contents memorandum はてな

目次とメモを置いとく場

『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(大木毅 岩波新書 2019)

著者:大木 毅[おおき・たけし](1961-) ドイツ現代史,国際政治史.著述業.
図版製作:鳥元 真生
NDC:391.2074 戦史.戦記


https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b458082.html


【目次】
はじめに 現代の野蛮 [i-xi]
  未曾有の惨禍
  世界観戦争と大祖国戦争
  ゆがんだ理解
  スタートラインに立つために
目次 [xiii-xvii]
地図(ヨーロッパ 1941年6月22日) [xviii-xix]
注記 [xx]


第一章 偽りの握手から激突へ 001
第一節 スターリンの逃避 002
  無視される情報
  根強い対英不信
  弱体化していたソ連
第二節 対ソ戦決定 008
  征服の「プログラム」
  想定外の戦局
  三つの日付
  陸軍総司令部の危惧
  第一八軍開進訓令
第三節 作戦計画 020
  マルクス・プラン
  ロスベルク・プラン
  「バルバロッサ」作戦


第二章 敗北に向かう勝利 033
第一節 大敗したソ連軍 034
  驚異的な進撃
  実情に合わなかったドクトリン
  センノの戦い
  自壊する攻撃
第二節 スモレンスクの転回点 046
  「電撃戦」の幻
  ロシアはフランスにあらず
  消耗するドイツ軍
  「戦争に勝つ能力を失う」
  隠されたターニング・ポイント
第三節 最初の敗走 062
  戦略なきドイツ軍
  時間は浪費されたのか?
  「台風」作戦
  二度目の世界大戦へ


第三章 絶滅戦争 077
第一節 対ソ戦のイデオロギー 078
  四つの手がかり
  ヒトラーの「プログラム」
  ナチ・イデオロギーの機能
  大砲もバターも
  危機克服のための戦争
第二節 帝国主義的収奪 089
  三つの戦争
  東部総合計画
  収奪を目的とした占領
  多元支配による急進化
  「総統小包」
第三節 絶滅政策の実行 098
  「出動部隊」の編成
  「コミッサール指令」
  ホロコーストとの関連
  餓えるレニングラード
第四節 「大祖国戦争」の内実 113
  スターリニズムのテロ支配
  ナショナリズムの利用
  パルチザン
  ソ連軍による捕虜虐待


第四章 潮流の逆転 123
第一節 スターリングラードへの道 121
  ソ連軍冬季攻勢の挫折
  死守命令と統帥危機
  モスクワか石油か
  「青号」作戦
  妄信された勝利
  危険な両面攻勢
  スターリングラード突入 
  ネズミの戦争
第二節 機能しはじめた「作戦術」 147
  「作戦術」とは何か
  「赤いナポレオン」の用兵思想
  ドイツ東部軍の潰滅を狙う攻勢
  解囲ならず
  第六軍降伏
  戦略的攻勢能力をなくしたドイツ軍
第三節 「城塞」の挫折とソ連軍連続攻勢の開始 166
  「疾走」と「星」
  「後手からの一撃」
  暴かれた実像
  築かれていく「城塞」
  必勝の戦略態勢
  失敗を運命づけられた攻勢
  「城塞」潰ゆ


第五章 理性なき絶対戦争 185
第一節 軍事的合理性の消失 186
  「死守,死守,死守によって」
  焦土作戦
  世界観戦争の肥大化
  軍事的合理性なき戦争指導
第二節 「バグラチオン」作戦 197
  戦後をにらむスターリン
  「報復は正義」
  攻勢正面はどこか
  作戦術の完成形
第三節 ベルリンへの道 209
  赤い波と砂の城
  「共犯者」国家
  ドイツ本土進攻
  ベルリン陥落
  ポツダムの終止符


終章 「絶滅戦争」の長い影 219
  複合戦争としての対ソ戦
  実証研究を阻んできたもの
  利用されてきた独ソ戦


文献解題 [227-240]
 1 史資料・文献
 2 引用文献
略称,および軍事用語について [241-242]
独ソ戦関連年表 [243-246]
おわりに(二〇一九年五月 大木 毅) [247-248]

『AIの時代と法』(小塚荘一郎 岩波新書 2019)

著者:小塚 荘一郎[こづか・そういちろう] 商法。会社法
NDC:007.13 情報科学人工知能パターン認識


AIの時代と法 - 岩波書店


【目次】
はしがき [i-iii]
目次 [v-vii]


第1章 デジタル技術に揺らぐ法 001
1 デジタル技術と人間の能力の拡張 002
  エアラインとアバター
  飛行機に乗るのは世界の人口の六%
  人間の能力の拡張
  人工知能(AI)の第三次ブーム
  AIは人間を超えるか

2 法制度に対する期待と不満 011
  法は技術に追いついていないのか
  「トロッコ問題」と責任ルール
  法律家から見たトロッコ問題
  社会の変化と法の考え方
  法の大変革期


第2章 AIとシェアリング・エコノミー ――利用者と消費者の間 025
1 消費者がモノを持たない時代 026
  無人配車サービスの実験
  音楽とコミックで起こったこと
  物の取引を中心にした法の体系
  サービス提供契約の内容
  エッジコンピューティングとクラウドコンピューティング
  サブスクリプション型取引と製造物責任
  自動運転車のリコール

2 AIの間違いと暴走 045
  人間がセーフティ・ボタンを押す
  証券誤発注事件の判決が示した「システム提供責任」
  セーフティ・ボタンは押せるのか
  人間の判断を求めればAIのメリットが消える
  冗長性による安全の確保
  専門家かユーザーか

3 責任の所在――メーカー・売り手・プラットフォーム 
  自動運転車が「プラットフォーム」に
  二つのシェアリングサービス
  プラットフォームの契約関係と責任
  サービス提供者を管理するプラットフォームの義務
  プラットフォームの義務を規定する法律


第3章 情報法の時代――「新時代の石油」をめぐって 069
1 プライバシー対「データの活用」 070
  日本におけるデータ利用のトラウマ
  判例が発展させたプライバシーの法理
  GPS装置を用いた刑事捜査の適法性
  見えている行為から見えない事情を推知
  「新時代の石油」
  EUの一般データ保護規則(GDPR
  「現代の資源ナショナリズム」としてのGDPR
  情報銀行が開く可能性

2 誰のプライバシーか 087
  AIスピーカーとプライバシー
  スマートテレビの視聴履歴
  視聴履歴取得への同意と家族構成員
  家族の中のプライバシー
  ビッグデータの時代
  衛星からの観測データとプライバシー

3 情報法の構造 099
  データ収集の対価と知的財産権
  EUのデータベース権
  エレクトロニクス業界に生じた「特許の藪」
  限定データの不正競争行為に対する保護
  情報法の構造


第4章 法と契約と技術――何が個人を守るのか 113
1 AIに関する原則と「コード」の支配 113
  智連社会とSociety 5.0
  人間中心のAI社会原則
  AI開発原則とAI利活用原則
  EUの「信頼されるAIのための倫理ガイドライン
  アシロマ原則
  法律よりも「原則」
  「コードが法に代わる」
  AI原則と「コード」

2 縮小する「法の領域」 133
  仮想通貨のハードフォーク
  「日本人の法意識」と「法の領域」
  「われわれにはわれわれの裁判所がある」
  消費者保護・バイ・デザイン
  制度設計と「ナッジ」

3 間違わないAIの問題 151
  AIと差別
  AIと憲法的価値
  差別の排除と「ナッジ」の共通性
  信用スコアリング


第5章 国家権力対プラットフォーム 161
1 仮想通貨は国家を壊すか 162
  国家によるサービス取引の管理
  仮想通貨の挑戦
  仮想通貨の「信用」
  キャッシュレス決済の登場
  キャッシュレス決済とプラットフォーム

2 デジタル版の「新国際経済秩序」 174
  データ資源の資源ナショナリズム
  著作権に関するプラットフォームの責任
  プロバイダーの責任制限
  巨大プラットフォームは国家と同視されるべきか
  国家からの自由・国家に対するプライバシー
  AI倫理と「よい統治」に対する権利

3 法を執行する「コード」と権力に対抗する「コード」 188
  法律を「コード」に置き換える
  スピード制限を取り締まるプログラム
  法の運用とプログラムの間
  法の執行を受ける側のコード
  アメリカのCLOUD法
  コードによる法の執行と法の回避


第6章 法の前提と限界 199
1 スマートコントラクトと近代法 200
  自動販売機は「スマート」か
  「法律」と「法」
  明治日本か学んだ近代法
  サイズの合わない既製服
  欧州議会の「ロボット法」提案
  「電子人」立法が実現した場合

2 社会を守るガバナンス 214
  日本企業とAI開発の適性
  日本のコーポレートガバナンス
  権利・義務とは別にある規範
  デジタル技術による変革と法の限界
  AI時代のガバナンスと日本の役割


参考文献 [225-232]
あとがき(小塚荘一郎 ) [233-235]




【関連記事】
・まず、人工知能研究が社会に与える影響について考える本。山のように出版されて玉石混淆なので、私の好みで3冊だけ。
『人間さまお断り――人工知能時代の経済と労働の手引き』(Jerry Kaplan[著] 安原和見[訳] 三省堂 2016//2015) - contents memorandum はてな
『AIの衝撃――人工知能は人類の敵か』(小林雅一 講談社現代新書 2015) - contents memorandum はてな
『人工知能が変える仕事の未来』(野村直之 日本経済新聞社 2016) - contents memorandum はてな


・以下、個別テーマに関係する本(の目次)。
インターネット法
『インターネット法』(松井茂記,鈴木秀美,山口いつ子[編] 有斐閣 2015) - contents memorandum はてな

プラットフォーム
『プラットフォームの経済学――機械は人と企業の未来をどう変える?』(Andrew McAfee, Erik Brynjolfsson[著] 村井章子[訳] 日経BP社 2018//2017) - contents memorandum はてな

知財の正義
『知財の正義』(Robert P. Merges[著] 山根崇邦,前田健,泉卓也[訳] 勁草書房 2017//2011) - contents memorandum はてな

グリッドロック経済
『グリッドロック経済――多すぎる所有権が市場をつぶす』(Michael A. Heller[著] 山形浩生,森本正史[訳] 亜紀書房 2018//2008) - contents memorandum はてな

コモンズ
『コモンズ――ネット上の所有権強化は技術革新を殺す』(Lawrence Lessig[著] 山形浩生[訳] 翔泳社 2002//2001) - contents memorandum はてな

CODE
『CODE――インターネットの合法・違法・プライバシー』(Lawrence Lessig[著] 山形浩生,柏木亮二[訳] 翔泳社 2001//1999) - contents memorandum はてな

コーポレート・ガバナンス
『コーポレート・ガバナンス』(花崎正晴 岩波新書 2014) - contents memorandum はてな

日本人の法意識
『日本人の法意識』(川島武宜 岩波新書 1967) - contents memorandum はてな

『サラ金の歴史――消費者金融と日本社会』(小島庸平 中公新書 2021)

著者:小島 庸平[こじま・ようへい] (1982-) 

サラ金の歴史|新書|中央公論新社


【目次】
まえがき [i-vi]
目次 [vii-ix]


序章 家計とジェンダーから見た金融史 003
  サラ金と家族・ジェンダー
  金融史の家計アプローチ
  金融史の家計・ジェンダーアプローチ


第1章 「素人高利貸」の時代――戦前期 013
1 「貧民窟」の素人高利貸 017
  賀川豊彦と「貧民窟」新川
  伊達と任侠の貸金貸借
  好まれた「素人高利貸」
  成功モデルとしての高利貸
  重い負担と妻の収入
  貸し手と借り手の流動的な関係

2 サラリーマンと素人高利貸 032
  エリートとしてのサラリーマン
  サラリーマンに対する信用評価
  サラリーマンの素人高利貸
  素人高利貸のすすめ

3 金融機関による小口信用貸付 040
  日本昼夜銀行のサラリーマン金融
  戦時期の庶民金庫


第2章 質屋・月賦から団地金融へ―― 一九五〇〜六○年代 047
1 前提としての質屋と月賦 047
  庶民金融の代表格としての質屋
  主婦の質屋通い
  「妻の無能力」規定と借金
  月賦と主婦
  団地族と割賦販売
  金融行政の姿勢と金融機関
  サラ金と団地金融の創業者たち

2 団地金融の誕生と創業者 064
  団地金融の創業者①森田国七
  団地金融の創業者②田辺信夫
  素人高利貸と新生活運動
  団地金融の誕生
  団地金融のメリット

3 団地金融の限界と消滅 075
  団地金融と主婦
  団地金融における審査の限界
  団地金融の高コスト構造
  その後の田辺と森田


第3章 サラリーマン金融と「前向き」の資金需要高度経済成長期 085
1 創業者――「素人高利貸」からの脱却 085
  サラリーマン金融の誕生
  「信頼の輪」・アコム木下政雄
  「人間的な顔をした金融システム」・プロミス神内良一
  「人を活かす金貸し」・レイク浜田武雄
  サラ金創業者の理念と理想

2 金融技術の革新と利用者の性格 098
  マルイトの「勤め人信用貸し」
  入社試験が則ち当社の貸付調査である
  夜の遊興と「現金の救急車」
  顧客構成と借入金使途
  サラ金と企業社会

3 夫婦間のせめぎあいとサラ金 109
  小遣い制とつきあい
  「もうないわよ」と言い放つ妻
  「がまんしろ」と命じる夫

4 資金調達の隘路と資本自由化 118
  サラ金企業の成長と資金調達の隘路
  資本自由化の動き


第4章 低成長期と「後ろ向き」の資金需要―― 一九七〇~八〇年代 123
1 高度経済成長の終焉と激化する競争 123
  世界経済の激変と高度経済成長の終焉
  増える新規参入者
  武富士創業者・武井保雄の生い立ち
  貸金業者としての成長
  「アイデアマン」八谷光紀のヤタガイ・クレジット

2 資金調達環境の好転と審査基準の緩和――女性・下層の金融的包摂 140
  金利競争と融資環境の改善
  家計の悪化と女性向け融資の拡大
  信用審査の緩和
  審査基準緩和の条件①信用情報の共有
  審査基準緩和の条件②団体信用生命保険の導入

3 第一次サラ金パニックと貸金業規制 162
  第一次サラ金パニック
  サラ金三悪
  サラ金批判と立法化の困難

4 サラ金に対する行政的介入 171
  ①外資の上陸と低利規制
  ②銀行への個人向け融資要請と個人ローン元年
  ③徳田通達の打撃
  資金調達網の国際化と力関係の逆転
  出店攻勢と熾烈な競争


第5章 サラ金で借りる人・働く人――サラ金パニックから冬の時代へ 189
1 債務者の自殺・家出と精神状態 189
  サラ金と性差①家出する女性
  サラ金と性差②自殺する男性
  『日本カネ意識』

2 感情労働と債権回収の金融技術 198
  男女間の役割分担
  感情労働としての債権回収
  感情労働と重層的な労務管理
  職務の「脱人格化」と自己責任論
  債権回収者の皮膚感覚

3 貸金業規制法の制定と「冬の時代」 212
  「サラ金被害者の会」結成
  破産件数の急増
  貸金業規制法
  「冬の時代」到来
  プロミスの経営危機と救済
  銀行との関係強化
  「冬の時代」の経営改革
  進むリストラと「冬の時代」からの脱却


第6章 長期不況下での成長と新プターの代用 235
1 バブル期以降の急成長 235
  株式上場のための低利化
  バブル崩壊の影響とレイク
  銀行の消費者ローン拡大
  無人貸付機と自動契約機の歴史
  株式上場と社会的信用の向上
  躍進するアイフル
  アイフル躍進の要因

2 長引く不況と高まる批判 257
  クレジットカードを契機とする多重債務問題
  日本型雇用・「家族の戦後体制」の動揺とサラ金
  バブル崩壊後のサラ金利用者
  商工ローンヤミ金融
  武富士の凋落
  武富士の粗雑な労務管理
  困難な貸金業企業統治
  アイフル被害者対策全国会議

3 改正貸金業法の影響と帰結 279
  スケープゴートとしてのヤミ金
  二〇〇六年の法改正に向けた攻防
  業界の反撃と決着
  改正貸金業法インパク
  改正貸金業法と「家族の戦後体制」の変容
  「ワイフリスク」と「男の家計革命」
  規制強化とヤミ金の動向
  金融技術革新のゆくえ


終章 「日本」が生んだサラ金 303
  金融技術と「人」の視点
  高利貸と民族問題
  サラ金企業と利用者の視点の統合
  「自分事」としてのサラ金問題


おわりに(二〇二一年月 小島庸平) [316-321]
引用文献一覧 [322-330]
巻末付表1 戦前期の男女別日給推移 [331]
巻末付表2 常用者労働者賃金の推移(戦後) [332]
略年表(1877-2019) [333-344]




【関連記事】
・金融の役割について
『それでも金融はすばらしい――人類最強の発明で世界の難問を解く。』(Robert J. Shiller[著] 山形浩生,森岡桜[訳] 東洋経済新報社 2013//2012) - contents memorandum はてな

『金融NPO ――新しいお金の流れをつくる』(藤井良広 岩波新書 2007) - contents memorandum はてな


マイクロファイナンスについて。
『マイクロファイナンス――貧困と闘う「驚異の金融」』(菅正広 中公新書 2009) - contents memorandum はてな

『世界は貧困を食いものにしている』(Hugh Sinclair[著] 大田直子[訳] 朝日新聞出版 2013//2012) - contents memorandum はてな

『貧困と闘う知――教育、医療、金融、ガバナンス』(Esther Duflo[著] 峯陽一, Koza Aline[訳] みすず書房 2017//2010) - contents memorandum はてな


・その他
『管理される心――感情が商品になるとき』(A. R. Hochschild[著] 石川准 室伏亜希[訳] 世界思想社 2000//1983) - contents memorandum はてな




【抜き書き】


・巻末の「引用文献一覧」から。本にはこれ以外の文献も載っている。

  【重要な参考文献】
※以下の文献は、サラ金業界や被害者運動の通史的記録として優れたものである。本書でも繰り返し利用したものの、煩雑を避けるため特に注記しなかった場合もある。本書かこれらの仕事に特に多くを負っていることを明記するとともに、より詳細にサラ金の歴史を知りたい読者には、左記の文献の参照を強く勧めたい。

朝日新聞社会部(一九七九)『サラ金朝日新聞社
井手壮平(二〇〇七)『サラ金崩壊――グレーゾーン金利撤廃をめぐる三〇〇日戦争』早川書房
宇都宮健児(二〇〇九)『弁護士、闘う――宇都宮健児の事件帖』岩波書店
沖野岩雄(一九九二)『貸金業現代史(上)・(下)』 信用產業新報社
川波洋一・前田真一郎編(二〇一二)『消費者金融論研究』消費者金融論研究会
木村達也(二〇一三〜)「消費者運動の歴史(連載)」
消費者法ニュース』九四〜
篠原茂一(一九七六)『サラ金商法のからくり――借りる方も・貸す方も・この本を…』自由国民社
プロミス社史編纂プロジェクト(一九九四)『プロミス三〇年史(I〜IV)』(本文中では、「プロミス社史」と略記)
マルイトアコムグループ社史編纂委員会編(一九九一)『マルイトアコムグループ五〇年史(総集編)・(事業編)』、凸版印刷株式会社年史センター
マルイトアコム(二〇一六)『マルイトアコムグループ八〇年史(創業期編)・(アコム近経営史編)』、出版文化社
溝口敦(一九八三)『武富士 サラ金の帝王』講談社
横田一(二〇〇八)『クレジット・サラ金列島で闘う人びと』岩波書店
レイク広報室(一九八九)『写真と証言で見るレイク25年』


 終章から。

・イントロ部分

本書の冒頭で触れた、サラ金だけが個人の窮状を救ってくれるという「奇妙な事態」は、依然として過去の遺物とはなっていない。
 とはいえ、人びとの経済的苦境につけ込む「卑劣」な貸金業者を批判するだけで、問題は解決しない。これまでにも、サラ金に対する批判には、ある種の危うさがつきまとってきた。それは、高利貸の問題を特定の民族の問題に帰して理解しようとする一部の傾向である。


エスニック集団に対する負のイメージについて。

◆高利貸と民族問題
 貸金業者に対する憎悪の念は、人類社会において広く観察される感情である。文学の世界を見ても、シェイクスピアヴェニスの商人』に登場する高利貸のシャイロックは強欲な悪役として描かれているし、ドストエフスキー罪と罰』の主人公ラスコーリニコフは、高利貸の老女を殺害し、それを正んだ英雄主義によって正当化している。
〔……〕
初期ナチスの幹部だった経済学者ゴットフリート・フェーダーは、利子制度を「ユダヤ的資本主義」の本質と捉え、「利子奴隷制の廃止」を訴えていた。アドルフ・ヒトラー反ユダヤ主義を開眼させたといわれる人物である(石田 二〇一五)。
 ドイツのユダヤ人が高利貸として非難されはじめたのは、一一世紀末頃にまで遡る。一二一五年には、第四回ラテラノ宗教会議によってキリスト教徒とユダヤ教徒の隔離政策が進められ、ユダヤ人は職工や商業といったほとんどの職業から締め出されてしまった。大澤(一九九一)は、ユダヤ人が高利貸に手を染めたのは、強烈な隔離・差別政策の結果であると強調している。
 だが、実際にはユダヤ人だけでなく、少なくない数のキリスト教徒もまた、金融業に従事していた。高利貸の営業は、中世のキリスト教徒にも実質的には許されていたにもかかわらず、その存在はほとんど忘却され、強欲で悪辣な高利貸のイメージは、ユダヤ人にのみ投影されてきたのである。
 こうした研究動向を紹介した佐々木(二〇〇五)は、「債権者にたいする闘いが債権者の一部、つまりユダヤ人にたいする闘いに変換されたメカニズムを追跡すること」を、新たな課題として提起している。キリスト教徒の高利貸にも向けられていたであろう憎悪が、なぜ、どのようにして忘却され、ユダヤ人高利貸に対する憎悪へと一元的に「変換」されたのか。金融取引における貸し手と借り手の間の対立が、民族間の対立へと「変換」された歴史的なプロセスが、現在の研究水準の下では問われている。
〔……〕
 戦後の日本において、サラ金業者の取り立ては、確かにしばしば過酷なものだった。サラ金に対して恨み骨髄に徹した債務者の数は、決して少なくないだろう。だが、そうしたサラ金の問題が、少数の特定民族に引きつけて理解されている一部の傾向には、危うさを覚えずにはいられない。ユダヤ人を非生産的な高利貸と断じてその「絶滅」を目指したナチス・ドイツの発想と、サラ金の引き起こしてきた問題を「第三国人」に帰して理解する偏見とは、佐々木(二〇〇五)の言う民族的な「変換」という点で、その根を同じくしている。

・本書の特徴の一つである、「利用者意外の視点」の必要性。そして、サラ金企業への負のイメージ。

サラ金企業と利用者の視点の統合
 サラ金の悪辣さを扇情的に書き立て、徹底的に批判する。そうした言説が必要であり、一定の社会的意義を持った時期は、確かに存在した。〔……〕これらの書が、ある種の公憤と正義感に基づいて執筆されたことは疑わない。
 だが、そうした正当な意図にもかかわらず、サラ金を批判する言説が業者の酷薄さや異常性を強調し、結果として特定の職業に対する差別的なまなざしを強化していたとすれば、それは大きな問題ではなかったか。
 そもそも、サラ金が成長した歴史的な背景を、利用者とサラ金業者の双方の資料を突き合わせて本格的に跡づける作業は、現在までほとんどなされてこなかった。利用者−被害者の側の視点に立った告発や研究が発表される一方で、サラ金から資金的な援助を受けている研究者集団も存在し、両者の間での建設的な交流は皆無に近かった。そのことが、業界に対する理解を一面的なものとし、佐々木(二〇〇五)の言う民族的な「変換」を野放しにした一因であるように思われてならない。
 サラ金の問題は、ひとまず業界とは距離を取り、歴史として批判的に整理される必要がある。だが、かといって被害者側の視点からだけでは、問題の全貌を明らかにすることは難しい。サラ金業者の主体的で革新的な経営努力が、なぜ多くの人びとを破滅に追いやったのか。その具体的なプロセスを、サラ金業者と利用者の双方の事情を踏まえ、可能な限り内在的に説明しようというのが、本書の試みだった。

・私が個人的に気に入った部分。

 サラ金各社が、ある種の高邁な経営的理想を掲げていたことは、本書でも紹介した通りである。しかし、営利を追求する企業体としてサラ金が大きく成長した後、私たちの目の前に開けたのは、自己破産と自殺者が異常に増加し、サラ金が貧困者の「セイフティネット」になるという、実に荒涼とした光景だった。
 繰り返しになるが、サラ金各社の個別的な不当・不法行為は、それとして厳しく批判されるべきである。とはいえ、サラ金の非人道性を強調するだけで、問題が本当の意味で解決するとは思われない。
 サラ金は、貯蓄超過や金融自由化というマクロな経済環境の変化と深く結びつきながら成長し、現在も日銀・メガバンクを頂点とする重層的な金融構造の中にしっかりと根を下ろしている。個人間金融から生まれたサラ金を肥大させたのは、日本の経済発展を支えてきた金融システムと、それを利用する私たち自身だった。その事実を、まずは正面から見定める必要がある。

『経済学は役に立ちますか?』(大竹文雄,竹中平蔵 東京書籍 2018)

著者:大竹 文雄[おおたけ・ふみお] (1961-)
著者:竹中 平蔵[たけなか・へいぞう] (1951-)
企画・編集:堀岡 治男(堀岡編集事務所)
ブックデザイン:長谷川 理
写真:宗野 歩
NDC:331 経済学.経済思想


『経済学は役に立ちますか?』 - 東京書籍




【目次】
はしがき(大竹文雄) [002-007]
目次 [008-016]


第1章 エピソードに翻弄される世界 ……いま日本と世界で何が起きているか? 017
富の再分配を放棄したアメリ 018
  「エピソード」の攻勢を受けて「エビデンス」は劣勢を強いられている
  今の状況を生み出したのは、分配問題を放置したアメリカ自身の責任
  正論を吐くジャーナリストや正統派のエコノミストが、頑張らなければいけない

非効率的な富の再分配を続ける日本 027
  「地方」という切り口だけでおカネが地方自治体に配られている
  年金機構と国税庁を一体化した歳入庁が効率的に歳入を確保すればいい

機能マヒ状態の日本の政策委員会 033
  日本のポリシーボードでは利益相反が平気で行われている
  ポリシーボードは国民全体のためにどういう政策がいいかを議論する場
  エピソードで政策論議をする委員たち 


第2章 経済学を学ぶと世の中が面白く見える? 043
新古典派経済学から行動経済学 044
  社会還元の一つの方法が本を書くこと
  「経済学を使って予測できればお金儲けができる」と考えて経済学部へ進学
  経済学部にお金儲けの講座はなかった?…新古典派経済学が万能と考えられていた時代 

経済学の理論と政策の現場 053
  「経済学を使うとエキサイティングに世の中を議論することができる!」 
  経済学の考え方と政策現場との間には巨大なギャップが横たわる
  ギャップを埋めるために伝統的経済学から行動経済学

経済学の世界と霞が関の世界 064
  非合理の中に真実がある! 
  日本のエコノミストと称する人たちは、きわめて安直なコメントをする
  エビデンスベースで政策効果を測るときにはランダム化比較試験がベスト
  アメリカの大学では財務担当のバイスプレジデントが資産運用をしている
  経済学は進化する……所得格差論争 


第3章 経済的センスで考える 085
日本はなぜデフレから抜け出せないのか? 086
  デフレの時はおカネを借りている人が損をする
  政府の側に規制緩和等々の努力が足りず、日銀のインフレ目標政策は失敗した 
  経済は極端に行き過ぎると、元に戻すために大きな犠牲を払うことになる 
  マッチング機能の向上によって完全雇用失業率が下がったかもしれない
  人口減少によってデフレになるという議論はあまりにおかしい
  実験を繰り返して新しい制度設計をすることが必要な時代になっている
  露店でスマホ決済。インドではものすごいことが起きている
  海外の先進事例を学んで日本で実施するという手法はもはや使えない
  サンドボックスは、特区の中でもゼロベースの特区

価格メカニズムは機能しているのか? 109
  価格競争を良しとしない風潮が日本にはまだかなり残っている
  価格競争をしたくないという運動法則がこの社会には強く働いている
  みんな同じでなければいけないという価値観が強く反映されている
  効率的な人が活躍できて社会全体の利益が最大になるが、なんとなく不公平感が残る
  市場メカニズムの裏面として再分配のシステムが必要
  タクシー運転手の過酷な労働とタクシーの規制緩和は別問題
  「雨の日にはどうしてタクシーはつかまらないのか」という経済学の研究がある
  日本のタクシー制度は参入障壁を高くして、その分規制を厳しくする典型 

働き方改革」の行方 126
  「働き方改革」は伝統的な経済学ではなかなか説明できない問題
  長時間労働をする人には二つのタイプがある
  長期雇用をベースにした雇用システムは価値観の多様化に対応できない
  ベンチャー企業で終身雇用・年功序列を採用することはできない
  終身雇用・年功序列が日本の正社員のデフォルトになっていることが問題
  一人一人のライフスタイルに合った働き方ができるようにすることが大事
  世界の常識と日本の常識が非常に違っているもう一つの例:金銭解雇 
  ヨーロッパの国にはきちんとした金銭解雇のルールがある
  「同一労働同一賃金」は簡単な話ではない
  霞が関を「同一労働同一賃金特区」にして、具体的な事例を示すべきだ
  労働政策審議会と「フィラデルフィア宣言」の原則 

移民問題」は日本の問題でもある 152
  2020年以降、「移民」は避けて通ることができない問題として表面化してくる
  移民のメリットを理解するようにならないと、デメリットのほうが大きくなる
  明治維新で最大の経済的な効果をもたらしたものは移動の自由
  ヒトの自由移動によるメリットはモノの自由移動よりもはるかに大きい
  外国人に対するネガティブな感情は変えることができる
  グローバリゼーションによる負担は大きいかもしれないがメリットはより大きい 

日本の教育における課題はなぜ起きているのか? 160
  奨学金を一律に給付型にすることには賛成できない
  個人の投資と企業の投資の違いをどう考えるか
  給付型奨学金の枠を少し広げることは理屈としてはありうる
  「大学生が選挙権を持つようになるので、給付型の奨学金にしよう」? 
  若者は今を我慢して、将来を大事にすることが苦手
  若者たちは将来年金がもらえるかどうかを心配している
  初等中等教育では「読む」ことと「書く」ことが重要
  スタンフォードの幼稚園で行われたマシュマロ・テストでわかったこと
  夏休みの宿題をいつやるのかと大人になってからの肥満に関係があることがわかった
  典型的なアクティブ・ラーニング教育をするミネルバ大学のモットー
  「反競争的教育」によって助け合い精神は希薄になる
  競争してこなかった人は相手の立場に立つことができない 


第4章 経済学はもっと面白くなる! 195
日本の経済学と世界の経済学 196
  政策オリエンテッドな問題をどう解くかという研究が進んでいる
  政策論としては、大きな流れを捉えて予測するところに関心が向かっている
  日本の経済学は進んでいるのか、遅れているのか、微妙!
  日本では「検証」という概念が乏しい
  若者の労働力人口が大幅に減っているのは、日本にとって大きな問題
  日本は完全雇用を実現しているのに、なぜ賃金が上がらないのか

メディアに欠落する経済リテラシー 212
  今起きている問題や政策についてきちんと議論できるジャーナリストがほとんどいない
  「カジノ法」と「年金カット法」――メディアの経済リテラシーが大きな課題
  経済学と政策やメディアとの距離がありすぎるのも問題
  日本にはパブリックインテレクチャルズという概念が希薄

経済学は新しい学問。もっと面白くなる! 223
  経済学は役に立つと思われ過ぎているから努力してこなかった
  「寄付をすると幸福になる」という研究
  経済学の大きな流れを見ると面白い
  日本の経済界で圧倒的な人気を誇る経済学者シュンペーター
  人物を通じて「経済」を教えることがあってもいい
  社会科学的な発想をきちんと歴史で教えてこなかったのは事実


あとがき(竹中平蔵) [242-247]





【関連記事】
・大竹先生の著作(一部)
『労働経済学入門』(大竹文雄 日経文庫 1998)

『日本の不平等』(大竹文雄 日本経済新聞社 2005)

『こんなに使える経済学――肥満から出世まで』(大竹文雄[編] ちくま新書 2008) - contents memorandum はてな


新自由主義

『新自由主義の復権――日本経済はなぜ停滞しているのか』(八代尚宏 中公新書 2011)

『日本型新自由主義とは何か――占領期改革からアベノミクスまで』(菊池信輝 岩波現代全書 2016)

『新自由主義の妖怪――資本主義史論の試み』(稲葉振一郎 亜紀書房 2018)


・対話形式。

『経済成長って何で必要なんだろう?』(芹沢一也,荻上チキ[編] 光文社 2009) - contents memorandum はてな

『脱貧困の経済学』(飯田泰之,雨宮処凛 ちくま文庫 2012//2009)

『対話でわかる 痛快明快経済学史』(松尾匡 日経BP社 2009)


・その他。

『行動経済学入門』(多田洋介 日経文庫 2014//2003)
 

『エコノミクス・ルール――憂鬱な科学の功罪』(Dani Rodrik[著] 柴山桂太,大川良文[訳] 白水社 2018//2015)

原題:Economics Rules: The Rights and Wrongs of the Dismal Science (2015)
著者:Dani Rodrik(1957-)
訳者:柴山 桂太(1974-) 政治-経済思想。
訳者:大川 良文(1971-) 国際経済学
NDC:331 : 経済学.経済思想


エコノミクス・ルール - 白水社


【目次】
献辞 [002]
目次 [003-005]
謝辞 [007-010]


はじめに 経済学の正しい使い方、間違った使い方 011


第一章 モデルは何をするのか 017
  モデルの多様性
  寓話としてのモデル
  実験としてのモデル
  非現実的な仮定
  数学とモデル
  単純さ 対 複雑さ


第二章 経済モデルの科学 047
  仮説を明確にする
  普通の直観が役に立たないとき
  科学的進歩、一つの時代に一つのモデル
  モデルと実証的手法
  モデル、権威と上下関係


第三章 モデルを舵取りする 081
  成長戦略の診断法
  モデル選択の一般原理
  重要な仮定を検証する
  メカニズムを検証する
  直接的含意を検証する
  偶発的な含意を検証する
  外的妥当性ふたたび


第四章 モデルと理論 105
  価値と分配の理論
  景気循環と失業の理論
  特定の出来事を説明する理論
  理論とは実のところ単なるモデルの寄せ集めに過ぎない  


第五章 経済学者が間違える時 133
  不作為の誤り――金融危機
  作為の誤り――ワシントン・コンセンサス
  経済学の心理学と社会学
  権力と責任


第六章 経済学と経済学批判 157
  よくある批判を再考する
  価値観の問題
  多様性の欠如
  野心と謙虚さと


おわりに 二十の戒め 189


「孤」の経済学方法論――訳者あとがきに代
えて(二〇一八年一月十七日 柴山桂太 大川良文) [191-196]
註 [5-14]
索引 [1-4]