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『移民とAIは日本を変えるか』(翁邦雄 慶應義塾大学出版会 2019)

著者:翁 邦雄[おきな・くにお](1951-) 金融政策。
件名:移民・植民--日本
件名:人工知能
件名:労働問題--日本
NDLC:DC812
NDC:334.41 人口.土地.資源


慶應義塾大学出版会 | 移民とAIは日本を変えるか | 翁邦雄


【目次】
目次 [iii-x]


第1章 金融政策の限界――プロローグ
1 安倍政権下の金融政策
2 人手不足の主因はなにか
3 日本の長期停滞?


第2章 人口ペシミズムと将来人口推計の確実性
1 社人研による人口の将来展望

2 人口ペシミズムへの異論①――人口減少はチャンス
  三つの異論
  第一の異論:人口減少はチャンス

3 人口ペシミズムへの異論②――日本の人口減少は確定的未来ではない?
  人口増減は何によって決まるのか
  社会動態(国境を越えた人の出入り)も総人口を左右する
  社人研の将来人口推計はどの程度確からしいのか――出生率の想定

4 社人研の将来人口推計における社会増減の想定
  カギ握る外国人入国超過数
  外国人入国超過数は人口にどの程度の影響を与えるか:社人研のシミュレーション


第3章 移民あるいは外国人労働者の経済的影響
1 外国人労働者・移民・難民のちがい
  移民の定義
  難民の定義

2 移民の経済学:教科書的な分析
  標準的な経済分析
  ボージャスによる基本的な分析枠組み

3 移民は生産性にさまざまな影響を与える可能性がある
  高度人材受け入れの効果
  単純労働者の受け入れの影響:懐疑論と現実論
  介護離職をめぐって

4 移民によるホスト国の労働者の賃金への影響

5 移民流入と財政負担

付論1 ボージャス・モデルのやや詳しい説明
  (1) 最もシンプルなモデルによる定性的分析
  (2) 移民により限界生産性曲線がシフトする場合の定性的分析

付論2 外国人労働者受け入れについての国内労働者の受け止め方


第4章 移民の社会的影響――欧州の経験
1 移民の社会的影響
  経済的影響を超える可能性
  日本国民が移民受け入れに感じている不安

2 ドイツの経験
   (1) ドイツにおけるゲストワーカー制度
   (2) 統合コースによるドイツ言語・ドイツ文化習得の難航
   (3) ドイツにおける外国人犯罪の多発
   (4) ドイツにおける国際結婚の潮流
  タイ人女性とドイツ人男性との国際結婚率の高さ
  トルコ人とドイツ人との国際結婚率の低さ

3 ディアスポラ問題と宗教対立による軋轢

4 多文化アプローチの失敗を認めたメルケルの演説


第5章 移民の社会的影響――日本の現状
1 外国人労働者はどこから日本に来ているのか
  2009年10月末の状況
  2018年10月末の状況
  出身国構成の多様化と外国人材をめぐる日本政府の方針転換

2 治安と外国人犯罪
  日本の治安の全体的状況:日本人の意識
  日本の治安の全体的状況:犯罪統計からみた実態
  外国人の犯罪
  来日外国人被疑者の国籍別構成比:外国人労働者の構成比とほぼ一致

3 国際結婚の状況
  全体的な動向
  フィリピンパブの盛衰とフィリピン女性との国際結婚
  国際結婚のトレンドをどうみるか

4 外国人労働者/移民の日本社会への影響の現状:小括


第6章 事例研究:ベトナムとの関係
1 ベトナム戦争後のベトナムの歩みと現状

2 日本とベトナムとの関係

3 外国人労働者の送出国としてのベトナム
  ベトナム政府の方針
  ベトナム人労働者の失踪問題

4 日本におけるベトナム人の犯罪
  ベトナム人の組織犯罪率は高いか
  犯罪の理由
  出所後どこで暮らしたいか

5 ベトナム人と日本人の国際結婚
  ベトナムは男性比率が高い
  日本でのベトナム人女性の出生率の特異的な高さ

6 ベトナムにおける宗教
  ベトナムにおける宗教の比率
  他の宗教への攻撃性の弱さと祖先崇拝の強さ
  日本人の信仰心との類似性

7 ベトナム人からみた日本人、日本人からみたベトナム人
  ベトナム人の日本人への見方
  日本人からみたベトナム司馬遼太郎のコメント

付論 ネパールの現状 
  国土・人口・民族
  内戦・対立が続いた国内政治
  経済


第7章 AIは労働者を無用にするか――人口ペシミズムへの第三の異論 
1 『ホモ・デウス』の描くディストピア
  「無用者階級」の登場?
  米国の仕事の47%が20年以内に深刻な危機にさらされる?
  AI化による失業発生についてのさまざまな見方

2 フレイとオズボーンの「AIによる失業発生の可能性」についての分析
  原理的ルーツ:オフショアリングの可能性についての研究
  AIが苦手なもの:フレイとオズボーンの分類原理
  AIを使った「教師あり学習

3 AI化の進展によって既存の職業はAIに代替されるか
  主観的分類はどの程度の確度があるか
  中期的に大失業は発生するか
  既存の職業は本当に消滅するか
  兵士はAIへの置き換えが進み得るが……
  自衛隊員の大半をAIに置き換えることはできない

4 既存の職業の相当部分が消滅したら大失業が発生するのか
  人口減少のほうが強力に作用する
  新たな職業の誕生
  長期的展望と日本の歴史的経験
  働きたい意欲も職を創り出す要素になる


第8章 AIと移民の共通点・相違点
1 AIによる労働市場の二極化:理論的可能性
  ポラニーのパラドックス
  AIはどこまで「説明責任」を果たせるか
  コミュニケーションの問題
  AIは不定形のタスク・パッケージをこなす人間の労働は代替しにくい
  チャレンジャー号爆発事故とOリング生産関数
  「Oリング」モデル
  Oリング生産関数からみたAIと労働需要

2 先進国における労働需要の二極化:現実の動向

3 AIの進化と移民受け入れの共通点・相違点:小括


第9章 AI・移民問題についての今後の課題
1 これまでの議論のまとめ

2 AIを活かすための課題
  良い仕事はどこからもたらされるのか――アセモグルーの洞察
  アセモグルーの主張は日本に当てはまるか

3 移民を受け入れていく体制づくり
  議論不在の方針転換でよかったのか
  外国人子弟教育体制の立ち遅れ
  日本語能力の不足は犯罪につながるリスクを高める
  安定した社会を維持し、選ばれる国になるために必要なこと


あとがき(2019年6月 翁 邦雄) [199-209]




【メモランダム】
・私が気になった点。
  (1) 構成について。第1章の金融政策批判は興味深いものの、あくまで著者が従来から展開している持論に過ぎない。本書のテーマとしてはズレているし、2章以降のイントロとしても蛇足。
  (2) 「あとがき」で著者は「本書は中立である」と書いている。政策論議に踏み込んでいる内容の本としては、あまりにナイーブな認識だと思う。
  (3) 人工知能についての解釈が独特で、古い部分も。雇用に与える影響については、著者の専門に近いので、もっと丁寧な議論ができたと思う。
  (4) 人口学、犯罪学の知見を踏まえているのかよくわからない。



・以下、銀行マン・エコノミストによる短評。
  短い書評(by池尾和人)
Book Review:『移民とAIは日本を変えるか』 評者・池尾和人 | 週刊エコノミスト Online
  短い書評(by河野龍太郎)
『移民とAIは日本を変えるか』 『日本近現代史講義』ほか | ブックレビュー | 東洋経済オンライン

  要約(by石田翼)
移民とAIは日本を変えるか | 本の要約サイト flier(フライヤー)