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『愛国と信仰の構造――全体主義はよみがえるのか』(中島岳志,島薗進 集英社新書 2016)

著者:中島 岳志[なかじま・たけし](1975-) 地域研究(南アジア)、日本思想史、政治学
著者:島薗 進[しまぞの・すすむ](1948-) 宗教社会学、近代日本宗教史。
NDC:311.3 国粋主義ナショナリズム民族主義
NDC:316.2 国家と宗教


「愛国と信仰の構造」特設サイト


【目次】
目次 [003-010]
はじめに(中島岳志) [011-015]


第一章 戦前ナショナリズムはなぜ全体主義に向かったのか 017
現代日本の「右傾化」の背後にあるもの
グローバル化による個人の砂粒化と宗教ナショナリズムの台頭
今も国家神道は生きている
明治維新からの一五〇年――繰り返されるサイクル
幕府を倒した「一君万民ナショナリズム
明治維新フランス革命とどこが違うのか
「上からのナショナリズム」が再創造する「伝統」
国学のもたらしたもの――天皇と人民の一体化というユートピア主義
日本の儒教が育てたもの――「国体」論と天皇への忠誠
「下からのナショナリズム」が希求した「一君万民」的なユートピア
天皇主義者たちによる自由民権運動
全体主義を用意した右翼思想のふたつの潮流


第二章 親鶯主義者の愛国と言論弾圧 045
親鶯主義も安全ではないという気づき
「祖国礼拝」という超国家主義
絶対他力」の思想から生じた言論弾圧事件
超国家主義者たちはどのような青年期を過ごしたのか
坂の上の雲』の中で国家目標を失った日本
自然との一体化を求めた煩悶青年たち
内面重視の新しい親鸞主義の誕生
自然・親鸞超国家主義
「ありのまま」をよしとする「中今」の思想
マルクス主義者に転向を迫った親鸞主義者たち
「寝転がる思想」の危うさ
国学の「大和心」と親鸞の「絶対他力
国家神道親鸞主義が融合していった一九三〇年代


第三章 なぜ日蓮主義者が世界統一をめざしたのか 077
「八紘一宇」と日蓮主義
ふたつの「超国家主義」論――丸山眞男橋川文三
超越的な力で国家を救済しようとする日蓮宗
人生論的煩悶が超国家主義へと接続する回路
法華経と国体の一体化を説いた田中智学
「世界をひとつの家にする」ための満州事変
石原莞爾満州国宮沢賢治イーハトーブ
「変革への志向」でつながる日蓮主義と革新右翼
「上からの」革命をめざした革新右翼
グローバル資本主義昭「八紘一宇
宗教を経由して国体論に向かった煩悶青年


第四章 国家神道に呑み込まれた戦前の諸宗教 103
国家神道は「新しい」
教育勅語が国民に国体論を浸透させた
伝統的宗教はなぜ国家神道に呑み込まれていったのか
全体主義を支える心性とエヴァンゲリオンの共通点
なぜファシストがルソーを好むのか
一九一八年と一九九五年――混迷の第三期の幕開け
血盟団事件の背景にあるもの
教育勅語によって民衆に刷り込まれた国体論
草の根宗教・大本教国家神道を取り込んだ
大本教の変革思想
明治の国家デザインの逆説――天皇崇敬の「建前」の暴走
右翼思想の逆説――消えた「一君万民ナショナリズム


第五章 ユートピア主義がもたらす近代科学と社会の暴走 135
自力と他力のユートピア主義の間で揺れる日本の近代
吉本隆明の科学原罪論と親鸞の「悪人正機
科学の自動展開という罠
自然的作為とは何か
他力に導かれる内発的な力――親鸞の魅力と危うさ
自然法爾」を全体主義に向かわせないために
正法から仏教を問いなおすことの意義
宗教は科学に介入できるのか
「死」の個人化がもたらすもの
設計主義的生命観は縁を奪う


第六章 現代日本の政治空間と宗教ナショナリズム 167
日本の宗教ナショナリズムは死んだのか
現代のナショナリズムを下支えしている国家神道
「居場所なきナショナリズム」と無差別殺人事件
宗教から脱することが公共的?
宗教的な次元をゼロにできるのか
宗教は民主主義社会で重要な役割を果たしている
お寺が作る共同体の可能性
葬式を一生懸命やることの意味
「死者のデモクラシー」と「未来の他者とのデモクラシー」


第七章 愛国と信仰の暴走を回避するために 193
ネット右翼の台頭が示唆するもの
世界各地で進む伝統宗教の復興
「居場所なきナショナリズム」の危うさ
創価学会が果たすべき役割
国家の宗教性という難題
サンデル流の共同体主義の限界
本当の多元主義とは何か?
「一なるもの」は語り得ない
統整的理念と構成的理念
多様な追悼は可能か
黙祷とは何か
「宗教」の再定義が必要
文明の衝突」を招く「単一論」
柳宗悦の思想――アジア的な「多一論」の可能性
東アジア的権威主義体制への回帰


第八章 全体主義はよみがえるのか 231
戦前と戦後のふたつの「立憲主義の危機」
神社本庁日本会議
大正デモクラシーから昭和ファシズムへの暗転
天皇・軍隊・大衆の一体化
全体主義は「大衆の反逆」
戦前日本の全体主義と大衆
全体主義はよみがえるのか
アメリカ撤退後に暴走する大衆の不安
「性急な変化」への欲望が全体主義を生む
アジア的価値観による立憲デモクラシーを


おわりに(島薗進) [264-268]
註・参考文献 [269-270]