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『移民のヨーロッパ史――ドイツ・オーストリア・スイス』(Klaus J. Bade[編] 増谷英樹ほか[監訳] 前田直子ほか[訳] 東京外国語大学出版会 2021//2007)

原題:Enzyklopädie Migration in Europa: vom 17 Jahrhundert bis zur Gegenwart 2007.
編者:Klaus Jürgen Bade(1944-) 近現代移民史、植民地史、労働市場史研究。
著者:Jochen Oltmer 近現代移民史研究。
著者:Dirk Hoerder 近現代の移民史(北アメリカ)
著者:Jan Lucassen 社会経済史、グローバル・レイバーヒストリー、移民労働者研究。
著者:Leo Lucassen グローバルな視座からの移民労働者の歴史、労働運動史、都市史、シンティ・ロマ史。
著者:Sylvia Hahn ヨーロッパ地域史(歴史的な移民研究、ジェンダー史、労働史)。
著者:Marc Vuilleumier(1930-2021) 近現代の政治史、社会史、特に労働や社会主義運動、難民・移民に関する研究。
著者:Arnd Bauerkämper(1958-) イギリス近現代史、ヨーロッパのファシズムドイツ連邦共和国東ドイツの社会史など。
著者:Günter Pallaver(1955-) 政治学者・歴史学(政治制度の比較。 研究の重点は、イタリア、特に南ティロールのエスニック・マイノリティとエスノ地域的政党など)。
監訳:増谷 英樹[ますたに・ひでき](1942-) オーストリア‐ドイツ史、ユダヤ史、ウィーン都市史
監訳:穐山 洋子[あきやま・ようこ] スイス近現代史
監訳:東風谷 太一[こちや・たいち](1978-) ドイツ近代史
訳者:前田 直子[まえだ・なおこ] ドイツ移民統合政策
訳者:藤井 欣子[ふじい・よしこ] オーストリア近現代史
訳者:鈴木 珠美[すずき・たまみ] 南ティロールを中心とする、オーストリア、イタリアの国境地域の歴史
装幀:臼井 新太郎[うすい・しんたろう](1971-) ブックデザイン。
件名:移民・植民 (ヨーロッパ)--歴史--近代
NDLC:DC821
NDC:334.43 人口.土地.資源
備考:抄訳。原書は1156頁の事典。


『移民のヨーロッパ史 ドイツ・オーストリア・スイス』|東京外国語大学出版会


【目次】
Colophon [I]
口絵 移民のヨーロッパ史 世界地図 [II-III]
目次 [001-003]
凡例 [004]


はじめに[増谷英樹] [005-023]
  一、百科事典『ヨーロッパの移民―――一七世紀から現在まで』
  二「移動する人々」の呼称
  三 中欧の簡単な歴史
    三十年戦争後の中欧
    一九世紀の中欧
    第一次世界大戦とその帰結
    ファシズム支配と第二次世界大戦期の中欧
    現代中欧の移民、難民、国民
  註


用語解説[東風谷太一] [018-030]


序章 移民研究における術語と概念の変遷[ディルク・ヘルダー/ヤン・ルーカッセン/レオ・ルーカッセン(東風谷太一訳)] 031
  移民のプロセスーー形態と分類、枠組みとシステム
  移民の形態と分類
  移民の枠組
  近代初期(一五〇〇~一八〇〇)における多様な移民枠組
    (一) ネーデルランド連邦共和国およびヴェネツィア共和国におけるリベラルな移民枠組
    (二) 大部分の君主制領域国家における徹底した移民規制
    (三) 帝国による入植の促進
    (四) オスマン帝国の入植政策と高い内部流動性
  間接的支配から直接的支配へ―― 一九世紀の国民国家における移民枠組み
  二〇世紀のリベラルな福祉国家における移民枠組
  二〇世紀末におけるあらたな枠組の生成?
  移住システム
  社会への適応
  註 086


訳者解説 ドイツ語圏における移民史研究の歴史[東風谷太一] 089
  註 097


第I部 ドイツ流動的な境界と移動する人々 

第1章 ドイツにおける移民の歴史[クラウス・J・バーデ/ヨッヘン・オルトマー(増谷英樹/前田直子訳)] 101
  領域と境界
  一七・一八世紀の人口増加政策下の流入と統合
  一八・一九世紀における大陸内および海外移民
  一九世紀末から第一次世界大戦の終わりまでの外国人雇用と厳格な統合政策
  戦間期第二次世界大戦における逃亡と強制移動
  第二次世界大戦後の逃亡と追放
    (一) ディスプレイスド・パーソンズ(DPs)
    (二) 疎開
    (三) 難民・被追放民
  旧西ドイツにおける外国人雇用と事実上の入移民
  旧東ドイツのローテーションシステムにおける外国人労働者雇用
  統一ドイツにおける移民と統合
    (一) 庇護申請者
    (二) 引揚者〔アウスジードラー〕
    (三) ユダヤ難民
    (四) シンティとロマ
    (五) 追記
  註 157
  

訳者解説 ドイツはなぜ難民を受け入れたのかドイツ難民・移民政策の現状[前田直子] 162
  「歓迎する首相」から「追い出し首相」、そして引退へ
  経済界の努力
  メルケルと統合政策
  註 172


第II部 オーストリアハプスブルク家の遺産

第2章 オーストリアにおける移民の歴史[シルヴィア・ハーン(増谷英樹訳)] 177
  領域とその境界
  一六世紀から一八世紀におたる諸都市と産業地域への移民
  一八世紀までのユダヤプロテスタントの追放
  重商主義時代初期における専門家集団の徴募
  一九世紀の大量移民時代の定着とよそ者
  一九世紀における海外移民とヨーロッパ大陸内移民
  一九一八~一九四五年の労働移民、移住、亡命と追放
  第二次世界大戦後――移民送り出し国から受け入れ国へ
  註 210
  

訳者解説 現代オーストリアの移民・難民問題と国民意識[増谷英樹] 212


第III部 スイス――移民の経由地

第3章 スイスにおける移民の歴史[マーク・ヴィユミエ(穐山洋子訳) ] 219
  領域と境界
  一七・一八世紀における労働移民と定住移民
  一九世紀から二〇世紀初頭までの大陸移住と海外移住
  一九世紀における外国からの移民
  第一次世界大戦と移民状況への影響
  第二次世界大戦と移民状況への影響
  第二次世界大戦以降の労働移民と難民保護
  註 251


訳者解説 外国人受け入れに揺らぐ永世中立国現代スイスの移民・難民問題[穐山洋子] 255
  註 265


第IV部 各論 ミクロな視点からみた移民の現場

第4章 東欧、東中欧、南東欧からのドイツ系避難民および被追放民たち――第二次世界大戦終結後のドイツとオーストリア[アルント・バウアーケンプファー(藤井欣子訳)] 269
  [ドイツ系強制移民のグループ]の概念とカテゴリー
  非難(強制移住)の動きの概略
  マイノリティ形成と統合モデル
  註 288


第5章 第一次世界大戦終結以降、南ティロールに居住しているイタリア人[ギュンター・パラーヴァー(鈴木珠美訳) ] 291


コラム 南ティロール旅行記[増谷英樹] 305


おわりに(二〇二一年七月二四日 増谷英樹/二〇二一年八月 残暑が厳しい京都にて 穐山洋子) 309


参考文献 [316-322]
  一般書・概説書
  研究・専門書
  映画
索引 [i-viii]
著者略歴 [231-232]
訳者略歴 [231-232]




【図表】
表序-1 移民の類型 051
 
地図1-1 現在のドイツ連邦共和国 102
図1-1 1830-1932年のドイツ人の海外移民運動の位相 
表1-1 旧西ドイツおよび統一ドイツにおける外国人 142
表1-2 国家間協定にもとづく旧東ドイツの外国人雇用者 144
表1-3 旧西ドイツおよび統一ドイツにおける庇護申請者数 148
表1-4 引揚者の流入数 150

地図2-1 現在のオーストリア共和国 179
表2-1 オーストリア諸都市の1200-1900年の人口(住民)変化 182
表2-2 1890年のハプスブルク帝国(君主国)の諸都市における居住権獲得者と出生者の数と割合 192-193
図2-1 オーストリアからの海外移住 197
表2-3 オーストリア在住の「外国籍(任意選択)」住民(1961-2001年) 205

地図3-1 現在のスイスの26カントン 220
表3-1 スイス人口における外国人の割合 233
表3-2 1850-2000年のスイスにおける国籍別外国人 235

地図4-1 人の移動(1944-48) 270-271

地図5-1 ティロール地域 293
地図5-2 現在のティロールの行政区分と言語圏 293
表5-1 1900-2001年の南ティロールの言語集団 299




【抜き書き】
・本書の成り立ちについて、「はじめに」冒頭から。

 本書はクラウス・J・バーデの主幹による百科事典『ヨーロッパの移民――一七世紀から現在まで』(Klaus Bade/ Pieter C. Emmer/ Leo Lucassen / Jochen Oltmer (Hrsg.), Enzyklopädie Migration in Europa vom 17. Jahrhundert bis zur Gegenwart, Paderborn, München, Wien, Zürich, 2007)の抄訳に、訳者解説を付したものである。この百科事典は、EUヨーロッパ連合)の移民に関する共同研究の成果として二〇〇七/〇八年に刊行され、現在さまざまに問題となっている移民や難民の近代以降の歴史を扱った網羅的な事典となっている。

 事典の構成は、第一部で一七世紀以降のヨーロッパ各国ごとの移民史の概観が扱われ、第二部では、各国内もしくは各国間を移動するさまざまな集団が焦点化され、項目別に詳しく扱われている。それらは「イタリアにおけるアルバニア人」であるとか「ボヘミアのガラス商人」「一七世紀のアムステルダムのドイツ人パン職人」「ヨーロッパのユグノー」「モロッコ人の労働移民」のように、各国の専門家が個別集団のテーマを詳しく分析したもので、全体として三〇〇以上のテーマを扱い、まさにヨーロッパの移民史の百科事典となっている。本書では、訳者たちの関心にそって、原著第一部の「中央ヨーロッパ」で扱われているドイツ、オーストリア、スイス、それぞれの移民現象の歴史的概観を訳出した。


・「はじめに」末尾。

翻訳作業については、序章を東風谷太一、第1章を増谷と前田直子、第2章を増谷、第3章を穐山洋子、第4章を藤井欣子、第5章を鈴木珠美が行った。序章には、ヨーロッパおよび環大西洋世界を中心に、グローバルな移民・難民の動向に関する通史記述が含まれており、 中欧における移民史の位置づけをつかむ手助けとなるだろう。また、第1~3章には、訳者各自が歴史的背景と現状をふまえ、ドイツ、オーストリア、スイスの移民・難民との向き合い方について解説を加えた。続く第4・5章では、ミクロな視点から読者が移民・難民の経験を追体験できるよう、第二次世界大戦後に大量発生したドイツ系避難民および被追放民と、第一次世界大戦後に南ティロールでのイタリア系移民とドイツ系住民との摩擦を取り上げた。日本ではなじみの薄い南ティロールに関しては、紹介も兼ねて旅行記のコラムを付した。