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『科学哲学からのメッセージ――因果・実在・価値をめぐる科学との接点』(松王政浩 森北出版 2020)

著者:松王 政浩[まつおう・まさひろ](1964-) 科学哲学。
編集担当:丸山 隆一(森北出版)
編集責任:上村 紗帆(森北出版)
NDC:401 科学理論.科学哲学


科学哲学からのメッセージ|森北出版株式会社


【目次】
はじめに [i-v]
目次 [vi-vii]


  第I部 科学哲学は何を問題にしてきたか


第1章 因果性 002
    本章のアウトライン

1.1 因果性は必要な前提か? 007

1.2 因果の定義をめぐって 010
  1.2.1 参照点の参照点としてのヒューム 010
    (1) 第一の定義
    (2) 第二の定義
  1.2.2 法則でつながれた二つの事象――規則説①
    法則的関係への還元の問題点
  1.2.3 INUS条件――規則説②
    INUS条件の問題点
  1.2.4 反事実条件による因果の定義
    ルイス流の反事実条件の問題点
  1.2.5 プロセス説
    プロセス説の問題点
    保存量説以後の問題
    「関連性」問題
    欠落因果問題
    プロセス説の注目すべき視点
  1.2.6 確率説
  1.2.7 介入説――新たな反事実条件説
    介入説の問題点と応答

1.3 本章のまとめ 060

コラム 1.1 プロセス説の限界を補うメカニズム説? 044
コラム 1.2 統計的因果推論――因果論の新たな流れ 055


第2章 実在論反実在論 062
2.1 論争の出発点としての「実在論」と、証明責任の所在 069
    本章のアウトライン

  2.1.1 出発点としてのパトナムの科学的実在論 071

2.2 反実在論者による批判 075
  2.2.1 「誤りの歴史」からの批判 075
    (1) 指示と科学的成功の関係
    (2) 近似的真理と科学的成功の関係
    (3) 収束説と科学の歴史
  2.2.2 決定不全性による批判 079

2.3 実在論の応答的展開 084
  2.3.1 構造実在論 085
    ウォラル[Worrall]による奇跡論法擁護(スタンフォードへの応答)
    ウォラルの応答の可否
  2.3.2 分割統治論 099
    スタンフォードの批判への応答
    一階の証拠をめぐる推論方法
    スタンフォードのシロス[Psillos]批判

2.4 反実在論者の証明責任 110
  2.4.1 ラウダン[Laudan]による科学の信頼性擁護 111
    クーンのパラダイム
    ラウダンによるクーン説の修正(網目状モデル)
    比較主義と尤度主義
    (1) ベイズ主義に対する批判
    (2) 誤り統計学に対する批判
    (3) 比較主義
    比較主義の方法

  2.4.2 スタンフォードによる科学の信頼性擁護 128

2.5 本章のまとめ 132

コラム 統計学の三つの立場 089


第3章 価値判断 134
  本章のアウトライン

3.1 R・ラドナーの「科学者としての価値判断」 139
  3.1.1 科学に関する二つの前提
  3.1.2 「科学者としての科学者」が行う判断

3.2 価値判断をめぐるラドナーへの対抗的議論、擁護論 147
  3.2.1 確率的評価の分離 148
    R. ジェフリーの反論
    事実と価値の関係

  3.2.2 結果の考慮に関するラドナー説の擁護 153
    「確率は問題を一歩後退させるだけ」という議論
    もう一つのラドナー擁護論――確率に関する情報の標準化(スティール[Steele])
    スティール説の課題
    ここまでのラドナー評価

3.3 マクマランによる拡張的議論とその批判 161
  3.3.1 素粒子発見における99.9999%という確率 162
  3.3.2 E. マクマランにのるラドナー批判と拡張的議論 164
    クーンを批判の契機として
    価値判断の種別化
  3.3.3 マクマランの図式に対する二つの批判 170
    (1) 二項対立図式に対する批判――ロンジーノ[H. Longino]の批判
    フェミニズム論の示唆すること
    (2) 実在論的「認識的価値」批判――ラウダンの批判

3.4 ダグラスによるラドナー再評価と「実践的」問題への視点 177
  3.4.1 価値の「種類」から「役割」へ 178
    (i) 価値の直接的役割
    (ii) 価値の間接的役割
  3.4.2 ダグラスの価値役割論の見取り図と課題 185
    (1) 各役割の配置の精緻化
    (2) 科学者の規範

3.5 本章のまとめ 187

コラム 3.1 価値判断をめぐるカルナップ=クワイン論争 145
コラム 3.2 マクマランの図式の継承 176


  第II部 科学哲学と科学の接点


第4章 因果論と因果の発見 190
4.1 科学における因果 193
  4.1.1 事例(1)――太陽ニュートリノニュートリノ振動 193
    因果定義論との接点
  4.1.2 事例(2)―― CADDIS[The Causal Analysis/Diagnosis Decision Information System]の因果分析 200
    因果定義論との接点
  4.1.3 事例(3)――ジカウイルスと小頭症 213
    シェパード[T. H. Shepard]基準
    因果定義論との接点

4.2 科学哲学における多元論論争 220
  4.2.1 存在論的多元論 221
    日常言語に基づく多元論
    ホールの二元論の存在論的解釈
  4.2.2 概念的多元論 224
    ルッソ&ウィリアムソン[Russo & Williamson]の認識的因果論

4.3 多元性をめぐる第三の解釈 228
  4.3.1 ブロードベントによる二つの科学的態度の「調停」 228
  4.3.2 第三の多元論解釈 232
    科学からの課題に対して
    還元的因果論との関係

4.4 本章のまとめ 238


第5章 実在論論争と科学の実践 240
5.1 気候変動科学における理論の確からしさ評価 244
  5.1.1 理論としての人為起源接 245
  5.1.2 IPCC報告書(第五次、AR5)における不確実性(確からしさ)評価方法 250
  5.1.3 二つのエキスパートジャッジメント 252
    「統計的」不確実性と「構造の」不確実性
  5.1.4 人為起源論の不確実性評価 258
    主因を探る背景と必要な情報
    モデルシュミレーションによる評価
    人為起源論評価にかかる推論

5.2 実在論論争を手がかりとする人為起源論の推論 268
  5.2.1 比較主義との共通性との齟齬 268
  5.2.2 実在論との共通性 270
    シロスの実在論(分割統治説)との符号
  5.2.3 人為起源論評価の問題点 276

5.3 人為起源論評価の見直し 278
  5.3.1 比較主義適用のメリットとディメリット 278
  5.3.2 「理論追究」の枠組みによる理論評価比較 282
  5.3.3 人為起源論の再評価 288
  5.3.4 理論支持の定量的指標 290

5.4 実在論論争の見直し 295
  5.4.1 誤り統計学 296
  5.4.2 実在論論争の新たな視点 298  

5.5 本章のまとめ 304

コラム 5.1 IPCC報告書における確からしさ評価の変遷 246
コラム 5.2 放射強制力の推定 259
コラム 5.3 「経験的成功の種類、理論の定量的評価」 293


第6章 価値判断と科学者の規範 
6.1 科学者の実践的価値判断から 307
  6.1.1 IPCCの報告書制作過程 308
    科学者に何が期待されているか(N. H.スターン)
    気候変動科学において科学者の価値判断を考える基準

  6.1.2 化学物質のリスク評価 315
    ダイオキシン類の評価を例として(「閾値あり」とするケース)
    ラドナー的価値判断再考
    「閾値なし」のケース
  6.1.3 地震学と防災 325
    東日本大震災後の地震学者の態度
    地震学における二階の不確実性
    二つのラドナー擁護論
  6.1.4 「強い」ラドナー的判断、「弱い」ラドナー的判断が成立する「タイプ」 334

6.2 ダグラスの価値判断「役割配置」再考 339
  6.2.1 二階の不確実性に関する価値判断の「役割」 340
  6.2.2 方法選択と価値判断との関係 341
    精神医学の例
    メタな価値判断の必要性
  6.2.3 ダグラスの見取り図修正 346

6.3 価値判断と規範 350
  6.3.1 ダグラスの責任論 350
  6.3.2 責任論の適用条件 352
    (1) 結果の不確実性判断について
    (2) 方法選択、データ解釈について

6.4 本章のまとめ 357


おわりに(二〇二〇年九月 松王政浩) [359-361]
参考文献 [362-368]
索引 [369-373]





【メモランダム】
・本書の「序文」が公開されている。
科学と科学哲学はいかに協働できるのか──近刊『科学哲学からのメッセージ』(松王政浩 著)序文公開|森北出版|note