編著者:金 尚均(1967-) 刑法。
https://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03618-6
【目次】
はじめに [i-iii]
目次 [iv-vi]
第I部 日本におけるヘイト・スピーチ
第1章 ヘイト・スピーチとレイシズムの関係性――なぜ,今それを問わねばならないのか〔森 千香子〕
I 問題の所在 003
II レイシズムの変貌:科学的レイシズムから文化的レイシズムへ 004
レイシズムの誕生
本質化される「差違」と科学
レイシズム論理の移行
III 草の根のレイシズムと上からのレイシズム 008
IV 憎悪,無視,同情:レイシズムの多様な表現と連続性 012
V むすびに代えて:ヘイト・スピーチをめぐる危険と「希望」 015
註 016
第2章 新保守運動とヘイト・スピーチ〔安田 浩一〕
I ヘイト・スピーチの実際 018
II 日本におけるヘイト・スピーチ 025
III なぜ,ヘイト・スピーチをするのか 028
第3章 ヘイト・スピーチとその被害〔中村 一成〕
I 問題の所在 035
II 京都朝鮮第一初級学校襲撃事件:何が起ったのか 036
III ヘイト・スピーチが与える心的被害 037
子どもたちのダメージ
大人たちのダメージ
「喪失感」あるいは「前提の崩壊」
「持続する感情的苦痛」「逸脱感情」「帰責の誤り」
IV ヘイト・スピーチによって生じる多岐にわたる被害 046
註 051
第II部 表現の自由とヘイト・スピーチ
第4章 表現の自由とは何か――或いはヘイト・スピーチについて〔遠藤比呂通〕
I 問題設定 055
II 個人の尊重と差別禁止 056
III 掟の門の前で 058
IV 小学校の門の前で:表現の自由とは何か 060
命題1:表現の自由と民主主義
命題2:表現の自由と投票所
命題3:表現の自由と明らかな差し迫った危機
V 京都朝鮮第一初級の門の前で:条約の趣旨と目的とは何か 064
VI 被害者の言葉を聴きとること 067
註 070
第5章 表現の自由の限界〔小谷 順子〕
I 表現の自由の限界とは 074
憲法21条の保障する「表現」とは何か
憲法21条の下でのヘイト・スピーチ規制の考え方
II 表現内容による限界:表現内容規制 076
表現内容規制とは
刑事法による表現内容規制
民事法による表現内容規制
人権法による表現内容規制
III 「行為」規制と集団行動の規制 080
「行為」の規制
集団行動(デモ等)の規制
IV 媒体の特性による限界 083
テレビ放送の法規制と自主規制
自由な新聞・雑誌
V 表現の自由の保障意義(重要性,価値)に照らした限界 084
民主主義過程(自己統治)論とその限界
個人的価値(自己実現)論とその限界
真実の発見/思想の自由市場論の重要性とその限界
VI むすびに代えて 086
註 087
第6章 言論規制消極論の意義と課題〔小谷 順子〕
I 問題の所在 090
ヘイト・スピーチの定義の困難さ
ヘイト・スピーチの規制対象の限定の困難さ
II アメリカにおける規制消極論 092
規制消極論の背景
連邦最高裁のヘイト・スピーチ規制違憲判決(1992年のRAV判決)
III 伝統的な規制消極論 094
表現内容規制に対する警戒感
規制対象を限定できるのか?
小括
IV 「PC(ポリティカル・コレクトネス)」に反対する規制消極論 097
PCとはなにか
保守派によるPCへの反発
PC推進に戸惑うリベラル派
V 規制効果に対する懐疑論に基づく規制消極論 099
規制対象となる表現範囲の狭さと規制効果
規制の副作用1:差別問題解消への悪影響のおそれ
規制の副作用2:規制がマイノリティに対して適用されるおそれ
VI むすびに代えて 101
註 103
第III部 ヘイト・スピーチに対する刑事規制
第7章 刑法における表現の自由の限界――ヘイト・スピーチの明確性と歴史性との関係〔櫻庭 総〕
I 問題の所在 107
II 刑法における表現の自由 108
刑法における表現の自由の位相
名誉に対する罪と表現の自由
扇動罪と表現の自由
表現の自由ち関する裁判所の立場
特殊日本的な状況
III ヘイト・スピーチ規制と表現の自由 112
従来の学説および政府の消極的見解
刑法学におけるヘイト・スピーチ規制と表現の自由
憲法学におけるヘイト・スピーチ規制と表現の自由
明確性と実効性のジレンマ
IV ヘイト・スピーチの歴史性 115
ドイツにおける民衆扇動罪の成立
「人間の尊厳への攻撃」要件解釈と「過去の克服」政策
米国における歴史的・文脈的アプローチ
V むすびに代えて 119
議論状況のまとめ
不明確性の原因
広義/狭義のヘイト・スピーチ
結論
註 124
第8章 名誉に対する罪によるヘイト・スピーチ規制の可能性――ヘイト・スピーチの構造性を問うべき次元〔櫻庭 総〕
I 問題の所在 128
II 個人的法益侵害としてのヘイト・スピーチ 129
ヘイト・スピーチの諸類型
名誉に対する罪の限界
集団侮辱罪の提言(1):内野説
集団侮辱罪の提言(2):平川説
集団侮辱罪の提言(3):楠本説
集団侮辱罪の問題点
III 社会的法益侵害としてのヘイト・スピーチ 135
ドイツにおける民衆扇動罪の位置づけ
民衆扇動罪の保護法益
ホロコースト否定罪の新設
ホロコースト否定罪の保護法益
ホロコースト否定罪の問題点
IV ヘイト・スピーチの構造性 142
批判的人種理論の主張
刑事規制は構造的不正義を克服できない
V むすびに代えて 144
議論状況のまとめ
結論
註 146
第9章 ヘイト・スピーチ規制の意義と特殊性〔金 尚均〕
I 名誉侵害罪とヘイト・スピーチ 150
II 名誉侵害犯における法益 154
ヘイト・スピーチは何を害しているのか?
名誉の毀損とは異なる害悪を生じさせるヘイト・スピーチ
ドイツにおけるヘイト・スピーチ規制
ドイツにおけるヘイト・スピーチ規制の実際
小括
註 161
第10章 ヘイト・スピーチに対する処罰の可能性〔金 尚均〕
I 平等保護としてのヘイト・スピーチ規制 166
民主政における表現の自由
「個人の尊重」では包括しきれない「法の下の平等」の意義
社会的平等に対する危険とヘイト・スピーチ
民主政から見たヘイト・スピーチの「害悪」
II 集団に対する侮辱的表現の規制のあり方 173
ヘイト・スピーチの「害悪」
小括
註 176
おわりに(2014年7月8日 執筆者を代表して 金 尚均) [177-186]