著者:早川 英男[はやかわ・ひでお] (1954-) エコノミスト。日本銀行。
NDC:338.3 金融・銀行政策.金融統制
【目次】
目次 [iii-viii]
序章 QQEの実験から見えてきたもの 001
QQEは「短期決戦」だった
長期戦の戦局は悪化していった
マイナス金利導入:起死回生策も不発
QQEが明らかにしたこと、隠していること
柔軟で透明な政策運営を
第1章 非伝統的金融政策:私論 015
1 「普遍化」する非伝統的金融政策 015
「全く次元のちがう金融緩和」の衝撃
非伝統的金融政策の分類
非伝統的金融緩和の歴史:日銀、FRB、ECBのイノベーション
リーマン・ショックとFRB
欧州中央銀行(ECB)の苦悩
マイナス金利というイノベーション
「非伝統的金融政策=量的緩和」ではない
2 QQEの実験的性格 028
QQEの効果を理論的に考える
マネタリーベースの増量
信用緩和/長期金利の押し下げ
現実の金融市場はちがう?
意味深長なバーナンキ発言
3 非伝統的金融政策の倫理的側面 040
嘘をつくことは許されるか
国民負担の問題
【コラム】 日銀の作戦:なぜQQEは「バズーカ」になったのか 048
第2章 QQEの成果と誤算 057
1 QQEがもたらした成果 057
(1) 大幅な円安と株高 057
野党党首だったから許された円安誘導発言
反転上昇の兆しがあった株価
(2) デフレ脱却の実現 063
「デフレ脱却」未達感の理由
デフレ脱却の条件はクリアできたか
2 QQE(アベノミクス)の誤算 066
(1) 「2年で2%」の未達成 066
「インフレ目標2%」は妥当な水準
三つの留意点
(2) 経済成長率の低迷 070
「長期低迷の主因はデフレ」とは限らない
最大のサプライズは輸出の伸び悩み
公共投資と駆け込み需要による攪乱
(3) 人手不足時代の到来 081
うれしい誤算
賃金上昇の実態
労働集約型産業で人手不足が深刻化
3 QQEが明らかにした課題:潜在成長率の低下 086
上がらない生産性
エレクトロニクス産業の不振が生産性押し下げ要因か
需給ギャップの推計をめぐって
資本ストックの不稼働問題
デフレ脱却は潜在成長率低下のおかげ?
4 ハロウィン緩和の「誤射」 099
不可解な緩和決定
「誤射」の結末:トリクル・ダウン戦略の破綻
ハロウィン・バズーカはミッドウェー海戦だったのか
【コラム】 人口動態、過剰貯蓄とデフレ:「長期停滞論」再考 106
第3章 「リフレ派」の錯誤 119
1 「リフレ派」的思考法:主観主義・楽観主義・決断主義 119
「リフレ派」を定義する
「リフレ派」の主張は整合的か
リフレ派の困った議論(1):後出しジャンケン
リフレ派の困った議論(2):精神論
2 期待一本槍の政策論:主観主義の錯誤 127
リフレ派の大本はマネタリズム
自然利子率の概念
テイラー・ルール
マネタリーベースを金融調節の軸に据えるのは的外れ
資産価格への影響を考える
3 さまざまな「期待」:市場と企業・消費者の温度差 136
円安・株高のはじまりは外国人投資家
金融市場と実物経済の非対称性
4 成長余力の過大評価:楽観主義の錯誤 142
「日本経済は強い」という主張の根拠はどこにある?
リフレ派の空想的楽観論
5 「出口」なき大胆な金融緩和:決断主義の錯誤 147
「出口」をいつまでも意識しないでよいのか
日本に潜む「出口」までの困難
ジリ貧かドカ貧か
【コラム】 マクロ政策で潜在成長率の引き上げは可能か 153
第4章 デフレ・マインドとの闘い 161
1 「デフレ・マインド」とは何か 161
企業や家計の消極的な行動様式
賃上げに及び腰の労働組合
「学習された悲観主義」という日本病
三度の金融危機が慎重化を促進
2 「日本的雇用」とデフレ・マインド 170
いまだ「世紀末の悪夢」から抜け出せず
メンバーシップ型雇用の呪縛
イノベーションの波に乗り遅れる日本企業
3 物価の「アンカー」 177
「錨」〔アンカー〕としての社会の基底に根づくもの
安倍政権の逆所得政策
4 マネタリーベースの誤解 185
マネタリーベースの意味が大きく変わった
通貨発行益を考える
ヘリコプター・マネー?
5 QQEの行き詰まり 194
市場も怪しい雲行きに気づき始めた
国債大量買入れの限界
6 短期決戦から持久戦へ:マイナス金利の導入 199
金利政策への回帰
政策の枠組み変更の意義
7 マイナス金利政策の功罪 203
マイナス金利政策の効果と副作用
マイナス幅拡大の制約
マイナス金利付きQQEの問題点
【コラム】 キャリー・トレードとしての量的緩和 211
第5章 「出口」をどう探るか 225
1 「出口」の必須条件:財政の維持可能性への市場の信認 225
出口で何が起こるのか
長期金利上昇と金融システムの安定性
欧州債務危機の教訓
「出口」の成否を決めるもの
2 「成長頼み」の財政再建計画 234
あまりに遠い財政健全化
債務残高・名目GDP比率について
税収弾性値をめぐる議論
3 経済成長優先の幻想 243
潜在成長率の低下がネックとなる
消費増税の影響評価
4 財政健全化の柱は社会保障改革 249
消費税率アップだけでは財政健全化は達成できない
社会保障改革の本丸は医療・介護分野
成長戦略の役割
5 QQEは市場を殺す政策 255
国債を国内貯蓄だけで吸収できなくなる日が近づいている
市場からの警告が聞こえない
マイナス金利政策への純化を
6 市場とのコミュニケーションの再建を 261
日銀の発信情報はもう信じられない
ピーターパンの誤解:「王様は裸だ!」
【コラム】 金融抑圧は可能なのか 266
あとがき(2016年5月 早川英男) [277-280]
参考文献 [281-288]