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『日本銀行』(翁邦雄 ちくま新書 2013)

著者:翁 邦雄[おきな・くにお] (1951-) 銀行家。経済学者。金融政策、マクロ経済学、国際金融論。
件名:日本銀行
件名:金融政策--日本
NDC:338.4 金融.銀行.信託 >> 発券銀行中央銀行


筑摩書房 日本銀行 / 翁 邦雄 著


【目次】
目次 [003-010]


プロローグ 011
  中央銀行への期待と現実
  無制限介入への幻想
  危機時における中央銀行の力
  「リフレ派」登場の背景


第1章 中央銀行の登場 019
1 中央銀行の登場 019
  もっとも古い中央銀行はどこか
  中央銀行像を作り上げたイングランド銀行
2 イングランド銀行の進化過程 021
  英国の財政危機
  イングランド銀行の登場
  銀行券の独占的発行
  銀行の銀行・最後の貸し手・金融政策


第2章 主要中央銀行のトラウマ 031
1 連邦準備制度 032
  金融システム安定化のための創設
  大恐慌の発生
  市民生活の崩壊
  大恐慌が米国民に残したトラウマ
  連邦準備制度にとってのトラウマ――グリーンスパン議長の場合
  グレート・インフレーションというもう一つのトラウマ
2 欧州中央銀行 044
  物価安定に特化した先進国最新の中央銀行
  財政赤字によるハイパー・インフレーションという過酷な経験
  ハイパー・インフレーション下の市民生活
  二一世紀のハイパー・インフレーション――ジンバブエの事例
  ハイパー・インフレーションの終焉と「ドル化」
  ゴノ総裁へのイグ・ノーベル賞授与
  先進国でハイパー・インフレーションは起き得るか
  欧州中央銀行のトラウマと欧州危機
  トラウマの違いによる行動様式の違い


第3章 日本銀行の登場 063
1 設立の背景 063
  レオン・セーの助言
  日本銀行創立ノ議
2 日本銀行の創設 068
  開業時の日本銀行
  日本銀行条例の延長と第二次世界大戦時の日本銀行法制定
  現在の日本銀行法への改正の経緯
  中央銀行の独立性が高いとインフレ率は下がるのか?
3 現在の日本銀行 077
  改正の内容
  日本における独立性の社会的基盤の弱さ


第4章 日本銀行の組織と業務 085
1 日本銀行の組織 085
  支店・職員数
  法的性格・ガバナンス・業務
2 銀行券の発行流通 089
  銀行券はなぜ負債なのか
  銀行券の支払いと回収
  銀行券流通の地域的特色――沖縄の場合
  銀行券偽造を巡って
  偽造防止のためのさまざまな協力
3 決済システムの運営 102
  決済と決済システム
  資金決済と中央銀行当座預金の関係
  東日本大震災
4 金融システムの安定確保 109
  システミック・リスクの回避
  昭和恐慌の事例
5 金融政策の運営 117
  金融政策と公開市場操作
  金融政策の波及経路
  緩和の障害としてのゼロ金利制約
  非伝統的金融政策
6 日本銀行の収益構造 124
  銀行券の発行がそのまま利益になるわけではない
  収益源は利ざや


第5章 バブル期までの金融政策 127
1 戦後復興期 127
  終戦直後の状況
  戦後復興の完了――「もはや戦後ではない」
2 高度成長期 132
  外貨準備をシグナルとした金融政策
  ニクソン・ショック――政策目標間の矛盾の表面化
3 大インフレーションの時代――過剰流動性・第一次石油危機・狂乱物価 138
  列島改造計画と過剰流通性
  狂乱物価と国民の苛立ち
  物価安定重視の金融政策


第6章 バブル期以降の金融政策 149
1 資産価格バブル期 149
  プラザ合意と政策協調
  ブラック・マンデー
  「平成の鬼平」?
  バブル潰しの元凶?
2 バブル崩壊後の金融政策 161
  ゼロ金利政策
  ゼロ金利解除
  量的緩和
  日本の経験の国際的影響――グリーンスパンの金融政策
3 失われた一〇年 173
  バブル崩壊後の日本経済
  質的・量的緩和


第7章 デフレ脱却の理論 179
1 ゼロ金利制約と貨幣数量説 179
  バランスシート規模はインフレ期待にまったく影響を与えないというバーナンキ議長の見解
  数量方程式
  フリードマンの提言
  国債中央銀行通貨を交換する意味
  「処女懐胎的」インフレ理論としての数量説
  IS-LM分析
  静学的分析を超えて
2 「ベビーシッター協同組合危機と金融理論」 193
  クルーグマンが絶賛する議論
  オリジナルな分析
  「ベビーシッター不況」
  「輪転機を回す金融政策」による不況脱出


第8章 クルーグマンと「日本型デフレ」 201
1 金利がある世界へのモデルの拡張 201
  日本型デフレには「輪転機を回す金融政策」自体は効果がない
  モデルの拡張――クーポンが貸し借りできる世界
  クーポンの借り賃という「金利」のコントロール
2 ゼロ金利下の日本型不況 204
  「大寒波に襲われたキャピトル・ヒル」のような日本経済
  「アイスクリームのように溶けるクーポン」という処方箋
  インフレーションでクーポンを溶かす?
3 インフレ期待の景気刺激効果は大きいか 210
  キング・イングランド銀行総裁の術懐
  インフレ期待の景気刺激効果は高められるか
  クルーグマンはなぜインフレ政策を推奨しているか
  クーポンを溶かし「厳冬でもイベントに出かけさせる」だけで十分か


第9章 中央銀行と財政政策 223
1 欧州のソブリン危機 223
  欧州中央銀行のジレンマ
  欧州中央銀行の苦渋の選択
2 マネタリストのある不快な算術 229
  政府の通時的予算制約と個人のライフサイクル
  財政状況が物価を決める世界
3 日本の財政状況と財政の持続可能性 234
  空振りに終わってきた財政破綻の警告
  なぜ日本は債務危機が起きなかったのか
  金利低下ボーナスは消失した
  中・長期的物価安定のカギを握っているのは財政の持続可能性

第10章 「異次元の金融緩和」とアベノミクス 243
1 異次元の金融緩和 243
  量的・質的金融緩和の導入
  「複数均衡」のもとでの心理操作
  出口の点検を封印する「片道出撃」のリスク
  金融政策に必要なコストとリスクのチェック
2 米国の資産購入プログラムとインフレ期待 254
  連邦準備制度の金融緩和の枠組み
  中央銀行の赤字予想はインフレ期待につながる
3 異次元の金融緩和からの帰還 261
  ゼロ金利解除の代替的オプション
  財務省の見解
  財政コストの規模
  巨額の財政コスト処理の代替的オプション
4 アベノミクスとデフレ脱却 272
  アベノミクスと円安・株高
  日本国民の「トラウマ」の変化?
  アベノミクスに必要なトータル・コーディネーション
  第四の矢


参考文献 [281-283]
あとがき(翁 邦雄) [284-286]




【抜き書き】

□p. 82

労働者一人当たりの成長率などで見ると、日本経済は人口減少・高齢化という条件の中では相当健闘している。しかし、高度成長期の日本経済の躍進や(徒花だったとは言え)バブル期の栄華を知っている世代にとっては凋落としか感じられず、日本が基礎体力比そこそこ健闘してきた、という事実は国民の閉塞感・企業の苛立ちの中で実感に乏しく影響力を持っていない。