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『企業・市場・法』(Ronald H. Coase[著] 宮澤健一, 後藤晃, 藤垣芳文[訳] ちくま学芸文庫 2020//1992//1988)

原題:The Firm, the Market, and the Law (University of Chicago Press, 1988)
著者:Ronald Harry Coase(1910-2013)
訳者:宮澤 健一[みやざわ けんいち](1925-2010) 
訳者:後藤 晃[ごとう・あきら](1945-)
訳者:藤垣 芳文[ふじがき・よしふみ](1953-)
カバーデザイン:細野 綾子[ほその・あやこ]  
NDC:331.84 経済学.経済思想 >> 経済各論 >> 交換の理論:流通,価値,価格
件名:産業組織
件名:外部効果
件名:資本主義
備考:個人的には「法と経済学」「シカゴ学派」も本書に関連する件名として置きたい。
備考:R. H. Coase本人が編んだ論文集。日本語版は東洋経済新報社から1992年に刊行された。本書はその改訂・文庫版。なお、各章に収められた論文の原題と初出年については、このページ下部のメモ欄を参照。


筑摩書房 企業・市場・法 / ロナルド・H・コース 著, 宮澤 健一 著, 後藤 晃 著, 藤垣 芳文 著


【目次】
目次 [003-006]
序 [007]
凡例 [008]


第一章 企業・市場・法 011
  1 本書の目的
  2 企業
  3 市場
  4 社会的費用の問題
  5 限界費用低格形成
  6 ピグー伝統と現代の経済分析
  7 今後の課題


第二章 企業の本質 063
  1 資源配分の二つのルート
  2 市場利用の費用、組織化、企業規模
  3 分業、不確実性との関連
  4 費用曲線、複数財生産との関連
  5 法的関係、現実との対応性


第三章 産業組織論――研究についての提案 103


第四章 限界費用論争 135
  1 論争の状況
  2 問題の明確化
  3 最適な価格形成とは何か
  4 多部価格形成〔マルテイパートプライシング〕を支持する議論 論
  5 多部価格形成とホテリング = ラーナー解法との比較
  6 平均費用価格形成とホテリング=ラーナー解法との比較
  7 残された問題


第五章 社会的費用の問題 169
  1 検討すべき問題
  2 問題の双方的性質
  3 損害賠償責任が問われるときの価格システム
  4 損害賠償責任が問われないときの価格システム
  5 実例による問題の再点検
  6 市場取引費用の考慮
  7 権利の法的な境界画定と経済問題
  8 『厚生経済学』でのピグーの分析
  9 ビグー的伝統
  10 アプローチの変更


第六章 社会的費用の問題に関するノート 273
  1 コースの定理
  2 富は最大化されるのか
  3 コースの定理とレント
  4 権利の割当と富の分配
  5 取引費用の影響
  6 ピグー的課税


第七章 経済学のなかの灯台 323
  1 序論
  2 英国の灯台制度
  3 英国灯台制度の展開
  4 結論


訳者あとがきと略解(一九九一年季冬 宮澤健一) [369-385]
  1
  2
  3
  4
  5
ちくま学芸文庫版『企業・市場・法』刊行によせて(二〇一九年一〇月 後藤晃) [386-391]
人名索引 [392-394]
事項索引 [395-396]



【メモランダム】
・各国語への翻訳状況。
Ronald Coase: Translations of Works



・各賞の初出年。私(id:Mandarine)が、英語版Wikipediaと本書の章末注と「訳者あとがきと略解」を元にまとめた。

第1章 企業・市場・法
  1988. 書下ろし。
第2章 企業の本質
  1937. "The Nature of the Firm" Economica, n. s., 4. November, 386-405.
第3章 産業組織論――研究についての提案
  1972. "Industrial Organization: A Proposal for Research" in Victor R. Fuchs, ed.,Policy Issues and Research Opportunities in Industrial Organization, NBER General Series, no.96,
第4章 限界費用論争
  1946. "The Marginal Cost Controversy" Economica, n. s., 13. August, 169-182.
第5章 社会的費用の問題
  1960. "The Problem of Social Cost". Journal of Law and Economics. 3 (October) (1): 1–44
第6章 社会的費用の問題に関するノート
  1988. 書下ろし。
第7章 経済学のなかの灯台
  1974. "The Lighthouse in Economics". Journal of Law and Economics. 17 (2): 357–376.

・文庫化についての説明(後藤晃「ちくま学芸文庫版『企業・市場・法』刊行によせて」から)。

 本書は、最初に一九九二年に宮澤健一、後藤晃、藤垣芳文訳で東洋経済新報社からハードカバーで出版されちくま学芸文庫に収録されるにあたって、後藤、藤垣の二名で全面的に訳を見直し、修正を加えた。今回の改訂はかなり大幅なものとなっている。




【抜き書き】


 コースによる「序」。

 この本の目的は、私の仲間の経済学者諸氏を説得して、ミクロ経済学上のいくつかの重要な諸問題を分析する際の方法を変えさせようとするにある。本書の大部分は、すでに発表された論文の再録からているが、今回本書をまとめるにあたって、第一章の序論的な論文と、第六章の「社会的費用の問題に関するノート」とを新たに加えた。それらは、本書に収められている論文における論議の性格をより明確にするため、また、それらの論文に対してなされた批判の主なものに答えるためのものである。



・「第5章 社会的費用の問題」(p. 260)から。

経済学者は、企業の問題を研究する際、よく機会費用にもとづくアプローチを用い、生産諸要素のある所与の結合から得られる収益を、代替的な事業計画(から得られる収益)と比較することを慣行としている。経済政策の問題を取り扱うにあたっても、同様のアプローチを採用するのが望ましく、代替的な社会制度によってもたらされる総生産物を比較することが望まれよう。〔……〕経済的問題の解決のために、様々な社会制度のなかから選択をするときには、市場評価よりもっと広い視点からその選択はなされるべきことが望ましく、また、これらの社会制度が及ぼす人間生活のあらゆる側面への全体的効果が考慮に加えられるべきことが望ましい。フランク・H・ナイトがしばしば強調したように、厚生経済学の諸問題は、究極的には、審美学と道徳の考察のなかへと発展的に解消されていかなければならない。