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『公共経済学 第2版』(常木淳 新世社 2002//1990)

著者:常木 淳[つねき・あつし](1959-) 公共経済学、 法の経済分析。
NDC:341 財政学.財政思想


『公共経済学 第2版』 - 新世社


【目次】
編者のことば(竹内 啓) [/]
第2版へのまえがき(2001年9月吉日 常木 淳) [i-iv]
まえがき(1990年10月ドイツ統一の日 常木 淳) [v-viii]
目次 [ix-xi]


1 厚生経済学の基礎 001
1.1 交換の利益 003
1.2 厚生経済学の基本定理(1) ――パレート最適な資源配分 008
1.3 厚生経済学の基本定理(2) ――市場競争の効率性 015
1.4 社会的余剰の定義とその意義 021
1.5 権利・効率・厚生 028
1.6 市場の失敗 031


2 公共財 035
2.1 公共財の概念 036
2.2 公共財の最適供給 039
2.3 公共財の供給メカニズム (1)――自発的供給 042
2.4 公共財の供給メカニズム (2)――交渉による供給 045
2.5 公共財の供給メカニズム (3)――リンダール・メカニズム 049
2.6 公共財の供給メカニズム (4)――ピヴォッタル・メカニズム 054
2.7 公共財の供給メカニズム (5)――民主的投票による供給 060
2.8 地方公共財 066


3 外部効果 073
3.1 外部性と所有権 075
3.2 外部効果による市場の失敗 076
3.3 相互干渉 079
3.4 税金・補助金政策 084
3.5 排出権取引 087
3.6 混雑外部性と共有地の悲劇 089


4 産業の公共的規制 095
4.1 規模の経済性と不完全競争 097
4.2 限界費用価格形成原理 099
4.3 長期限界費用価格形成と公企業の投資計画 103
4.4 企業数の規制 106
4.5 次善の原則 109
4.6 非線形価格 111
4.7 他市場の歪みと次善の規制 115
4.8 市場の成果 116
4.9 コンテスタビリティ理論の限界と誘因両立的規制 120


5 費用便益分析 123
5.1 採算性の原則 125
5.2 指数基準 126
5.3 社会的余剰原則 129
5.4 異時点間に渡る費用便益の評価 131
5.5 次善の経済における計画評価 137
5.6 次善の小規模計画評価 139
5.7 社会的割引率 142
5.8 公共財の社会的費用 144
5.9 不確実性下の計画評価 145
5.10 計画評価と富の再分配 148


6 租税の経済学 151
6.1 租税の効果と厚生費用 153
6.2 租税の種類と等価性 (1) ――静態的経済 157
6.3 固定資産への課税 161
6.4 租税の種類と等価性 (2) ――通時的経済 164
6.5 ラムゼイ・ルール (1) ――定式化 168
6.6 ラムゼイ・ルール (2) ――解釈 173
6.7 税制の漸進的改革 176


7 効率と公平 179
7.1 社会的公平とは 181
7.2 所得分配の公平 187
7.3 資源配分と分配の公平 191
7.4 公共財・外部性としての所得再分配 193
7.5 社会保険社会福祉 195
7.6 効率か公平か (1) ――線形所得税のケース 197
7.7 最適線形所得税 201
7.8 効率か公平か (2) ――非線形所得税のケース 204
7.9 個別物品税の導入 207
7.10 所得税か消費税,あるいは支出税か? 209
7.11 税制改革の展望 211


参考文献 [215-219]
練習問題解答 [220-227]
事項索引 [228-232]
人名索引 [233]




【抜き書き】


・「初版へのまえがき」から、財政学との異同の説明。

  公共部門の経済学としては他に財政学という重要な分野が存在するため,この両者の区別をしておくことは重要であると思われます。歴史的沿革を述べるならば,公共経済学は財政学よりも新しい研究分野であり後者の生成発展したものといえます。すなわち,古典的財政学においては,定められた政府支出を調達するためにどのような手法を用いるべきか,の考察が主たる関心の対象でありました。このことは,財政学の元々の英語名であるPublic Financeの本来の意味からも明らかでしょう。またこのような古典的財政学の立場に対して理論的根拠を与えているのは〔……〕アダム・スミス以来の古典派経済学の主張であったことも見易いところでしょう。
  これに対して,20世紀にはいり景気循環・社会的貧富の格差・環境破壊なと市場経済の限界が明確に認識されるに及び,これらの問題を是正し市場経済を補完するうえで政府活動により積極的な役割を望む考え方が台頭してきました。この考え方を受けて,当時発展しつつあった新しい経済理論を駆使して古典的財政学の拡張と発展に努めたのが,マスグレイヴ,シャウプら20世紀を代表する財政学者たちでした。〔……〕財政学者であるヨハンセンが,自らの財政学の教科書の題名としてPublic Financeの代わりにPublic Economicsを採用したのも,このような学問の変化・発展にもとづいていたのであり,その後公共部門の経済学をあらわす言葉として市民権を獲得しました。「公共経済学」はこの Public Economics の訳語です。
  しかしながら,このような区別はあくまでも語源に即したものにすぎず,今日では財政学と銘打った教科書でも政府支出の経済学的意義の考察に十分なスペースを割いています。そこでこの両者を区別するにあたって異なる基準が必要ですが,これまで日本で公刊されてきた公共経済学の教科書においては,ミクロ経済学,とりわけ厚生経済学の体系的な応用によって政府財政活動の経済厚生上の意義を考察するという執筆方針がとられているようです。
  本書においてもこの方針を採用したいと思います。特に本ライブラリでは,すでに井堀利宏教授による優れた財政学の教科書が公刊されているため,財政活動の制度的記述と財政理論のマクロ経済学的側面についてはそちらを参照していただくこととし,本書はもっぱらミクロ経済学厚生経済学の視点から議論を展開することとします
〔……〕もうひとつの執筆方針として通常の「財政学」に関する包括的・網羅的なテキストであることをあまり意図していません〔……〕。つまり,対象とともに方法に重点が置かれているわけで,普通は抽象的に論じられることの多いミクロ経済学を現実的な問題に応用する手法を提示することによって〔……〕自分の頭で経済問題を分析する能力を養っていただくところに本書のねらいがあります。ただし,これまで日本で刊行されてきた『公共経済学』の教科書のトピックの大部分はカヴァーされていることを一言申し添えておきます。



・地方政府の意義(p. 70)について。Charles M. Tiebout(1924–1968)のモデルを批判的に検討したあとの段落。

 これまでのティボーの理論の説明から明らかになったように、公共財を分権的に地方レベルで供給することには3通りの利点があります。第一に、生産上効率的な利用者人口が一国の人口より小さいタイプの公共財を地域的に分けて供給することで、より生産効率的に供給する利益があります。第二に、中央政府レヴェルの画一的公共材供給に替えて、いろいろの地方にそれぞれ特色のある公共財のメニュー(とそれに見合った税負担)を提供して〔……〕公共財を選択できることの利益が考えられます。もちろん、消費者のタイプほど地方政府の数が多いわけではありませんから、このような利益がパレート最適な資源配分へ直結するわけではありませんが、中央政府が全く一律な公共財レヴェルを全国民に強制するよりは、おそらくはるかに高い経済厚生が実現できることと思われます〔……〕。第三に、地方財政を維持する上で、少なくとも一定限度の住民の数を確保することは必要不可欠ですが、住民確保のための地方政府間競争は、結果として地方政府に対して自らの提供する公共財の質を高めたり、より低コスト、低税率で公共財を供給するためのインセンティブを与えるものと考えられます〔……〕。これに加えて、地方分権の促進は、前節(引用者注:2.7節)で説明した直接民主制と類似した便益をももちえます、すなわち中央政府よりも 住民のニーズを正確に反映するサーヴィスの供給が可能であり、また、地域住民の政治課題への参加を促進し、政治意識を高める効果があるでしょう。