関 260
  24.3.1 医療機関精神科病院) 260
  24.3.2 精神保健福祉センター 261
  24.3.3 依存症回復支援施設 262
  24.3.4 自助グループ 263
  24.3.5 保護観察所 263
24.4 薬物依存症者の社会復帰をめぐるわが国の課題 264
  24.4.1 関係機関間の連携 264
  24.4.2 差別・偏見 264


座談会[廣中直行,宮田久嗣,池田和隆,成瀬暢也,高田孝二] 271
  いま,アディクションを考える意味
  物質によらない嗜癖について
  嗜癖に至るプロセスから行動嗜癖を考える
  他の精神疾患との関連
  神経科学とアディクション
  脆弱性の問題
  治療薬の問題
  アディクションの治療とは
  今後の治療と介入
  国際的な流れの中で
  乱用対策と社会の変化
  リテラシーの問題


索引 [288-293]



[コラム]
コラム1 依存・嗜癖をめぐる用語と概念 [廣中直行] 049
    a. たかが言葉,されど言葉
    b. 薬物の場合
    c. 行動「嗜癖
    d. 現状および日本語訳の問題
  注/謝辞/文献 


コラム2 製薬会社の責務と行動薬理学研究者としての思い[森友久] 052
    a. 製薬会社の責務
    b. 行動薬理学研究者としての思い
 

コラム3 行動嗜癖の動物モデルは可能か? [廣中直行] 179
    a. 動物モデルの意義
    b. アイオワ・ギャンブリング問題
    c. 遅延報酬割引  
    d. スロットマシン
    e. 今後の展望


コラム4 基礎と臨床のクロストーク[廣中直行,宮田久嗣] 182
    a. 基礎から臨床へ
      科学の知と臨床の知
      基礎研究の意義と限界
      基礎から臨床へのメッセージ
    b. 臨床から基礎へ 
      臨床の立場
      臨床から基礎へのメッセージ
    c. まとめ


コラム5 物質と行動のアディクションは,同じ?違う?[宮田久嗣] 186
    a. 症候学からみた pros and cons
    b. 発病のプロセスからみた pros and cons
    c. 治療の観点からみた pros and cons
    d. 神経科学的観点からみた pros and cons
    e. まとめ


コラム6 依存臨床の最前線――物質依存 [小林桜児] 266


コラム7 依存症治療の最前線――グループでやめ方も生き方も学ぶ[田辺等] 268
    a. 行動嗜癖の治療に着手した理由
    b. 依存症治療の失敗からの学び
    c. ユングの指摘した精神療法の限界
    d. グループは主体的に生き直す環境を提供する
    e. 行動嗜癖の議論での懸念
    f. グループの活用を推奨する






【抜き書き】




■ 成瀬暢也 執筆「18章 治療・回復支援総論」から。
□ pp. 203-204 
 欧州の“ハームリダクション”と日本の“厳罰主義”について。なお本書では、合衆国発の“ドラッグコート”については殆ど触れられていない。

 18.11.1 ハームリダクションの考え方 
 これからの依存症治療・回復支援を考えた場合,最も重要なことは,「依存症は病気である」という正しい認識のもと,重症患者だけを特別な専門医療機関で治療している現在のシステムから,精神科医療全体で軽症の状態から治療を引き受けていくシステムへの移行である.
 欧州を中心に,最も成功している効果的な薬物政策としてハームリダクションが広がっている.ハームリダクションとは,「その使用を中止することが不可能・不本意である薬物使用のダメージを減らすことを目的とした政策・プログラム・その実践」である.薬物の使用量減少を主目的とはしておらず,薬物使用をやめることよりも,ダメージを防ぐことに焦点を当てる.薬物を使っているか否か,それが違法薬物であるか否かは問われない.ハームリダクションは,科学的に実証され,公衆衛生に基づき,人権を尊重した人道的で効果的な政策であり,個人と社会の健康と安全を高めることを目的とする.
 わが国でハームリダクションといえば,注射針の無料交換,公認の注射場所の提供,代替麻薬メサドンの提供ばかりがクローズアップされる.同時に実施される敷居の低いプライマリ・ヘルスケアの提供,積極的な啓発活動,乱用者のエンパワメントなどに力を入れていることは知られていない.
 わが国は,薬物問題に対して「ダメ.ゼッタイ.」に象徴される「不寛容・厳罰主義」を一貫して進めてきた,先進国では稀有な国である.これらは,「薬物依存症は病気」とする視点とは対極にある.臨床的には,「不寛容・厳罰主義」では治療にならないどころか,「反治療的」である.さらには,偏見や人権侵害を助長する可能性がある.
 ハームリダクションのプログラムにつながっていることが,適切な情報・相談支援や医療支援・行政サービスにつながりやすくし,薬物問題の深刻化を防ぐ,プログラムにつながり断薬へと動機付けられることも期待できる.ハームリダクション政策は,個人・社会の薬物使用による相対的ダメージを減少させる.たとえば,救急医療利用回数の減少,医療費の減少,就業率の向上,薬物目的の犯罪の減少などの成果が報告されている.
 世界の先進国もかつては厳罰主義で対応していた.しかし,それではうまくいかなかった反省に立って,大きく方向転換をしてきた経緯がある.それが米国を中心としたドラッグコートであり,欧州などを中心としたハームリダクションである.このような状況で,わが国でもはじめの一歩として「刑の一部執行猶予制度」が施行された.この制度の成否は地域での受け皿の準備によるところが大きい.この制度に精神科医療はついていけるのかが問われる.しかし、今のところその動きはみられない.
 アルコール依存症についても,ハームリダクションの考え方は有用である.飲酒問題を責めても問題は解決しない.彼らは,周囲に迷惑をかけ責められる対象かもしれないが,医療の役割は依存症の治療である.医療が罰する側に立って,家族とともに患者を責め立てることは,医療の役割の放棄である.アルコール依存症患者の飲酒をやめさせることばかりにとらわれ,「病者」に対する支援の視点が今のところ見えてこない.「患者を甘やかしてはいけない」と言われてきた所以である.批判して突き放すのではなく,飲酒をしているか否かにかかわらず,必要な支援を提供することが求められる.
 アルコール依存症患者は,さまざまな形で生活が困窮し重大な問題を抱えることが多い.その生活の支援を提供する中で,アルコール問題への介入を強制的ではなく提供していくそれは,「飲酒をやめさせる」ためのものではなく,「生活の支援」であり,「生きることの支援」である「飲酒している人にこそ支援が必要」である.わが国でハームリダクション政策を急ぎ取り入れることを提案しているのではない.このような視点こそ,医療者に必要な考えであることを強調したい.