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『現代社会論のキーワード――冷戦後世界を読み解く』(佐伯啓思,柴山桂太[編] ナカニシヤ出版 2009)

編者:佐伯 啓思[さえき・けいし](1949-) 現代社会論
編者:柴山 桂太[しばやま・けいた](1974-) 現代社会論・思想史
著者:原谷 直樹[はらや・なおき] 東京大学大学院総合文化研究科博士課程(経済思想)
著者:佐藤 一進[さとう・たかみち] 京都精華大学専任講師(社会思想史)
著者:髙谷 幸[たかや・さち] 日本学術振興会特別研究員(社会学
著者:施 光恒[せ・てるひさ] 九州大学大学院比較社会文化研究院准教授(政治理論・政治哲学)
著者:黒宮 一太[くろみや・かずもと] 京都文教大学専任講師(政治思想・政治理論)
著者:大黒 弘慈[だいこく・こうじ] 京都大学大学院人間・環境学研究科准教授(経済理論)
著者:山本 崇広[やまもと・たかひろ] 東京大学大学院総合文化研究科博士課程(社会経済学・経済思想)
著者:楠田 浩二[くすだ・こうじ] 滋賀大学経済学部教授(金融経済学・金融工学
著者:寺川 隆一郎[てらかわ・りゅういちろう] 東京大学大学院総合文化研究科博士課程(経済思想)
著者:宗野 隆俊[むねの・たかとし] 滋賀大学経済学部准教授(法社会学
著者:中村 夕衣[なかむら・ゆい]  京都大学高等教育研究開発推進センター研究員(教育哲学)
著者:藤本 龍児[ふじもと・りゅうじ] 同志社大学一神教学際研究センター特別研究員(社会哲学・宗教社会学
  ※肩書はいずれも出版時点の情報。
装幀:白沢 正[しらさわ・ただし] 装丁。1989年京都市立芸術大学美術学部卒業。
NDC:300 社会科学
NDC:302 政治・経済・社会・文化事情
NDC:304 論文集.評論集.講演集


現代社会論のキーワード - 株式会社ナカニシヤ出版



【目次】
はじめに(平成二十一年 四月四日 柴山桂太) [i-iv]
目次 [v-x]


  第 I 部 変貌する思想潮流

1 新自由主義ネオリベラリズム)[原谷 直樹] 005
一 新自由主義の背景 005
  新自由主義の影響力
  リベラルからネオリベラルへ
二 フリードマンハイエク 010
  フリードマン新自由主義
  ハイエク新自由主義
  新自由主義の思想的意義
三 新自由主義 016
  新自由主義グローバリズム
  自由主義の多様性


2 ネオコン[佐藤 一進] 023
一 ネオコンの来歴 023
  ネオコンの起源
  外交戦略の展開と転回
  『楽園と力について』への道
二 レオ・シュトラウスの影 030
  ネオコンシュトラウス学派
  政治哲学とは何か
  レジームと著述の技法
  高貴な嘘
三 ネオコンの彼岸 036
  シュトラウシアン・マインドの終焉
  問われる歴史観


3 第三の道[髙谷 幸] 042
一 左派の苦悩 042
  共産主義の崩壊と新自由主義の台頭
  再帰的近代における個人化の進展
  「第三の道
  新しい社会民主主義」の躍進
二 「第三の道」の内容 049
  貧困から社会的排除
  ウェルフェアからワークフェア、そしてベーシックインカム
  福祉国家から福祉社会へ 
三 社会歴連帯の範囲をめぐって 056
  社会歴連帯と移民
  社会歴連帯の再定義に向けて


  第II部 国際政治の変

4 リベラル・デモクラシー[施 光恒] 065
一 リベラル・デモクラシーの理念 066
  リベラリズム
  デモクラシー
  リベラリズムとデモクラシーの関係性
  多様性の要請と統合の要請
二 リベラル・デモクラシーと普遍性 074
  (1) 文化超越的で普遍的であるとする見解
  (2) 欧米の文化のみに神話的であるとする見解
  (3) 非欧米文化にも基礎を見いだそうとする見解
三 「地に足のついた」リベラル・デモクラシーの必要性 081


5 ナショナリズム[黒宮 一太] 085
一 なぜいまナショナリズムを考えるのか 085
  ナショナリズムの激化をもたらした冷戦の終結
  「ナショナリズムの終焉」という楽観
  「民族化」する「国民」/「市民化」する「国民」
二 ナショナリズム理解に隠された前提 093
  「シヴェック/エスニック」=「善/悪」
  歴史社会学から規範理論へ
三 われわれにとってナショナリズムとは 100


6 帝国[大黒 弘慈] 104
一 帝国主義から〈帝国〉へ 106
  〈帝国〉の系譜学
  生生産と多国籍企業
  NGOマルチチュード
二 帝国の出現 111
  言説としての「帝国」
  新段階としての〈帝国〉
  世界システム論としての『〈帝国〉』
三 〈帝国〉から帝国主義へ 116
  資本主義と帝国主義
  自由主義帝国主義
  中心と周辺
四 再逆転か新段階か 122
  構造と主体
  金融資本と国民国家
  理念の重要性


  第III部 新技術が変える社会

7 知識経済[山本 崇広] 131
一 イノベーションと知識 131
  転換期にある現代経済
  知識経済の二つの論点
二 創造性の源泉 138
  創造性の源泉とは
  「企業家精神」と「アニマル・スピリット」
  知識創造と組織
  創造的な「場所」
三 知識経済の隘路 147


8 マスメディア[柴山 桂太] 152
一 マスメディアの変質 152
二 シニシズムポピュリズム 155
  ソフトニュースへの傾斜
  事件の人間化
  ジャーナリズムの危機
  争点型から戦略型へ
三 メディア社会の健全化は可能か 167


9 金融革命[楠田 浩二] 171
一 金融革命とは 172
  (1) 金融自由化・国際化
  (2) 金融技術革新
  (3) 金融システムの変化
二 金融革命の背景 178
  (1) 高齢化と経済のストック化
  (2) 金融工学と情報・通信技術の発展 
三 金融革命をどう評価すべきか 181
  (1) 投機的売買と価格乱高下の問題
  (2) 金融恐慌の問題
  サブプライム問題


  第IV部 制度改革のゆくえ

10 規制緩和[寺川 隆一郎] 195
一 規制緩和とは何だろうか 195
  小泉構造改革の影
  改革それ自体は八〇年代にはじまる
  大量生産体制の行き詰まりとグローバル化
二 八〇年代以降の規制緩和政策 199
  財政赤字解消の流れ
  消費者利益の流れ
三 規制緩和の思想 204
  日本特殊論
  最小国家
  急進的改革
四 制度という視点 208
  資本主義の多様性
  ルールの適切な運用
  自生的秩序にもとづく改革
  制度の再編という問題


11 地方分権[宗野 隆俊] 215
一 近隣の自治――地方分権の本旨 215
  トクヴィルのみたタウンシップの自治
  現代における近隣の自治への指向
二 日本の地方分権の特徴 218
  今日の地方分権論の特徴
  権限の委譲
  財源の委譲
  団体自治と住民自治
三 近隣の自治と公共的意思決定 223
  地方財政改革と市町村合併
  「遠くなる自治
四 上越市の地域協議会 226
  上越市の地域協議会
  地域協議会における討議
  行政資源の配分に関する意思決定
  近隣の自治と共同性の再構築


12 大学改革[中村 夕衣] 234
一 競争にさらされる大学 234
  ユニバーサル化とグローバル化
  専門教育の高度化と一般教育の空洞化
二 大学の変遷 239
  「大学」はいつ生まれたのか
  近代の大学の理念
  ドイツ型からアメリカ型へ
三 ポストモダンの大学論 245
  廃墟のなかの大学
  大きな物語の失墜


  第V部 文明史的課題

13 コミュニティ[柴山 桂太] 255
一 再評価されるコミュニティ 255
  衰退するコミュニティ
  コミュニタリアニズムの登場
  コミュニティは新しい現象か
二 コミュニティへの現代的アプローチ 263
  コミュニティは「ゲマインシャフト」か
  社会関係資本への注目
  「自由」と「帰属」のあいだで
三 基本的必要としてのコミュニティ 271


14 原理主義[藤本 龍児] 276
一 「イスラム原理主義」――通俗的な理解とその問題 276
  「原理主義」にたいするイメージ
  「イスラム主義」
  「イスラム復興」
二 第一期の原理主義――神学から社会思想へ 282
  聖書批評学と聖書無謬説
  反進化論 ≒ 反知性主義
  モンキー裁判
三 第二期の原理主義――福音派の登場とその政治化 288
  原理主義者(宗教右派)の世界観とその現実
  原理主義についての展望


15 環境問題[柴山 桂太] 298
一 政治問題となった環境危機 298
  グローバルな環境危機
  「生態系」への注目
二 「環境史」のパースペクティブ 302
  文明の分岐点
  イースター島の教訓
  二つの「応答」
  環境問題は人口問題でもある
三 エコノミーとエコロジー 312


結論 現代社会論の課題 317


おわりに(平成二十一年 四月四日 佐伯啓思) [337]
索引〔人名・事項〕 [342-352]
執筆者紹介 [354-356]




【メモランダム】
・感想。
 執筆陣は京都大や滋賀大の先生方が中心。
 各テーマについて、一通りの歴史的背景の記述だけでなく、各執筆者独自の観点からも記述している(と巻頭言で柴山氏が述べている)。
 記述は平易で衒いも無い。ただし、章題がデカい割に、抽象的な一方で、実際のトピック選択は限定されている。そのため、章によっては入門書の性格・短い概説の役割が薄くなっていることもある。(例えばネオコンの項目はレオ・シュトラウスの話題で埋まっていた)ので、いわゆる「現代社会論」(または思想・社会)としては二冊目以降に読みたい本。





【抜き書き】


・第1章の「新自由主義ネオリベラリズム)」からの一節(p.21)。執筆は原谷直樹。

多様な価値を内包する自由主義という豊穣な伝統の中に位置づけてみれば、新自由主義とはあらゆる種類の自由主義の必然的な帰結などではなく、ましてや唯一の正当な立場でもないということは明らかである。それは自由主義のなかでも、束縛や抑圧からの自由という消極的自由の一部を極度に重視した極端な立場であって、むしろ二十世紀後半の歴史的条件の下で生じた特殊な思想潮流であると理解するべきだろう。