原題:Metaphors We Live By (University of Chicago Press)
著者:George P. Lakoff (1941-)
著者:Mark Johnson (1949-)
訳者:渡部 昇一[わたなべ・しょういち](1930-2017)
訳者:楠瀬 淳三[くすのせ・じゅんぞう](1940-2009) 英語教育学。
訳者:下谷 和幸[しもたに・かずゆき](1947-)
件名:比喩
件名:修辞法
NDC:801.6 文章論.文体論.修辞学
レトリックは単なる言葉の綾ではない。それは未知の世界を、人間の理解の領域にたぐりよせる強力な武器となる。「時は金なり」「恋愛は旅である」といったメタファーは、多言を費やした説明より鮮やかに事柄の本質を照らし、人生に指針をもたらす。日々の生活はこうしたレトリックの網の目によって支えられているからこそ、“レトリック感覚”を働かせることによって切り拓かれる人生の可能性には目をみはるものがある。斬新な視点からレトリックの生態に言語的・哲学的分析を加えるとともに、背後にひそむ人間の思考や行動の構造をダイナミックに抉った知的冒険の書。
【目次】
まえがき [iii-iv]
謝辞 [v-viii]
目次 [ix-x]
凡例 [xi]
1. 生活の中のメタファー 003
2. メタファーと概念の体系性 008
3. メタファーの含意:ある面を際立たせ、ある面を隠す 012
4. 方向付けのメタファー 018
結論
〈メタファーの基盤となっている経験〉
5. メタファーと文化の一貫性 032
6. 存在のメタファー 037
存在物と内容物のメタファー
容器のメタファー
〈土地領域〉
〈視界〉
〈出来事,行為,活動,状態〉
7. 擬人化とメタファー 050
8. 換喩とメタファー 053
9. メタファー相互の間の一貫性 062
一見矛盾するメタファー
一貫性と一致性
10. さらなる例 070
11. メタファーと概念構造 088
12. メタファーと概念体系の基盤 094
13. 構造のメタファーの基盤 100
14. 因果関係の概念の基盤 111
直接手で行う操作:因果関係の原型
原型的因果関係の拡張
要約
15. 経験に一貫した構造を与える 122
経験のゲシュタルトと経験の相
概念が経験に符合するという意味
構造を与えることと下位範疇化
16. メタファーによる一貫性 133
概念の特殊化された側面
単一のメタファーにおける一貫性
単一概念における二つの側面の一貫性
17. メタファー間の複雑な一貫性 147
18. 他の概念構造理論が導く結論 161
抽象化説では説明しきれない点
同音意義説では説明しきれない点
〈強・同音意義説〉
〈弱・同音意義説〉
19. メタファーによる定義と理解 173
定義づけの対象:自然な種類の経験
相互作用的な属性
カテゴリー化
要約
20. メタファーと形態の意味 187
形態が増せば内容も増す
近接は影響力の強さ
自己中心の方向づけ
メタファーによる文法上の一貫性
〈道具は友達である〉
〈Withが二つの意味をあらわす理由〉
〈言語の「論理〔ロジック〕」〉
結論
〈意味の微妙な差異〉
〈言語形態の規則性〉
21. メタファーが創る新しい意味 203
22. メタファーが創る新たな類似性 215
23. メタファー,真実,行動 226
24. メタファーと真実 230
真実論に対する関心
日常生活における真実の重要性
真実における投影の役割
真実におけるカテゴリー分類の役割
単純な文を真実として理解する
常套的メタファーを真実として理解する
新しいメタファーと新しい真実
状況の理解――要約
〈直接即時の理解〉
〈間接的理解〉
〈真実は理解に基づいている〉
経験主義者による真実論の本質
「客観的真実」論と理解
25. 客観主義神話と主観主義神話 263
文化による選択
客観主義という名の神話
主観主義という名の神話
メタファーに対する憂慮
第三の選択:経験主義論者による総合
26. 西洋哲学と言語学における客観主義神話 276
客観主義神話に対する筆者たちの挑戦
スタンダードな意味の理論の客観主義
〈意味は客観的である〉
〈意味は人間から独立して存在する〉
〈人間や人間による理解をぬきにして言葉を世界にあてはめる〉
〈意味に関する理論は真実に関する理論に基づく〉
〈意味は用法と無関係である〉
〈意味は構築的〔コンポジショナル〕なものである――構築ブロック理論〉
〈客観主義は人間による理解を抜きにした存在論的相対性を認める〉
〈言語表現は客体である:客観主義言語学の前提〉
〈文法は意味や理解とは無関係である〉
〈客観主義者のコミュニケーション論:一種のメタファー〉
〈客観主義者は理解をどのように説明するか〉
27. メタファーと客観主義神話の限界 295
客観主義者による常套的メタファーの説明
客観主義者の説明の間違い
〈類似性に基づく観方〉
〈客観主義者の怠慢:「それはわれわれの研究対象ではない」〉
〈客観主義哲学は人間の関心のあり方を説明するには不適切〉
〈客観主義哲学以外の客観主義的モデル〉
要約
28. 主観主義神話の不適切さ 311
29. 経験主義者の見解:古い神話に新しい意味を付与 314
経験主義が保持する客観主義の関心事
経験主義が保持する主観主義の関心事
30. メタファーと理解 318
コミュニケーションと相互理解
自己に対する理解
儀式
審美的経験
政治
あとがき [329-330]
参考文献 [331-332]
訳者あとがき(昭和60年12月1日 渡部昇一) [333-335]