著者:藤井 隆至[ふじい・たかし](1949-) 経済学。近代日本の経済思想。
NDC:289.1 個人伝記
NDC:380.1 民間伝承論・民俗学
NDC:331.21 経済思想史(日本)
【目次】
はしがき(柳田国男生誕一二〇年の日に 藤井隆至) [i-vii]
目次 [viii-xii]
凡例 [xiii]
初出一覧 [xiv]
序章 課題と方法 003
第一節 課題――「経世済民の学」としての柳田学 003
第二節 方法――構造論的アプローチと歴史論的アプローチ 012
第一章 辻川時代――基礎的経験としての貧困 019
第一節 はじめに――課題と方法 019
第二節 父の課題――貧困との戦い 021
第三節 兄の課題――貧困の克服 032
第四節 国男の位置――境界 038
(1)家庭内での位置
(2)村内での位置
第五節 おわりに――基礎的経験としての貧困 046
第二章 布川時代――基礎的経験としての比較 049
第一節 はじめに――課題と方法 049
第二節 環境としての辻川 051
第三節 環境としての布川 060
第四節 おわりに――布川時代の意義 068
第三章 文学から経済学へ――ナショナリズムとロマン主義 071
第一節 はじめに――課題と方法 071
第二節 学校――人間関係(1) 074
第三節 先達――人間関係(2) 083
第四節 友人――人間関係(3) 090
第五節 女性――人間関係(4) 098
第六節 死と宗教――もう一つの人間関係 105
第七節 おわりに――ナショナリズムとロマン主義 114
第四章 『農政学』の社会政策論――自立経営の育成 121
第一節 はじめに――課題と方法 121
第二節 『農政学』――「孤独なる荒野の叫び」 127
第三節 政策理念――「国民総体の幸福」 134
第四節 政策構想――自立経営育成論 144
第五節 政策手段――産業組合 154
第六節 政策目標――民富の形成 161
第七節 小括――課題としての「協同相助」 170
補論 柳田国男の社会主義論――共感と批判 177
第一節 はじめに 177
第二節 『農政学』の構成 179
第三節 中農養成策 180
第四節 国家は経済を基礎づける 181
第五節 労働全収権――働く者への共感 183
第六節 土地社会主義の検討 185
第七節 土地私有制の擁護――労働全収権から 186
第八節 小生産者――社会的基盤 187
第九節 おわりに 189
第五章 『後狩詞記』の学問的意義――「郷土」の措定 191
第一節 はじめに――課題と方法 191
第二節 『農政学』との親和――「古日本の民俗を窺知すべき九州の山村」 193
第三節 『農政学』の深化――「日向国奈須の山村において今もおこなわるる猪狩りの故実」 198
第四節 おわりに――「郷土」の措定 203
第六章 『農業政策』の一極集中批判――衰退する「郷土」 207
第一節 はじめに――課題と方法 207
第二節 主題――価格政策 211
第三節 分析―― 一極集中 215
第四節 政策――地域主義 225
第五節 おわりに――経済政策を超えて 229
第七章 地域主義の倫理的基礎――『遠野物語』の「人間研究」 233
第一節 はじめに――課題と方法 233
第二節 舞台――「小市場」 236
第三節 主題――「人間研究」 239
第四節 分析――「固有信仰」 246
第五節 政策関心――地域主義の倫理的基礎 249
第六節 おわりに――『遠野物語』の思想史的意義 252
第八章 雑誌『郷土研究』の主題・方法・性格――柳田国男の社会問題研究 257
第一節 はじめに――課題と方法 257
第二節 『郷土研究』の主題と分析――差別問題への生活史的接近 264
(1)主題――差別と貧困の問題
(2)分析――「固有信仰」の「零落」
(3)政策――「正しい材料」と「将来の計画」
第三節 『郷土研究』の方法――認識法と論理法 275
(1)認識法――「実験」と「同情」
(2)論理法――「比較」と「法則」
第四節 おわりに――社会問題研究としての『郷土研究』 296
第九章 研究の社会的意義――「学問のみが世を救うを得べし」(『青年と学問』) 303
第一節 はじめに――課題と方法 303
第二節 ソテツ地獄――「孤島苦」の沖縄 305
第三節 国際連盟委任統治委員会――「孤島苦」の日本 309
第四節 「孤島苦」の克服――普通選挙 314
第五節 「学問のみが世を救うを得べし」――『青年と学問』 320
第六節 おわりに――「経世済民」と「郷土研究」 324
第一〇章 農民問題の経済政策――『都市と農村』の経世済民論 327
第一節 はじめに――課題と方法 327
第二節 主題――地域政策 332
第三節 分析――地域の分断 335
(1)一極集中の展開
(2)零細経営の形成
(3)地租改正の帰結
(4)小括
第四節 政策(1)――地域主義 346
第五節 政策(2)――農民組合 350
第六節 おわりに――『都市と農村』の経済思想史的意義 356
第一一章 『明治大正史世相篇』の倫理政策――日本人の「生き方」とその課題 361
第一節 はじめに――課題と方法 361
第二節 「国民としての我々の生き方」(1)――家の独立と自立難 365
第三節 「国民としての我々の生き方」(2)――家自立のための方策 371
第四節 おわりに――人間としての自立 378
第一二章 ファシズム下の教育政策と社会改革――“常民”の創出 383
第一節 はじめに――課題と方法 383
第二節 教科教育論――「心意」の表現 387
(1)公民教育
(2)郷土教育
(3)歴史教育
(4)国語教育
(5)小括
第三節 民間伝承論――「心意」の探求 395
第四節 教育目標――“常民”の創出 402
第五節 おわりに――功利主義との併行関係 407
補論 「比較民俗学」の政治思想――太平洋戦争下のアジア意識 410
第一節 はじめに――課題と方法 410
第二節 一九二〇年前後のアジア意識 411
(1)大陸旅行
(2)松岡静雄
(3)国際連盟委任統治委員会
(4)フォークロアとエスノロジー
第三節 一九四〇年前後のアジア意識 419
(1)『アジア問題講座』
(2)「比較民俗学」と「民族結合」
(3)「比較民俗学」の挫折
第四節 おわりに――アジア意識の問題点
終章 結語――社会政策学としての「経世済民の学」 429
人名索引 [1-6]
【メモランダム】
・小室正紀による書評(『経済学史学会年報』1996年)。
藤井隆至『柳田國男 経世済民の学-経済・倫理・教育-』, 名古屋大学出版会, 1995, xiv+435+6p.
・著者へのインタビュー記事@新潟大Campus Forum 153号(※PDFファイル)。本書の副題に敢えて「民俗」が並んでいない点にも触れている。
http://www.niigata-u.ac.jp/adm/c_forum/153pdf/153-9-12.pdf
・図書館における本書の分類について。公立図書館でも意見が分かれている。
①まず、国会図書館における本書の分類は、[380.1 民間伝承・民俗学]。書名に「ヤナギタ・クニオ」を含む本は99.9パーセントの確率で[民俗学]だから仕方ない。本書の目次を一瞥すれば、本書の民俗学の要素が希薄であることが分かるので、この分類に異を唱える利用者が出てもおかしくはない。もしかすると、データベースに書誌情報を入力した司書(またはアルバイトの学生)が「民俗学」と「柳田」の文字列の強固なつながりを過学習した結果なのかもしれない。
②次に、大坂府立中央図書館と島根県立図書館では、[289.1 個人伝記]に。なお、ほかの大多数の県立図書館も同様だった。