著者:大西 裕[おおにし・ゆたか] (1965-) 行政学。韓国の政治と行政、アジアの政治経済。
NDC:312.21 政治史・事情(韓国/朝鮮問題)
【目次】
はしがき [i-vi]
目次 [vii-ix]
韓国地図 [002]
序章 先進国としての韓国の始まり 003
1 二〇一二年大統領選挙の持つ意味 003
静かな選挙の激しい争い
進歩派と保守派
イデオロギー対立と選挙への影響
経済民主化
2 格差社会の内実 014
保守党の左旋回
韓国は不平等社会か
ワーキングプア問題
貧しい高齢者
就職しにくい若年層
福祉政策の貧困
不平等問題の継続性
3 本書の問いと構成 031
第一章 誤解された改革――金大中政権の経済・福祉政策 037
1 通貨危機 038
地域主義の影響
金大中大統領の誕生
アジア通貨危機
労使政策委員会の設置
経済発展をめぐる「囚人のジレンマ」
初期金融改革
社会協約の喪失
労働組合の反発
停滞する金融構造改革
2 福祉国家への転換 056
生産的福祉とは何か
労使と福祉の連繋
失業・貧困に対する緊急対策
国民基礎生活保障制度の発足
医療保険の一元化
国民皆年金
3 生産的福祉の挫折 067
委縮した社会民主主義
公的扶助をめぐる政治過程
官僚の抵抗
金大中の蔚山演説
実施過程での揺り戻し
医療保険改革前史
組合主義対統合主義
農漁村民包含をめぐる論争
医療保険統合の実現
社会的連帯の強調
年金改革か、国民皆年金か
国民皆年金の選択
世界銀行の介入
未完の社会保障改革
改革を押しとどめた要因
第二章 進歩派政権の逆説――盧武鉉政権の福祉政策 089
1 盧武鉉政権の誕生 091
異端児盧武鉉の登場
予備選挙の実施
進歩派による「新しい政治」
進歩派の勝利
2 参与福祉 098
キーコンセプトとしての参与福祉
社会投資国家論
ワーキングプア問題への直面
切り下げられた国民年金
高いままの医療費自己負担
雇用保険と新制度EITC
3 参加民主主義の逆説 109
沈静化する圧力団体活動
医療保険運営への市民参加
医療保険改革の逆説
地方分権の逆説
伸び悩む福祉財政
4 屈折した福祉政治 118
福祉縮小をとどめるもの
不思議な韓国の福祉政治
福祉政策への関心
イデオロギーの重要性
福祉に関心あるほど保守的?
他の団体との対立‐協調
団体の影響力
行動しない福祉勢力
地域の草の根保守
均衡点としての「委縮した」社会民主主義
第三章 米韓FTAと盧武鉉の夢 139
1 イデオロギー旋風 141
政党システムの変貌
地域主義からイデオロギーへ
三八六世代の登場
大統領と国会の対立
憲法的秩序をめぐる対立
首都移転法違憲判決
四大法案
2 葛藤の米韓FTA交渉 156
盧武鉉の考え方
WTOからFTAへ
対米事前交渉
四大前提条件
交渉と国内調節
3 イデオロギー対立に引き裂かれた政権 165
市民社会と政治社会の違い
分裂の民主主義
進歩派の反乱
誤解された盧武鉉
盧武鉉の夢見たもの
第四章 反進歩派政策の挫折――李明博政権による政策継承 175
1 李明博政権の狙い 176
進歩派政権のアンチテーゼ
能動的福祉
医療サービスの産業化
継承されたFTA戦略
2 二重の制約 183
リーダーシップの条件
複雑な選挙結果
朴槿恵派の与党内野党化
ロウソク集会
3 「実用主義」の蹉跌 192
大運河構想
リーマン・ショック
不安定な金融市場
李明博の危機対策
衰退する土建国家
福祉改革の後退
生き残る盧武鉉改革
新しい社会的リスクへの対応
ストップした米韓FTA交渉
アメリカの環境変化
進歩派の抵抗
政策停滞ゆえの良好なパフォーマンス?
第五章 朴槿恵政権の憂鬱 215
1 社会保障と通商政策をめぐる政治 216
福祉国家の三類型
「委縮した」社会民主主義
進歩派政権による新自由主義
イデオロギー政治の不自然さ
2 流動的な労働市場 224
労働市場と福祉政治
生産要素の流動性
土地、資本、労働
労働市場と通商政策
APEC・EVSL交渉
無関心な漁民たち
3 朴槿恵政権の課題 236
社会保障の争点化
統一地方選挙
ソウル市での無償給食論争
朴槿恵の社会保障構想
朴槿恵政権の苦悩
あとがき(二〇一四年三月 大西裕) [247-251]
参考文献 [252-261]
関連年表 [262-264]