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『哲学としての医学概論――方法論・人間観・スピリチュアリティ』(杉岡良彦 春秋社 2014)

著者:杉岡 良彦[すぎおか・よしひこ](1966-) 医師。医学博士。
装丁:芦澤 泰偉[あしざわ・たいい](1948-) 装幀。アートディレクション
件名:医学哲学
NDC:490.1 医学 >> 医学哲学
NDLC:SC21 


哲学としての医学概論 - 春秋社 ―考える愉しさを、いつまでも


【目次】
はじめに――本書の目的・構成・特徴 [i-viii]
目次 [ix-xviii]
凡例 [xix]


  第1部 医学概論とは何か

第1章 澤瀉久敬の医学概論と現代医学 005
はじめに 005
1 医学概論について――澤瀉〔おもだか〕の医学概論の構成と特徴 006
2 現代医学の生命観と澤瀉の生命論 010
3 医学はいかなる意味で非物質的な生命概念を否定するようになってきたのか 016
4 澤瀉の生命論は現代においても有効か 021
5 今後の医学と医学概論 026
注 031


第2章 澤瀉久敬の医学概論と残された課題 037
はじめに 037
1 医学概論誕生の経緯 038
2 『医学概論 第一部 科学について』 039
3 『医学概論 第二部 生命について』 044
4 『医学概論 第三部 医学について』 049
  4・1 第三部の構成と特徴
  4・2 生命論に基づく医学論
  4・3 相補・代替医療
  4・4 医の論理(医道論)
5 澤瀉が残した仕事――医学概論講座の開設 055
注 058


第3章 柏祐賢の農学原論と澤瀉久敬の医学概論 061
はじめに 061
1 農学原論講座開設の経緯――二つの要因 062
2 柏祐賢の『農学原論』 064
  2・1 序論
    2・1・1 農学原論とは何か
    2・1・2 哲学と科学の関係
    2・1・3 農学原論の体系
  2・2 科学としての農学――その特質、方法、体系
    2・2・1 農学の科学的特質
      2・2・1・1 科学としての農学の問題
      2・2・1・2 農学の科学的本質――第三科学論
    2・2・2 農学の方法とEBM
3 柏祐賢の実在論・人間観 076
4 柏祐賢の農学原論と澤瀉久敬の医学概論をめぐる諸問題 080
  4・1 人間観の問題
  4・2 科学観の問題
  4・3 第三科学は単なる実学
5 農学原論や医学概論は農学や医学に何をもたらすのか 090
注 094


  第2部 医学の方法論

第4章 二つの認識方法――科学的認識と哲学的認識 101
はじめに 101
1 ベルクソンと澤瀉の科学論 101
2 医療における認識の問題 109
  2・1 医療面接におけるコミュニケーションの重要性
  2・2 心理療法における共感と精神医学における了解
注 117


第5章 分子生物学 121
はじめに 121
1 近代医学への素描 122
2 二重らせんモデルの発見と分子生物学 126
  2・1 分子生物学から疾患を理解する――ポイントミューテーションの例
  2・2 分子生物学と治療への応用
    2・2・1 分子標的治療薬
    2・2・2 再生医療――iPS細胞の作製の経緯
3 なぜ分子生物学は医学を支える重要な方法論の一つであるのか 132
  3・1 現象と実在(本質)をめぐる議論
  3・2 臨床応用を可能にする方法
  3・3 分子生物学による生物医学の推進
注 136


第6章 臨床疫学/EBM 139
1 現代医学のもう一つの主要な方法論――臨床疫学 139
2 EBMという新たな医療の概念 140
  2・1 新たなパラダイムとしてのEBM
  2・2 EBMと臨床疫学
  2・3 EBMの手順
    ステップ1 臨床上の疑問点の抽出
    ステップ2 疑問を解決するために役立つと思われる文献の効率的な検索
    ステップ3 得られた文献の妥当性評価
    ステップ4 文献結果の患者への適用性判断
  2・4 GRADEとNNT――新たな評価の概念
    2・4・1 エビデンスの質と推奨のグレードの問題
    2・4・2 治療必要数――効果の評価の指標
3 臨床医学EBMが現代医学におよぼす意義 152
  3・1 医学/医療の反省としての臨床医学EBM
  3・2 臨床医学の重視――第三科学論の視点から
  3・3 世界観から比較的自由である点
4 臨床疫学/EBMの限界と問題点  157
  4・1 あくまで「科学」としての臨床疫学――NBM[Narrative Based Medicine]との補完性
  4・2 大規模調査に関わる諸問題
  4・3 エビデンスの質に関する諸問題――機械論的推論と専門家の判断
5 最後に科学と哲学の協力の必要性 165
注 166


  第3部 医学の人間観

第7章 エンゲルの生物心理社会モデル 173
1 エンゲル[George E. Engel]の生物心理社会モデル 173
  1・1 生物医学への批判
  1・2 新しい医療モデルの必要性
  1・3 新たなパラダイムとしてのBPSモデル
  1・4 臨床場面での二つの方法論
2 生物心理社会モデルの医学への影響 180
3 医療モデルと科学的研究 181
  3・1 人間観の導入としてのBPSモデル
  3・2 心身一如と心身相関の科学
  3・3 BPSモデルを支える科学的研究
4 生物心理社会モデルの意義 190
注 191


第8章 ナシア・ガミーによる生物心理社会モデル批判 195
はじめに 195
1 エンゲルの生物心理社会モデルへの反論 196
  1・1 折衷主義批判
  1・2 アンチヒューマニズム批判
2 ガミー[Nassir Ghaemi]による新たなモデル――方法に基づく精神医学 201
  2・1 方法に基づく精神医学の提唱
  2・2 二種類の知――科学的知と人文学的知
  2・3 方法に基づく精神医学とヒューマニズム
3 ガミーによるエンゲル批判を検討する 208
4 ガミーの方法に基づく精神医学(多元主義)を検討する 211
5 エンゲルとガミーに共通する課題 215
注 216


第9章 フランクルの次元的人間論と生物心理精神社会モデルの提唱 219
はじめに 219
1 フランクル[V. E. Frankl]の人間論――自由、責任、意味への意思、自己超越、自己距離化 220
2 三つの次元と次元的人間論/存在論 224
3 科学をどのように考えたか生物学主義、心理学主義、社会学主義への批判 229
4 フランクル・エンゲル・ガミーの比較 232
  4・1 エンゲルのモデルとフランクルの人間論の比較
  4・2 ガミーの多元主義フランクルの思想の比較
5 まとめ 239
注 241


  第4部 現代医学の諸問題

第10章 ロゴセラピーと内観療法 247
はじめに 247
1 抑うつ症状と絶望に苦しむ患者への三種の対応 248
2 実存的空虚とロゴセラピー 250
  2・1 実存的空虚と人間観の問題
  2・2 ロゴセラピーと人生の意味
3 人生が意味で充たされる三つの方法と苦悩の意味 257
4 内観療法とロゴセラピー 260
  4・1 内観療法
  4・2 内観療法の面接者の役割と人間観
  4・3 内観療法の治療メカニズム
  4・4 ロゴセラピーと内観療法の共通点と相違点
    4・4・1 ロゴセラピーと内観療法の共通点
      (1) 実存的空虚に対する治療
      (2) 苦悩への態度
      (3) 人間存在の精神的次元に働きかける
    4・4・2 ロゴセラピーと内観療法の相違点
      (1) 方法論上の違い
      (2) 責任の対象の違い
5 ロゴセラピーと内観療法が現代医学に与える意義 269
  5・1 新たなパラダイムの提唱
  5・2 医学の再人間化
  5・3 苦悩に対する患者および医療者の理解の刷新
  5・4 予防医学的効果(特にメンタルヘルスにおける予防)
6 今後の課題 278
注 279


第11章 医学における疑似科学の問題――代替医療疑似科学か 285
はじめに 285
1 疑似科学反証可能性 286
2 代替医療への批判と現状 289
  2・1 代替医療に対する批判
  2・2 代替医療国立相補・代替医療センター(NCCAM)
3 代替医療に対する批判の検討 293
  3・1 証明に対する批判
  3・2 機械論的自然観の問題
4 代替医療における科学性――まとめにかえて 298
  4・1 研究への態度の問題
  4・2 病理論、治療論等の論理的整合性
  4・3 次元的人間論からの科学的検討(分子生物学的証明と疫学的証明)
  4・4 臨床疫学による二段階の証明とアウトカムの批判的検討
  4・5 医学における独自の科学論の必要性
注 306


第12章 統合医療の問題点は何か 309
はじめに 309
1 統合医療の提言と定義 310
2 統合医療と次元的人間論 312
  2・1 「統合」に関する一般的な同意
  2・2 加算的折衷主義としての統合
  2・3 統合医療ニヒリズム
  2・4 次元的人間論の導入
  2・5 人生という物語内での統合
3 統合医療を考える意義と統合医療の課題 323
追記 326


第13章 近藤誠が現代医学に問いかけるもの 329
はじめに 329
1 近藤誠の主張 330
  1・1 がん検診の問題
  1・2 がんもどき理論
2 近藤理論への反応1――医学界の反応 334
3 近藤理論への反応2――患者・市民の反応 337
  3・1 乳がん患者の声とニヒリズム
  3・2 『がんと闘わない』あとで――諦観と共生
4 医学概論から近藤誠を考える――医学哲学としての『患者よ、がんと闘うな』 340
5 安保理論とその問題点 343
  5・1 安保理論と発がんのメカニズム
  5・2 安保の問題点
6 安保と近藤が現代医学にもたらす意味――患者の希望と主体性 347
7 近藤誠がもたらしたものと今後の課題 350
注 356


第14章 スピリチュアリティと科学的研究――脳内のセロトニン受容体結合力を中心に 361
はじめに 361
1 スピリチュアリティの健康影響 362
  1・1 礼拝出席と寿命の関係
  1・2 スピリチュアリティの否定的な影響
  1・3 スピリチュアリティメンタルヘルス
2 スピリチュアリティと健康をめぐる科学的研究の限界と注意点 365
  2・1 宗教やスピリチュアリティの評価の問題
  2・2 ランダム化比較試験の困難さとバイアス
3 スピリチュアリティセロトニン受容体 367
  3・1 負の相関を示す研究
  3・2 相関を認めないとする研究結果
  3・3 二つの研究結果の解釈と研究の限界
4 うつ病への科学的アプローチとその問題点 373
  4・1 うつ病セロトニン受容体
  4・2 うつ病概念の多様性
  4・3 メカニズム再考
5 スピリチュアルな経験と人間観 378
  5・1 科学的研究とスピリチュアルな経験
  5・2 神学による人間観
6 スピリチュアリティという概念を医学に導入する意義 383
注 385


第15章 医学教育の中でスピリチュアリティに関する講義は必要か 389
はじめに 389
1 「スピリチュアル」の意味 390
  1・1 医学の中でスピリチュアルという表現が用いられてきた経緯
  1・2 スピリチュアルケアとスピリチュアルペイン
2 スピリットとは何か 394
  2・1 フランクル[Viktor E. Frankl]の議論
  2・2 スピリットの多様性と人間観
  2・3 スピリットとスピリチュアリティ
3 宗教とスピリチュアリティ  398
4 医学教育の中でスピリチュアリティに関する講義を行う意義 402
  4・1 臨床上の必要性
  4・2 医学の特徴
  4・3 医学知識偏重教育への批判は正しいか
  4・4 良い医師とは何か――澤瀉の医学概論より
5 スピリチュアリティニヒリズム――われわれの批判 412
6 最後に 414
注 415


あとがき(平成二五年一二月一三日 杉岡良彦) [419-421]
参考文献 [8-21]
事項索引 [3-7]
人名索引 [1-2]




【メモランダム】
・「医学哲学」ではなく、科学哲学から医学を対象にした文献として
 Jacob Stegenga, Care & Cure: An Introduction to Philosophy of Medicine, University of Chicago Press, 2018.


・「医学哲学」の学会がある。学会誌の最新号は2022年。
医学哲学 医学倫理