著者:河本 英夫[かわもと・ひでお](1953-) 哲学(オートポイエーシス、システム論、科学論)。
装幀:加藤 光太郎[かとう・こうたろう]
シリーズ:ワードマップ
件名:自己組織化
NDC:007.11 情報科学 >> サイバネティックス
【目次】
目次 [003-006]
はじめに 到来しつづけるもの 007
I アプローチ
ダイナミクスかマシーンか 不均衡動力学から円環へ 030
自己組織化 産出的プロセスとカオス 042
ラディカル構成主義 区別の理論と記述の理論 056
存在の裂け目I ――インテルメッツォ1 行為と規則の埋めようのない溝 068
II エマージェンス
入力も出力もない――作動的閉鎖性 開放系と閉鎖系の区別の消滅 082
オートポイエーシス2001 定義の変更 094
反復的作動 システムの作動と位相空間の形成 107
環境あるいはアフォーダンス 行為と相即する環境 117
境界と自己 作動の継続と境界 131
機構の拡張 拡散の機構と強度 143
III アプリケーション
構造変容 異性とメタモルフォーゼ 158
オートレファレンス 免疫システムと神経システム 176
心的システム――自覚 心的システムの自己形成 186
分裂的経験の活用 システム環境の裏返し 198
カップリング――感覚の活用 質間の変容 210
相互浸透と相互隠蔽 心的システムと社会システム、心的システムと身体システム 220
存在の裂け目II ――インテルメッツォ2 経験と言語の埋めようのない溝 230
IV デリバティヴ
自己言及 論理に隠された感情の作動 244
フィードバックの罠 経験に変化をもたらす 256
観察システム 混迷から脱出するために 268
日々新たに目覚めるために――荒川修作とともに 280
おわりに(一九九九年九月 河本英夫) [291-295]
オートポイエーシス2001のためのブック・ガイド [296-309]
索引 [310-318] ([i-ix])
【メモランダム】
・感想:複雑なアイデアを混沌のままに紹介する本。
個人的には、本書ではなく、もとの論文(F.G. Varela, H.R. Maturana, R. Uribe (1974), 'Autopoiesis: The organization of living systems, its characterization and a model')を読む方がよさそう。
・オートポイエーシスの説明にあたりそうな部分。
オートポイエーシスはいくつかの柱からなる「システムの機構」(p.20)である。ひょっとすると、この本に玄妙な表現が並んでいる原因は、哲学の伝統でも1990年代の流行でもなく、著者が「理論のひとつのタイプを提示する」ことを実行した結果かもしれない。
・複雑系、カオス理論についての著者の説明:
「複雑系の代表的なものが自己組織系とカオス系で〔……〕オートポイエーシスは自己組織化の発展形である」(p.13 註6)。
カオス理論は、(「理論的定式化はひとつに決まり、その内部に未決定性が含まれる理論構想(引用者註:未定義)」であるところの)「ニュートン・タイプ理論」の系列に属している(pp. 20-21)。そしてオートポイエーシスの理論構想(引用者註:未定義)は「近代科学的な理論的定式化の枠に収まることはできない」ので、「異なるタイプの経験科学を実行」(p.21)する、と。