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『金融政策の「誤解」――“壮大な実験”の成果と限界』(早川英男 慶應義塾大学出版会 2016)

著者:早川 英男[はやかわ・ひでお] (1954-) エコノミスト日本銀行
NDC:338.3 金融・銀行政策.金融統制


慶應義塾大学出版会 | 金融政策の「誤解」 | 早川英男


【目次】
目次 [iii-viii]


序章 QQEの実験から見えてきたもの 001
  QQEは「短期決戦」だった
  長期戦の戦局は悪化していった
  マイナス金利導入:起死回生策も不発
  QQEが明らかにしたこと、隠していること
  柔軟で透明な政策運営を


第1章 非伝統的金融政策:私論 015
1 「普遍化」する非伝統的金融政策 015
  「全く次元のちがう金融緩和」の衝撃
  非伝統的金融政策の分類
  非伝統的金融緩和の歴史:日銀、FRB、ECBのイノベーション
  リーマン・ショックFRB
  欧州中央銀行(ECB)の苦悩
  マイナス金利というイノベーション
  「非伝統的金融政策=量的緩和」ではない
2 QQEの実験的性格 028
  QQEの効果を理論的に考える
  マネタリーベースの増量
  信用緩和/長期金利の押し下げ
  現実の金融市場はちがう?
  意味深長なバーナンキ発言
3 非伝統的金融政策の倫理的側面 040
  嘘をつくことは許されるか
  国民負担の問題
【コラム】 日銀の作戦:なぜQQEは「バズーカ」になったのか 048


第2章 QQEの成果と誤算 057
1 QQEがもたらした成果 057
 (1) 大幅な円安と株高 057
  野党党首だったから許された円安誘導発言
  反転上昇の兆しがあった株価
 (2) デフレ脱却の実現 063
  「デフレ脱却」未達感の理由
  デフレ脱却の条件はクリアできたか
2 QQE(アベノミクス)の誤算 066
 (1) 「2年で2%」の未達成 066
  「インフレ目標2%」は妥当な水準
  三つの留意点
 (2) 経済成長率の低迷 070
  「長期低迷の主因はデフレ」とは限らない
  最大のサプライズは輸出の伸び悩み
  公共投資と駆け込み需要による攪乱
 (3) 人手不足時代の到来 081
  うれしい誤算
  賃金上昇の実態
  労働集約型産業で人手不足が深刻化
3 QQEが明らかにした課題:潜在成長率の低下 086
  上がらない生産性
  エレクトロニクス産業の不振が生産性押し下げ要因か
  需給ギャップの推計をめぐって
  資本ストックの不稼働問題
  デフレ脱却は潜在成長率低下のおかげ?
4 ハロウィン緩和の「誤射」 099
  不可解な緩和決定
  「誤射」の結末:トリクル・ダウン戦略の破綻
  ハロウィン・バズーカはミッドウェー海戦だったのか
【コラム】 人口動態、過剰貯蓄とデフレ:「長期停滞論」再考 106


第3章 「リフレ派」の錯誤 119
1 「リフレ派」的思考法:主観主義・楽観主義・決断主義 119
  「リフレ派」を定義する
   「リフレ派」の主張は整合的か
   リフレ派の困った議論(1):後出しジャンケン
  リフレ派の困った議論(2):精神論
2 期待一本槍の政策論:主観主義の錯誤 127
  リフレ派の大本はマネタリズム
  自然利子率の概念
  テイラー・ルール
  マネタリーベースを金融調節の軸に据えるのは的外れ
  資産価格への影響を考える
3 さまざまな「期待」:市場と企業・消費者の温度差 136
  円安・株高のはじまりは外国人投資家
  金融市場と実物経済の非対称性
4 成長余力の過大評価:楽観主義の錯誤 142
  「日本経済は強い」という主張の根拠はどこにある?
  リフレ派の空想的楽観論
5 「出口」なき大胆な金融緩和:決断主義の錯誤 147
  「出口」をいつまでも意識しないでよいのか
  日本に潜む「出口」までの困難
  ジリ貧かドカ貧か
【コラム】 マクロ政策で潜在成長率の引き上げは可能か 153


第4章 デフレ・マインドとの闘い 161
1 「デフレ・マインド」とは何か 161
  企業や家計の消極的な行動様式
  賃上げに及び腰の労働組合
  「学習された悲観主義」という日本病
  三度の金融危機が慎重化を促進
2 「日本的雇用」とデフレ・マインド 170
  いまだ「世紀末の悪夢」から抜け出せず
  メンバーシップ型雇用の呪縛
  イノベーションの波に乗り遅れる日本企業
3 物価の「アンカー」 177
  「錨」〔アンカー〕としての社会の基底に根づくもの
  安倍政権の逆所得政策
4 マネタリーベースの誤解 185
  マネタリーベースの意味が大きく変わった
  通貨発行益を考える
  ヘリコプター・マネー?
5 QQEの行き詰まり 194
  市場も怪しい雲行きに気づき始めた
  国債大量買入れの限界
6 短期決戦から持久戦へ:マイナス金利の導入 199
  金利政策への回帰
  政策の枠組み変更の意義
7 マイナス金利政策の功罪 203
  マイナス金利政策の効果と副作用
  マイナス幅拡大の制約
  マイナス金利付きQQEの問題点
【コラム】 キャリー・トレードとしての量的緩和 211


第5章 「出口」をどう探るか 225
1 「出口」の必須条件:財政の維持可能性への市場の信認 225
  出口で何が起こるのか
  長期金利上昇と金融システムの安定性
  欧州債務危機の教訓
  「出口」の成否を決めるもの
2 「成長頼み」の財政再建計画 234
  あまりに遠い財政健全化
  債務残高・名目GDP比率について
  税収弾性値をめぐる議論
3 経済成長優先の幻想 243
  潜在成長率の低下がネックとなる
  消費増税の影響評価
4 財政健全化の柱は社会保障改革 249
  消費税率アップだけでは財政健全化は達成できない
  社会保障改革の本丸は医療・介護分野
  成長戦略の役割
5 QQEは市場を殺す政策 255
  国債を国内貯蓄だけで吸収できなくなる日が近づいている
  市場からの警告が聞こえない
  マイナス金利政策への純化
6 市場とのコミュニケーションの再建を 261
  日銀の発信情報はもう信じられない
  ピーターパンの誤解:「王様は裸だ!」
【コラム】 金融抑圧は可能なのか 266


あとがき(2016年5月 早川英男) [277-280]
参考文献 [281-288]