著者:津田 正太郎[つだ・しょうたろう](1973-) マスコミュニケーション論、政治社会学。
装丁:吉田 憲二[よしだ・けんじ]
NDC:311.3 国粋主義.ナショナリズム.民族主義
NDC:361.453 マスコミュニケーション.マスメディア
【目次】
目次 [i-vi]
序章 「彼ら」のナショナリズムから「われわれ」のナショナリズムへ 001
1 ナショナリズムと愛国主義 001
2 ナショナリズム批判はいかなる立場にあるのか 003
3 ナショナリズムとマスメディアという問題 007
4 本書の構成 011
5 「国民共同体」という概念 015
第1章 近代化論における「革命なきナショナリズム」の肯定――コミュニケーション発展論とその「政治的なもの」の欠落について 019
1 開発途上国の近代化とナショナリズム 019
2 近代化論における「政治的なもの」の放逐 021
(1) 第二次世界大戦後の米国社会科学 021
(2) 政治発展論の展開とその理論的困難 025
3 コミュニケーション発展論と豊かさへの期待 031
(1) 共感能力の発達と期待増大革命 031
(2) 「新しいシャツ」から「国民共同体の偉大さ」へ 035
4 近代化論の凋落と新たな分析の視座 038
(1) 近代論の失墜 038
(2) 「比較の亡霊」と「政治的なもの」の回帰 041
5 コミュニケーション発展論の遺産 045
第2章 社会的コミュニケーション論におけるナショナリズム観――相互理解の促進と排他性のジレンマ 047
1 相互依存関係の拡大と国民共同体 047
2 「コミュニケーション・システム」としての国民共同体 049
(1) カール・ドイッチュとナショナリズムの時代 049
(2) サイバネティクスとフィードバック 052
(3) 社会的コミュニケーションの発展と国民形成 055
(4) 極端なナショナリズムとネガティブ・フィードバックの抑圧 061
(5) 国民形成の「失敗」とエスニック・マイノリティ 064
3 「想像の共同体」としての国民共同体 067
(1) 国民共同体概念の転換 067
(2) 文化の二つの側面と「政治的なもの」 072
4 永遠の「未完のプロジェクト」 076
第3章 ナショナリズム概念の再検討――理念的/認識的ナショナリズムとマスメディア 081
1 ナショナリズムはイデオロギーか 081
2 認識的ナショナリズムと理念的ナショナリズム 083
(1) ナショナリズム概念の再検討 083
(2) 認識的/理念的ナショナリズムとナショナル・アイデンティティ 088
(3) 理念的ナショナリズムと人種主義 093
3 ナショナリズムとマスメディアはどのような関係にあるのか 096
(1) マスコミュニケーション研究とメディア論 096
(2) 認識的ナショナリズムとマスメディア 099
(3) ナショナル・アイデンティティ構築におけるマスメディアの役割 104
(4) 「国益」の構築をめぐる競合 109
4 ナショナリズム研究の応用を目指して 112
第4章 ナショナリズムは肯定できるか――差異の(不)可視化とマスメディア 115
1 「進歩派のジレンマ」とリベラル・ナショナリズム 115
2 国民的連帯は肯定できるか 119
(1) リベラル・ナショナリズム論とグローバル正義論 119
(2) メディア・コスモポリタニズムの可能性 124
3 差異は連帯を阻害するのか 129
(1) 多様性の増大と国民的連帯の危機 129
(2) 何が他者への信頼を生むのか 135
(3) マスメディアと「差異のジレンマ」 139
4 国民的連帯を蝕むナショナリズム 145
第5章 ナショナリズムは福祉を促進しうるか――政策形成過程における言説とマスメディアの役割 149
1 ナショナル・アイデンティティとしての福祉 149
2 政策形成における言説とナショナリズムの役割 152
(1) 新制度論の展開と理念への注目 152
(2) 言説的制度論と認識的/理念的ナショナリズム 156
3 マスメディアと政策形成 162
(1) コミュニケーション的言説による政策の正当化 162
(2) マスメディアによる世界観の構築と社会政策 165
4 マスメディア、ナショナル・アイデンティティ、社会政策 171
第6章 同胞を疑うナショナリズム――国民共同体の物語とマスメディア 175
1 シニカルなナショナリズム 175
2 シニック・ナショナリズムを支える物語 178
(1) なぜ物語は必要とされるのか 178
(2) 「利他的な動機」の困難 182
(3) シニカルな物語とシンボルとしての国民共同体 188
3 開かれた国民の物語は可能か 192
(1) 「国民の歴史」の閉塞 192
(2) 開かれた物語の条件 198
4 国民の物語と社会・経済との好循環 202
第7章 マスメディアはいかに連帯を構築するのか――共感原理の可能性と危険性 205
1 マスメディアによる共感の喚起と連帯 205
2 共感原理への批判 207
(1) 他者への共感は肯定されるか 207
(2) 社会的弱者との一体化の危険性 211
(3) 批判への応答 215
3 社会的弱者をいかに表象すべきか 221
(1) 物語化の「意図せざる帰結」 221
(2) 果たすべき役割への共感 227
4 複合的連帯の発見 234
第8章 ナショナリズムの排他性はいかに緩和されるか――シティズンシップの民主主義的拡張とマスメディア 239
1 高揚する反移民感情とシティズンシップ 239
2 シティズンシップをめぐる政治 243
(1) 成員資格としてのシティズンシップ 243
(2) シティズンシップとナショナリズムとの結びつき 249
(3) シティズンシップの民主主義的拡張における困難 253
3 シティズンシップとマスメディア 256
(1) 規範としてのメディア多元主義 256
(2) 「仲介者」としてのメディア 262
(3) 「邪悪な動機」解釈の克服 270
4 シニカルなマスメディア観を越えて 273
補論 冷戦期米国のマスコミュニケーション研究における宣教師的ナショナリズム――マスメディアの影響に関する言説とその政治的文脈 277
1 限定効果理論とコミュニケーション発展論の齟齬 277
2 マスコミュニケーションの「効果」をめぐる言説 279
(1) 魔法の弾丸理論から限定効果理論へ? 279
(2) 限定効果理論の社会的効用 283
(3) コミュニケーション発展論による限定効果理論の解釈 286
(4) コミュニケーション発展論と宣教師的ナショナリズム 290
3 冷戦期マスコミュニケーション研究の政治的文脈 293
(1) プロパガンダ研究からマスコミュニケーション研究へ 293
(2) 冷戦期におけるマスコミュニケーション研究と対外政策 296
(3) 開発途上国におけるプロパガンダとコミュニケーション発展論 303
4 「第三者効果」としてのコミュニケーション発展論 303
あとがき [305-308]
初出一覧 [309]
参考文献 [310-343]
人名索引 [344-346]
事項索引 [347-352]