原題:Legacies: The Story of the Immigrant Second Generation (University of California Press, 2001)
著者:Alejandro Portes (1944-)
著者:Rubén G. Rumbaut
訳者:村井 忠政 (1941-) 訳者代表。
訳者:房岡 光子
訳者:大石 文朗
訳者:山田 陽子
訳者:新海 英史
訳者:菊池 綾
訳者:阿部 亮吾
訳者:山口 博史
シリーズ:世界人権問題叢書;86
件名:移民・植民--アメリカ合衆国
件名:外国人 (アメリカ合衆国在留)
NDLC:DC821
NDC:334.453 人口.土地.資源
【目次】
コロフォン [002]
献辞 [003]
目次 [005-012]
凡例 [013]
表と図 [014-018]
序文 [019-023]
謝辞(アレハンドロ・ポルテス/ルベン・ルンバウト プリンストンならびにイースト・ランシングにて 二〇〇〇年三月) [024-030]
第一章 一二のストーリー
一 マイアミのストーリー 032
(1)マリア・デ・ロスアンへレスとイベット・サンタナ(一九九三年八月)
(2)メラニー・フェルナンデス-レイ(一九九三年九月)
(3)アリスティド・マイヨール(一九九三年八月)
(4)アルマンド・エルナンデスとルイス・エルナンデス(一九九五年七月)
(5)メアリー・パターソン(一九九五年二月)
(6)エフレン・モンテホ(一九九四年五月)
二 サンディエゴのストーリー 043
(1)ホルヘ、オルガ、ミゲル・アンヘルとエステラ・カルドーソ(一九九四年一月)
(2)キィ・グエン(一九八七年一二月)
(3)ベニー・モントーヤとジェニファ・モントーヤ(一九九五年一〇月)
(4)ソフィー・ケン(一九八七年一一月―一九八八年六月)
(5)ヨランダ・ムニョスとカルロス・ムニョス(一九九四年三月)
(6)ボア・チャ(一九八八年―一九九〇年)
第二章 新来のアメリカ人――概観
一 移民の過去と現在 059
二 移民第二世代の規模と集中 062
三 新第二世代の研究――移民子弟の縦断的研究(CILS) 067
四 新第二世代の概観 082
(1)国勢調査〔センサス〕の結果
(2)CILSの結果
第三章 誰もが選ばれているわけではない――分節化された同化とその決定要因
一 移民はどのように受け入れられているか――移民の編入様式とその帰結 100
二 文化変容と役割逆転 108
三 子どもたちの成長の場――第二世代の適応に伴う困難 114
(1)人種
(2)労働市場
(3)対抗文化〔カウンター・カルチャー〕
四 困難に立ち向かう――移民の社会関係資本〔ソーシャル・キャピタル〕 128
(1)親の地位、家族構造、ジェンダー
(2)移民のコミュニティ
五 結論
第四章 アメリカで成功する
一 初期の適応と達成 143
(1)一般的傾向
(2)出身国と達成
(3)親の経済的達成の決定要因――相加効果
(4)親の経済的達成の決定要因――相互効果
二 出身国と家族構成 160
三 結論 168
第五章 移民はアメリカでの生活にどのような展望をもっているか
一 アウラ・リラ・マリン、キューバ出身、五三歳、シングルマザー(一九九四年) 171
二 パオ・ヤン、ラオス出身のモン族、五七歳、父親(一九九五年) 174
三 楽観論 177
四 放任主義 181
五 向上意欲〔アンビション〕 190
六 コミュニティと誇り 196
七 結論 204
第六章 ロスト・イン・トランスレーション――言語と新第二世代
一 バイリンガリズム――その過去と現在 224
二 シャドー・ボクシング――言語変容の神話と現実 231
(1)一般的傾向
(2)出身国による格差
三 強行軍的文化変容 246
四 どうすればバイリンガルになれるのか 255
五 ミラーゲーム――言語教育と文化変容の型 269
第七章 状況を定義する――移民子弟のエスニック・アイデンティティ
一 帰属の場――移民子弟の複雑な忠誠心 279
(1)自我〔セルフ〕の発達
(2)先行研究
二 私は何者なのか――エスニック自己同一化のパターン 288
(1)エスニック・アイデンティティのシフト
(2)安定性〔スタビリティ〕と重要性〔セイリアンス〕
(3)出身国でみたエスニック・アイデンティティ
三 私の出自はどこにあるのか――民族〔ネイション〕・家族・アイデンティティ 302
四 自己アイデンティティと相関する変数 307
(1)家族の地位、家族構成、言語
(2)親の自己アイデンティティの影響
(3)地域、学校、差別
五 人種問題 319
六 エスニック・アイデンティティと人種的アイデンティティの決定要因 325
七 結論――翻訳の達人から生けるパラドクスへ 336
第八章 内なるルツボ――第二世代の家族、学校、心理
一 サンディエゴの家族 347
二 家族の結束、葛藤、変化 352
三 学校環境と仲間集団〔ピアグループ〕 360
四 心理的健康―自尊感情と抑鬱感情 365
五 学業重視と学習努力 371
六 教育目標達成見込み〔エクスペクテーション〕 377
七 心理社会的適応結果の決定要因 384
(1)自尊感情と抑鬱
(2)向上意欲
八 結論 398
第九章 学業の達成と失敗
一 思春期前期の学業成績 405
(1)予備的考察の結果
(2)ジュニア・ハイスクールにおける学業成績の決定要因
二 思春期後期の学業成績 419
(1)シニア・ハイスクールにおけるGPAのグレード
(2)時間の経過に伴う変化
(3)学校からのドロップアウト
三 学業成績にみられる二つのパラドクス 441
(1)東南アジア系アメリカ人
(2)キューバ系アメリカ人
四 結論 453
第十章 結論――メインストリームのイデオロギーと移民コミュニティの長期展望
一 メインストリームの二つのイデオロギー 459
二 第三の道――選択型文化変容とバイリンガリズム 466
三 メキシコ系アメリカ人のケース 470
四 理論的再検討 478
(1)時間と文化変容
(2)反発型エスニシティとその影響
訳者による解説 489
はじめに
一 マイアミにおけるキューバ難民の研究――エスニック・エングレーブ論の展開
(1) アレハンドロ・ポルテス――キューバ革命と移民研究者の誕生
(2) エスニック・エングレーブ論の提唱
二 現代アメリカ移民第二世代の同化をめぐる研究
(1) 移民子弟の縦断的研究(CILS)について
(2) CILSが現代アメリカ移民研究のランドマークと評価される理由
(3) 分析のための理論枠組み〔フレームワーク〕――文化変容の型と分節化された同化のプロセス
(4) 分節化された同化の三つのパターン
むすび――第三の道の提唱
注
訳者あとがき(二〇一三年一二月 村井忠政) [513-517]
付属資料C 多変量解析で用いられた変数――第6章‐第9章 [518-528]
付属資料B 移民子弟の縦断的研究――親を対象とした質問票 [530-558]
付属資料A 移民子弟の縦断的研究――追跡調査質問票 [559-577]
原注 [580-612]
訳注 [613-624]
参照文献 [626-654]
人名索引 [656-657]
事項索引 [658-678]
著者紹介 [680]
【抜き書き】
・「訳者あとがき」(pp.515-516)から、翻訳についての記述。
訳者が本書と出会いその翻訳を決意するにいたった経緯について述べたい。訳者は名古屋市立大学大学院「人間文化研究科」の博士課程で「多文化共生論」のゼミを担当していた。このゼミに参加していた院生は、大別して二つのグループに分かれていた。一つは、一九九〇年代以降わが国で急増しつつあったニューカマーと呼ばれる南米日系人やフィリピン人などの外国人労働者とその子弟の教育をめぐる問題を研究テーマにしているグループであり、もう一つは、北米(アメリカ合衆国、カナダ)およびヨーロッパの移民、マイノリティ、外国人労働者をめぐる問題に取り組んでいるグループであった。わが国における移民や外国人労働者の研究の歴史はまだ日が浅く、実証的研究の蓄積も近年ようやく緒に就いたところである。訳者はかねてよりわが国が欧米の移民研究やエスニシティ研究から学ぶところは多いと考えていた。たまたまゼミの原書講読のテキストに本書を取り上げゼミ生諸君と読み始めたところ、その内容のあまりの迫力に圧倒されてしまったのである。この本の魅力に取りつかれて読み進めているうちに、もし誰も翻訳を手がけていないならば、是非とも訳出出版したいと思い立ったのである。さっそく各章を分担して訳出の作業を始めることにした。訳文づくりに貢献してくれたのは次の方々である。
序文と謝辞(村井忠政)、第一章(房岡光子)、第二章(大石文朗)、第三章 (村井忠政)、第四章(房岡光子)、第五章(山田陽子)、第六章 (村井忠政)、第七章(新海英史)、第八章 (菊池綾)、第九章(阿部亮吾)、第十章(村井忠政)、付属資料(山口博史)。
翻訳を開始してから原稿完成までに長い歳月が過ぎてしまったのには、いくつかの理由が挙げられる。まず院生諸君の下訳原稿に手を入れるのに思いがけない時間を要したこと。 次に、本書にはロジスティック回帰などの社会統計学の手法が多用されており、アメリカの社会統計学の専門知識に暗い訳者にとって統計学の理論や専門用語の理解と訳出に手間取ったこと(これについては社会統計学を専門とする山口博史氏にご教示を受けた)。しかしながら、これほどまでに多くの時間と精力を要することになった最大の原因は次の点にあった。本書の訳出に当たり訳者の心を強く占めていたのは、できる限り正確な翻訳を期すことはいうまでもないが、原文に忠実であろうとするあまり、翻訳書にありがちな生硬で難渋な訳文になることだけはなんとしても避けたいとの思いであった。できる限り読みやすい日本語にするために、原文を何度も読み返しては訳文に手を入れる作業を繰り返した。 その結果、訳者の力量不足も手伝って予想外の時間と労力が費やされることになってしまった。 出版元の明石書店と担当編集者の岩崎準氏には大変ご迷惑をおかけする結果となったことをお詫びしたい。