著者:橘木 俊詔[たちばなき・としあき](1943-) 労働経済学。
【メモ】
・本書には、すべてのページに下段の余白と章扉の用語一覧(解説無し)がある。ひょっとして、「注は読者が書き込んで作っていくのだ」という暑苦しくて面倒だが、ためになる演習スペースという意図なのだろうか。
・版元による本書のPR文。
[日本経済を読み解く六つの視点]
1.明治時代以降の100年の歴史的な活動・行動を読み解く
2.教育・社会保障・働き方にまつわる制度について考察する
3.企業と労働者の行動様式の変化を解釈する
4.政府が日本社会で果たしてきた役割を客観的に評価する
5.女性にかんする労働と生活の両立の問題を考察する
6.格差問題を効率と公平のトレード・オフ関係から分析する
【目次】
はしがき――日本経済を読み解く視点 [i-iv]
目次 [v-xii]
図表目次 [xiii-xiv]
第1章 戦前における旧体制の日本経済 001
1.1 どの産業で、どういう職業に就いていたか 003
江戸時代の経済
明治維新と殖産興業
教育制度の普及
農業従事者がほとんどであった
1.2 戦前の過酷な所得格差はどのようにして発生したのか 016
国民の生活は過酷なほど苦しかった
経済学から見た地主・小作人関係
農地改革が実現した格差の縮小
第2章 日本経済の成功物語:高度成長期と安定成長期 025
2.1 高度成長に至る日本経済の成功物語 027
敗戦による経済破壊と立ち直り
日本経済はなぜ高度成長を実現できたのか
労働移動は産業間・地域間で進んだ
2.2 日本経済はスタグフレーションからいち早く脱出した 040
日本経済が一番輝いた安定成長期
高度成長期と安定成長期における問題点
第3章 バブル後に長期停滞に陥る 047
3.1 バブルの発生と破裂が日本経済を痛めつけた 049
国際収支の壁の大切さ
黒字基調の定着と日本経済の国際性
3.2 バブルに踊り、「失われた20年」にもがく日本経済 051
バブル経済への突入とその破裂
小泉構造改革の路線
経済効率性と分配の公平性はトレード・オフの関係か
3.3 経済の低迷が政権交代を引き起こす 061
小泉内閣以降の経済低迷
民主党政権の3年間の功罪
アベノミクスの「三本の矢」はどのように評価できるか
第4章 戦前から戦後において、人はどこで働いていたか 071
4.1 戦後はどの産業で働き、どの職業に就いていたか 073
日本経済の産業構造の変化
産業構造の変化に伴う職業の変化
4.2 男女の労働力比率はどのように変化したか 076
戦前の男性のほとんどが働いていた
戦前の女性の就業はM字型カーブを描いていない
戦後の労働力率はどのように推移したのか
第5章 日本企業の特色とコーポレート・ガバナンス 087
5.1 高度成長期の日本企業 089
高度成長を支えた日本企業の特色
日本企業では長期取引が重視される
大企業と中小企業との間の二重構造問題
5.2 低成長時代の日本企業 098
バブル経済を経験した日本企業はどう変化したか
5.3 日本企業のコーポレート・ガバナンス 105
企業を保有しているのは誰か
エージェンシー問題
労働者の経営参加とは何か
労働の柔軟性とワーク・シェアリング
第6章 自営業者が減少したにもかかわらず、一部は高所得者になる 117
6.1 雇用者 vs. 自営業者 119
企業で働く雇用者
労働に対して支払われる種々の報酬
自営業者という働き方
雇用者になるのか自営業者になるのか、という選択
戦後には自営業者は減少し続けた
6.2 少数ながらも高い報酬を得ている自営業者がいる 131
高額の報酬を得ているのは、どのような自営業者なのか
極端に高い所得を得ているのはどのような人々か
スーパースターの経済学
トーナメント理論
第7章 女性は生活者だったのか、それとも労働者だったのか 139
7.1 女性の生き方の選択 141
選択肢の多い女性は幸福か
母性論はいかに生まれたのか
生活者としての女性
7.2 女性の働き方の選択 150
女性にとっての働くということの選択
女性は職場でどう扱われているのか
7.3 男女のダイバーシティ社会を実現するために 157
女性管理職が少ない背景
どうすれば女性の管理職は増加するか
女性は生活者だったのか、労働者だったのか
第8章 政府は産業発展の牽引車だったのか、それとも生活者の味方だったのか 165
8.1 政府は経済発展を最優先とした時代 167
戦前の日本政府が果たした役割
戦後の高度成長期における政府の役割
政府が定めた戦後の経済計画
産業政策の功罪
Too big to fail (大きすぎて潰せない)企業
8.2 政府は生活者の味方であったのか 199
安心のある福祉社会へとの声が強くなる
政府の支出構成比から言えること
政府は本当に生活者の支援に出動したのか――非正規労働者の処遇
第9章 日本が福祉国家になることにおいて、財政赤字は支障となるのか 199
9.1 日本は福祉国家ではない 201
戦前は家族が福祉の担い手だった
福祉への政府の登場
戦争中に行われた社会保険改革の目的
戦後に行われた社会保障制度改革
「日本的福祉国家論」とは何か
日本の福祉の現状をどう評価するか
日本はどのような福祉国家へと向かうべきか
9.2 日本経済の巨額の財政赤字をどう考えるべきか 215
日本の財政赤字の規模
財政支出と歳入の経済学
福祉国家と財政赤字は両立するか
第10章 不平等社会から平等社会へ、そして再び不平等社会へ 225
10.1 戦前の日本は不平等社会だった 227
華族・士族・平民という三つに分かれた身分社会
所得・資産の格差は極端に大きかった
巨額の資産保有家と高額所得者が存在した
10.2 戦後の日本社会は平等社会へ向かって発展した 235
日本社会の平等化を進めたGHQによる改革
高度成長期と安定成長期に平等化がおし進められた
10.3 再び不平等社会へと向かう日本経済 245
1980年代以降に再び不平等化がはじまる
貧困の深刻さが際立つ日本の格差社会
経済の効率性と公平性の両立は可能か
第11章 教育が日本経済と社会に与えた影響 255
11.1 教育が経済成長に及ぼす効果 257
経済成長理論の簡単なサーベイ
教育は個人の所得にどのような影響を及ぼすのか
11.2 教育が個人の所得や職業,地位に及ぼす効果 267
日本社会における学歴主義
日本は人々が考えるほど学歴社会ではない
教育の機会平等が侵されている
第12章 今後の日本経済の進路を占う 281
12.1 少子化問題と経済成長はどのように関連しているのか 283
深刻な少子化問題
日本の出生率は、なぜ低下したのか
少子化が経済成長に及ぼすマイナスの効果
定常状態が必要である根拠
12.2 少子化と社会保障問題 297
少子化は、なぜ社会保障にとって問題なのか
日本はどのような福祉国家を目指すべきか
12.3 出生率を引き上げる政策 307
出生率上昇政策に対する不要論
出生率上昇のためにはどのような政策が考えられるか
参考文献 [315-318]
索引 [1-10]