著者:山口 智美[やまぐち・ともみ] (1967-) 文化人類学、フェミニズム、社会運動論。
著者:斉藤 正美[さいとう・まさみ] (?-) メディア研究、フェミニズム、社会運動論。
著者:荻上 チキ[おぎうえ・ちき] (1981-) メディア論。評論。
【目次】
まえがき [i-vii]
目次 [ix-xiii]
本書に登場する地域名 [xiv]
第一章 「ジェンダーフリー」をめぐる対立 〔山口智美・荻上チキ〕 001
1 「ジェンダーフリー」と「男女共同参画」の誕生 002
「ジェンダーフリー」の登場
女性学・ジェンダー学者の関わり
ジェンダーフリーの広がりと意識啓発事業の拡大
バーバラ・ヒューストン誤読事件とその後の混乱
「男女共同参画」の誕生
クリスティーヌ・デルフィの「ジェンダー」をめぐる混乱
2 反フェミニズム運動とジェンダーフリー批判 019
「バックラッシュ」の展開とジェンダーフリー
メディアと政界の動き
「ジェンダーフリー」批判の高まりと反「男女共同参画」言説の展開
中央政界とネットメディアの動き
反フェミニズム書籍の出版
「行き過ぎたジェンダーフリー」と「過激なフェミニズム」
3 「バックラッシュ」の退潮とフェミニズム 034
ジェンダーフリーの没落と「バックラッシュ」の退潮
フェミニストの言論と実証研究の欠落
第二章 地方からのフェミニズム批判――宇部市男女共同参画推進条例と『日本時事評論』 〔山口智美〕 049
1 日本時事評論との出会い 050
2 基本法から「モデル条例」へ 054
3 『日本時事評論』とは? 057
『日本時事評論』という新聞
新生佛教教団とは?
日本時事評論と「良識取返し国民運動」
4 ひっくり返された宇部市男女共同参画条例案と保守の動き 062
山口県大泉副知事の就任と男女共同参画推進条例制定
宇部の条例制定と「住民参加」の限界
条例案への「バックラッシュ」の展開
同日に開催された
二つの集会
条例の制定へ
5 「モデル条例」への反発と地方議員の役割 074
「条例のつくり方」と「モデル条例」への批判
広重市郎市議の果たした役割
6 日本時事評論の役割 078
山口県での観光、バーベキューと対話の積み重ね
『日本時事評論』のメッセージをと戦術
7 宇部条例は「歯止め」の役割を果たしているのか 086
日本時事評論がみる宇部条例の成果
条例と基本計画の使い方
8 宇部条例への注目と「モデル条例」のアイロニー 090
条例をめぐる複雑な状況
保守勢力の「モデル」になった宇部市条例
9 フェミニズムをどうみているのか 093
反フェミニストたちの暮らし、信仰と思い
山口編集長のフェミニズムへの視点
10 男女共同参画の一〇年間は何だったのか? 099
第三章 千葉県に男女共同参画条例がない理由――条例制定運動の失敗と保守の分裂 〔山口智美〕 107
1 唯一条例がない県・千葉 108
2 男女共同参画条例案をめぐる顛末 110
堂本県知事就任と男女共同参画条例づくり
堂本知事と担当課長の条例づくりへの思い
条例案上程と「バックラッシュ」
自民党案上程と廃案
3 「良識的な条例づくり」を目指した日本会議系保守運動 118
審議会方式の条例づくりへの批判
「過激なフェミニズム」のシンボルとしての千葉県
日本時事評論と運動への関わり
4 保守の分裂 125
もう一つの保守の動き
千葉展正と日本会議 / 日本時事評論の対立
自民党DV条例案への危機感
自民党条例案への反対運動
5 フェミニストの動きと千葉県条例 135
6 条例廃案後の千葉県と、運動の衰退 140
森田県政以降の男女共同参画とフェミニズム運動
条例運動後の保守と男女共同参画
7 千葉県条例をめぐる運動が提示した課題 143
第四章 「性的指向」をめぐって――宮崎県都城市の条例づくりと『世界日報』 〔斉藤正美・山口智美〕 147
1 フェミニズムへの「バックラッシュ」と世界日報 148
『世界日報』との接触
きっかけとしての、都城の男女共同参画条例
2 都城市男女共同参画社会づくり条例 153
宮崎県都城市
市民、市職員、議員の人的ネットワーク
男女共同参画推進懇話会の設置
性的少数者を「見える化」したい
岩橋辰也市長とたもつゆかりアドバイザー
3 条例への反対の動き 166
世界日報の世界観と同性愛・両性愛批判
地元の情報提供者と「ブリーフィング」の開催
保守系内村仁子議員の反対理由
保守系 有満忠信議員が反対に回ったわけ
異なる「市民の声」の存在の指摘
4 旧条例の制定から新市長による条例再制定まで 179
条例再制定に至る議論
市町村合併、新市長誕生、そして新たな条例の制定へ
尾辻大阪府議来訪と地元での受け止め
5 世界日報によるインターネット戦略 192
6 条例をめぐる係争から見える課題と「市民参加」の内実 193
7 都城のこれから 195
第五章 男女共同参画とは何か――ユー・アイふくいの図書問題をめぐって 〔斉藤正美〕 201
1 男女共同参画センターの運用 202
ユー・アイふくいの図書問題とは
男女共同参画センターの情報資料室/図書批判の動き
2 推進員活動をしていた「バックラッシュ派」 208
世界日報記者が男女共同参画推進員?
図書への異議申し立てをした推進員
3 男女共同参画推進員という制度 215
筆者も推進員に応募してみた
男女共同参画推進員制度と地域における運用
福井県男女共同参画推進員の活動と思い
4 図書問題 223
推進員から出た男女共同参画への疑問
男女共同参画にふさわしい図書とは何か
5 インターネットの活用 234
フェミニズムによるネット発信とその課題
インターネットと世界日報
6 現在の福井の男女共同参画政策 239
7 「男女共同参画」の意味を問い直す機会の損失 242
第六章 箱モノ設置主義と男女共同参画政策――国立女性教育会館(ヌエック) 〔斉藤正美〕 247
1 ヌエックや男女共同参画センター事業とのかかわり 248
2 ヌエック問題とは 249
事業仕分け
「箱モノ」批判の展開
3 ヌエックと男女共同参画センター設立の背景 254
女性教育施設設立の沿革/ヌエック設立の背景
4 婦人教育・女性教育 257
戦前・戦後の「婦人教育」の流れ
「女性教育」とは何か
ヌエックの女性教育の対象
官僚の語りと当時の女性運動
5 運営体制 266
官僚が果たしてきた役割
女性学・ジェンダー学者などのヌエックへの関わり
「女性運動」の要請という新たな語り
6 ヌエックと全国女性会館協議会 272
7 箱モノ設置主義と意識啓発事業の限界 276
第七章 フェミニズムとメディア、インターネット 〔山口智美・斉藤正美〕 283
1 フェミニストのメディア活用の現在 284
2 女性学の書籍刊行と女性運動―― 一九八〇年代 285
女性学の台頭
女性運動のメディア批判
「女性とメディア研究」と台頭
3 「ジェンダーとメディア研究」と行政―― 一九九〇年代 290
「ジェンダー」の登場と研究者の行政施策への進出
行政との連携による「ジェンダーチェック」「ジェンダーフリー」と規制の流れ
条例策定運動における表現規制問題
4 フェミニズムによる情報ネットワークの構築―― 一九九〇年代 298
北京女性会議とインターネット熱
JJネット―― FAX通信網
5 「バックラッシュ対抗」をうたいはじめてから―― 二〇〇〇年代 303
アジア女性医療センターと「バックラッシュ」対抗としての情報発信
ファイトバックの会のテレビ番組利用と「バックラッシャー」イメージの構築
対抗手段としてのメーリングリスト
ブログ、まとめサイト、ミクシィなどでの「バックラッシュ」への対抗
「バックラッシュ」への対抗として始まったポータルサイトWAN
6 フェミニスト・メディアの今後にむけて 319
結びにかえて〔荻上チキ〕 [325-335]
あとがき [337-345]
調査記録 [xxxv-xxxviii]
参考文献 [xi-xxxiv]
事項索引 [iv-x]
人名索引 [i-iii]