原題:The End of Economic Man: A Study of the New Totalitarianism (The John Day Company)
著者:Peter Ferdinand Drucker(1909-2005) 経営学。
訳者:上田 惇生[うえだ・あつお](1938-2019) 経営学。
NDC:311.8 全体主義.ファシズム
NDC:335.08 企業.経営
【目次】
新版への序文(一九九四年一〇月 カリフォルニア州クレモントにて ピーター・F・ドラッカー) [i-v]
チャーチルの評価
全体主義の起源についての最初の本
特殊ドイツ的現象ではない
社会そのものの分析ではない
今世紀前半における最大の社会現象
一九六九年版への序文(一九六九年元旦 ニュージャージー州モンクレアにて ピーター・F・ドラッカー) [vii-xxvii]
絶望の果ての熱狂
ヒトラーはスターリンと手を結ぶ
人間疎外
政治信条の喪失がもたらしたもの
キリスト教の役割
マルクス主義革命
悪夢の歳月の景色
ヒトラーの卓見
「しくじった神」としてのマルクス主義
マルクス主義の知的破産と大衆化
小粒な政治家たち
チャーチルがいた
一九三九年の状況
恐るべき静寂
昨今の悪夢
すでに免疫はあるか
成熟とは
もう一つの「最終解決」
若者たちへ
目次 [xxix-xxviii]
はじめに 001
妥協はありえない
社会と経済の分析
私の分析と現実の動き
第1章 反ファシズム陣営の幻想 005
1 ファシズムへの誤解 006
民主主義と共産主義の後退
臆病に非ず
三つの謬説
革命の残虐性
歴史の改竄
プロパガンダ説
枠外からの革命
価値の変化
2 ファシズムの諸症状 013
ファシズム特有の三つの諸症
革命先行
否定の綱領
正当化の必要
ヨーロッパの伝統
3 大衆心理の不思議 018
約束への不信
ボックスハイム・ペーパー事件
公約の矛盾
公然たる嘘
4 「背理ゆえに信ず」 022
代用としての否定
信条の欠如
信じられないものを信ずる
「背理ゆえに信ず」
第2章 大衆の絶望 027
1 マルクス主義の失敗 028
マルクス主義の約束
教義と現実
神なき教権階級
中間階層の出現
『資本論』未完の原因
労働組合主義への変質
マルクス社会主義革命が起こらなかった理由
プロレタリアに対するプロレタリア独裁
万国の労働者
2 資本主義の債務不履行 038
資本主義の約束
利潤動機
経済的自由の恐怖
信認の喪失
大衆の窮乏化
アメリカの意味
アメリカへの移民の変遷
3 「経済人」の破綻 047
偽りの神々
「経済人」の概念
経済学の成立
経済学の隆盛と失敗
経済よりも重要なこと
自由と平等
マルクス主義における二律背反
その精密性と脆弱性
4 合理の喪失 056
秩序の解体
社会の混沌
合理と魔物
機械論的世界観の限界
第3章 魔物たちの再来 061
1 世界大戦と大恐慌が明らかにしたもの 062
二つの破局
世界大戦の意味
大恐慌の意味
それまでの戦争の意味
大戦の大義
「持てる国」と「持たざる国」
それまでの恐慌の意味
大恐慌の無意味性
人工の魔物たち
2 魔物たちの追放 070
悲しいまでの努力
対独強硬論と宥和論
恐慌の絶滅
大衆の変化
3 自由の放棄 076
経済発展への抵抗
農業保護
安定の優先
民主主義の凋落
経済的自由の放棄
自由そのものの放棄
自由とは何か
4 ファシズムの誕生 085
「真正民主主義」
形態と標語の維持
自由の廃止
虚言こそ真理
魔法使いの壮大な奇跡
第4章 キリスト教の失敗 089
1 キリスト教の戦果 090
教会への期待
教会の時代認識
キリスト教政党の誕生
教会内の新しい勢力
キリスト教の成果――工場法社会保護・最低賃金
キリスト教社会の復活
2 知的エリートとキリスト教 098
知的エリートのキリスト教への回帰
カトリックへの傾斜
ドストエフスキーとヘンリー・アダムズ
キルケゴールとニーチェ
転向
3 教会の無意味性 103
反動的夢想
全体主義の味方
個人にとっての価値
社会的失敗
教会に非ざる教会
教会内の多数派と少数
4 ファシズムとキリスト教 110
言葉と概念
逃避と防衛
破壊のあとの創造
第5章 全体主義の奇跡――ドイツとイタリア 115
1 ドイツ人とイタリア人の国民性 116
なぜドイツとイタリアなのか
親ファシズム的性向
問題は国民性ではない
原因は大戦なのか
2 与えられた民主主義と獲得した民主主義 120
民主主義と国家統一
手段としての民主主義
3 ムッソリーニとヒトラー 124
ムッソリーニの誤算
ドイツの民主主義
ヒトラーの誤算
4 ドイツのナチズムとイタリアのファシズムの違い 128
伝統による形式の保持
本物と真似
第6章 ファシズムの脱経済社会 133
1 産業社会の脱経済化 134
緊急の課題
ファシズムを権力の座につけた者は誰か
全体主義とは何か
「誇示的浪費」
2 社会有機体説 138
経済的不平等
農民の社会的地位――「民族の背骨」
労働者の社会的地位――『民族の精神』
突撃隊、親衛隊ヒトラー青年団
妬みによるいじめ
3 軍国主義 143
不平等の補償で十分か
軍国主義化
軍事の経済的、社会的役割
国皆兵
軍需産業
国全体が軍隊
経済の全体主義化
資本主義ではない
農業の組織化
農民の地位
自由業の地位
4 全体主義の経済 156
古典派経済学への回帰
ソ連の模倣
共産主義経済との違い
労働者階級の所得
他の階級の犠牲
個人献金
公債の強制購入
財産没収と強制労働
デフレ政策
非生産的投資
軍拡は浪費か
輸入代替産業への投資
どこまで耐えられるか
問題は別のところに
5 資源の輸入問題 172
ドイツとイタリアの問題
輸出入の悪循環
輸入代替産業の一人立ちはあるか
輸入問題の深刻化
貿易収支の悪化
状況はさらに悪い
食糧問題
棉花を唱えて革命を
バルカンの征服
農業の産業化
経済学を超えた問題
第7章 奇跡か蜃気楼か 185
1 戦争と平和 186
戦争の位置づけ
犠牲の昇華
「英雄人」の概念
社会の否定
歴史の循環
2 聖なる戦い 191
敵の存在が必要
脅威の絶滅
共産主義への憎しみ
3 反ユダヤ主義の原因 194
北欧人とユダヤ人との対決
ユダヤ人
反ユダヤ主義の経済的動機
ユダヤ人の反ナチズム
4 ブルジョア資本主義の化身としてのユダヤ人 199
与えられた民主主義
ブルジョア階級の社会的地位
ドイツのユダヤ人の特殊な地位
ユダヤ人とブルジョア階級の一体化
ユダヤ人の富と力
人種差別の必然性
「シオンの議定書」
本当の敵
悪魔の化身
ユダヤ人問題の「最終解決」
東ヨーロッパのユダヤ人
反フリーメーソンから反ユダヤ主義へ――イタリアの場合
なぜ冷酷になれるのか
大衆の意思
悪循環
5 組織がすべて 214
組織が秩序となる
「乞食がいない」
コミュニティの破壊
組織過剰
権力闘争と内務官僚
マルヌの戦い
不満なるがゆえの支持
地下抵抗運動の不発
夢幻と忘却を求める麻薬患者
神秘のうちの実体
6 指導者原理 224
無謬の存在
カリスマ性
信仰としての全体主義
後継者問題
崩壊の道筋
ウィーンの転向
悪夢のように消え去る
歴史の継続と断絶
いずこからともなく
自由と平等の追求
歴史の原動
第8章 未来 237
1 独ソ開戦への期待 238
道は二つに一つ
対独「宥和政策」の根本思想
独ソ同盟の危険
2 独ソの利害 241
ナチズムの敵は西にあり
共産主義の放棄
スターリンヘの個人崇拝
貧しいバルカン
バルカンへの持ち出し
独ソ間の利害の一致
ソ連が租界から学んだこと
日本の脅威
不可侵条約の必然性
スターリンの道
ローゼンベルクの弟子
ゲーリングのブレーントラスト
ラーテナウの門下
3 新しい社会 255
暗黒と絶望の時代に入るのか
「経済人」を超えて
第三の道
イギリスの経験
個人の自由と尊厳
社会政策の費用
年表――あの頃の歴史(第一次大戦から第二次大戦) [263-270]
人名索引 [272-276]
訳者あとがき(一九九七年四月 上田惇生) [277-278]
【メモランダム】
・続編。 The future of industrial man, (The John Day Company, 1942)。
邦訳『産業人の未来』(未來社、1965年)は、ダイヤモンド社から1998年に復刊。
産業人の未来 | 書籍 | ダイヤモンド社