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『ナショナリズムとグローバリズム〈ワードマップ〉』(大澤真幸,塩原良和, 橋本努, 和田伸一郎 新曜社 2014)

著者:大澤 真幸 数理社会学理論社会学。評論。
著者:塩原 良和 社会学・社会変動論、多文化主義研究、オーストラリア社会研究。
著者:橋本 努 経済社会学、社会哲学。
著者:和田 伸一郎 デジタル・メディア論、情報社会論、社会思想。
NDC:311.3 国粋主義ナショナリズム民族主義


ナショナリズムとグローバリズム - 新曜社 本から広がる世界の魅力と、その可能性を求めて

◆その熱狂のなかでクールに考えるために
 国境を越えて人や資本が軽々と移動するグローバル化の時代に、なぜ国民・国家にこだわるナショナリズムが、生き続けるどころか、ますます盛んになっているのでしょうか。たしかに竹島尖閣諸島などの領土問題は重要ですが、そのために憲法「解釈」を変え、集団的自衛権を使って、「戦争のできる国」にする必要などあるのでしょうか。この狂気ともいえるナショナリズムの熱狂のなかで、冷静にその意味と危険性を考えるために、本書は最適だと思います。ゲルナー、アンダーソンなどの著名な理論から始まって「日本のナショナリズム」「戦争・軍隊」「マクドナルド化」「移民」「核」「グローバルシティ」「ソーシャルメディア」などの魅力的なキーワードで、グローバル化のなかで変質するナショナリズムの「現在」を、四人の著者が多面的に解読します。

【目次】
まえがき [003-005]
目次 [007-011]


I部 歴史としてのナショナリズム

ネイション/ナショナリズム  定義不可能なるもの 014
  定義の不可能性
  特殊主義と普遍主義
  ネイションとナショナリズムの起源


民族/エトニー  ネイションの起源? 027
  民族
  ネイションの断絶
  エトニーのナショナルな起源
  ナショナリズムの宿痾としての民族問題


主権  権力の起源? 041
  暴力を正当化する方法
  許される殺人
  構成する権力


■コラム ネイションとステイト〔橋本〕 [048-049]


想像の共同体/無名戦士の墓/出版資本主義  ネイションは想像された共同体 050
  想像の共同体
  無名戦士の墓
  出版資本主義


資本主義  その国家との関係 060
  商業資本主義と自由資本主義
  独占資本主義
  国家の役割を最優先する二つの資本主義
  新自由主義


国語  ネイションはなぜ言語に執着するのか 069
  ナショナリズムの中核要素としての国語
  真理語と音声口語の間に
  国語化の原因は?
  日本語としての「国語」


小説・新聞  小説・新聞がネイションをつくった? 079
  小説
  新聞
  もう一つの側面


エスノ・ナショナリズム  民族とナショナリズム 089
  民族共同体からの発展
  共通の文化的価値
  エスノの過剰がもたらす悲劇


ファシズム  民主主義のなかから生まれた 096
  ファシズムとは何か
  ファシズムの諸特徴
  「人種」


テロリズム  理解不能な他者か 103
  テロリストと「名指す」こと
  他者の悪魔化と「戦時社会」
  同質性嫌悪と説明嫌悪
  自己に跳ね返ってくる他者への暴力


学校とネイション  学校教育がもたらしたもの 111
  「立身出世」と「平等社会」幻想
  学校教育と公用語
  学校という巡礼


■コラム 地図・博物館〔塩原〕 [116-117]


ゲルナー近代主義者たち  ネイションはどのように想像されるか 118
  なぜ、人はネイションのために死ぬのか?
  事実誤認としてのネイション


日本のナショナリズム  日本人はいつ「国民」になったのか 124
  国民の条件
  国民以前の「日本」
  日本人が「国民」になったとき
  日本ナショナリズムの変容


■コラム 遠隔地ナショナリズム〔橋本〕 [134]



II部 政治思想としてのナショナリズム 

民主主義  運動としての民主主義 136
  近代民主主義の誕生
  代議制の問題点
  民主主義の四つの要素


社会主義  なぜ不可能なのか 143
  究極の理想
  どこまで実現すべきか
  なぜ不可能なのか


マルクス主義コミュニズム  マルクスがめざしたもの 150
  「運動」としての共産主義
  「最初の一歩」としての共産主義
  「最終段階」としての共産主義


左翼/右翼  サヨク/ウヨクって何? 157
  戦後の状況
  日本における状況
  「思想」としての左翼


革命  民衆による小文字の革命 165
  二十世紀における「革命」
  新自由主義以降の革命のあり方の変化
  新自由主義国家の下での新たな革命の形
  反グローバリゼーションの闘士たち


戦争・軍隊  「新しい戦争」とは 174
  国家の上にある管理困難な軍事領域
  国家の下にある管理困難な軍事領域
  新自由主義経済と戦争との関係


ヘゲモニー(覇権)  主導権をいかに確保するか 182
  G8サミットを通したアメリカの世界戦略
  国内統治の具体的プロセス
  今後の国際秩序は?


コミュニタリアニズム  共同体を愛する思想 188
  三つの特徴
  国家型コミュニタリアニズム
  地域型コミュニタリアニズム


シヴィックナショナリズム  市民とナショナリズム 194
  四つの特徴
  多文化主義の困難


新自由主義新保守主義  「大きな政府」から「小さな政府」へ 199
  「大きな政府」から「小さな政府」へ
  新自由主義理論と現実とのズレ
  自由主義新自由主義との違い
  新自由主義新保守主義との構造的相互補完性



III部 グローバリズム

近代世界システム  グローバリゼーションの始まり? 210
  近代世界システム
  中核/周辺、そして半周辺
  覇権


グローバリゼーション  グローバル化の行く末 217
  標準化する世界と断片化するリアリティ
  移動するパワーと「庭」
  不安と怨念の「荒野」
  吹き溜まり/ゴミ捨て場

植民地  植民地化がもたらしたもの 224
  異なる事情
  世界の分割
  戦勝国の責任
  周辺の開発


帝国主義  帝国主義とは何か 231
  レーニン帝国主義
  幸徳秋水帝国主義
  解決策としての科学的社会主義


帝国  皇帝のいない帝国 239
  皇帝なしの帝国
  至高と膨張
  フロンティアの消滅


■コラム EU欧州連合)の礎としての「ヨーロッパ合衆国」〔橋本〕 [246]


シティズンシップ  「市民」とは何か 247
  何を?
  誰の?
  どのように?
  誰が?


マルチカルチュラリズム(多文化主義  他者との対話と協働の論理へ 253
  マイノリティの異議申し立てと公定多文化主義
  差異の管理と「寛容」
  ネオリベラル・マルチカルチュラリズムと「選別/排除」
  変革するマルチカルチュラリズムへ


■コラム マクドナルド化〔塩原〕 [260]


エスニシティと白人性  エスニック・マイノリティとは? 261
  オリエンタリズムパターナリズム
  マジョリティ性・白人性・日本人性
  対話と協働のための理解


移住者と出入国管理  国境を越えるとは? 266
  定住者と移住者
  移住経験の分断
  リベラル・パラドックスと「悪魔化」
  国境と国内の区別?


マイノリティとポジショナリティ  アイデンティティ・ポリティクス 272
  文化本質主義と「内なる差異」
  マイノリティという位置
  アイデンティティ・ポリティクスと自作自演としての排除


反グローバリズムNGO  もう一つの世界は可能だ! 275
  グローバリゼーションの三つの層
  オルター・グローバリゼーション、「もう一つの世界は可能だ!」
  世界社会フォーラム


核/平和運動  核のない世界は夢か 288
  冷戦期の核軍拡競争
  被爆国としての日本の反核運動
  日本の反核運動が抱えたいくつかのねじれ
  反核運動の三つの次元


コスモポリタニズム  世界市民主義は空想か 296
  世界市民と世界政府?
  コスモポリタンな現実
  エリートの占有物?
  コスモポリタンな対話と討議に向けて


■コラム 国連・国際機関とグローバルな市民社会〔塩原〕 [301]


グローバル・シティ  グローバル化を超えて 302
  サッセンの「グローバル・シティ」
  日本の場合
  日本における自由化の難しさ
  グローバル・シティが抱える矛盾


ソーシャルメディア  マスメディアからソーシャルメディアへ 309
  ソーシャルメディアを普及可能にした空白
  エジプトで果たした役割
  マスメディアからソーシャルメディア
  認知労働としてのネット投稿
  大震災を越えて


あとがき――ナショナリズムの現在 [320-329]
さらに学ぶ人のためのブックガイド [xii-xvi]
事項索引 [iii-xi]
人名索引 [i-ii]