著者:小田中 直樹[おだなか・なおき]
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ライブ・経済学の歴史 - 株式会社 勁草書房
【目次】
まえがき [i-iii]
目次 [v-xiii]
序章 なぜ、いま、経済学の歴史なのか 001
【経済学入門としての経済学史】 001
経済学のご利益(ごりやく)を考える
教養としての経済学は、アマチュアにとっても不可欠なシールである
経済学史は経済学の見取り図である
【経済学史にとりくむ準備をする】 009
対象を定義する
対象に接近する
この本の描成は歴史を追っていない
第1章 分配 015
1・1 アリストテレス 015
正しい分配は二つの条件をみたさなければならない
古代ギリシアは様々な矛盾が渦巻く世界だった
アリストテレスは、哲学のみならず、政治や社会や経済の問題も論じた
アリストテレスは正義の問題として分配を考えた
1・2 分配をめぐる考察の系譜 024
トマス・アキナスは、商工業の発達を見ながら、分配の問題を考えた
リカードは地代の決定メカニズムを考察した
マルクスは資本家と労働者の間の分配の基準を論じた
旧厚生経済学は、はじめて二つの条件をクリアした
ピグーの所説には前提があった
新厚生経済学には功罪があった
社会的選択理論は、新厚生経済学に根本的な問題を突きつけた
政治哲学者までが議論に参加した
第2章 再生産と価値 049
2・1 スミス 049
経済システムは再生産されている
一五世紀から一八世紀は「主権国家と貿易の時代」だった
一五世紀から一八世紀は「ものつくり経済(社会)の時代」でもあった
スミスは経済システムが再生産されていることを証明した
価格決定論をめぐって、スミスは動揺した
2・2 再生産をめぐる考察の系譜 061
ミルは停止状態が到来することを予言した
なぜ経済システムは再生産されるのか
マーシャルは収穫逓増という現象を経済学にくみこもうとした
2・3 価値をめぐる考察の系譜 068
リカードは投下労働価値説を採用した
マルサスは支配労働価値説を採用した
パラダイム・シフトとしての限界革命と、その後
第3章 生存 075
3・1 モラル・エコノミー論 075
「価格は需給で決まるのです」「たしかにそれはそうですが」
家父長主義と重商主義は表裏の関係にあった
古典派経済学は家父長主義を批判し、支配階層の間に支持者を増やした
民衆の経済観念をモラル・エコノミーと呼んでみよう
モラル・エコノミーを定式化したのは、一人の政治学者だった
3・2 生存をめぐる考察の系譜 086
モラル・エコノミーの基盤をなす農村共同体は、なかなか解体しなかった
マルサスは生存の問題を真正面からとりあげた
新自由主義とフェビアン社会主義は貧困のイメージを転換させた
『ベヴァリジ報告』は福祉国家の基本的なコンセプトを提示した
第4章 政府 099
4・1 デュピュイ 099
公共経済学は重要な分野である
公的な介入の問題が論じられたのは相対的な後進国でのことだった
「エンジニア」という職業がフランスには存在する
デュピュイは、のちに「消費者余剰」と呼ばれる概念を体系化した
消費者余剰には長所と前提条件がある
4・2 政府をめぐる考察の系譜 112
サン・シモン派は社会を一つの会社にしようと主張した
マーシャルは余剰の概念を拡張した
ロシア革命は政府の経済運営能力をめぐる論争をひきおこした
公共選択論は政府の膨張を批判的に分析した
ハイエクは、市場のメリットは効率性だけではないと主張した
コースやジェイコブズは、あらためて政府と市場の関係を考えた
第5章 効用 120
5・1 限界革命三人組 129
なんたって「新古典派」経済学の誕生である
限界革命は大企業の時代への移行期の産物だった、のかもしれない
ジェヴォンズは限界効用逓減の法則を活用した
メンガーは稀少性の問題を強調した
ワルラスは経済学に数学を導入することを積極的に主張した
ワルラスは一般均衡分析という考え方も提唱した
こうして新古典派経済学の第一歩がふみだされる
5・2 効用をめぐる考察の系譜 146
限界革命三人組にも先駆者がいた
ゴッセンはもう一歩で限界革命にたどりつくところだった
パレートは効用の概念を厳密に考えた
パレート最適とは何か
ゲーム理論は経済学を変革するか
第6章 企業 163
6・1 ヴェブレン 163
市場と取引はイコールで結べるのか
企業の時代、始まる
顕示的消費とは何か
「企業」という存在の独自性とは何か
6・2 企業をめぐる考察の系譜 171
シュンペーターは「イノベーション」という言葉を人口に膾炙させた
企業を扱う学問領域といったら、当然経営学ではないのか
バーリとミーンズは「所有と経営の分離」を発見した
コモンズやコースは企業を分析できる経済学を構想した
ウィリァムソンは取引費用の経済学を体系化した
おまけ・情報の経済学
企業の時代、経済学と経営学は共生できるか
第7章 失業 189
7・1 ケインズ 189
ミクロ経済学とマクロ経済学の違いは何か
大恐慌、始まる
経済学者は困った
「期待」を考慮に入れるには、どうすればよいか
「貨幣」を考慮に入れるには、どうすればよいか
ケインズはマクロ経済学をつくりあげた
期待が失業をうみだす
失業をなくすにはどうすればよいか
マクロ経済学とミクロ経済学は、どんな関係にあるか
7・2 失業をめぐる考察の系譜 210
マクロ経済学の全盛期が始まった
フィリップス曲線は経済政策に目標を与えた
新しいマクロ経済学の先頭を切って、マネタリズムが登場した
マネタリズム派とケインズ派の違いは何に由来するか
合理的期待仮説とは何か
マネタリズムは新古典派マクロ経済学に変貌した
マクロ経済学の存在意義とは何か
終章 ふたたび、なぜ、いま、経済学の歴史なのか 231
【経済学史のアクチュアリティ】 231
経済学史の流れを再確認する
アクチュアリティが大切である
分配を論じることのアクチュアリティ
再生産と価値を論じることのアクチュアリティ
生存を論じることのアクチュアリティ
政府を論じることのアクチュアリティ
効用を論じることのアクチュアリティ
企業を論じることのアクチュアリティ
失業を論じることのアクチュアリティ
経済学はアクチュアルなツールである
知は力である
【読書案内】 253
この本の読書案内
経済学史の教科書
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あとがき(二〇〇三年六月八日 杜の都にて 小田中直樹) [259-261]
文献 [vi-xii]
事項索引 [iii-v]
人名索引 [i-ii]