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『ゲーム理論による社会科学の統合』(Herbert Gintis[著] 小川一仁,川越敏司,佐々木俊一郎,成田悠輔[訳] NTT出版 2011//2009)

原題:The Bounds of Reason: Game Theory and the Unification of the Behavioral Sciences (Princeton University Press, 2009)
著者:Herbert Gintis(1940-2023)
訳者:成田 悠輔[なりた・ゆうすけ](1985-)
訳者:小川 一仁[おがわ・かずひと]
訳者:川越 敏司[かわごえ・としじ](1970-)
訳者:佐々木 俊一郎[ささき・しゅんいちろう] 
寄稿:青木 昌彦[あおき・まさひこ](1938-2015) 比較制度分析。
寄稿:山岸 俊男[やまぎし・としお](1948-2018) 社会心理学
装幀:松田 行正[まつだ・ゆきまさ](1948-) グラフィックデザインなど。
シリーズ:叢書《制度を考える》
件名:ゲーム理論
件名:社会科学
NDLC:DA49
NDC:331.1 経済 >> 経済学.経済思想 >> 経済哲学


ゲーム理論による社会科学の統合 |書籍出版|NTT出版


【メモランダム】
004  「私は合理的個人モデルを信念・選好・制約モデルまたはBPCモデルとして記述する。」
119  CKR:common knowledge of rationality 「合理化可能性の認識的正当化は合理性に関する共有知識に依存することを」
130  「合理性に関する共有知識(CKR)」 
156  CKL:common knowlege of logicability  論理性の共有知識



【目次】
日本語版によせて 統合社会科学の振り付け師ギンタス(叢書《制度》を考える監修者にて 青木昌彦 2011年4月 スタンフォードにて) [i-iii]
日本語版によせて ハーバート・ギンタスと行動諸科学の統合(山岸俊男 2011年4月 サンタバーバラ「心の研究センター」にて) [iv-vi]
日本語版への序文(ハーバート・ギンタス 2011年1月31日) [vii-xii]
序文 [xiii-xx]
目次 [xxi-xxvi]


1 意思決定理論と人間行動 003
1.1 信念,選好,および制約
1.2 合理的行動の意味 010
1.3 なぜ選好は一貫しているのか? 011
1.4 時間非整合性 012
1.5 ベイズ的合理性と主観的事前分布 016
1.6 期待効用の生物学的基礎 021
1.7 アレの逆説とエルスバーグの逆説 022
1.8 リスクと効用関数の形状 024
1.9 プロスペクト理論 029
1.10 意思決定におけるヒューリスティックとバイアス 034


2 ゲーム理論:基礎概念 043
2.1 展開型 043
2.2 標準型 047
2.3 混合戦略 048
2.4 ナッシュ均衡 049
2.5 ゲーム理論の基本定理 050
2.6 混合戦略ナッシュ均衡の解法 051
2.7 指挙げゲーム 053
2.8 男女の争い 054
2.9 タカハトゲーム 055
2.10 囚人のジレンマ 056
2.11 アリス,ボブ,振り付け師 057
2.12 効率性を高める振り付け師 060
2.13 相関均衡 061


3 ゲーム理論と人間行動 065
3.1 自己のみを考慮する選好と他者をも考慮する選好 066
3.2 行動ゲーム理論における方法論上の問題 071
3.3 匿名的な市場取引 075
3.4 利他的贈与の合理性 077
3.5 条件付きの利他的協調 079
3.6 利他的懲罰 081
3.7 労働市場における強い意味の互恵性 083
3.8 第三者による利他的懲罰  087
3.9 グループにおける利他主義と協調 090
3.10 不平等回避 094
3.11 信頼ゲーム 099
3.12 徳を備えた性格 102
3.13 選好の状況依存的性質 105
3.14 利他的協調の暗黒面 107
3.15 協調の諸規範:文化横断的多様性 109


4 合理化可能性と合理性に関する共有知識 119
4.1 認識的ゲーム 120
4.2 単純な認識的ゲーム 123
4.3 男女の認知的争い 124
4.4 支配される戦略そして逐次的に支配される戦略 125
4.5 弱く支配される戦略の消去 126
4.6 合理化可能戦略 128
4.7 強く支配される戦略の消去 131
4.8 合理性に関する共有知識 131
4.9 合理化可能性と合理性に関する共有知識 132
4.10 美人投票 133
4.11 旅人のジレンマ 134
4.12 旅人のジレンマの修正版 136
4.13 グローバル・ゲーム 137
4.14 合理性に関する共有知識は前提ではなく事象である 140


5 展開形における合理化可能性 149
5.1 後ろ向き帰納法と被支配戦略 150
5.2 部分ゲーム完全性 152
5.3 部分ゲーム完全性と信憑性のない脅し 153
5.4 抜き打ちテスト 154
5.5 論理性についての共有知識がもたらす逆説 155
5.6 繰り返し囚人のジレンマ 156
5.7 ムカデゲーム 158
5.8 CKRにおける後ろ向き帰納法パスからの乖離の失敗 160
5.9 繰り返し囚人のジレンマをどのようにプレイするか 163
5.10 知識に関する様相論理学 165
5.11 後ろ向き帰納法と展開形でのCKR 167
5.12 合理性と展開形ゲームにおけるCKR 170
5.13 CKR が存在しない可能性について 172


6 混合問題:純粋化と予想 179
6.1 なぜ混合戦略をプレイするのか? 180
6.2 ハルサーニの純粋化定理 182
6.3 正直と腐敗についての名声に基づく1つのモデル 185
6.4 誠実と腐敗を純粋化する 188
6.5 認識的ゲーム:予想としての混合戦略 188
6.6 予想に基づく純粋化へのアプローチを復興する 190


7 ベイズ的合理性と社会認識論 195
7.1 男女の争いと相関均衡 197
7.2 振り付け師は後向き帰納法に勝る 197
7.3 所有権と相関均衡 199
7.4 相関均衡としての伝統 200
7.5 相関戦略と相関均衡 201
7.6 相関均衡とベイズ的合理性 203
7.7 共有事前分布についての社会的認識論 204
7.8 共有知識の社会的認識論 206
7.9 社会規範 209
7.10 ゲーム理論と規範の進化 209
7.11 商人の交易 210


8 共有知識とナッシュ均衡 219
8.1 2人ゲームにおいてナッシュ均衡がプレイされるための条件 220
8.2 3人ゲームの場合の反例 221
8.3 共有知識の様相論理 224
8.4 知識の共有性 227
8.5 気の利かせる女性たち 229
8.6 気の利かせる女性たちと知識の共有性 233
8.7 同意しないことに同意する 234
8.8 方法論的個人主義の終焉 239


9 反射的推論と均衡精緻化 245
9.1 完全均衡,完全ベイズ均衡,逐次均衡 248
9.2 信憑性のない脅し 250
9.3 妥当ではない完全ベイズ均衡 253
9.4 LBR基準が逐次均衡を選ぶこと 254
9.5 ゼルテンの馬形ゲーム:逐次均衡対LBR基準 255
9.6 スペンスのシグナリング・モデル 257
9.7 無関係な節の追加 259
9.8 プロパー均衡ではない逐次均衡 260
9.9 2階の前向き推論 261
9.10 直感的基準抜きのビールとキッシュ・ゲーム 263
9.11 妥当ではない完全均衡 264
9.12 不十分な理由の原理 265
9.13 真実コミュニケーションの原則 266
9.14 推論:前向き推論は頑健であるが後ろ向き推論は脆弱である 266


10 人間の社会性に関する分析 273
10.1 協力をどのように説明するか:概観 273
10.2 ボブとアリス再考 275
10.3 フォーク定理 278
10.4 不完全公的情報の下でのフォーク定理 282
10.5 私的シグナルがあるときの協力 288
10.6 フォーク定理への励まし 291
10.7 公共財ゲームにおける利他的懲罰 292
10.8 利己的協力モデルの失敗 296


11 私的所有権の進化論 303
11.1 賦存効果 304
11.2 縄張り 306
11.3 幼児の所有権 310
11.4 人間以外の動物における所有権の尊重 311
11.5 所有権均衡の条件 314
11.6 所有権と反所有権均衡 318
11.7 反所有権均衡 323
11.8 振り付け師としての所有権 325


12 行動科学の統合に向けて 331
12.1 遺伝子と文化の共進化:生物学的モデル 334
12.2 人間のコミュニケーションに関する文化と生理学の役割 338
12.3 生物と文化のダイナミクス 340
12.4 規範の理論:社会学的モデル 342
12.5 規範の社会化と内面化 344
12.6 合理的選択:経済モデル 346
12.7 慎重な選択:心理学的モデル 348
12.8 応用:中毒行動 351
12.9 生命の一般用語集としてのゲーム理論 352
12.10 認識的ゲーム理論と社会規範 353
12.11 複雑適応系としての社会 356
12.12 対比点:生物学 357
12.13 対比点:経済学 358
12.14 対比点:心理学 359
12.15 行動諸科学の統合に向けて 360


13 要約 369


14 記号の表記 377


参考文献 [379-408]
訳者あとがき(訳者を代表して 成田悠輔) [409-415]
事項索引 [416-418]
人名索引 [419-421]




【コラム目次】
『正しい選択:意思決定の心理学』 039
ゲーム理論:対立の分析』 061
『進化ゲームと人口動学』 062
『経済学における合理性:構築主義者的形態と生態学的形態』113
『個人的選択を超えて:ゲーム理論におけるチームとフレーム』142
『真剣にプレイする:ゲーム理論の教科書』 174
ゲーム理論:5つの質問』 191
『社会的行為の構造』 213
「慣習/規約:ある哲学的研究』241
『反省的社会学への招待』 267
『制度と近代経済への道:中世貿易の教訓』 297
『道徳的市場:経済における価値観の決定的役割』 326
『人間の本性について:改訂版』 361
『社会理論の基礎』 371



【関連記事】
青木昌彦の自伝。Herbert Gintisが登場する。
『人生越境ゲーム――私の履歴書』(青木昌彦 日本経済新聞社 2008) - contents memorandum はてな



【メモランダム】
NTT出版の内容紹介文は、最後に珍しい惹句(?)がある。

 ゲーム理論を中心にして、実験社会科学・進化理論・認知科学などの最新研究を縦横無尽に駆使して、〈知の巨人〉ギンタスによる社会科学の統合をめざす壮大なプロジェクトが始まった。 著者が投稿したアマゾン・レヴュー付き。

 というわけで、Herbert GintisによるAmazon.comでのReview一覧。
https://www.amazon.com/gp/profile/amzn1.account.AFDFZ3BNKPQ3UZ6E77LT5YCFHLCA/ref=cm_cr_arp_mb_gw_tr



・以下に点鬼簿を追記していく。

 訃報:青木

 訃報:山岸

 訃報:ギンタス
https://econospeak.blogspot.com/2023/01/herb-gintis-1940-2023.html




【抜き書き】

・Gintisは「日本語版への序文」で(そして「序文」でも本文でも)、社会学や心理学からなされたゲーム理論への批判に応答していて、とてもおもしろい。ただし誰がどう批判したのかは割愛されている。
 その応答が終わった次の段落で、Gintisはこのように(も)書いている。

人間の本性や戦略的相互作用を理解する上でのその他の分野の重要性を否定しようとする経済学者の素朴な試みを見ると,私は同じく苦痛を感じる.合理的意思決定とゲーム理論を用いれば合理的主体の社会的動学を完全に説明することができ,それ以外の振舞いは喜んで他の分野に任せておけばいいと考えるのは,経済理論における伝統的な偏見である.この本で明らかにしたように、実際には合理性だけで社会的振舞いを説明することはできない.そして,『ゲーム理論による社会科学の統合』の中で論じたように合理性の限界は非合理性ではなく,社会性なのである.
(『ゲーム理論による社会科学の統合』p. xi)


・日本語版の分担について、成田悠輔「訳者あとがき」から。
 ちなみに編集者の永田氏の名は、関(2016)『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたか――西洋と日本の歴史を問いなおす』(NTT出版)や、Michael Suk-Young Chwe[著] 川越敏司[訳]『ジェイン・オースティンに学ぶゲーム理論―― 恋愛と結婚をめぐる戦略的思考』の「あとがき」でも挙がっている。

 翻訳作業は,小川が5,10,12章を,川越が原書序文,3,9,13章を,佐々木が1,7,11章を,成田が2,4,6,8章を担当して翻訳を作成したのち,永田透氏(NTT出版)と成田を中心に全員で表現や訳語の調整を行った.この過程で,片山悠樹氏(名古屋商科大学)には,デュルケムの『社会分業論』における訳語についてご助言をいただいた.大槻久氏(東京工業大学)と増田直紀氏(東京大学)には,すでに紹介した群淘汰や遺伝子と文化の共進化の理論に関する批判的論点を教えていただいた.
(p.414)