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『移民政策と国民――アメリカ・フランスの同化主義か、シンガポールの多文化主義か』(江口隆裕 神奈川大学出版会 2021)

著者:江口 隆裕[えぐち・たかひろ](1952-) 
装丁:石井 眞知子[いしい・まちこ] 
NDLC:DC821 経済・産業 >> 経済史・経済事情 >> 人口 >> 移植民 >> 外国
NDC:334.4 経済 >> 人口.土地.資源 >> 移民・難民問題.移民・難民政策
NDC:334.453 経済 >> 人口.土地.資源 >> 移民・難民問題.移民・難民政策 >> 北米
件名:移民・植民--アメリカ合衆国
件名:移民・植民--フランス
件名:移民・植民--シンガポール


https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=304225


【目次】
はしがき(2021年1月 新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下の草庵にて 江口 隆裕) [iii-iv]
目次 [v-xiii]


序章 移民政策とは何か
1 「移民」の意味 002
  (1) 日本語の意味
  (2) 英語及びフランス語との違い

2 人口減少期の日本と移民政策 003
  (1) 人口減少期の日本
  (2) 移民政策を否定する政府
  (3) 移民政策の意味

3 本書の目的と対象 005
  (1) 本書の目的
  (2) 「移民」と「国民」の関係
  (3) 国籍付与基準としての血統主義生地主義,居住地主義
  (4) 移民政策のあり方――同化主義か多文化主義
  (5) 本書で検討する国――アメリカ,フランス及びシンガポール
  (6) 国家の基本を決める移民政策


第1章 アメリカの移民政策と同化主義
1 はじめに 010
  (1) アメリカにおける「同化」の意義
  (2) アメリカ的同化としてのアングロ準拠主義

2 アメリカ移民政策の経緯と現状 012
  (1) アメリカ移民政策の経緯
    ア 自由な移民受入政策とその転換
    イ アジア人の排斥と移民規制の強化
    ウ 国別割当制度の導入
    エ 国別割当制度の廃止と東側亡命者の受入
    オ 不法移民対策の強化
    力 政権交代と移民対策の変化
  (2) 現行の移民政策
    ア 自給自足の原
    イ ビザ発給段階での総量規制
  (3) 帰化者数の推移

3 関係法令等 019
  (1) 移民国籍法
  (2) 移民不服審査委員会決定
  (3) 移民局の行政解釈

4 アメリカ国民の定義 021
  (1) 国民と市民の違い
  (2) 原則「国民」と表記
  (3) 合衆国憲法の定め
    ア 1788年の合衆国憲法――「国民」に含まれなかった奴隷
      i 人を自由人など4種類に区分
      ii 「国民」に含まれなかった奴隷
    イ 憲法第13修正及び第14修正――生地主義の平等な適用
      i 奴隷解放宣言と第13修正による奴隷制の廃止
      ii 第14修正による国民概念の改正――生地主義の平等な適用
    ウ 憲法公用語の定めはない
  (4) アメリカ国民の要件――生地主義血統主義
    ア アメリカで生まれた者はアメリカ国民――生地主義の原則
      i 生地主義の原則
      ii 血統主義の場合
    イ アメリカ国外で生まれた子――血統主義
      i アメリカ国外で生まれ,アメリカ国内に永住している子
      ii アメリカ国外で生まれ,アメリカ国外に居住している子
      iii アメリカ軍の隊員の子に関する特例

5 帰化による国民 030
  (1) 帰化の一般的要件
    ア 一般的申請要件合法的永住と一定期間の居住
    イ 積極要件――英語と公民の知識能力
      i 人種等による差別の禁止
      ii 知識能力要件
  (参考1-2)帰化テストのための公民問題 [034-035]
    ウ 消極要件――共産主義者等の排除
  (2) 帰化の特例
      ①アメリカ国民の配偶者等(第1430条(a)項)
      ②アメリカ国民の配偶者がアメリカ政府,アメリカの研究機関・企業等に雇用されている者等(第1430条(b)項)
      ③海外でのメディア活動等を行うアメリカ法人に雇用されている者(第1430条(c)項)
      ④アメリカ国民が死亡した場合に残された家族等(第1430条(d)項)
      ⑤アメリカ軍の隊員の配偶者(第1430条(e)項)
      ⑥宗教上の義務を果たすための一時的な不在(第1428条)
  (3) 国家の安全保障に貢献した者に関する特別規定
  (4) 帰化申請の手続
    ア 18歳以上であること
    イ 証明責任
  (5) 宣誓

6 いくつかの注目すべき点 040
  (1) 結婚
    ア 外国での結婚の有効性
    イ 同性婚
    ウ トランスジェンダー
  (2) 子の定義
    ア 一般的定義
    イ 生殖補助医療で生まれた子
7 最後に 043
  (1) アングロ準拠主義の下での多様性
  (2) 差別的,政治的な移民政策
  (3) 同化を基本とする帰化政策とその課題


第2章 フランスの移民政策と同化主義
1 はじめに 052
  (1) アメリカ合衆国との違い
  (2) 「同化」と「統合」

2 フランスにおける移民政策の展開 054
  (1) 革命前夜からナポレオン法典まで 054
    ア 居住地主義を基本としたアンシャン・レジーム[Ancien régime]
    イ 革命期におけるフランス人の定義
      i 能動的市民[citoyen actif]たる成年男性と受動的市民[citoyen passif]たる女性等の区分
      ii 1971年憲法の定め
        (a) 出地主義と居住地主義を基本とするフランス市民の要件
        (b) 納税等を要件とする能動的市民
        (c) 外国人の名誉市民[citoyenneté d'honneur]問題
    ウ 統治体制の変遷
      i 革命後の統治体制の変遷とフランス人の定義
      ii フランス人とフランス市民の区別
    エ ナポレオン法典血統主義への転換
      i フランス人の定義は民法典で規定
        (a) 民法典と憲法の規定の分離
        (b) 自然死と民事死の分離
      ii 出地主義か血統主義
        (a) 血統主義のトロンシェ案と出地主義のナポレオン案の対立
        (b) 出地主義に反対した立法府

  (2) 19世紀における移民の増大と二重の生地主義の導入 063
    ア 二度の帝政と二度の敗北
    イ 19世紀における移民の増加と亡命外国人の出現
      i 産業革命と人口移動の増加
      ii 職人の移住から労働者移民へ
      iii 少子化対策としての移民政策
      iv 19世紀における移民の動向
      v ポーランド大移住と亡命外国人の出現
    ウ 帰化の制度化と外国人排斥立法の登場
      i 帰化制度を定めた1802年元老院決議
      ii 亡命外国人の国外排除を定めた1832年
      iii 1849年法による帰化及び外国人排斥措置の恒久化
    エ 二重の生地主義の導入と帰化要件の緩和
      i 1851年の法律による二重の生地主義の導入
      ii 1867 年の法律による帰化要件の緩和
    オ 1889年の法律による二重の生地主義の徹底
      i 改正の背景
      ii 改正の主な内容
        (a) フランス人の要件
        (b) 帰化
        (c) 定住許可の有期化
  (3) 20世紀における移民問題の動向 072
    ア 第一次世界大戦前後
      i 労働力不足を補うための移民受入
      ii 帰化を拡大した1927年国籍法
    イ 戦間期から第二次世界大戦まで
      i 不況の到来と外国人の締め出し
      ii ドイツ侵攻とヴィシー政権によるユダヤ人迫害
    ウ 戦後復興と移民受入の再開――1940年代半ば〜1970年代前半
      i パリの解放と移民の再開
      ii 1945年国籍法典
      iii 1973年1月9日の法律
    エ 経済成長の鈍化と移民の排除――1970年代半ば〜1990年代前半
      i オイルショックと移民受入の停止
      ii 社会党政権の誕生と移民政策の転換・再転換
      iii 1993年法
    オ 外国人規制の強化と国籍問題の決着――1990年代後半
      i テロの発生と外国人規制の強化
      ii 1998年法
  (4) 移民割合の推移 080

3 フランスにおける移民の現状 082
  (1) フランスにおける移民の実態
    ア 移民の定義
    イ 移民の4割がフランス国籍を取得
    ウ 人口の8%が移民
  (2) 移民の出生国別内訳

4 民法典の国籍規定 086
  (1) 生来のフランス国籍
    ア 親子関係によるフランス人
    イ フランスでの出生によるフランス人
  (2) 生来以外の事由によるフランス国籍の取得
    ア 親子関係を理由とするフランス国籍の取得
    イ 婚姻を理由とするフランス国籍の取得
    ウ フランスでの出生と居住を理由とするフランス国籍の取得
    エ 国籍届出によるフランス国籍の取得
    オ 当局の決定によるフランス国籍の取得
      i 帰化要件としての共同体への同化
      ii 居住要件の特則
      iii 特別な国籍取得
    (参考2-2)フランス民法典 [091-096]

5 同化要件の具体的内容 097
  (1) 民法典第21-24条の内容
  (2) フランス語の能力と水準
  (3) 歴史,文化及び社会の知識
    ア デクレ[décret]の内容
    イ 「市民の手引き」
  (4) フランス市民の権利と義務――フランス市民憲章
  (参考2-3)フランス市民の権利と義務の憲章 [101-104]

6 「共和国」に関する若干のコメント 104
  (1) 「共和国」の意味
  (2) 政教分離原則(ライシテ)とイスラム教スカーフ事件
  (3) 単一言語主義
  (4) 市民の権利と義務
  (5) 「博愛」ではなく「貢献」

7 最後に 107
  (1) フランス移民政策の特徴
    ア 変遷する国民と移民の概念
      i アンシャン・レジームから民法典制定まで
      ii 私権と政治的権利を分離した民法
    イ 戦争,そして産業振興のための移民
    ウ 移民問題を巡る左右の政治的対立
  (2) 根底にあるフランス的同化思想
  (3) 生地主義による血統主義の希薄化
  (4) 価値共同体としての共和国とその限界
    ア 共和国的価値共同体としての国家
    イ ヨーロッパ共同体(EU)との関係
    ウ 共和国的価値を否定するフランス人の存在

参考文献・注 113


第3章 シンガポール多文化主義
1 はじめに 120

2 シンガポールの概要 121
  (1) 人口の概況
  (2) シンガポールの沿革
    ア シンガポールの発見と発展
      i シンガポールの発見
      ii 日本軍による占領とイギリス統治の復活
      iii 自治権の獲得と人民行動党の躍進
    イ マレーシアとの合併と分離・独立
      i マレーシアとの合併
      ii マレー人優遇政策とマレーシアからの合併と分離・独立

3 マレーシア連邦憲法とブミプトラ政策 126
  (1) ブミプトラ政策の沿革
  (2) マレーシア連邦憲法上の位置づけ
    ア マレーシア連邦憲法
    イ 平等原則との関係
    ウ 「マレー人」の定義
  (参考3-1)マレーシア連邦憲法(抄) [129-130]

  (3) ブミプトラ政策の内容
    ア 新経済政策(NEP)によるブミプトラ政策の強化
    イ ブミプトラ政策の内容
      i 基本的考え方
      ii 内容
    ウ 新経済モデル(NEM)におけるブミプトラ政策の修正

4 シンガポール共和国憲法における多文化主義 133
  (1) 多文化主義の意義と類型
  (2) シンガポール共和国憲法制定過程の特殊性
    ア 変則的な憲法制定過程
    イ マレーシア連邦憲法の継受と否定
  (3) 多文化主義の中核をなす多言語主義
    ア 4つの公用語と国語としてのマレー語
    イ 国籍取得要件における多言語主義
    ウ 国会議員の資格と多言語主義
  (4) 集団代表選挙区――マイノリティの国政参加
    ア 制度の趣旨
    イ 制度の仕組み
    ウ マイノリティの定義
    エ マレー人への配慮
    オ 実施状況及び問題点
  (5) 非選挙区議員及び指名議員
    ア 非選挙区議員
    イ 指名議員
    ウ 指名議員の権限の制限
    エ 国会議員の構成
  (6) マイノリティの権利のための大統領諮問委員会
    ア 大統領の権限
    イ マイノリティのための大統領諮問委員会
      i 役割
      ii 「差別的手段」の意味
      iii 諮問委員会の委員構成,議事等
      iv 法案のチェック
      v 下位立法のチェック
      vi 諮問委員会の特別な任務
      vii 問題点
  (7) マイノリティへの特別な配慮 149
    ア マイノリティへの特別な配慮規定と平等原則
      i 憲法第153条と第12条
      ii 両者の関係
    イ 信教の自由とイスラム教の特別な地位
      i イスラム教に関する特別条項とその適用
      ii 宗教と義務教育の関係

5 最後に 153
  (1) 制度化された多文化主義の問題点
  (2) 国家発展のための多文化主義
  (3) 民族間のバランスという政治的マネジメント
  (参考3-3)シンガポール共和国憲法(抄)(2020年12月現在) [155-170]


終章 移民政策の国際比較と日本の課題
1 3カ国の移民政策の比較 176
  (1) 単一言語主義か多言語主義か
    ア アメリカ――事実上の公用語としての英語
    イ フランス――憲法で共和国の言語と定められたフランス語
    ウ シンガポール――憲法が定める4つの公用語と1つの国語
  (2) 信教の自由と政教分離原則
    ア アメリカ――適正手続条項を通しての保障
    イ フランス――共和国の原則である政教分離(ライシテ)
    ウ シンガポール――イスラム教のための特別立法
  (3) 統治制度におけるマイノリティへの配慮
    ア シンガポールの特別な制度
      i 民族間のバランスを図るための制度
      ii 選挙権の平等の修正
    イ アメリカにおける先住民族への配慮
    ウ 平等原則を徹底するフランス
  (4)国籍取得要件――血統主義生地主義か居住地主義か
    ア アメリカ――生地主義が基本
    イ フランス――血統主義生地主義
    ウ シンガポール――血統主義と居住地主義
  (5) 国の成り立ちと憲法との関係
    ア アメリカ――多様な移民による連邦国家
    イ フランス―― 1つにして不可分の共和国
    ウ シンガポール――前提としての多民族・多文化国家
  (6) 同化主義と多文化主義の再定義

2 日本の現状と特徴 184
  (1) 単一言語
    ア 事実上の公用語としての日本語
    イ 地域言語としてのアイヌ語
  (2) 「多文化共生」と移民政策
  (3) 日本の国籍取得制度の概要
    ア 出生による国籍取得――厳格な血統主義
    イ 認知された子の国籍取得
    ウ 帰化による国籍取得――法務大臣の裁量
      i 帰化の種類
      ii 普通帰化(国籍法第5条)
      iii 簡易帰化その1(国籍法第6条)
      iv 簡易帰化その2(国籍法第7条)
      v 簡易帰化その3(国籍法第8条)
      vi 大帰化(国籍法第9条)
  (4) 日本の国籍制度の特徴
    ア 生地主義及び居住地主義の排除
    イ 徹底した血統主義
    ウ 言語要件の欠如
    エ 国籍はく奪規定の欠如

3 日本の国籍制度の課題 191
  (1) 生地主義の導入
  (2) 日本語要件の追加
  (3) 当事者宣誓方式の導入
  (4) 帰化要件の具体化と許可の羈束化
  (5) 信教の自由に関連する課題
4 最後に


補論 移民の経済学 
1 新古典派の理論 200
  (1) 賃金格差理論
  (2) 期待賃金格差理論

2 新経済学理論の登場 201
  (1) リスク分散理論
  (2) 相対的貧困理論
  (3) 移民ネットワーク理論

3 日本への示唆 203


初出一覧 [205]






【抜き書き】

初出一覧

 各章の初出は以下のとおりだが,本書の出版に際し,いずれについてもデータを最新のものに改めるなど大幅に加筆訂正している. 第2章についても同様だが,特に同章第2節 (3) は書き下ろした.

序章   書き下ろし

第1章  「アメリカ合衆国の移民政策と同化主義一アングロ準拠主義の下での多様性」 神奈川法学第53巻第1号 (2021年)1〜56頁

第2章  「フランスにおける同化主義の意義一国家統合原理としての共和国的価値とその限界一」 神奈川法学第50巻第1号 (2017年)1~32頁(同化主義か,多文化主義か一外国人受入政策に関するフランスとシンガポールの比較研究 (2014年度〜2016年度 : 科研費研究課題番号26380084) の研究成果)

第3章  「シンガポール共和国憲法多文化主義マレーシア連邦憲法の継受と否定一」 神奈川法学第49巻第1・23合併号 (2017年)1〜72頁(第2章と同じ科研費の研究成果)

終章  書き下ろし

補論  「移民の経済学」 週刊社会保障No.2720 (2013年) 36〜37頁(フランスにおける移民労働者の生活保障に関する双方向的研究(2011年度〜2013年度 : 科研費研究課題番号23530059) の研究成果)