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『知の論理』(小林康夫,船曳建夫[編] 東京大学出版会 1995)

英題:IntellectuaI Paradigms of the Twentieth Century
編著者:小林 康夫[こばやし・やすお] (1950-) 表象文化論(芸術の行為論,テクストの存在論的分析)
編著者:船曳 建夫[ふなびき・たけお] (1948-) 文化人類学儀礼と演劇,世界志向システムなど)
著者:石田 英敬[いしだ・ひでたか] (1953-) 言語情報科学(フランス近代文学詩学,言語態分析)著者:石光 泰夫[いしみつ・やすお] (1949-) 表象文化論精神分析学,ディスクール分析,舞台芸術論)
著者:金子 邦彦[かねこ・くにひこ] (1956-) カオス.複雑系の物理,その視点を踏まえた理論生物学
著者:桑野 隆[くわの・たかし] (1947-) ロシア文化(文学理論.言語論,記号論など等)
著者:小森 陽一[こもり・よういち] (1953-) 日本近代文学(表現論.文体論、言語態分析)
著者:佐藤 良明[さとう・よしあき] (1950-) 表象文化論アメリカ文化)
著者:下條 信輔[しもじょう・しんすけ] (1955-) 知覚心理学認知神経科学(とくに認知・行動空間の構造と発達)
著者:高橋 哲哉[たかはし・てつや] (1956-) 哲学(現象学ほか)
著者:丹治 愛[たんじ・あい] (1953-) 地域文化研究(19世紀末からモダニズムにかけてのイギリス文化)
著者:De Vos, Patrick[ドゥ・ヴォス,パトリック] (1955-) 表象文化論(演劇論)
著者:野矢 茂樹[のや・しげき] (1954-) 哲学(分析哲学心の哲学
著者:長谷川 寿一[はせがわ・としかず] (1952-) 動物行動学(とくに配偶行動と社会システム)
著者:長谷川 博子[はせがわ・ひろこ] (1957-) フランス近世史・近代史
著者:藤井 貞和[ふじい・さだかず] (1942-) 日本古典文学,表現史,現代詩
著者:増田 一夫[ますだ・かずお] (1954-) 地域文化研究(フランス思想が中心)
著者:松原 隆一郎[まつばら・りゅういちろう] (1956-) 社会経済学,相関社会科学
著者:丸山 真人[まるやま・まこと] (1954-) 相関社会科学(環境社会科学,地域社会論,経済人類学など)
著者:村田 純一[むらた・じゅんいち] (1948-) 科学哲学,現象学
著者:本村 凌二[もとむら・りょうじ] (1947-) 西洋古代史,地中海社会構造論
著者:山下 晋司[やました・しんじ] (1948-) 文化人類学(グローバリゼーションと民族文化の動態)
NDC:002 知識.学問.学術


知の論理 - 東京大学出版会



【目次】
はじめに(1995年2月16日 小林康夫 船曳建夫) [i-iv]
目次 [v-vii]


第I部 論理の発明―― 20世紀の知のダイナミクス小林康夫] 001
はじめに 003
学問のダイナミズム
世界・言語・人間
実体から関係へ
論理の発明
創造的な忍耐
註 013


第II部 限界の論理・論理の限界―― 20世紀の方法原理


■疑う
論理を行為する――疑いと探究[野矢茂樹] 017
すべてを疑うこと
鵜呑みにされる事実
「動かぬもの」が動かぬわけ
知の「蝶番」
20世紀この1冊! 


■見る
見ることの限界を見る――現象学アウシュヴィッツ高橋哲哉] 027
事象そのものへ 027
きみは『シンドラーのリスト』を見たか 030
ショアー』とはどんな映画か 033
現象学と《記憶》への問い 037
註 039
参考文献 039
20世紀この1冊! 040


■知覚する
認知と神経の「場」――自己組織的人間学下條信輔] 041
「見えること」「知ること」「存在すること」 041
「知」の根拠について 043
部分と全体,ゲシュタルトと自己組織系 045
脳の社会性 048
文化と脳 051
実在論的モデル」からの訣別 052
参考文献 054
20世紀この1冊! 055


■表象する
言葉が身体と化す――精神分析とファンタスムの論理[石光泰夫] 056
伝染〔うつ〕るんです』 056
フロイト精神分析学 059
無意識の表象 063
ファンタスム 066
二人のフロイト 071
20世紀この1冊! 073


■意味する
構浩とリズム――ソシュールvs. クレー[石田英敬] 074
記号の風景――関係性の場へ! 074
「意味する」――記号のシステムとかたちの出来事 076
方法としての記号一一構造とリズム 086
参考文献 092
20世紀この1冊! 092



第III部 多元的論理に向かって――ダブル・バインドからカオスまで

ダブル・バインド
こころを生けどる論理――ベイトソンと精神のエコロジー[佐藤良明] 095
テストの言葉,現場の言葉 095
平面的論理から階型の論理へ 097
抽象論理と生きた世界 098
レベルの混乱,こころの破綻 101
関係の変革,文化の治療 104
20世紀この1冊! 106


■ 対話原理
生成する複数性――バフチンとポリフォニックな〈若さ〉[桑野隆] 107
「イズム」としての「対話」 107
ポリフォニー小説とモノローグ小説 108
対話としての小説 110
対話としての言語 112
他者との対話 114
闘争としての対話 115
対話する若さ 116
20世紀この1冊! 118


■物語の論理
紫上の運命を縫いつける――『源氏物語』の「語り」と「物」[藤井貞和] 119
はじめに 119
会話する文とはどういう伝達か 120
意図と,意図の付加 121
疑似結婚のあやうさ 124
思う表情の表現 126
「物」の記号的意味 127
語りの時制と語り手の時間 129

20世紀この1冊! 131


■構造の論理
神話論理から歴史生成へ――文化人類学と成熟[山下晋司] 132
はじめに 132
構造 132
疑問 135
構造と歴史 138
生成する歴史 141
結語 143
註 144
20世紀この1冊! 146


■交換の論理
市場原理と共同体の問題――商品交換形式を超えるもの[丸山真人] 147
社会主義経済計算論争 147
交換・再分配 149
ポランニーの社会モデル・互酬 150
貨幣 153
内部貨幣―― LETS【Local Exchange/Employment and Trading System】 156
20世紀この1冊! 158


■カオスの論理
カオスとはなにか――複雑系の科学へ[金子邦彦] 160
カオスの発見まで 160
カオスの発見と特徴 161
対立図式の止揚としてのカオスの意義 165
複雑系の科学に向けて 168
参考文献 170
20世紀この1冊! 170



第IV部 歴史のなかの論理――他者の論理・創造の論理

■自己と他者
フィクションとしての他者――オリエンタリズムの構造[丹治愛] 173
序 173
帝国主義批判 173
〈他者〉としてのアフリカ 175
〈進歩〉のイデオロギー 177
オリエンタリズム〉の解体 179
オリエンタリズム〉の構造 181
20世紀この1冊! 183


■歴史の現実
剣闘士のエロティシズム――歴史のなかに欲望を読む[本村凌二] 184
碑文史料・参考文献 198
20世紀この1冊! 198


■型の論理
「型」の日本文化論――対話を通して身体を見る[De Vos, Patrick] 199
「指は指でさせぬ」 199
日本文化と「形式化」 201
「カタ」の論理 204
今後の課題 211
註 212
20世紀この1冊! 212


■産業の論理
フォーディズムと日本的経営――変容する労働観を追う[松原隆一郎] 213
産業社会について 213
分業について 216
フォーディズムについて 219
日本的経営について 221
参考文献 225
20世紀この1冊! 226


■エピステーメ
「現在」のナルシシズムに抗して――フーコーと不連続の歴史[増田一夫] 227
知のポイエーシス 227
まなざしの転換 231
阿呆の画廊 233
出口の探究 235
20世紀この1冊! 237


■科学/技術の論理
ポスト・ベーコンの論理とは?―― 21世紀の知の論理[村田純一] 238
知の「論理」と「技術」 238
理論と実践 241
実験 243
進渉――ベーコンの時代 245
ポスト・ベーコンの論理? 248
20世紀この1冊! 249



第V部 論理のプラクシス――論理を読む・論理を書く

 論理の応用[船曳建夫] 253


■論理を読む
実践としてのテクスト分析――『痴人の愛』の論理[小森陽一] 255
構造分析 256
エピステーメー 259
物語論的還元と性差 262
対話としてのディスクール 266

20世紀この1冊! 271


■論理を書く
歴史のエクリチユール――「女の場」をめぐって[長谷川博子] 272
これまでの研究 274
再考に向けて 279
試み 281
註 285
20世紀この1冊! 286


■論理の技法 
卒業論文をどう書くか――執筆と評価[長谷川寿一] 287
論文の構成要件 288
テーマの発見と序論軌筆のための準備 289
調査の手続きと予備調査 293
結果と証拠 295
討論・解釈の基本ルール 296
口頭試問と公開発表会 298
論文を磨く 299
  a) 査読制度
  b) 公開討論と電子討論
20世紀この1冊! 304


結び――結んで/開いて[船曳建夫] 305
結びから読み直す 305
論理に文系と理系のクラス分けはない 307
論理の共和制,大理論の空位 309
「青春の墓標」としての卒業論文 311
論理を結んでモラルヘ開く 314


執筆者紹介 [317-322]




【抜き書き】
・引用者が省略した部分は〔……〕という記号で示した。



・編者による「はじめに」から、本書の意図や構成を紹介する箇所を抜粋した。

 この本は,東京大学教養学部の文科系1年生の必修科目である「基礎演習」のためのサブ・テキストとして,昨年,出版された『知の技法』の続編です.
 〔……〕「基礎演習」という授業の目標は,文科系の学生が,将来どのような専門領域を研究することになるにせよ,かならず身につけておかなければならないきわめて基本的な知の技法――すなわち,問題の立て方,認識の方法,論文の書き方,発表の仕方など――を,小人数の演習を通じて,習得することにあります.
〔……〕われわれ編者としては,『知の技法』を貫いている言わば〈精神〉は,次のように要約できると考えています.


 すなわち,知の言語の在り方を,専門知識の一方的伝達というモデルから出発して考えるのではなく,行為する知というモデルから出発して考えること.知とは行為なのであり,その行為は,必然的に他者とのコミュニケーション,新しい認識のクリエーシヨン,そして不公正さへのクリテイックなどを含意している.つまり,理性的な言語の使用を通じてみずからとは異なったもの,異質なもの,未知なものへの〈開け〉を確保し続けることが知にとってのモラルなのだ,という考え方です.


 〔……〕
 こうして,〈知の行為とモラル〉――たとえばこのように呼ぶことができるある種の考え方が『知の技法』の根底にはあったわけですが,さまざまな制約のもとで,かならずしもそのプランの全体が『知の技法』に織り込まれたわけではありません.〔……〕われわれはそれをもう少し延長しつつ,その最初のプランの全体を〈知の三部作〉として刊行することを計画しました.この計画のなかでは『知の技法』はその第一作,導入部ということになり,本書『知の論理』がその第二作,続いて1年後に刊行予定の『知のモラル』が第三作ということになります.〔……〕おおざっぱに言えば,本書の『知の論理』は主に認識における論理の創造性を扱い,第三作『知のモラル』は大学という制度を超えて社会のさまざまな現場における実践的モラルを扱う予定になっています.


 さて,〔……〕学問は,つねになんらかの対象を認識し記述するわけですが,その記述の仕方はけっしてあらかじめ一意的に定まっているわけではありません.認識し記述したその結果(知識)も大事ですが,それ以上に大事なことは,記述を行う仕方,つまりある種の論理を創造することです.学問上の重要な仕事は,つねにそうした認識の枠組みや記述の論理の大胆な創造によって支えられてきました.そうした知のダイナミックな現場を――駆け足で――めくってみることができるようにこの本は編まれています.〔……〕20世紀の知の偉大な論理のすべてを網羅的に挙げることなど不可能ですし,また無意味だと思いますから,無理に20世紀の全体をカヴァーしようとする構成はとられてはいませんが,それぞれの執筆者が一人の研究者として20世紀の知のもっともアクチュアルな問題と格闘しているその現場から,21世紀に向けた知の課題が浮かび上がってくることが期待きれています.〔……〕


 以上のように,今世紀のそれぞれの学問分野における創造的な論理を扱うことから,われわれ編者・執筆者は,この本の読者のイメージをだいたい大学3年生に置いて編集・執筆をしましたが,〔……〕文科系の一般的な〈基礎演習〉テキストとしてどなたにでも容易に読んでいただけると思います.〔……〕論理の多様性とその実践的な創造性――行為する知のそうしたダイナミズムの面白さをわれわれ執筆者と読者とが少しでも共有することができれば,われわれにとってはそれ以上の幸せはありません.