著者:岩田 規久男
著者:飯田 泰之
装丁:山崎 登
装画:宇治山 哲平[うじやま・てっぺい](1910-1986) 「童」(1972年)
【目次】
まえがき(2006年1月 岩田規久男, 飯田泰之) [i-iv]
本書のねらい
統一的な視点で解説
3つの政策をバランスよく解説
日本経済がより深く理解できる
目次 [v-xiii]
第1章 経済学と経済政策の基礎理論 001
1 経済政策のための経済学入門 002
経済用語の基礎知識……002
経済学は稀少性を扱う……004
経済学の登場人物とその行動原理……004
裁定取引……007
2 グラフ・データに関する用語 009
平均と限界……009
傾きと弾力性……010
物価……011
名目と実質……012
3 基本としての需給分析 015
需要曲線と供給曲線……15
需給均衡……16
4 マクロ経済とは――国民経済計算の概念019
GDP統計……20
三面等価定理…21
名目GDPと実質GDP.....22
5 経済政策の基礎理論 023
資源配分の効率性……23
競争均衡の望ましい性質——直観的な説明....27
余剰分析による競争均衡の望ましさの証明…28
競争市場の費用最小化メカニズム……28
ミクロ経済政策の目的・評価基準——効率的な資源配分……32
所得分配の公平とは……33
経済学と所得分配の公平性基準…34
マクロ経済政策の目的と資源配分の効率性……35
マクロ経済政策と所得分配の公平……36
独立した複数の目的には,独立した複数の手段を……38
経済政策の割当問題……38
ウォーム・ハートとクール・マインド……40
経済政策の課題と3つの経済政策……41
練習問題 042
第I部 ミクロ経済政策
第2章 市場への政府介入 046
1 競争市場と税・補助金政策 046
個別物品税と効率性46
需要の価格弾力性と個別物品税の非効率性の程度……49
供給の価格弾力性と個別物品税の非効率性の程度.....51
補助金の非効率性 52
2 競争市場における規制 055
価格の上限規制の非効率性——家賃規制を例に……55
ガソリン価格の上限規制……58
価格の下限規制の非効率性――最低賃金規制を例に……60
参入規制の効果……63
3 保護貿易政策の評価 067
自由貿易の利益……67
輸入関税による総余剰の減少.….70
輸入制限規制の非効率性……71
生産者補助金と貿易の利益の減少……72
4 市場の失敗と産業政策の評価 073
市場の失敗……73
産業政策とはなにか……74
動学的規模の経済……75
外部性と産業政策……76
マーシャルの外部性と産業政策……78
政府の失敗の可能性と直接投資……79
5 戦後日本の高度成長と自由競争 080
競争を促進した貿易の自由化…81
夢の「所得倍増計画」の実現....82
練習問題……83
第3章 公益事業と競争政策 085
1 自然独占と規制 085
自然独占とは 85
規模の経済の形式的表現……87
範囲の経済と費用の分加性.……87
自然独占の非効率性と市場の失敗……88
限界費用価格規制と損失補填……91
平均費用価格規制……93
総括原価方式と公正報酬……94
公正報酬率規制の相反するインセンティブ….…95
公正報酬率規制と審査費用の増大……96
2部料金制……97
所得分配に配慮した2部料金制……97
2 内部非効率問題とインセンティブ規制 098
インセンティブ規制とは……98
免許入札制の導入とその有効性……99
ヤードスティック規制の導入……101
プライスキャップ規制(価格上限規制) 103
3 公益事業の規制緩和と民営化 105
需要の増大と参入規制の緩和……105
技術革新と参入規制の緩和……107
電力の自由化……108
国営企業の民営化……109
民営化と規制緩和の効果……110
規模の経済の存在と接続料金問題.....111
ユニバーサル・サービスとクリーム・スキミング問題 112
練習問題……114
第4章 外部性と公共財 116
1 外部性と市場の失敗 116
外部性とは......116
外部性が存在するときの市場の失敗……118
汚染損害額の補償による外部性の内部化……121
権利配分とコースの定理……122
コースの定理と取引費用……124
環境税による解決……125
汚染者に対する補助金による解決……127
最適な環境税の課税方式……128
環境税の長期的効果……130
環境税は最少の費用で最大の環境改善効果を発揮する……133
環境税の環境改善技術開発効果……136
最適な環境税率……137
汚染物質排出権制度 ......139
排出上限規制と排出権の売買……141
2 公共財の供給
公共財と消費の非競合性……143
公共財と消費の非排除性……144
私的財,純粋公共財,準公共財……144
外部経済としての消費の非競合性と無料の供給……145
消費の排除可能性と公共財……146
消費が競合しない財の有料供給……148
公共財の最適供給の条件 149
公共財の費用・便益分析と費用負担…151
地域公共財の足による投票……152
練習問題
第5章 情報の経済学と経済政策 157
1 不完全情報 157
不完全情報下の選択基準としての期待効用仮説……158
危険回避行動・愛好行動の問題点……162
危険回避度と保険需要……162
危険中立者と保険供給……164
危険回避者と生命保険・損害保険……165
リスク・プールと保険供給……166
2 情報の非対称性 167
逆選択隠された情報の問題……168
逆選択への市場の対応...... 169
モラルハザード――隠された行動の問題……170
モラルハザードへの市場の対応……172
3 不完全情報・非対称情報下の経済政策 172
経済政策としての情報開示……173
プール不可能なリスクと公的供給……174
情報の非対称性と参入規制・需給調整……175
情報の非対称性と公的供給……177
預金保険と決済システムの安全性……179
有限責任制と危険愛好行動…… 183
4 金融市場と情報の経済学 185
自己資金と外部資金……186
非対称情報の問題……188
純資産と担保融資……189
政策金融の役割……190
練習問題……192
第II部 マクロ経済政策
第6章 成長政策の理論と課題
1 経済成長とマクロ生産関数 196
マクロ生産関数……197
経済学における短期と長期……197
1人当たり生産量……198
2 新古典派成長理論 201
資本の蓄積……201
投資の源泉としての貯蓄……201
長期定常状態の決定要因……204
貯蓄率上昇のための政策……208
人口成長の抑制……211
3 収束論と発展的理論 213
経済成長率と収束論…213
先進国の地域間格差の収束……214
格差はなぜ維持されるのか…216
低位均衡としての低開発……217
内生的成長モデル....…220
4 技術進歩と経済成長 221
ソロー残差……222
ソロー残差の注意点.....223
長期の経済成長の要因......224
技術進歩促進のための政策……225
練習問題.……228
第7章 安定化政策の基礎と財政・金融政策
1 安定化政策の必要性 230
リスク回避度と安定化……231
不況と資源の不完全利用…232
経済厚生と引締政策……234
成長政策を支援する安定化政策…235
2 IS-LMモデルの導出 236
財市場の均衡と在庫……237
消費の決定要因…238
投資の決定要因 ......239
IS曲線の導出……240
資産市場の均衡と貨幣...243
LM曲線の導出…245
IS-LMモデルにおける実質GDPの決定……247
3 財政政策とその効果 249
自動安定化装置としての財政システム……249
フィスカル・ポリシーとIS-LMモデル……252
政府支出と減税の違い…254
財政政策の有効性…256
4 金融政策とその効果 259
金融政策の手段……260
金融政策とIS-LMモデル……262
金融政策の有効性……263
5 伝統的モデルの拡張と財政政策の効果に対する批判 265
政府支出の財源と乗数……266
恒常所得仮説……269
乗数効果への根本的批判——公債の中立命題……271
練習問題 272
第8章 インフレ・デフレと失業 274
1 個別市場価格の決定 274
フローとストックの均衡価格……274
財の相対価格の硬直性……278
実質賃金の硬直性....279
予想実質利子率の硬直性……280
名目価格の硬直性……281
2 物価水準の決定 282
貨幣数量説……283
予想物価水準と不十分な価格調整……284
インフレ率の決定……285
3 物価の変化と労働市場 287
フィリップス曲線……287
失業の定義……289
ケインジアン的解釈……291
新古典派的解釈……292
予想とフィリップス曲線……295
インフレと失業の経済厚生……300
4 物価の変化と金融市場 302
債務者利得と債権者利得……302
非対称情報とデット・デフレーション……303
名目利子率の下限問題……306
価格伸縮性と経済の安定 ......308
政策効果のスピード……309
5 インフレ・デフレの所得再分配効果 310
労働市場……310
金融・資産市場……312
6 金融政策は何を目的とすべきか 313
失業のコスト……313
物価変動のコスト……314
金融政策の目的……316
練習問題……316
第9章 安定化政策の現代的課題 318
1 ラグ(遅れ)と経済政策 319
政策ラグと安定化……319
財政政策・金融政策のラグについて……320
裁量政策の不安定化効果......321
2 動学的思考と経済政策 322
金融政策における動学的非整合性……322
ディスインフレーションの問題点……324
コミットメントとインフレーション・ターゲッティング 327
3 財政の維持可能性と財政再建 330
政治的バイアスとソフトな予算制約……331
財政赤字の問題点......332
公債の負担とは……333
リカード・バローの中立命題と公債の負担……338
財政破綻の定義と条件……339
政策の継続性と効果……345
財政危機の予防と解決……346
4 金融政策ルールと安定化 347
IS-MPモデル……347
予想実質利子率ルールと安定化……350
受動的金融政策の不安定化効果……352
テイラー・ルール……353
マッカラム・ルール……355
練習問題……357
第II部 所得再分配政策
第10章 所得再分配政策の基礎理論 362
1 所得分配の公平性と資源配分の効率性 362
市場の所得分配……362
貧富を決めるもの……364
効率性と公平性のトレード・オフ……365
2 所得再分配政策の基準 366
結果の平等……366
負の所得税……367
貨幣による分配と財・サービスによる分配……369
「ただのランチ」の公共施設……372
価値財の分配….…373
価値財・負の価値財と自由……374
規制や産業保護による所得再分配……375
財・サービスと企業・産業保護による分配から貨幣による分配へ……375
所得再分配政策の原則……377
3 機会の平等と資源配分の効率性 377
機会の平等と教育……377
教育の外部経済効果……378
教育と資本市場の不完全性……379
教育切符制度……379
機会の平等と相続税……380
練習問題……383
第11章 税制の効率性と公平性 385
1 包括的所得税の理念 385
2つの公平性基準……385
包括的所得税の問題点……386
括的所得税の貯蓄に対する2重課税……387
2 支出税の考え方 391
支出税——貯蓄の2重課税を避ける課税……391
賃金税……393
支出と賃金税の同等性……394
包括的所得税,支出,および,賃金税の評価…394
税率の効率性と公平性……396
3 日本の所得税と消費税の評価 398
日本の所得税の評価……398
日本の(賃金)所得税の評価……399
課税上のキャピタル・ロスの扱い…401
消費税の評価……401
練習問題……403
第12章 年金と医療政策 405
1 社会保険制度の基礎理論 405
保険とリスク・プールによる所得再分配……405
保険原理と財政原理の違い……406
社会保険制度の種類……407
2 医療保険と医療政策 408
日本の医療保険制度……408
医療保険への公的介入の根拠……408
医療費の現状……410
医療保険のモラル・ハザードとその対策……410
根拠に基づく医療……413
医療情報の開示……414
3 公的年金の諸問題 416
年金を公的に供給する根拠……416
積立方式と賦課方式……417
世代間の不公平を生む少子・高齢化社会における修正賦課方式……418
なぜ,修正賦課方式が採用されたのか……419
修正賦課方式の問題の根源……420
積立方式への移行……421
日本の修正賦課方式の世代内不公平……426
基礎年金をすべて税金でまかなう案....427
練習問題……428
参考文献 [429-431]
索引 [432-440]
【コラム】
価格以外の方法での割り当ては非効率と不正の温床……064
打算的行動と自動車事故……171
ハロッド・ドーマーモデル……210
1990年代日本のTFP……226
在庫循環の理論……250
短期マクロ計量モデルと政策効果……266
NEET 問題と経済政策……298
合理的予想形成への誤解……300
実証分析手法の発展……329
主要国のドーマー条件と財政状況……344
保険者の医療機関選別機能は働くか……415