著者:大澤 真幸 数理社会学、理論社会学。評論。
著者:塩原 良和 社会学・社会変動論、多文化主義研究、オーストラリア社会研究。
著者:橋本 努 経済社会学、社会哲学。
著者:和田 伸一郎 デジタル・メディア論、情報社会論、社会思想。
NDC:311.3 国粋主義.ナショナリズム.民族主義
ナショナリズムとグローバリズム - 新曜社 本から広がる世界の魅力と、その可能性を求めて
◆その熱狂のなかでクールに考えるために
国境を越えて人や資本が軽々と移動するグローバル化の時代に、なぜ国民・国家にこだわるナショナリズムが、生き続けるどころか、ますます盛んになっているのでしょうか。たしかに竹島・尖閣諸島などの領土問題は重要ですが、そのために憲法「解釈」を変え、集団的自衛権を使って、「戦争のできる国」にする必要などあるのでしょうか。この狂気ともいえるナショナリズムの熱狂のなかで、冷静にその意味と危険性を考えるために、本書は最適だと思います。ゲルナー、アンダーソンなどの著名な理論から始まって「日本のナショナリズム」「戦争・軍隊」「マクドナルド化」「移民」「核」「グローバルシティ」「ソーシャルメディア」などの魅力的なキーワードで、グローバル化のなかで変質するナショナリズムの「現在」を、四人の著者が多面的に解読します。
【目次】
まえがき [003-005]
目次 [007-011]
I部 歴史としてのナショナリズム
ネイション/ナショナリズム 定義不可能なるもの 014
定義の不可能性
特殊主義と普遍主義
ネイションとナショナリズムの起源
民族/エトニー ネイションの起源? 027
民族
ネイションの断絶
エトニーのナショナルな起源
ナショナリズムの宿痾としての民族問題
主権 権力の起源? 041
暴力を正当化する方法
許される殺人
構成する権力
■コラム ネイションとステイト〔橋本〕 [048-049]
想像の共同体/無名戦士の墓/出版資本主義 ネイションは想像された共同体 050
想像の共同体
無名戦士の墓
出版資本主義
資本主義 その国家との関係 060
商業資本主義と自由資本主義
独占資本主義
国家の役割を最優先する二つの資本主義
新自由主義
国語 ネイションはなぜ言語に執着するのか 069
ナショナリズムの中核要素としての国語
真理語と音声口語の間に
国語化の原因は?
日本語としての「国語」
小説・新聞 小説・新聞がネイションをつくった? 079
小説
新聞
もう一つの側面
エスノ・ナショナリズム 民族とナショナリズム 089
民族共同体からの発展
共通の文化的価値
エスノの過剰がもたらす悲劇
ファシズム 民主主義のなかから生まれた 096
ファシズムとは何か
ファシズムの諸特徴
「人種」
テロリズム 理解不能な他者か 103
テロリストと「名指す」こと
他者の悪魔化と「戦時社会」
同質性嫌悪と説明嫌悪
自己に跳ね返ってくる他者への暴力
学校とネイション 学校教育がもたらしたもの 111
「立身出世」と「平等社会」幻想
学校教育と公用語
学校という巡礼
■コラム 地図・博物館〔塩原〕 [116-117]
ゲルナーと近代主義者たち ネイションはどのように想像されるか 118
なぜ、人はネイションのために死ぬのか?
事実誤認としてのネイション
日本のナショナリズム 日本人はいつ「国民」になったのか 124
国民の条件
国民以前の「日本」
日本人が「国民」になったとき
日本ナショナリズムの変容
■コラム 遠隔地ナショナリズム〔橋本〕 [134]
II部 政治思想としてのナショナリズム
民主主義 運動としての民主主義 136
近代民主主義の誕生
代議制の問題点
民主主義の四つの要素
社会主義 なぜ不可能なのか 143
究極の理想
どこまで実現すべきか
なぜ不可能なのか
マルクス主義(コミュニズム) マルクスがめざしたもの 150
「運動」としての共産主義
「最初の一歩」としての共産主義
「最終段階」としての共産主義
左翼/右翼 サヨク/ウヨクって何? 157
戦後の状況
日本における状況
「思想」としての左翼
革命 民衆による小文字の革命 165
二十世紀における「革命」
新自由主義以降の革命のあり方の変化
新自由主義国家の下での新たな革命の形
反グローバリゼーションの闘士たち
戦争・軍隊 「新しい戦争」とは 174
国家の上にある管理困難な軍事領域
国家の下にある管理困難な軍事領域
新自由主義経済と戦争との関係
ヘゲモニー(覇権) 主導権をいかに確保するか 182
G8サミットを通したアメリカの世界戦略
国内統治の具体的プロセス
今後の国際秩序は?
コミュニタリアニズム 共同体を愛する思想 188
三つの特徴
国家型コミュニタリアニズム
地域型コミュニタリアニズム
シヴィック・ナショナリズム 市民とナショナリズム 194
四つの特徴
多文化主義の困難
新自由主義/新保守主義 「大きな政府」から「小さな政府」へ 199
「大きな政府」から「小さな政府」へ
新自由主義理論と現実とのズレ
自由主義と新自由主義との違い
新自由主義と新保守主義との構造的相互補完性
III部 グローバリズム
近代世界システム グローバリゼーションの始まり? 210
近代世界システム
中核/周辺、そして半周辺
覇権
グローバリゼーション グローバル化の行く末 217
標準化する世界と断片化するリアリティ
移動するパワーと「庭」
不安と怨念の「荒野」
吹き溜まり/ゴミ捨て場
植民地 植民地化がもたらしたもの 224
異なる事情
世界の分割
戦勝国の責任
周辺の開発
帝国主義 帝国主義とは何か 231
レーニンの帝国主義論
幸徳秋水の帝国主義論
解決策としての科学的社会主義
帝国 皇帝のいない帝国 239
皇帝なしの帝国
至高と膨張
フロンティアの消滅
■コラム EU(欧州連合)の礎としての「ヨーロッパ合衆国」〔橋本〕 [246]
シティズンシップ 「市民」とは何か 247
何を?
誰の?
どのように?
誰が?
マルチカルチュラリズム(多文化主義) 他者との対話と協働の論理へ 253
マイノリティの異議申し立てと公定多文化主義
差異の管理と「寛容」
ネオリベラル・マルチカルチュラリズムと「選別/排除」
変革するマルチカルチュラリズムへ
■コラム マクドナルド化〔塩原〕 [260]
エスニシティと白人性 エスニック・マイノリティとは? 261
オリエンタリズムとパターナリズム
マジョリティ性・白人性・日本人性
対話と協働のための理解
移住者と出入国管理 国境を越えるとは? 266
定住者と移住者
移住経験の分断
リベラル・パラドックスと「悪魔化」
国境と国内の区別?
マイノリティとポジショナリティ アイデンティティ・ポリティクス 272
文化本質主義と「内なる差異」
マイノリティという位置
アイデンティティ・ポリティクスと自作自演としての排除
反グローバリズム/NGO もう一つの世界は可能だ! 275
グローバリゼーションの三つの層
オルター・グローバリゼーション、「もう一つの世界は可能だ!」
世界社会フォーラム
核/平和運動 核のない世界は夢か 288
冷戦期の核軍拡競争
被爆国としての日本の反核運動
日本の反核運動が抱えたいくつかのねじれ
反核運動の三つの次元
コスモポリタニズム 世界市民主義は空想か 296
世界市民と世界政府?
コスモポリタンな現実
エリートの占有物?
コスモポリタンな対話と討議に向けて
■コラム 国連・国際機関とグローバルな市民社会〔塩原〕 [301]
グローバル・シティ グローバル化を超えて 302
サッセンの「グローバル・シティ」
日本の場合
日本における自由化の難しさ
グローバル・シティが抱える矛盾
ソーシャルメディア マスメディアからソーシャルメディアへ 309
ソーシャルメディアを普及可能にした空白
エジプトで果たした役割
マスメディアからソーシャルメディアへ
認知労働としてのネット投稿
大震災を越えて
あとがき――ナショナリズムの現在 [320-329]
さらに学ぶ人のためのブックガイド [xii-xvi]
事項索引 [iii-xi]
人名索引 [i-ii]