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『エコロジストのための経済学』(小島寛之 東洋経済新報社 2006)

著者:小島 寛之[こじま・ひろゆき] (1958-) 数理経済学。随筆。
装画:宝珠 光寿
装幀:鈴木 堯 + 佐々木由美(TAUHAUS
NDC:519 公害.環境工学


エコロジストのための経済学 | 東洋経済STORE


【目次】
はじめに――環境のことを深く理解するために、経済学を知ろう [iii-vi]
目次 [vii-xii]


第1章 環境問題は、経済問題なのだ 001
1 一億総エコロジストの時代 002
2 私たちは被害者であると同時に加害者である 003
3 環境問題は経済問題である 005
4 経済問題としての環境問題 006
5 リサイクルはめぐりめぐって自分の損になる 008
6 環境保護は自分の痛みを覚悟して訴えるべし 010
7 環境問題が経済制度に起因する問題ではない 012
8 環境問題の2つの側面 013
9 環境を正しく守るためには、経済学を知ろう 014


第2章 地球は食い荒らされるのか 017
《現実の部》地球環境温暖化問題 018
  発端はハンセン博士の証言
  主犯は二酸化炭素
  京都議定書の発効の2つのハードル
  隠された意図か?
  わずか1000年では測定できない
  放っておくという選択肢もある
  注目される炭素税
  損得勘定に訴える仕組み 
《理論の部》コモンズと独占の経済学 030
  ハーディンの寓話が教えてくれること
  民有化の潮流
  競争されている場合の値決め
  独占企業の最適生産量は
  双方に利益があっても取引が成立しない
  コモンズを数理的に説明しよう
  コモンズの悲劇を回避するには 


第3章 大気汚染はまき散らしたほうが得か 043
《現実の部》広域大気汚染 044
  朝10時に新聞が読めない
  酸性雨のメカニズム
  世界各地で大気汚染の問題が起きた
  酸性雨には誤解も多いという指摘も 
《理論の部》戦略的ゲーム理論 050
  戦略的ゲーム理論とは何か
  非協力ゲームの仕組み
  非協力ゲームの解はどうなるか
  ナッシュ均衡はほとんどすべてのゲームに存在する
  「囚人のジレンマ」から社会を読み解く
  非効率な膠着状態
  「タカ・ハトゲーム」から社会を読み解く
  家事分担がうまくいかないのは
  汚染が国境を越えない場合
  大気を汚染しあうのはなぜか
  環境汚染の原因は単純ではない
  問題解決の可能性を探る


第4章 国家による自然環境の改造は正当化できるか 073
《現実の部》干拓問題・ダム問題 074
  「食糧難対策」として始まった干拓
  目的は二転、三転した
  ダム建設は景気対策であった
  防災には不要という主張も
  防災事業への反論はむずかしい 
《理論の部》ケインズマクロ経済学 082
  ケインズ理論そのものが答えである
  マクロ経済学は新興勢力
  投資と貯蓄は常に等しくなる
  GDPはこう決まる
  非自発的失業者が出てくるか
  かくして恐慌にいたる
  貯蓄によって生活が追い詰められる
  財政政策による景気回復という理屈
  公共事業が環境を破壊する理由 


第5章 成長の利益・公害の不利益 097
《現実の部》水俣病 098
  記録された最初の患者は1953年
  原因は有機水銀
  見かけの汚染濃度と被害の差
  高度経済成長と切っても切れない
  水俣病のその後の経緯
  株主は環境汚染の責任を負わない
《理論の部》外部不経済コースの定理 108
  ピグーが明らかにした「外部性」
  社会全体としては最適性を逸する
  「社会の利益」を図解してみよう
  「外部不経済」を図解してみよう
  外部性を解消する方法
  税による解決方法
  ピグー税の限界
  コースの定理とは
  市民感情にはなじまない
  取引費用こそが問題だった
  環境は私有化されるべきか、公有されるべきか 


第6章 経済理論で見直す環境談義 129
1 「このままではエネルギーは枯渇する」ってほんと? 130
  自然科学者が見落としていること
  経済の働きを見くびってはいけない
2 「電気をこんなに使って、環境保護とはなにごとか」に反論する 135
3 風評被害とそのメカニズム 137
  不運が重なった
  経済学者の視点は
4 市場の匿名性と差別化シグナルの働き 140
  供給曲線と需要曲線
  一物一価が生産者に利益をもたらす
  「差別化シグナル」の働き
  「豊かな社会」固有の現象
5 譲歩の非対称性の経済学 146
  アカロフの発見
  人々は嗜好や気分で行動する
6 自動車社会は、それが最適だから選択されたのか 150
7 不確実性のある選択では、事前と事後の評価のずれがある 151
8 社会は、間違っていても簡単には修正できない 153
  一つの均衡から容易には抜け出せない
  ランダム・マッチング
  結局は自動車利用に引き戻される


第7章 環境問題に使える経済学とは 159
1 どういう経済学が環境問題の解決に適しているか 161
2 伝統的な経済学の問題点 162
  「私有化」に行き着いてしまう
  「おおよその予測」も困難
3 ケインズ経済学の問題点 166
4 ケインズ経済学への疑念 168
  占星術の域を出ていない
  本当の「法則」はほかにある?
  なぜ淘汰されないのか
5 環境をコントロールする経済理論とはどんなものか 173
6 ボウモル=オーツの接近法 174
  税額を決めることはむずかしい
  最新の確率理論とも整合的
7 不確実性下の選択における2つの過誤 179
  後悔の度合いを比較する
  コインは正しいか、ゆがんでいるか
8 サベージ基準とマクシミン基準 182


第8章 環境を経済学でコントロールするために 185
1 社会的共通資本の理論 186
  「専門家集団」による管理を提言
2 公共財と市場の失敗 189
  資本主義でも社会主義でもなく
3 公共財は社会を膠着性から脱出させる 192
  限定合理性の導入
  錯誤から脱出できない状態が続く
  誤った認識の改訂
4 シグナリングとしての消費行動・投資行動 197
  さまざまな試み
  流れは変わりつつある
5 貨幣の機能を探る 201
  欲望の二重の一致
  紙切れ一枚で事態が変わる
  合意をもたらすものは
6 貨幣は記憶である 211
  戦略Sが選ばれる理由
  貨幣が手元にやってきた
7 エコカードの経済理論 214
  エコカードは人々の手から手へ渡る
  企業への「メッセージ」となる


おわりに――この本は、私の初心である(二〇〇六年一月 やっとここまで来た、という感慨をこめて 小島寛之) [221-225]


【図表一覧】
図1-1 Aさんは牛乳をつくり、Bさんは牛乳ビンをつくる 009

表2-1 京都議定書の批准国(2005年9月) 022
表2-2 商品価格10万円を受容するプライステイカー企業 033
表2-3 限界費用 033
表2-4 独占企業の生産量と価格 036
表2-5 独占企業の利潤最大化 036
表2-6 独占企業の価格と限界費用 037
表2-7 漁業コモンズの利益 039

表3-1 ゲーム1の戦略と得点 053
表3-2 ゲーム1の利得行列 054
表3-3 ゲーム2の利得行列 054
表3-4 ゲーム1のナッシュ均衡 058
表3-5 ゲーム2のナッシュ均衡 058
表3-6 生産戦略と結果 065
表3-7 両国の廃棄物による不快 065
表3-8 両国の消費の満足 067
表3-9 両国の消費の不快感 067
表3-10 環境汚染ゲームの利得行列 067

図4-1 諫早湾干拓事業の位置 075

図5-1 水俣湾の位置 100
表5-1 工場の生産量と利潤 113
図5-2 工場の生産量の最適点 113
表5-2 漁獲高と社会の利益(外部性がない場合) 114
図5-3 社会の利益(外部性がない場合) 114
表5-3 漁獲高と社会の利益(外部不経済がある場合) 116
図5-4 社会の利益(外部不経済がある場合) 116
表5-4 ピグー税の効果 120
図5-5 ピグー税の効果 120
表5-5 コースの定理(汚染者が賠償する場合) 123
表5-6 コースの定理(被汚染者が補償する場合) 123

図6-1 石油が残り少なくなると 132 
図6-2 発電コストが上昇すると 136
図6-3 価格と取引量の決定 141
表6-1 非協力ゲームのナッシュ均衡 154

表7-1 漁獲高と社会の利益(外部不経済がある場合) 177
表7-2 ピグー税の効果 177
表7-3 温暖化と消費行動の利益 183

図8-1 欲望と所有物が一致しない 203
図8-2 サミュエルソンの世代重複モデル 205
図8-3 取引は成立しない 207
図8-4 第一世代が「M」を発行する 209
図8-5 好ましい配分が達成される 210