著者:深町 隆[ふかまち・たかし] オリンパス事件の第一通報者、現役社員。
著者:山口 義正[やまぐち・よしまさ] (1967-) 経済ジャーナリスト。
自分が属する組織が不正に手を染めているのを知った時、あなたならどうするか――。
近年、不正会計や食品偽装、医療事故など、さまざまな組織で内部告発が増えている。 一方で、「内部告発=裏切り」という考え方も根強く、告発が成功しても周囲が離れていくことも少なくない。 オリンパスを告発した現役社員と記者が現代における内部告発の意味を問う。(http://www.heibonsha.co.jp/book/b222127.html)
[蛇足]2002年に刊行された同名の書籍があるようだ。ややこしいので注意。
- 作者:宮本 一子
- メディア: 単行本
【目次】
目次 [003-008]
はじめに(山口義正) [009-015]
I 内部告発をめぐる現在 山口義正 017
1 何が告発に駆り立てるのか 018
何を支えにどう闘ったか
障害者支援施設での日常的な暴行
自らに向けられた矛先
利用者家族たちの反発
経済的な負担と人間不信
告発者の「次のステップ」
社会の暗部に光を当てる
内部告発案件に共通する困難さ
「いい人」が多い組織ほど要注意
簡単には変わらない企業風土
2 止まらない連鎖 043
自己防衛の手段としても
オリンパス事件の発端となった事業計画書
決定的な情報ほど小さなミスから漏れる
トナミ運輸の岩窟王
串岡さんを支えた“怒り”
公益通報者保護法の問題点
ハイテク機器を駆使した告発
数多くいたオリンパス社内の情報提供者
3 社会の中で変わる位置づけ 066
“裏切り”から“有効活用すべきツール”へ
子会社から発覚した東洋ゴムの免震偽装
日常に入り込んできた内部告発
告発が告発を呼んだ東芝
東芝の内部告発者は正体不明
流出した「隠蔽工作」メモ
東芝の経営者が心すべきこと
反発を招く締め付け
薄れるばかりの忠誠心
密告と内部告発
告発者に冷たいのは日本だけか
4 いかに告発するか――成功と失敗を分かつ条件 102
それぞれのメディアにはタブーがある
通報先の選択肢は狭い
メディアはあくまで伴走者
組織内の同調者は不可欠
弁護士や経営コンサルタントは有効か
地域を牛耳る学閥を敵に
守られなかった告発者の個人情報
経済界の顔色をうかがう消費者庁
内部告発者に必要な条件
内部告発状と怪文書の違い
ストーリー性を持たせる
告発状の実例
事務的で淡々とした筆致
川上と川下からの挟撃
内部告発はスピード重視で
現場は美談ばかりではない
II オリンパス事件の真相 深町隆 149
1 なぜ粉飾決算に走ったか 150
組織は時に暴走する
オリンパスという会社
人材のアンバランス
「飛ばし」とは何か
次期社長候補の突然の辞任
菊川体制の確立
2 不正に気づいた経緯 162
決算に現れた兆候
不可解な三社買い増し
ITX買収の経緯
本社ビルの主
「2ちゃんねる」の書き込み
3 ジャイラスの買収 173
突然の買収発表
きわめて割高な買収金額
金融コンサルタントの暗躍
巨額のFA手数料の本当の理由
オリンパスの決算・情報開示体制
好決算に紛れた三社の買収
4 二〇〇九年委員会と監査法人解任 184
リーマンショック
監査法人からの指摘
分析機事業の突然の売却
過去最悪の赤字
強硬だったあずさの姿勢
二〇〇九年委員会
菊川氏の激怒とあずさの解任
オリンパスは「フグ」
5 尾瀬の密会 196
浜田氏の内部通報事件
「王様の耳はロバの耳」
ジャイラスの優先株取得
アナリストからの指摘
6 「飛ばし」の最終処理 205
ITXの完全子会社化
一気に老け込んだ菊川社長
高額な役員報酬
膨らみ続ける三社の債務超過額
ウッドフォード氏の社長就任
内部監査部門の切り離し
監視される社内メール
7 長期の損失隠しを可能とした背景 218
オリンパスの企業統治
硬直した人事制度と情報の分断
オリンパスの人材登用方法
取締役会、監査役会、監査法人の無力化
8 月刊誌ファクタの追及 226
「犯罪の匂いがする」
記事への社内の反応
ウッドフォード氏の解任
奇怪な「闇株新聞」
銀行は何を知っていた?
損失隠しを公表
9 見せかけの経営刷新と改革 238
救いの神様
「経営改革委員会」の本性
「腐った中心部」の温存
東証の上場維持決定の背景
ウッドフォード氏の撤退
新経営体制の発足
合格点ギリギリの内部管理体制
関与社員の処分の実態
日本取締役協会の緊急意見
稲盛和夫氏の教訓
その後も続く不祥事
10 総括 254
社会と乖離するオリンパスの「常識」
真の再生への処方箋
求められる説明責任
おわりに(満開の桜花が春風にそよぐ休日にて 平成二八年四月三日 深町隆) [260-265]