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目次とメモを置いとく場

『生産性――誤解と真実』(森川正之 日本経済新聞出版 2018)

著者:森川 正之[もりかわ・まさゆき](1959-) 経済政策、産業分析。経済産業省
装幀:新井 大輔 (1982-)
装画:コーチはじめ 
DTP:有限会社 マーリンクレイン 
NDC:331.8


生産性 誤解と真実 | 日経の本 日本経済新聞出版



【目次】
目次 [003-005]


序章 注目される生産性 007
  人手不足の深刻化と生産性への関心の高まり
  生産性に関する誤解
  生産性と経済成長・賃金
  成長戦略の効果への誤解
  楽観的な将来見通しのリスク
  本書の目的・狙い
  本書の構成


第1章 生産性をめぐる誤解 017
1 生産性とは何か? 017
  生産性の測り方
  全要素生産性TFP)とは何か
  日本のTFP上昇率の現状
  TFPをわかりやすくできないか?

2 長期停滞論:日本だけが特殊なのか? 025
  「長期停滞論」の台頭
  米国の経済成長率鈍化の要因

3 設備投資拡大は生産性を高めるか? 027
  設備の増加による生産性上昇には限界
  人手不足の中で進む機械への代替

4 「稼ぐ力」と生産性 030
  利益率と生産性の違い
  価格引き上げは生産性を高める?

5 サービスはタダという日本人の意識が生産性に影響? 032
  日本人消費者の意識が問題?
  付加的サービスへの消費者の支払意思額
  質の低いサービスの受け入れ可能性

6 日本のサービス産業の生産性は低い? 035
  生産性の国際比較
  サービスの質の国際比較
  サービス産業の生産性上昇率の過小評価
  消費者はサービスの質の向上をどう評価しているか?
  労働力不足によるサービスの質の低下
  

第2章 イノベーションと生産性:第四次産業革命の光と影 043
1 技術革新と生産性・経済成長 043
  研究開発投資と生産性
  イノベーションの多様性
  イノベーションの生産性効果
  研究開発の過小投資
  研究開発のマクロ経済効果
2 第四次産業革命の経済効果 049
  注目される人工知能
  人工知能への企業・個人の見方
  人工知能の経済的インパク
  人工知能における「ボーモル効果」
  マクロ経済効果の逓減
  不確実性が高いAIの生産性効果
3 人工知能・ロボットの雇用・賃金への影響 057
  人工知能で雇用が失われる?
  人工知能と人間の補完性
  賃金への影響
  雇用への影響:企業の見方
  人工知能と雇用・賃金:個人の見方
  人工知能・ロボットへの需要


第3章 重要性を増す人的資本投資:教育訓練と生産性 065
1 人的資本と生産性・経済成長 065
  教育水準と生産性
  教育のスピルオーバー効果
  教育の質と経済成長
  労働者の質と企業の生産性
  教育投資への政府の役割
  健康・スポーツと経済成長
2 学校教育・就学前教育の経済効果 072
  教師の質が決定的に重要
  教員の処遇改善
  学校経営の質
  教育バウチャーの効果
  大学院教育の収益率
  幼児教育と非認知スキル
  非認知スキルと労働市場成果
3 就職後の人的資本投資 082
  企業内教育訓練の役割
  企業内教育訓練と生産性
  教育訓練投資の収益率
  企業の教育訓練投資と賃金
  職業資格制度の機能
  職業資格と就労・賃金


第4章 働き方と生産性 093
1 働き方改革の進展 093
  働き方改革法の成立
  働き方改革と経済成長
  女性の労働参加拡大の成長効果
  高齢者の労働供給拡大の成長効果
  働き方改革と生産性

2 非正規雇用と生産性 099
  正規・非正規労働者の賃金格差
  解雇規制と生産性
  非正規雇用と企業の生産性
  同一労働同一賃金:生産性の視点から
  パート労働者の生産性と賃金
  最低賃金と生産性

3 労働時間・柔軟な働き方と生産性 109
  長時間労働の生産性への影響
  残業への割増賃金の効果
  柔軟な労働時間と生産性
  成果型報酬と生産性
  仕事満足度・上司の質と生産性
  ダイバーシティの経済効果

4 就労スケジュールの不確実性 118
  労働時間の長さだけが問題なのか
  日本における就労スケジュールの不確実性

5 通勤時間とテレワーク 122
  通勤の長時間化
  テレワークへの期待


第5章 変化する日本的経営と生産性 127
1 生産性の企業間格差 127
  企業の生産性分布
  生産性格差と新陳代謝効果

2 「経営の質」と生産性 129
  企業の生産性を規定する要因
  「経営の質」の計測
  企業文化と経営成果

3 経営者と本社ホワイトカラーの役割 132
  経営者の質
  本社機能の重要性
  コンプライアンス強化の副作用

4 日本的経営は変化しているか? 135
  日本的経営の変化
  日本企業の経営戦略
  変化していない従業員重視
  事業再編行動の変化

5 取締役会の構造変化 143
  企業統治をめぐる動き
  女性取締役の増加
  社外取締役の増加
  女性取締役と企業業績
  取締役会の多様性と経営効果
  社外取締役の経営成果への効果
  社外取締役兼務の問題


第6章 競争・規制改革と生産性:新陳代謝の円滑化 153
1 市場競争・新陳代謝と生産性 153
  競争の生産性効果
  日本における競争の実態
  低生産性企業の底上げと退出時
  新陳代謝を通じた資源配分の効率化
  新規創業の役割

2 規制改革と生産性 162
  規制改革の動向
  岩盤規制の残存
  社会的規制の副作用
  規制緩和の経済効果
  職業資格制度の弊害
  産業横断的規制の悪影響
  上場大企業だけを対象にした規制の副作用
  政府部門の生産性

3 規制・ルールの不確実性 172
  政策の不確実性の影響
  日本における政策の不確実性
  不確実性が影響を与える経営判断


第7章 グローバル化と生産性:不確実性が高まる世界貿易体制 179
1 グローバル競争と生産性 179
  グローバル競争の実態
  国際競争による新陳代謝促進効果
  技術・知識の国際的なスピルオーバー
  外国人労働者と生産性

2 重要性を増すサービスのグローバル化 187
  サービス貿易と生産性
  外国人訪日客増加の生産性効果
  国際付加価値連鎖【GVC】と製造業のサービス化

3 懸念される世界経済の不確実性 193
  世界経済の不確実性増大
  グローバルな不確実性の影響


第8章 生産性の地域間格差と人口移動 197
1 東京集中と地方経済の衰退 197
  人口減少と地方創生論
  人口・経済活動の地理的分布と人口移動
  地域間の生産性格差

2 地域人口見通しの不確実性 203
  楽観バイアスが大きい地方自治体の人口ビジョン
  地域人口の予測誤差
  新しい地域人口推計
  外国人受け入れは地域の人口減少を緩和する?

3 都市集積と生産性 208
  集積の経済性のメカニズム
  サービス経済化と大都市集中
  サービス産業における集積の経済効果
  空間的な新陳代謝

4 地方経済をどうするか? 213
  地域振興におけるトレードオフ
  特定地域を振興する政策は有効か?
  地域経済の存続を左右する輸出・移出産業
  都市のコンパクト化
  社会資本と生産性
  地方自治体の生産性

5 大都市圏の課題:集積の弊害の緩和 223
  長時間通勤への対処
  東京集中と出生率低下をめぐる誤解
  東京圏でも必要な縮小の備え


第9章 生産性とマクロ経済政策:深刻化する財政リスク 227
1 生産性上昇に期待する財政健全化 227
  経済成長と財政の関係
  プライマリー・バランス黒字化目標の先送り
  成長見通しの楽観バイアス
  日本の経済見通しの事後評価
  企業・個人の予想経済成長率
  生産性の先行き
  財政破綻リスク

2 財政・マクロ経済政策と生産性 239
  政府債務の経済成長への影響
  マクロ経済・財政政策の不確実性

3 マクロ経済運営への示唆 243
  クレディブルな生産性見通し
  税制と経済成長
  財政破綻回避のための手法
  低金利政策と生産性
  統計には表れない隠れた物価上昇


第10章 生産性の重要性と限界:エビデンスに基づく政策選択 251
1 生産性向上政策の展開と特徴 251
  生産性向上政策の歴史的経緯
  企業の生産性向上への取り組みの助成
  成長戦略の効果が現れない理由

2 エビデンスに基づく生産性向上政策 255
  政策効果の検証
  EBPMの動向
  EBPMの現状と障害
  EBPMへの国民の認識
  政策実務におけるエビデンスの活用
  EBPMの今後の課題

3 生産性が捉えていないもの 265
  生産性指標の限界
  家庭内生産活動
  余暇と健康の価値
  消費者余剰と無料コンテンツ
  所得分配の公平性
  トレードオフ下の政策決定


終章 生産性向上のための選択 275


おわりに(2018年10月 森川正之) [279-281]
参照文献 [282-306]
索引 [307-313]
著者紹介 [314]




【抜き書き】

□「第3章 重要性を増す人的資本投資」からいくつか。


・教育のスピルオーバー効果について。
pp. 65-68

<教育水準と生産性>
 中長期的な経済成長は、労働供給量(マンアワー)の増加、資本ストックの増加、生産性(TFP)の上昇によって生じる。ただし、資本ストックの最適 な伸び率は、第1章で述べた通り労働投入量の増加及び TFP の上昇に依存する内生変数なので、結局のところ労働供給と TFP の変化が経済成長率を強く規定する。
〔……〕
 教育と生産性の関係は、学校教育年数あるいは最終学歴が労働者の賃金に及ぼす効果の計測という形で、古くから多数の分析が行われてきた。そうした推計は、ほぼ例外なく教育水準の向上が、賃金で見た労働者の生産性を高める効果を持つことを確認している。また、それらの結果に基づいて教育投資の収益率が計測されてきている。
 それらの研究によれば、先進諸国において学校教育1年間の収益率は一般に5~10%と推計されている。日本は他の先進国に比べると学歴間賃金格差が比較的小さいが、標準的な賃金関数の推計結果によれば、高卒者は中卒者に比べて20%程度、四年制大卒者は高卒者に比べて20~30%の学歴賃金プレミアムが存在する。*1 学歴賃金プレミアムとは、性別、年齢、勤続年数などが同じ労働者の中で、例えば大卒者の時間当たり賃金が高卒者に比べてどの程度高いかという数字である。最近は世界的に大学院教育の経済的価値が高くなっており、日本の場合、大学院卒業者の賃金は学部卒者に比べて約 30%高い。*2

教育のスピルオーバー効果
 しかし、これらの数字は教育による人的資本の質向上の「私的収益率」である。つまり、教育を受けた人自身の賃金が高くなるという効果だけを測っており、社会全体への追加的なプラス効果は含んでいない。現実には、人的資本の質の向上は、知識のスピルオーバー(波及)など様々な形で社会的利益を生む。例えば、地域別のデータを用いたいくつかの研究は、地域内に高学歴の労働者が多いと、地域全体の TFPが高くなることを示している。*3 これは、高学歴者自身の高い生産性に加えて、高学歴者の持つ知識から学ぶことを通じて、他の労働者の生産性も高まることによる。教育水準一般よりも大卒以上、特に理工系(STEM:Science, Technology, Engineering, and Mathematics)卒業者の外部経済効果が大きいことがわかっており、そうした人が持つ優れた技術知識が、地域内の他の労働者にも波及することを示している。
 したがって、前章で見た研究開発投資と同様、教育を受けた労働者自身の賃金が高まるという私的収益率だけを考えると、教育の経済成長への貢献を過小評価することになる。また、教育は、賃金・生産性といった経済的外部効果のほか、犯罪の削減、健康の改善といった非経済的な効果も持っており、それらを考慮に入れると社会的収益率はさらに高くなる。*4


□高等教育(大学・大学院)の教育投資の効果

pp.78-82

大学院教育の収益率
 本節では、ここまで初等教育中等教育を中心に議論してきた。しかし〔……〕技術革新が急速に進む中、技術の変化に対応できる可塑性のある高いスキルを形成する上で高等教育の果たす役割が増大している。人工知能などの第四次産業革命は、ホワイトカラー労働の中でもルーティン性の高い仕事を不要にし、高いレベルの教育の価値を高める可能性がある。
 大学教育の投資収益率についてのサーベイ論文によれば、大学教育の内部収益率は10%強であり、これは物的な設備への投資の収益率よりも高い。*5 米国では2000年代半ばまでの20〜30年間、大卒労働者の相対賃金が大幅に上昇しており、ITをはじめとするスキル偏向型の技術進歩、ルーティン労働のコンビューターによる代替が背後にあると考えられている。大学の中でも自然科学や数学専攻で高い収益率が観察されており、こうした技術的な説明と整合的である。*6対照的に日本では大卒と高卒の賃金差はほぼ横ばいであり、大卒者数の増加率が米国の約2倍と大きかったことが主な理由として指摘されている。*7
 しかし、2000年代半ば以降の米国では、大卒者の賃金プレミアム上昇が頭打ちとなる一方、大学院賃金プレミアムは大幅に上昇を続けている。*8日本のデータを用いて筆者が行った分析でも、大学院卒の労働者は、学部卒者と比較してかなり高い賃金を獲得していることが確認された。*9高学歴ワーキングプア」などオーバードクター問題が長く指摘されてきたが、統計的に見る限り日本でも大学院教育の投資収益率は10%を上回っている。
 これはITの普及などの技術進歩に伴って、大学院卒業者の非ルーティン的な高い知的スキルに対する需要が増加していることを反映していると解釈できる。日本の発明者のデータを用いて、大学院教育が就職後の発明の量・質を高める効果を分析した研究は、大学院教育が発明の量及び質を高める効果を持つことを示している。*10
 イノベーションを利用する側の産業においても、新しい技術を理解・応用できる高いスキルが必要になってきている。〔……〕大学院教育は人工知能ビッグデータなどの新しい技術との補完性が強い。これまでのところ、日本の大学院修了者の多くは教育関係または製造業に就職しているが、第四次産業革命が進むとすれば、サービス産業を含む広い分野で大学院修了者への需要が強まると予想される。


・どこに投資するか。

 以上の通り、知識経済における生産性向上のためには、大学・大学院教育の質的な充実が望ましい。しかし、財政的な制約がある中では、市場の失敗に直接作用する費用対効果の高い手法を選ぶことが望ましい。助成手段の選択に関して厄介な問題は、効率性だけでなく公平性の観点からの考察が必要なことである。高等教育への助成拡大は、国全体の生産性の向上という観点から望ましいとしても、経済格差を拡大する可能性があるからである。
 現在、日本では「高等教育無償化」の観点から、低所得世帯の子供など一定の要件を満たす学生に対して私立大学授業料の減額、給付型奨学金の支給といった措置が検討されている。筆者は、学生による選択の幅が広い高等教育について言えば、こうした消費側に対する助成措置の拡充は、大学・大学院という供給側への助成に比べて望ましい性質を持っていると考えている。
 日本を含む OECD諸国における高等教育への助成政策を比較し、効率性と公平性の観点からどのような政策手段が望ましいかを詳細に検討した論文があり、政策手段の選択を考える上で有用性が高い。*11 それによると、一般財源(税収)から大学や世帯への補助は最も一般的な助成手段だが、主に高学歴者が受益するため逆進性があり、所得格差を拡大する方向に働く。
 高等教育には外部経済効果、リスク、借入制約といった「市場の失敗」があるので政府の関与が必要になるが、具体的な手段としては、効率性・公平性の両面から見て、一般財源(税収)による補助ではなく、就労後の所得に依存する形の融資制度 (income contingent loans)への移行が望ましいと論じられている。*12

・就学前(幼稚園など)の教育投資の効果。

幼児教育と非認知スキル
 ここまで学校教育について見てきたが、〔……〕シカゴ大学のヘックマン教授が再三にわたって指摘している通り、スキル形成には集積的な性格があるため、就学前の人的資本投資の役割はきわめて大きい。生涯にわたって必要となる多様なスキルを形成する上で人生の初期に当たる幼児期の条件が重要であることが強調されている。例えば、国際的な学力テスト(PISA)は 15歳時点での学力の指標だが、中等教育を改善すれば15歳時点での成績が高まるわけではなく、幼児期からの良好な家庭環境や教育の積み重ねが不可欠である。〔……〕
 これまでの海外の研究によれば、ユニバーサルな就学前教育の長期的な効果については結論が分かれているが、低所得層をはじめ恵まれない家庭環境の子供を対象にした就学前教育の効果が大きいことについてはほぼコンセンサスがある。不利な家庭環境の子供への投資は、公平性と効率性の間のトレードオフがない稀な公共政策であり、出生時点での格差を低減するとともに社会全体の生産性を高める効果を持つとされている*13
 最近、日本でも就学前教育に対する関心が高くなっている。母親の就労と育児の両立という目的意識が強いように見えるが、スキル形成における幼児期の重要性に鑑みれば、超長期の投資と捉えることも可能である。日本は米国と条件が大きく異なっていたが、近年は片親世帯の増加、子供の貧困が深刻な問題になってきている。ユニバーサルな公的保育サービスは、どちらかと言えば母親の就労促進が目的だと思われるが、超長期の投資としての費用対効果、また、経済格差の世代間継承の抑制という観点からは、恵まれない家庭の子供への幼児期への投資のプライオリティが高い。
 就職後の労働市場でのパフォーマンスという観点からも、テスト成績やIQ(知能指数)で測られる認知スキルだけでなく、勤勉性・自制心・協調性といった非認知スキルないしソフト・スキルも同様に、あるいはそれ以上に重要になっている。経済産業省が以前から提唱している社会人基礎力という概念は、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つのスキルで構成されており、非認知スキルと重なるところが大きい。
 学力テストは、現実の労働市場や学校で評価される性格、意欲、忍耐力といった非認知スキルを測ることができないという問題点が指摘されている*14。先述の通り、国際的な学力テストで測った学力の高さは経済成長率に大きく影響する。しかし、非認知スキルを考慮に入れて計測を行うと、純粋の認知スキルだけでなく非認知スキルも同程度の効果を持つことを示す研究が表れている*15。学力テストで測られた成績の経済効果の推計は、モチベーション、忍耐力とい非認知スキルの効果も含んでいると解釈されている。



pp.167-169 
・国家資格の供給制限、規制緩和について。

◆職業資格制度の弊害 
  職業資格制度については、人的資本投資との関連で第3章でも触れたが、規制と市場競争という観点からも大きなイシューである。日本では、1980年代の行革審の時代から、資格制度の規制緩和が累次にわたって議論されてきた。特に、1998〜2000年前後にかけて、行政改革推進本部・規制改革委員会で包括的・体系的に議論・整理が行われた。
 その結果、業務独占資格については、業務範囲の見直し、資格間の相互乗り入れ、制度の廃止や資格取得の要件緩和、必置資格や名称独占等資格への移行などの方針が、また、必置資格についても撤廃・緩和、資格保有者の業務範囲の見直しなどの方針が示された。
 職業資格制度の規制改革は、その後「規制改革推進計画」などを通じて具体化されていった。個別分野の中では、法曹分野(弁護士)、保育分野(保育士、幼稚園教諭)、医療分野(医師、看護師)、理美容(理容師、美容師)などが再三にわたって大きな論点となった。最近の規制改革の中では、理容師・美容師両方の資格の取得容易化、普通第二種免許の受験資格の緩和が議論の対象となった(規制改革会議「規制改革に関する第4次答申」,2016年)。ただし、職業資格制度の中には生命・財産の安全の確保を目的とした社会的規制が多く含まれていることもあって、経済的規制に比べて規制緩和は遅れている現状にある。
 職業資格制度の経済的な影響は、業務独占資格が参入制限効果を持ち、資格保有者が独占的な利益(レント)を享受するという形での非効率をもたらすことである。職業資格制度は業務遂行に必要なスキル水準を保証することを通じて、情報の非対称性の下で消費者を保護する機能を持っており、また、労働者のスキル向上インセンティブ労働市場のマッチング改善などのメリットもある。反面、参入制限効果を通じて産業全体の新陳代謝を阻害し、生産性にネガティブな影響を持つ可能性がある。
 最近の規制改革の議論において、職業資格制度にはあまり力点が置かれていないように見えるが、約20年にわたって指摘されてきた通り、業務独占資格や必置資格については、対象業務範囲の見直し、参入制限効果が小さい認証制度への切り替え、近接した複数の資格制度の相互乗り入れ――医師と看護師、歯科医師と歯科衛生士、弁護士と司法書士行政書士の境界など――、資格取得要件の緩和による有資格者の供給拡大など、技術進歩や産業実態の変化に対応した普段の制度見直しが必要である。

*1: 川口大司(2011).「ミンサー型賃金関数の日本の労働市場への適用」阿部顕三・大垣昌夫・小川一夫・田渕隆俊編『現代経済学の潮流2011』, 東洋経済新報社, pp. 67-98。

*2: Morikawa, M. (2015a) "Postgraduate Education and Labor Market Outcomes: An Empirical Analysis Using Micro Data from Japan", Industrial Relation, 54(3) : 499-520。

*3:Iranzo, S. and G Peri (2009) "Schooling Externalities, Technology, and Productivity: Theory and Evidence from U.S. States", The Review of Economics and Statistics, 91(2), 420-431。Gennaioli, N. et al. (2013) "Human Capital in European Regions since the French Revolution: Lessons for Economic and Education Policies", Quarterly Journal of Economics, 128(1), 105-164。Winters, J. V. (2014) "STEM graduates, human capital externalities, and wages in the U.S", Regional Science and Urban Economics, 48 : 190-198。

*4:教育の非経済的な利益に関するサーベイ論文として、Lochner, L. (2011) "NonProduction Benefits of Education: Crime, Health, and Good Citizenship" in E. Hanushek, S. Machin, and L. Woessmann (eds.), Handbook of the Economics of Education , Volume 4, Chapter 2, Amsterdam : Elsevier, pp.183-282。

*5:Barrow, L. and O. Malamud (2015) "Is College a Worthwhile Investment?", Annual Review of Economics, 7 : 519-555。

*6:Altonji et al. (2012) "Heterogeneity in Human Capital Investments: High School Curriculum, College Major, and Careers", Annual Review of Economics, 4(1) : 185-223 Barrow, L. and O. Malamud (2015)。

*7:Kawaguchi and Mori (2016) "Why has wage inequality evolved so differently between Japan and the US? The role of the supply of college-educated workers", Economics of Education Review, 52 : 29-50。

*8:Lindley, J. and S. Machin (2016) "The Rising Postgraduate Wage Premium", Economica, 83 : 281-306。

*9:Morikawa, M. (2015a) "Postgraduate Education and Labor Market Outcomes: An Empirical Analysis Using Micro Data from Japan", Industrial Relation, 54(3) : 499-520。

*10:Onishi, K. and S. Nagaoka (2018) "How Does Graduate Education Affect Inventive Performance? Evidence from Undergraduates' Choices during Recessions", RIETI Discussion Paper 18-E-016.。

*11:Diris, R. and Ooghe, E. (2018) "The Economics of Financing Higher Education" Economic Policy, 94.: 267-314。

*12:所得依存型の融資制度のほか、現実には存在しない制度だが、高等教育就学年数に依存する形での職後の課税(graduate taxes)も同様の性質を持つと述べている。

*13:Heckman, J.J. and D.V. Masterov (2007) "The Productivity Argument for Investing in Young Children", Review of Agricultural Economics 29(3) : 446-493. Heckman, J.J. and S.Mosso (2014) "The Economics of Human Development and Social Mobility", Annual Review of Economics, 6 : 689-733。

*14:Heckman, J.J. and T. Kautz (2012) "Hard evidence on soft skills", Labour Economics, 19(4) : 451-464。

*15:Balart, P., M. Oosterveen, and D. Webbink (2018) "Test scores, noncognitive skills and economic growth", Economics of Education Review, 63 : 134-153 。

『〈日本幻想〉表象と反表象の比較文化論』(野田研一[編] ミネルヴァ書房2015)

編者:野田 研一
NDC:210.6 日本史(近代 1868-.明治時代 1868-1912)
NDC:361.5 文化.文化社会学:文化変容,社会進歩,社会解体


https://www.minervashobo.co.jp/book/b184831.html


【目次】
目次 [i-vii]


序論 日本幻想──表象と反表象[野田研一] 
一 失われる「他者の時間」――文化比較とは何か 001
二 〈日本幻想〉とは何か――自己発見を超える試み 008
三 理論的枠組みについて 011
四 本書の構成 016
注・参考文献 020


  第I部 幻想の産出――他者の発見 

第1章 〈日本〉という想像の岸辺――キプリングと明治期の日英工芸デザイン[中川僚子] 
一 キプリング日本旅行 027
  怒るキプリング
  日本への賛辞

二 イギリスの工芸デザインと日本趣味―― E・W・ゴドウィンとドレッサー 035
  イギリスにおけるジャポニスム開花
  ゴドウィン邸の室内・キプリング邸の室内
  ウィーン万博と「日本」イメージ

三 日本は「でっち上げである」とは? 047
  オスカー・ワイルドキプリング
  ロマン派的受容と現実主義的受容

四 小さなエピローグとして 051

注・参考文献 053


第2章 ヴァージニア・ウルフの東方へのまなざし――「友情のギャラリー」の〈日本幻想〉(窪田憲子)
一 封印されていたウルフの著作 057
ニ ウルフの〈日本〉との遭遇――日本印象記を書評して 059
  世紀の発見?
  ウルフが読んだ日本印象記

三 日本を舞台にした作品―― 「友情のギャラリー」 063
  埋もれたままだった初期の伝記物語
  〈闖入〉する日本――第二章
  日本が舞台となったウルフの物語
  
四 幻想の〈日本〉――ウルフの〈船出〉 074
  なぜ舞台が東京なのか?
  二〇世紀初頭のイギリスにおける日本
  可能性の瞥見
  作家ウルフの船出

注・参考文献 080


第3章 若きバーナード・リーチの〈日本像〉――ホイッスラー、ファン・ゴッホ、劉生との関わりを考える(久守和子)
一 テムズ河畔チェルシーにて 085
  画家・エッチャーを名乗る
  「ノクターン」を模写して
  溢れかえる「日本」のモノたち
  静謐の構図
  広重、そして日本
  春の暮れこ夢……
ニ ファン・ゴッホ騒動 093
  鉄瓶をひっくり返す
  革命に馳せ参じたい
  滞在五年後の〈日本像〉

三 茶碗と切通しと 099
  二枚の肖像画
  絆を刻む
  リーチの劉生評
  二つの日本
注・参考文献 108


  第II部 見いだされる〈日本〉――自己の発見 

第4章 幻想としての日本/イギリス――日英博覧会(1910)と庭園文化をめぐって(木下 卓)
一 日英博覧会 113
  博覧会と展示品
  博覧会場または帝国主義ディスプレイ装置
  先住民展示

ニ 庭園文化の近代 121
  無鄰菴〔むりんあん〕の庭園
  イギリス式風景庭園
  象徴主義的庭園から自然主義的庭園へ
  日英博覧会とキュー・ガーデンの日本庭園
三 幻想としての日本/イギリス 134
  幻想としての〈イギリス〉
  幻想としての〈日本〉

参考文献 138


第5章 自然を書く・見る――世紀転換期における古典文化の再利用と〈日本〉(北川扶生子)
一 メディアのなかで書く 141
  百年前のメディア革命
  「文章を書く」という楽しみ
  帝国の勃興と自然表象
ニ 〈文章》というフォーマット 144
  文というジャンル
  文の種類と歴史的背景
三 忘れられた明治青年のロマン主義――美文ブームと伝統回帰 146
  美文ブーム
  古典的自然表象と美文
  感性の体系――暮らしのなかの自然
  生活美学としてのレトリック
四 古典文化の転用と近代人の誕生 151
  近代化によるレトリックの変化
  〈私〉を支える物語
五 お手本がつくる私――作文と規範 153
  古典の通俗化と再生産
  競争社会への参入と感性のマニュアル化
  女性国民の形成と「教養」
六 見いだされる《帝国日本との文化 157
注・参考文献 160


第6章 本土「幻想」の結末――山之口貘の「沖縄よどこへ行く」をめぐって(仲程昌徳 
一 「復帰」願望 161
二 「郷愁」の色調 165
三 輝く「日本語」 170
四 「習俗」の差異 174
五 沖縄の風物たち 177
注・参考文献 180


  第III部 交錯する日本幻想――反表象の力学

第7章 弱さと正義、力と不正義――琉球・沖縄、日本、アメリカをめぐる〈幻想〉試論(山里勝己)
一 琉球、沖縄、日本、アメリカ――錯綜する幻想 187
  〈幻想〉の淵源
  「アメリカ」――文明と未開
  「アメリカン・プログレス」の行方
二 帝国化するアメリカと琉球 192
  ユーロ・アメリカンの世界像
  琉球とベイジン・ホール
  ペリーの琉球
  アメリカの第一次琉球占領と牧志朝忠
三 弱さと正義、力と不正義 201
  軍事と倫理
  牧志朝忠のアメリカ観
  通時という存在
  牧志朝忠の日本幻想とアメリカ幻想
四 ペリー百年の夢と琉球・沖縄の自己幻想 210
  コンタクトゾーンのアイデンティティ
  戦後沖縄の〈自己幻想〉と〈反表象〉の生成

引用文献 214


第8章 乱反射する日本幻想、オリエンタリズム小論――小島信夫の小説を手がかりに[笹田直人
一 オリエンタリズムオクシデンタリズム 217
  合わせ鏡の日本幻想、内なる日本幻想
  オリエンタリズム出現前のオクシデンタリズムの痕跡
  オクシデンタリズムの出現
ニ 劣等複合の幻影 224
  打ち切りになったCF
  日本人の複雑な憧憬
三 すれちがう他者幻想 228
  伊佐の煩悶
  敵性語の反動
  占領政策オリエンタリズムオクシデンタリズム
  箸とハイ・ヒール
四 反転するオリエンタリズムオクシデンタリズム 238
  米国二世の二重意識
  日本幻想から内なる日本幻想への拉致

引用文献 243


第9章 フォークナーの見つめた「近代」日本――芸者人形とアメリカ南部(竹内理矢)
一 敗戦国からの文化大使フォークナー 245
ニ 「アメリカ幻想」の打破――戦後の刻印 247
  日本の知識人への衝撃、フォークナーとの邂逅
  「日本の若者へ」、南部との地続き
  「アメリカ」の脅威、保守と文芸の開花
三 フォークナーの「日本幻想」――「芸者」と「着物」 255
  「日本の印象」、芸者とハーン
  日本女性、薔薇とエロス
四 「近代」の歴史的共振――戦後を生きた女性たち 259
  「エミリーにバラを」「近代」への憧憬
  日本の「苦悩」、「近代」への両面感情
  フォークナーの捧げた「バラ」、日本と南部の交錯
注・参考文献 267


  第Ⅳ部 日本幻想の遠近法 

①座談会 二人の父、二つの文化――友禅をめぐって[話し手:森口邦彦 聞き手:久守和子・中村邦生・野田研一 編集・構成:吉村聡] 273 
  はじめに
  「モダンという怪物」の後に
  江戸時代の「ゆふぜん」
  伝統の中の革新
  もう一人の父、バルテュス
  自然を介した共通言語
  自然、幾何学、美
  佇まいへの挑戦
(日時:2011年7月14日 場所:森口邦彦氏 工房)  


②不思議の国のゴリウォグ――日本への眼差し(高田賢一) 301
 1 日本への関心の高まり
  ジャポニスムの背景
  ゴリヴォグ絵本

 2 ゴリヴォグの見た日本 
  ゴリヴォグとパリ
  ゴリヴォグ、日本へ
  中近東での発見

 3 「本当」の日本の姿
  日本の庶民との出合い

 4 未知の世界への好奇心――なぜ日本なのか
  ゴリヴォグ・シリーズ全13巻リスト 314
  参考文献 314


③〈日本幻想〉の手前で息継ぎをする――未完の思考として(中村邦生) 317
  遠景と近景
  堂々巡り
  巣穴にある〈日本幻想〉の遺失物のいくつか
  これがイギリスのイメージだった
  複合的な運動体または幻想のアマルガム
  こんなところにも出没している
  手前の思考へ
  複層的な遊動性
  こまかいほこり


はっぴいえんど的日本幻想、もしくは「渚感覚」(野田研一) 331
  《はっぴいえんど》問題
  さよなら アメリ
  そして「さよなら ニッポン」
  はいからはくち 
  「渚感覚」あるいは反表象のテクノロジー
  注 342


あとがきに代えて――「美化の拒否」に抗して(野田研一) [345-349]


事項索引 [4-6]([351-353])
人名索引 [1-3]([354-356])
執筆者紹介 [357-360]

『問題解決のための「社会技術」――分野を超えた知の協働』(堀井秀之 中公新書 2004)

著者:堀井 秀之[ほりい・ひでゆき](1958-) 社会技術論、イノベーション論、岩盤力学。
NDC:360 社会
NDC:361.98 社会計画[社会工学],社会開発


問題解決のための「社会技術」|電子書籍|中央公論新社



【目次】
はじめに [ii-v]
目次 [vi-ix]


第1章 複雑化する社会問題
なぜ解決困難な問題が多いのか
SARS問題から見えてくるもの
問題の高度化
価値観の多様化?
活用できる知を総動員する


第2章 問題解決の方法論
問題解決の心理学
ヒューリスティックが鍵を握る
クリエイティヴな発想のメカニズム
アルゴリズム、メンタルモデル、アナロジー推論
問題解決と「設計」
プロセスをモデル化する
「講義が面白くない」を解決する
コラム複雑な事柄を取り扱う技術


第3章 社会問題を解決する技術
社会技術とは何か
社会技術の設計
全体像の把握から具体的解決へ
社会技術の立案
制度をどう組み合わせるか
社会の変化を予測する
評価のプロセス
コラム 議論を噛み合わせる価値マップ


第4章 安心社会を実現するために
社会技術の研究体制
問題の全体像を把握する技術
原発トラブル隠しの要因
俯瞰的アプローチ
リスクマップを作成する
リスクへの有効な対策
診療ナビゲーションシステム
交通安全性を向上させるシステム
原子力災害の危機管理システム
会話型知識プロセスの構築
コラム 途上国の問題を解決する


第5章 組織に生かす社会技術
コン プライアンス経営とは
現場のモラルハザードをどう防ぐか
あるシンクタンクの取り組み
問題の本質を明らかにする
社会技術の方法論を援用する
失敗学からどう学ぶか
コン プライアンス強化の具体策
社会技術研究がブレークスルーを生む


参考文献 [162-166]
あとがき [167-172]




【抜き書き】

 発明という行為にも、科学の創造と同じようなところがある。ニーズがあり、そのニーズに応える工夫を思いつくということは、現象を説明する法則の発見とよく似ている。発明においても、工夫を思いついたあと、その工夫によって、どのような結果が得られるかという演繹的推論が行われる。
 観察された現象を説明する法則を、帰納的推論にもとづいて導くという創造的思考過程と、ニーズに応える発明を思いつく過程には共通点が多い。どちらも暗黙知(言葉で説明できないが、経験などを通じて理解して使っている知識)をフルに活用する行為であり、特に、どのような法則がどのような現象を説明するのか、どのような工夫がどのような利便性をもたらすのかという因果関係に関する予測能力、すなわち、演繹的推論の能力が重要な役割を果たす。どのような工夫がどのようなニーズに応えるかという因果関係を、数多く、そして幅広い対象に関して経験し、記憶していることが、優れた発明者の必要条件である。

『シャノンの情報理論――価値ある情報を高速に、正確に送る』(高岡詠子 講談社ブルーバックス 2012)

著者:高岡 詠子[たかおか・えいこ]
もくじ・章扉デザイン:中山康子



『シャノンの情報理論入門』(高岡 詠子):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部



【目次】
まえがき [003-004]
目次 [006-009]


第1章 情報科学の歴史 011
コンピューターが人だった頃
計算する機械としてのコンピューターの歴史
20世紀前半の情報科学者たち


第2章 情報とはなにか 025
情報とはなにか
情報の定義
情報の最小単位
シャノンの情報理論のエッセンス:高速で正確な通信を担う役者たち
情報源符号化
通信路符号化
受信機と受信者


第3章 情報の価値? 049
「価値ある情報」をどう表現する?
期待値
情報エントロピー
ここの情報が持つ大きさ:情報量
情報が出現する確率
情報エントロピーと通信路容量
アルファベットの記号が出現する確率


第4章 通信量を減らす?:情報源符号化定理 077
符号化と情報量
復号可能―― 一意復号と瞬時復号
平均符号長
情報源符号化定理と色々な符号化法
シャノン・ファノ符号化法
ハフマン符号化法
情報源符号化定理についてのまとめ


第5章 伝言ゲームでは困る──誤りを減らす 109
5-1 通信路はどれくらいの処理スピードを持つのか 110
通信路と相互情報量
相互情報量データマイニング
通信路はどれくらいの処理スピードを持つのか――通信路容量
相互情報量が通信路の評価基準となるわけ
相互情報量の計算の方法
通信路容量

5-2 誤りを減らすためにはどう送ればよいか
132
通信路符号化定理
通信路を符号化すること
通信路符号化定理の真髄

5-3 連続した情報を扱う――標本化定理 144
波を周波数でとらえるか? 時間で捉えるか?
標本化定理
なぜ2倍以上必要か?
連続量への応用
シャノンの情報理論のエッセンス


第6章 情報科学の歴史の中の情報理論 161
情報科学の中の情報理論
コンピューター史からのアプローチ
チューリングとシャノン
チューリング・マシンと計算可能性
チューリング・マシンからフォン・ノイマン型コンピューターへ
「最初のコンピューター」は?
コンピューターの万能性
シャノンの情報理論の応用


あとがき(2012年10月) [176-178]
参考文献 [179]
さくいん [180-185]




【誤植】
・目次ページ。
誤「チューリング・マシンと計算可能生」
正「チューリング・マシンと計算可能性」

『現代経営情報論』(遠山暁,村田潔,古賀広志 有斐閣アルマ 2021//2003)

著者:遠山 暁[とおやま・あきら](1946-)  1,3,5,6,12章担当 
著者:村田 潔[むらた・きよし](1957-)  4,7,8,11章担当 
著者:古賀 広志[こが・ひろし](1967-)  2,9,10章担当 
シリーズ:有斐閣アルマ >> Specialized
NDC:336.17 研究開発.企業情報管理.企業調査.産業スパイ


現代経営情報論 | 有斐閣



【目次】
はしがき(遠山曉 村田潔 古賀広志 ) [i-iv]
著者紹介 [v]
著者紹介 [vi]
目次 [vii-xvii]


第1章 経営情報論の基礎 001
CASE 1 みずほフィナンシャルグループ (FG) のシステム統合――困難なレガシー・システムからの脱出(2)
1 情報社会から「未来社会」へ  003
  「偉大なる転換」と未来社会(3)
  情報が主役,物質・エネルギーが脇役へ(6)
  現代から未来社会への転換:基盤の変容(8)

2 現在の転換――デジタル・トランスフォーメーション 011
  デジタル・トランスフォーメーションの技術基盤(II)

CASE 2 コマツによる世界最先端の DX 事例 (13)
  デジタル・トランスフォーメーション(DX)の基本的特性(14)
  DX と「2025年の崖」(15)
  革命的レベルの変革の可能性(18)

3 経営資源としての「情報」特性 020
  第4の経営資源(20)
  データ,情報,知識(20)
    (1) データ
    (2) 情報
    (3) 知識
  データ,情報,知識の関係(23)

4 組織体と情報システム 024
  情報的相互作用のメカニズム(24)

5 経営情報論の意義 026
  業務・管理・戦略活動と情報活動との関係(26)
  人間の思考・判断プロセスの重視(27)
  ICT への役割期待と可能性(28)
  経営情報論へのアプローチ法(29)
  経営情報システムの構成(31)

練習問題035
文献案内036


第2章 経営情報論の基礎理論 039
CASE 3 Netflix ――顧客の利用情報の活用による事業革新(40)
1 経営情報論と経営戦略 041
  戦略の意義(41)
  戦略の階層性(41)
  競争優位の追求(41)
  SWOT分析(42)
  外部環境と内部資源(42)
  ポジショニング・ビュー (43)
  資源ベース・ビュー(44)
  資源属性の解明(46)
  ケイパビリティ論の展開(40)
  コア・リジディティ (48)
  ダイナミック・ケイパビリティ(48)
  進化経済学と企業家精神(49)
  ICTと競争優位(50)
  結果としての持続性(51)

2 経営情報論と経営組織 052
  ICT と組織の関係(52)
  開発・設計と運用・管理の境界線(52)
  プロセスとしての組織(54)
  プロセス革新とICT(54)

3 多様なシステム思考 056
  相互補完的な3つのシステム思考(56)
  ハード・システム思考(57)
  ソフト・システム思考(57)
  組織サイバネティックス(59)
  批判的システム思考 (63)
  システム思考の相補性(63)

練習問題 064
文献案内 064


第3章 経営情報システム観の変遷 067

CASE4 「第4の大転換」のフロントランナー,GEのその後(68)

1 情報化実践スローガンの変遷 069
  進化する ICTと情報化実践ブーム(69)
  受動的な環境適応支援の情報システム(I):情報処理と業務・管理を区別する情報化実践(70)
  受動的な環境適応支援の情報システム(2):情報処理と業務・管理を区別しない情報化実践(73)
  能動的な環境適応支援の情報システム(76)

2 DX による能動的な環境適応 078
  DXの論理基盤:「エコシステム」の発想(8)

CASE 5 リコーのRPAによる「デジタル・トランスフォーメーション」(079)
  「エコシステム」と経営戦略(81)
  DX による経営情報システムの特性(84)

練習問題 089
文獻案内 089


第4章 情報通信技術の進展と組織 091

CASE 6 DX への途—— COVID-19 の流行が明らかにしたこと(92)

1 コンピューティング能力の進展 093
  コンピュータの基本特性(93)
  向上し続けるICT の能力(94)

2 遍在するICT 097
  標準化の進展(97)
  標準をめぐる競争(98)
  ユビキタス環境 (100)
  イネーブラーとしての ICT(100)

3 データベース 102
  ビジネス活動とデータベース(102)
  データベース管理システム(192)
  関係データ・モデル(104)
  データ・ウェアハウス(105)
  ビッグ・データ(107)
  データベースと知識(108)

4 ネットワーク・コンピューティング 110
  組織活動とネットワーク技術(110)
  インターネット(111)
  ネットワーク・インフラストラクチャの整備(113)
  オープン・ネットワーク(114)
  クライアント・サーバー・システム(116)
  P2Pコンピューティング(118)
  クラウド・コンピューティング(119)

5 先端的ICT 120
  AI/機械学習(120) ロボット(122)
  ブロックチェーン(125)
  VR/AR/MR (126)

練習問題 127
文献案内 127


第5章 経営情報システムの設計・開発 129
CASE 7 BMW, アジャイル開発で,自動車メーカーからテック企業へ(130)

1 経営情報システムの開発方法論 131
  システム開発方法論(131)
  情報システム開発方法論の成立 (132)
  伝統的な情報システム開発方法論:ウォーターフォール型開発法(132)
  ウォーターフォール型開発法の局面(133)
    (1) システム計画
    (2) システム分析
    (3) システム設計
    (4) システム導入・運用
    (5) システム保守・管理
  ウォーターフォール型開発法の適合環境と問題点(135)
    (1) システム開発の長期化
    (2) ユーザー自身の認知・分析能力の欠如
    (3) ユーザー自身の理解不足
    (4) システムの柔軟性欠如の問題

2 情報システム開発方法論の革新 137
  構造化設計アプローチ(137)
  データ中心アプローチ(139)
  演繹的アプローチと帰納的アプローチ(141)
  オブジェクト指向アプローチ(142)
  オブジェクト指向の統一モデリングUML) (144)

3 現代の情報システム開発方法論 147
  「設計・開発と運用・管理」,「技術変革と組織改革」との一体化の発想(147)
  アジャイル開発法(148)
    (1) ユーザー機能駆動開発(Feature Driven Development)
    (2) エクストリーム・プログラミング(extreme programming)
    (3) リーン・ソフトウェア開発(lean software development)
  アジャイル開発を支える思考方法:デザイン思考(151)
  アジャイル開発の開発環境(153)
  DevOpsとBizDevOps への動き (158)
    (1) DevOps
    (2) BizDevOps

4 情報化戦略と組織・事業戦略との融合 189
  伝統的な合理的・分析的アプローチ(161)
  創発的・革新的アプローチ(163)

練習問題 165
文献案内 165


第6章 経営情報システムの管理 167
CASE 8 セブンベイの情報化実践におけるガバナンスの欠如(168)

1 情報化推進の組織体制 169
  CIO/CDOと情報システム運営委員会(169)
  情報システム部門の役割(171)
    (1) 情報化戦略の企画とプロジェクト計画策定
    (2) システムの設計・開発
    (3) システムの運用・保守管理
    (4) 現場ユーザーに対するヘルプ・デスク
  最近の情報システム部門の特性(173)

2 情報化投資と評価 175
  情報システム化の投資効果(175)
  収益性による総括的評価の問題(176)
    (1) タイムラグの存在
    (2) ICT以外との相乗的効果
    (3) 間接的・波及的効果の存在
    (4) 収益性と情報化投資は無相関
  情報システム化のコスト問題(178)
  付加価値評価の重要性(179)

3 情報セキュリティ 181
  情報システムの脆弱性(181)
  情報セキュリティ・マネジメント(182)
    (1) 機密性の確保
    (2) 完全性の確保
    (3) 可用性の確保
  セキュリティ対策の機能(184)
    (1) 防止・抑制機能
    (2) 検知・回復機能
  インシデントへの対応(186)
  情報セキュリティ・ポリシーとコンティンジェンシー・プランニング(188)

4 システム監査と情報セキュリティ監査 189
  監査の定義・目的(189)
  監査の担当者と対象(192)
  監査業務の一般的手順(193)

5 情報化実践のガバナンス 194
  ガバナンスの必然性(194)
  ガバナンスの機能と実現の原則(196)
  ガバナンス成功の原則(198)

練習問題 200
文献案内 201


第7章 情報通信技術を活用したビジネス・イノベーション 203
CASE 9 IBMマイクロソフト,アップル(204)

1 現代のビジネス環境 205
  経済の成熟化と顧客志向経営(205)
  ビジネスプラットフォームとしてのインターネット(206)
  グローバル化(207)
  データ経済の群類 (308)

2 イノベーションをめぐる議論 209
  シュンペーターの5つのイノベーション」(209)
  オープンイノベーション(219)
  ユーザー・イノベーション(211)
  イノベーターのジレンマと両利きのケイパビリティ(212)

3 プロセス・イノベーション 215
  プロセス・イノベーションの戦略的重要性(215)
  顧客志向経営とプロセス(217)
  タイム・ベース競争(217)
  プロセスと持続的競争優位(218)
  先行性とアジリティ(219)
  客との関係性(220)

4 現在のICT 環境におけるビジネスイノベーション 221
  組織内ビジネス・プロセスの変革(221)
  組織間ビジネス・イノベーション・モデル(222)
  組織-顧客間での関係性管理(224)
  新しいビジネス・プロセス像(225)
  困難を乗り越えて終わりのない活動としてのプロセスイノベーション(226)

練習問題 228
文献案内 229


第8章 ネットビジネス 231
CASE 10 イートーイズの失敗(232)

1 ネットビジネスの萌芽 233
  eビジネス環境(233)
  ドットコム企業の出現(234)
  ネット・セキュリティの向上(235)
  シリコン・バレー・モデル(237)
  ニュー・エコノミー編(240)

2 ネットビジネスの展開 244
  拡大する EC 市場(244)
  モバイル・ビジネスの進展(244)
  ブリック&クリック (240)
  オンラインからオフラインへ
  オフラインからオンラインへ(247)
  信頼と評判(249)

3 サーチ・エコノミー 251
  検索エンジン(251)
  検索連動型広告(252)
  検索エンジン最適化(255)

4 ネット・ビジネスの新展開 256
  さまざまなネット・ビジネス・モデル(256)
  モデル(256) ウェブ 2.0(257)
  ソーシャル・メディア (259)
  自動化された監視と制御(260)
  シェアリング・エコノミー(262)

練習問題 265
文献案内 265


第9章 情報通信技術と組織コミュニケーション 267
CASE 11 マン渓谷の惨劇(268)

1 組織コミュニケーションの機能 269
  コミュニケーション・システムとしての組織(269)
  コミュニケーション・モデル(270)
  コンテキストと多義性(271) 
  コミュニケーション・チャネル(272)
  メディア (273)
  コードとシンボル(274)
  メディアとしてのICT の特性(274)
  組織コミュニケーションの逆効果(276)
  非公式(個人的)コミュニケーション (278)

2 組織コミュニケーションとICT
  コミュニケーションと場(279)
  メディア・リッチネス論の終焉(281)
  ジャンル(282)
CASE 12 創発的変化と機械主義的変化:Z社(仮名)の組織変革(283)
  情報化の二面性(284)

3 CMCの実践としてのテレワーク 285
  テレワーク小史(285)
  テレワークへの期待(286)
  多様な雇用形態とテレワーク(287)
  テレワークのパラドクス(288)
  セカンド・シフト(289)
  仕事と日常生活(290)

練習問題 291
文献案内 292


第10章 ビジネス・インテリジェンスとナレッジ・マネジメント 293

CASE 13 購買履歴データから家族より先に娘の妊娠が明らかに!(294)

1 ビジネスインテリジェンスとアナリティックス 295
  データ活用に対する期待(295)
  ビジネス・インテリジェンス(295)
  ビジネス・アナリティクス (297)

2 ビッグデータとデータ・サイエンティスト 298
  ビッグ・データ(298)
  非構造データ(298)
  メタデータ(299)
  ビッグ・データからの価値創造(300)
  価値創造者としてのデータ・サイエンティスト (301)

3 データ・エンジニアリングの基礎概念 302
  非構造化データとデータ・モデル(302)
  干し草の中から針を探す(303)
  大量のデータの並列処理(304)

4 データアナリシスの基礎概念 305
  統計学と可視化(305)
  アルゴリズム機械学習(306)
    (1) 教師あり学習
    (2) 教師なし学習
    (3) 強化学習
  特徴量と過学習(308)
  ディープ・ラーニング (308)

5 組織におけるナレッジの獲得・蓄積と管理 309
  ナレッジ・ワーカー(309)
  実践の知識(309)

CASE 14 米国ゼロックスの武勇伝(310)
  知的資本(31)
  暗黙知形式知(313)
  身体性・粘着性・状況依存性(313)
  実践共同体(314)
  知識の移転戦略(316)
    (1) コード化戦略と個人化戦略
    (2) SECIモデル
    (3) 知識の移転モデル
  ナレッジ・マネジメント・ツール(319)
    (1) グループウェア
    (2) 知識リポジトリ
    (3) eラーニング
  組織的要因の重要性(321)

練習問題 322
文献案内 322


第11章 情報通信技術と社会 325

CASE 15 ケンブリッジ・アナリティカ(326)

1 社会的責任主体としての企業 327
  企業という社会的存在(327)
  企業の情報行動と倫理(328)
  社会的責任主体の要件(329)
  社会的責任主体としてのケイパビリティの獲得(330)

2 情報通信技術の社会的インパクト 331
  社会変容要因としての情報通信技術(331)
  不可視性と不可逆性(332)
  情報社会の脆弱性(334)
  法,技術,倫理(335)

3 ビジネスにおける情報倫理の諸課題 337
  情報通信技術の発展と情報倫理問題(337)
  個人データの利用とプライバシー(339)
  ブラック・ボックス社会(344)
  監視資本主義(346)
  ICTエンジニアのプロフェッショナリズム(348)
  人工知能技術の普及と失業(350)

練習問題 352
文献案内 353


第12章 これからの経営情報論と情報化実践 355

CASE 16 デンソーのIoT による「ダントツ工場」の実現に向けて(356)

1 伝統的な経営情報システム論の限界 357
  技術決定論的な情報化実践の終焉?(357)
  経営情報論の「アイデンティティの危機」(360)
    (1) 一般基礎理論(理論的コア)の欠如
    (2) 理論の厳密性と実践の目的関連性のジレンマの存在
    (3) 研究および実践の断片的,アドホックな特性の限界
    (4) 自己完結的な独立的変数としての認識する限界

2 今後の経営情報論研究への期待 363
  技術決定論的発想の克服(363)
    (1) 技術決定論の基本的特性
    (2) 実証分析に見るICTの貢献度合い

3 技術決定論の限界克服の基礎理論 366
    (1) 技術の社会的構成
    (2) 構造化理論
    (3) アクター・ネットワーク論
  社会構成主義的アプローチの可能性(369)
  社会構成主義と技術決定論的アプローチの関係(372)
  社会物質性アプローチの登場(373)
    (1) 人間と技術の「強い関係性」に留意する発想
    (2) 人間と技術の「弱い関係性」に留意する発想
  社会物質性アプローチの検討(375)

4 今後の情報システム構築方法論 376
  技術変革と組織変革の一体化(376)
  社会構成主義,社会物質性アプローチとシステム開発方法論(378)

5 経営情報論としての理論化の方向 380
  応用(実践)科学としての理論化(381)
  情報システムは社会技術システムとして認識(382)
  厳密性と目的関連性の両立(382)
  情報システム(デザイン・サイエンス)研究モデルの可能性(383)
  デザイン・サイエンスとしての理論化に向けて(387)

練習問題 300
文献案内 390


参考文献一覧 [393-413]
索引 [414-439]



【Column一覧】
(1) DX時代における製品、サービス, システムの開発――システム・オブ・システムズの設計アプローチ
(2) 情報通信技術の高性能化,低廉化,普及に関する経験則 
(3) ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA : Robotic Process Automation)
(4) アジャイル・ソフトウェア開発宣言
(5) サーバーの仮想化技術
(6) Heartbleed
(7) ロング・テール
(8) EDIと4つの規約
(9) OECDプライバシー8原則
(10) アイデンティティ論争の発端
(11) 経営情報論進展のための参照理論・専門領域