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『「女ことば」はつくられる[未発選書]』(中村桃子 ひつじ書房 2007)

著者:中村 桃子[なかむら・ももこ](1955-) 
装丁・組版:向井 裕一[むかい・ひろかず](1957-) グラフィックデザイン、デジタル・パブリケーション。glyph。
NDC:801.03 言語学 >> 言語社会学.社会言語学
NDC:814.9 日本語 >> 語彙 >> 女房詞.遊里語


「女ことば」はつくられる


【目次】
目次 ([iii-viii])
はじめに [001-012]


序章 「女ことば」に対する二つのアプローチ 013
1 本質主義・進化論的アプローチ 013

2 本質主義・進化論的アプローチの問題点 016
  女房詞は「女ことば」の起源なのか
  多様に異なる女の言語行為
  「女ことば」本質主義の否定
  女の言葉づかいは「最近」乱れたのではない

3 構築主義イデオロギー的アプローチ 024
  「構築主義」のジェンダー
  「言語イデオロギー」とは何か
  「言語イデオロギー」の四つの特徴
  「女ことば」イデオロギーと言語行為の関係――資源と制約
  「女ことば」イデオロギーの構築――「ついて語る」言説とフィクション
  メタ言語的実践
  本書の目的――「女ことば」の歴史的形成過程

注 040


第一部 規範の対象としての女の言葉づかい 041


一章 「女の話し方」 イデオロギーの創生
1 鎌倉・室町時代の女訓書 044

2 江戸時代の女訓書 046
  初期の女訓書
  苗村丈伯〔なむらじょうはく〕『女重宝記〔おんなちょうほうき〕』(元禄五年 1692)
  後期の女訓書
  消息型

3 「女の話し方」イデオロギー ――管理・支配されるべき女と言語の関係 057
  「女の話し方」イデオロギーが言語行為に与える影響
  「つつしみ」に変化する支配

注 061


二章 「女房詞」の規範化――「女の話し方」に回収される女の創造的な言語行為
1 女房詞を示す言説 064

2 女房詞に対する批判 065

3 高い地位を表象する女房詞――メディアが与えた価値 067

4 男が使う女房詞 073

5 男は女房詞を使うなという言説 077

6 規範となった女房詞――辞書・女訓書 080
  『日葡辞書』から『日本大文典』へ――女房詞は女の言葉
  女房詞を採集した女訓書――女房詞は女の規範
  規範にされた女の創造的な言語行為

注 089


第二部 ジェンダーと「国語」――明治の国民国家成立と「女ことば」 091
  家族国家観
  ジェンダー化された国民化


三章 「男の国語」の創生
1 言文一致論争が問題にしなかった言葉の性差 098
  性差に言及しない言文一致主義者
  認識されていあた言葉の性差
  言文一致主義者の良妻賢母主義

2 「男子の標準語」の創生――「国語」にはジェンダーがあった 104
  語られずに達成された「男の国語」

注 108


四章 「女の話し方」 イデオロギーの完成
1 江戸時代の教訓を増幅する女訓書 111

2 女訓書において「女の話し方」 イデオロギーを維持するために使われた論拠 111
  男女の権利は自ずから異なる
  天皇の臣民としての女の言葉づかい――賢母の言語教育
  女の言語能力に対する批判――良妻賢母に求められる能力

3 修身教科書において「女の話し方」 イデオロギーを維持するために使われた論拠 119
  女の言葉づかいに対する特別な規範
  天皇の臣民としての言葉づかいの規範
  「言葉をつつしめ」から「言うべき時は言え」へ
  女の言語行為に対する規範・ステレオタイプ・批判

注 126


五章 「女学生ことば」の構築――セクシュアリティに回収される女の創造的な言語行為
1 服装に見る「女子学生」から「女学生」への変遷 128

2 性別化――「書生言葉」の否定 134

3 選択――「てよ・だわ言葉」と西洋語を選んだ言文一致小説 138
  女子学生の言葉づかいに対する批判
  女子学生の多様な言葉づかい
  言文一致小説家が選択した「てよ・だわ言葉」

4 否定――〈軽薄さ〉との結び付き 145
  女が使う西洋語

5 セクシュアリティー化――「てよ・だわ言葉」から「女学生ことば」へ 149
  「てよ・だわ言葉」の普及
  性の対象物となった女子学生
  セクシュアリティの「女学生ことば」
  標準語のセクシュアリティ

6 「女学生ことば」という言語イデオロギー 158
  セクシュアリティのジレンマ
  「改訂女学生ことば」

7 指標性の構築――「ジェンダー化された国民化」と女の創造的言語行為 162
  同時に作り出された「女学生ことば」と「女学生」
  「ジェンダー化された国民化」と「女学生ことば」
  セクシュアリティに回収される女の言語的創造性

注 167


六章 「国語」の男性化――「内なる他者」としての女子国民
1 メタ言語的実践としての口語文典・国語読本 171
  国語学者が制定した「国語」
  国語科の設立と口語文の採用
  国語学者メタ言語的実践

2 女の言語要素の構築と排除 177
  文典に表記されない男性性
  例外として表記された女性性

3 「書生言葉」の「国語」への採用「女学生ことば」の排除 180
  「女学生ことば」と「書生言葉」
  口語文典における「書生言葉」と「女学生ことば」
  新保磐次の『日本読本』
  国語読本における「書生言葉」と「女学生ことば」
  国語読本における良妻賢母読み物の採用

4 「国語」の創生とジェンダー 189
  反復するジェンダー
  国民化と言語イデオロギー
  女性化された言語イデオロギーが支える「国語」の男性性
  「内なる他者」としての女子国民
  「国語」・男性性・言語要素の結び付き

注 196


第三部 女の国民化と「国語」――近代総力戦の「女ことば」 201


七章 天皇制国家の伝統となった「女ことば」――植民地支配の正当化 
1 「女ことば」の起源は女房詞と敬語である 204
  天皇制と女房詞
  世界に誇る日本語の敬語
  起源の捏造・伝統の創造

2 日本の誇りとしての「女ことば」 211

3 「国語」の守護者としての女子国民――天皇制国家の伝統の継承者 212
  国語の教師としての女子国民
  国語の教育をおこたる女子国民
  皇国臣民の「国語」

4 植民地の「国語」と「女ことば」 218

注 221


八章 「ジェンダー化された国語」の創生ジェンダーが担う近代と伝統の相克
  総動員体制と歓迎された「女の国民化」
  「銃後の守り」と家族制度
  「女の国民化」と「国語」のジェンダー

1「女ことば」を標準語の周縁に位置付ける 228
  男の言語を標準口語の基準とする
  女の言語を例外とする

2 「国語」のジェンダー化 234
  言葉づかいのジェンダー
  言語要素のジェンダー
  「国語」になった「女学生ことば」

3 国語読本によることばの性差の教授 244
  一人称詞における性差の教授
  文末詞と感嘆詞における性差の教授
  「ジェンダー化された国語」と家父長制

4 「女ことば」と女の国民化 255
  天皇制・家父長制の伝統を担う「女ことば」
  ジェンダーが担う近代と伝統の相克
  変化が許されない「女ことば」

注 262


第四部 「女ことば」の脱政治化・本質化「女らしさ」の戦後 265


九章 自然な「女らしさ」の象徴となった「女ことば」
1 「女ことば」をめぐる言説の闘争 268
  男女の不平等を生み出す「女ことば」
  女の発言を妨げる「女ことば」

2 「女ことば」本質化の言説 271
  「先天的女らしさ」に基づく「女ことば」
  「先天的女らしさ」の矛盾
  社会的平等と生物学的性差を区別する
  社会的な「女ことば」と自然な「女ことば」
  「女ことば」批判に対抗して生まれた本質化

注 280


一〇章 「ジェンダー化された国語」の再生産 天皇制からの切り離し
1 敗戦・占領と無縁だった文法書 283

2 天皇制国家の伝統から切り離された「女ことば」 285
  脱「女房詞起源論」
  脱「天皇制国家の伝統観」
  「女ことば」四つの特徴の維持
  「敬語と女ことば」の維持

3 「墨ぬり教科書」における「国語」の性差の教授 290
  「墨ぬり教科書」とは
  教育における男女平等
  国語の性差を教え続けた「墨ぬり教科書」

4 国語教科書における「国語」の性差の教授 293
  一人称詞における性差の教授――「わたし」と「ぼく」
  文末詞における性差の教授

5 米国占領による民主化ジェンダーの本質化 301
  国語学者と人権意識
  「女ことば」を残したかった知識人
  日本人のよりどころとしての「女ことば」
  家族制度を破壊する男女平等
  ジェンダーの本質化

注 310


まとめ――ジェンダー化された言語イデオロギーを超えて 312


参考文献 [324-342]
あとがき(二〇〇七年二月 中村桃子) [343-347]
索引 [349-351]