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『立憲主義の政治経済学』(藪下史郎[監修] 川岸令和[編著] 東洋経済新報社 2008)

監修者:藪下 史郎[やぶした・しろう]
編著者:川岸 令和[かわぎし・これかず]
執筆者:Stephen Holmes
執筆者:Roger M. Smith
執筆者:Bruce Ackerman
執筆者:河野 勝
執筆者:広瀬 健太郎
執筆者:若田部 昌澄
執筆者:阪口 正二郎
執筆者:棟居 快行
執筆者:後藤 玲子
執筆者:西原 博史
訳者:青山 豊
訳者:飛田 綾子
NDC:323.01 憲法学.国法学.比較憲法


【書誌情報】

出版社:東洋経済新報社
ISBN:9784492211748
旧ISBN:4492211748
Cコード:C3031
サイズ:A5判 上製
頁数:256
発行日:2008年03月22日
在庫:在庫切れ
定価:4,104円(税込)
近年、ゲーム理論などの分析道具の発達により、「憲法とは何か、何であるべきなのか」に関する議論も深化している。本書は、そういった最先端の憲法論の議論を集約した論文集である。


立憲主義の政治経済学 | 東洋経済STORE


【目次】
はしがき(2008年2月 藪下史郎) [iii-iv]
目次 [v-viii]


序章 立憲主義の多角的理解に向けて[川岸令和] 001
謝辞/参考文献 009


  第I部 9.11後の立憲主義

第1章 憲法は考える?[Stephen Holmes/河野勝] 013
1. 政治的前置き 013
2. 可謬性 vs. 暴政 015
3. 権利に焦点を定める立憲主義理論の欠点 017
4.(権)力の構築[コンスティチューション] 020
5. 意思決定をいかに最善に体系化するか 022
6. 公的集会の持つ認知的機能 025
7. 『ザ・フェデラリスト』の認知論 027
8. 近視眼病 029
9. 認知なき自由はありえない 032
10. 結論 037
訳者注 038


第2章 立憲主義と民主的責任:テロとの戦いに潜むさまざまな難題[Roger M. Smith/青山豊] 039
1. 自由を追求するための新しい戦争と“国土安全保障”の再編 042
2. 市民的自由を保護する一方でテロを防止する 062
後記 073


第3章 次のテロ攻撃の翌朝に[Bruce Ackerman/飛田綾子] 077
1. 問題提起 077
2. 緊急事態の憲法の全体像 080
3. 緊急事態の憲法立法府・執行府の果たす役割をめぐって 088
 3.1 政治的憲法 088
 3.2 段階的特別多数決制(The Supermajoritarian Escalator) 089
 3.3 少数派政党による情報の統制 094
 3.4 緊急権への制約 099
   3.4.1 緊急事態宣言のための最低基準の定義
   3.4.2 政治的自由の保護
 3.5 緊急権の範囲の問題 106
   3.5.1 通常の状態の再定義
   3.5.2 二つの危険
補足 110


  第II部 立憲主義とは何か

第4章 立憲主義ゲーム理論的分析[河野勝広瀬健太郎] 115
1. はじめに 115
2. 均衡としての立憲主義 117
3. 立憲主義というパズル 120
4. 立憲主義ゲーム 125
 4.1 基本構造 125
 4.2 解法 128
 4.3 解釈 129
5. 討議と展望 132
参考文献 137


第5章 経済学における三つの立憲主義的契機[若田部昌澄] 139
1. 問題と視角 139
2. 第1の契機:公共選択理論 141
3. 第2の契機:経済学における二つの情報革命 145
4. 第3の契機:行動経済学 151
5. 結語 155
参考文献 156


第6章 テロという危機の時代における「立憲主義」の擁護[阪口正二郎] 161
1. 立憲主義と民主主義の相克 161
 1.1 「足枷」としての憲法 161
 1.2 多数者に対する「足枷」としての憲法 163
 1.3 「立憲主義」に対するテロの挑戦 164
2. 積極的立憲主義 166
 2.1 新しい立憲主義の擁護論 166
 2.2 自由を可能にする主権 168
 2.3 民主主義を可能にする立憲主義 170
 2.4 認知的立憲主義 174
3. なぜ積極的立憲主義または認知的立憲主義なのか 174
参考文献 179


  第III部 立憲主義の諸相

第7章 「小さな政府」の憲法学[棟居快行] 185
1. 問題の所在 185
2. 政治の語用における「小さな政府」 186
 2.1 官から民へ 186
 2.2 55年体制から二大政党制へ 187
 2.3 「福祉国家」から「安全配慮国家」へ 187
 2.4 「行政の法化」と「規制緩和」 188
 2.5 公務員減らしとアウトソーシング 189
 2.6 グローバル化への追随と主権国家の凋落 190
 2.7 「国家」から「政府」へ 191
 2.8 小活 192
3. 憲法学における「小さな政府」論 192
 3.1 古典的自由主義とその亜種 192
 3.2 新自由主義憲法学 194
4. 「小さな政府」論のゆくえ 196
参考文献 197


第8章 公共サービスと自由:教育をめぐる平等と選択のジレンマを手がかりに[西原博史] 199
1. 教育を取り巻く規範的言説の今 199
 1.1 学校の競争主義的再編成 199
 1.2 教育における階層分化の危険 200
2. 親の選択を排除してきた構造 202
 2.1 “生存権の文化的側面”から“学習権”の理論へ 202
 2.2 否定されてきた親の教育権の実質化 203
 2.3 最高裁の権限バランス論へ 204
3. 教育の画一性と多様性 205
 3.1 画一性批判の登場 205
 3.2 学校選択制の導入,そしてバウチャー論へ 206
 3.3 画一性と階層性の狭間で 207
4. 画一主義に対するオルタナティブ 208
 4.1 「抑制と均衡」の学校選択論 208
 4.2 学校に入り込む私事性による参加・選択の問題 210
 4.3 教育をめぐる公私3領域 211
5. 就学義務を疑う 212
参考文献 213


第9章 差別――ロールズ格差原理の再定式化[後藤玲子] 215
1. はじめに 215
2. ロールズ格差原理の制定と不確実性下での合理的選択問 219
3. ロールズ格差原理の遂行と社会厚生関数
4. 結びに代えて 229
補論 230
参考文献 233


索引 [237-240]
執筆者・翻訳者紹介 [241-243




【抜き書き】

  はしがき

 早稲田大学21世紀 COEプログラム「開かれた政治経済制度の構築」(21COE-GLOPE)は,個人・企業組織・情報技術が自由に国境を越えて移動する世界において「民主的かつ開かれた」国家社会と国際社会を構築するための制度設計とそのための政策提言を行うために,政治学者,経済学者,法学者がそれぞれの学問領域を越えて行う共同研究である.そして2007年度は本プログラムの最終年度である.
 本研究プロジェクトの中心的なコンセプトの一つは「制度」であった.新制度経済学の創設者の一人であるダグラス・ノースらは「制度」を次のように定義する.それは,一つの社会を構成するメンバーの所有権および彼らの行動と相互関係を規定し制約するルールや規定であり,メンバーの多くがそれらを承認し,その下で協調し協力することに合意しているものであると,そのようなルールや規律は法律として正式に定められているものだけでなく,自然発生的に生まれ社会に根付いているものもある.前者はフォーマルルールであるのに対して,後者はインフォーマル・ルールである.ノースはこのインフォーマルルールの重要性を強調している.一方,成文憲法はまさにフォーマルルールの根幹となる法律であり,国民と国家との関係を規定するものである.
 インフォーマル・ルールは社会規範や慣習に基づくところが多い.したがって社会経済が変化し進展すると,社会的規範や慣習が変わるためインフォーマル・ルールも変更される.同様に憲法についても,人々の自由と権利を擁護するために政治権力を制限するべく成文憲法を制定した近代立憲主義の時代から現代に至るまで,国家に対する要請も大きく変容してきた.「夜警国家から福祉国家へ」がその一例であるが,近年一部の国では逆方向への動きがある.また国民主権主義と立憲主義の結合が近代立憲主義の特徴であるが,矛盾をもはらむことになる.すなわち,憲法制定は過去の多数派の支配を認めることであるのに対して,民主主義は現在の多数派の支配を求めるためである.現在日本でさかんに行われている改憲の動きもそのことの現れではないだろうか,さらには,急速にグローバル化する世界においては,国境を越えた経済金融取引,また地球規模での環境問題に対処するための政策と制度の確立,また政治的地域紛争を解決するための制度の確立などが喫緊の課題となっている.近代憲法国民国家体制を前提としているた,こうした事態に十分に対応することができないことが自明になってきており,国際的な視野を持った立憲主義の検討が必要とされている.
 現在日本が置かれている状況も上述した問題をはらんでおり,憲法改正についての議論がさかんになされている.しかしそうした議論において,本書が提示するような,立憲主義に関わる本質的かつ基本的な問題が真摯に取り上げられているだろうか.
 本シリーズ「新しい政治経済学の構築へ向けて」は,21C0E-GLOPE プロジェクトの研究成果を世に問うものであり,本書『立憲主義の政治経済学』はその第4巻である.本書は,過去5年にわたって川岸令和教授を中心に企画実行されてきたコンファレンス,ワークショップで発表された論文を中心に,法学,政治学,経済学と異なった視点からの憲法に関わる論文から構成されている.本書で提示した論点が,今後の日本での憲法論議を刺激し実りあるものにする助けとなることを期待したい.