編者:李 元範(1955-)
編者:櫻井 義秀(1961-)
著者:吉野 航一
著者:白波瀬 達也
著者:土屋 博
著者:李 賢京
著者:林 泰弘
著者:梁 銀容
著者:李 進龜
著者:猪瀬 優理
著者:申 光茢
著者:中西 尋子
NDC:162.1 宗教史、事情。
北海道大学出版会 越境する日韓宗教文化 [978-4-8329-6757-1] - 7,700円 :
【目次】
はじめに〔櫻井義秀〕 [i-xix]
1 問題の構成 i
日韓の文化交流
カルト問題から文化間葛藤の問題へ
文化の土着化と現在
宗教文化の越境
日韓宗教文化の越境
日韓宗教文化の共同研究
2 各章の内容 xi
第一部 「宗教文化」の理解と方法
第二部 韓国における日系新宗教
第三部 日本における韓国の新宗教・伝統宗教
第四部 日本における韓国のキリスト教
目次 [xxi-xxxii]
第一部 「宗教文化」の理解と方法 001
第一章 「宗教文化」の動態〔土屋博〕 003
一 宗教論と文化論――生成と推移 003
二 宗教と文化の交錯――「宗教文化」という着地点 012
三 宣教と伝播――「越境」の内実 018
四 結語 024
注 027
引用文献 029
第二章 日本における「韓流」と「癒し」の文化〔李元範〕 031
一 日本における「韓流」とは 031
二 日本における「韓流」の特徴 033
三 日本における「韓流」に対する諸解釈 037
四 日本における「韓流」と「癒し」 041
五 結論 046
注 049
引用文献 050
第二部 韓国における日系新宗教 053
第三章 韓国における日本の新宗教〔李元範〕 055
一 はじめに 055
二 韓国における宗教の現状 056
1 宗教人口の分布 056
2 信仰生活上の特徴 059
3 他宗教への態度 062
三 韓国における日系新宗教運動の現況 064
1 日系新宗教の分布 064
2 日系新宗教の信者構造 067
3 日系新宗教の信者の入信過程 069
四 韓国における日系新宗教の受容と文化的背景 073
1 宗教的理念志向の差別性 073
2 新宗教の受容と文化的背景 077
五 おわりに 079
注 081
引用文献 083
第四章 韓国における創価学会の展開〔李賢京〕 085
一 はじめに 085
二 韓国創価学会の展開 086
1 布教の開始 086
2 布教禁止と言語問題 087
3 組織統合の開始と宗門問題 089
4 日蓮正宗との完全分離と韓国SGIの誕生 090
5 組織の整備と対外活動の拡大 091
三 韓国創価学会の会員の特性 093
1 人口学的・社会経済的属性 094
性別
年齢
職業
収入
2 入信関連特性 097
入信動機
入信期間
入信後の変化
四 韓国創価学会の教勢拡大の要因分析 101
五 おわりに 105
注 106
引用文献 109
第五章 韓国天理教三世信者の信仰継承〔李賢京〕 111
一 はじめに 111
二 信仰深化過程と他者 112
三 天理教の概況と調査方法 114
1 韓国における天理教の布教史概況 114
2 韓国の宗教的背景と天理教の関わり 117
3 調査方法 120
四 三世信者の信仰深化過程の分析 121
1 三世信者の特徴――信仰の休眠状態の幼少時代 121
2 「教団外他者」からの影響 124
3 「教団内他者」からの影響 127
五 おわりに 132
注 134
引用文献 137
第六章 韓国新宗教の日本布教〔林泰弘・李賢京〕 143
一 韓国新宗教の定義と分類〔李賢京〕 143
1 韓国の新宗教とは? 143
2 新宗教の分類 144
二 韓国新宗教の展開と現況〔林泰弘・李賢京〕 145
1 韓国新宗教の展開 145
2 『韓国の宗教現況』に見る韓国新宗教の現況 147
三 日本における韓国新宗教の布教〔林泰弘・李賢京〕 149
1 天道教 149
2 甑山道 150
3 その他の教団 153
金剛大道
その他
四 まとめ〔林泰弘〕 154
注 155
引用文献 156
第七章 韓国円仏教の日本布教の現状と展望〔梁銀容〕 159
一 はじめに 159
二 円仏教の歴史と教勢 162
三 日本布教の現状と展望 167
四 むすび 171
注 172
引用文献 173
第八章 統一教会の日本宣教――日韓比較の視座〔李進龜(李賢京 訳)・櫻井義秀〕 175
一 日韓の認識における差異〔櫻井義秀〕 175
1 『統一教会』の刊行 175
出版と反響
統一教会に対する日韓の認識
2 本章の構成 181
二 韓国側からの問題提起〔李進龜〕 181
1 統一教会の出自と評価 181
2 統一教会の日本宣教 183
宣教第一期 一九五九‐七四年
宣教第二期 一九七五‐九一年
宣教第三期 一九九二‐二〇〇〇年
三 日本側からの問題提起〔櫻井義秀〕 189
1 日本の統一教会問題において問うべきこと 189
2 韓国のキリスト教と統一教会 190
韓国のキリスト教文化
韓国の新宗教運動と民族主義
3 統一教会の宣教戦略 194
日本の信者と社会層
擬装、ロビィイング、事業多角化
植民地時代の清算と罪意識
四 事実認識と展望〔櫻井義秀〕 201
本章の要約
統一教会の今後
暴発の可能性
社会問題継続の可能性
問題沈静化の可能性
注 206
引用文献 206
第九章 朝鮮学校教員家族における祖先祭祀の変容〔猪瀬優理〕 209
一 はじめに 209
1 本章の課題 209
2 在日コリアン社会とチェサ 210
3 在日コリアンと民族的アイデンティティ問題 211
4 チェサの変容と家族像の変容 212
二 朝鮮半島における葬祭儀礼の概要 215
1 儒教式の祖先祭祀 215
2 喪礼 216
3 祭礼 217
三 朝鮮学校教員家族におけるチェサ・葬儀 220
1 調査の概要 220
2 調査結果の概要 220
3 家族で行うチェサ 224
4 在日コリアン仏教寺院 227
四 考察と結論 229
注 232
引用文献 234
付記 236
第四部 日本における韓国のキリスト教 237
第一〇章 韓国キリスト教の日本宣教〔申光茢(李賢京 訳)・中西尋子〕 239
一 韓国キリスト教による日本宣教〔申光茢〕 239
日本宣教
宣教団体
短期宣教とメディア宣教
日韓の宣教協力
二 日本における韓国系キリスト教会〔中西尋子〕 244
調査の方法
韓国系の教団教派の諸教会
三 「単立/独立」の教会と日本の教団教派所属の教会〔中西尋子〕 248
教会類型による韓国系キリスト教会かどうかの判断
韓国系キリスト教会ではない可能性が高い教会
韓国系キリスト教会の可能性が高い教会
韓国系キリスト教会の概要
四 韓国系キリスト教会の地域分布、設立年、信者数〔中西尋子〕 256
地域分布
設立年
信者数
五 おわりに〔中西尋子〕 260
注 261
引用文献 264
資料1 韓国系の教団教派の教会 265
資料2 代表者が韓国人もしくは韓国語の礼拝を行っている教会 272
第一一章 韓国キリスト教の日本宣教戦略と「韓流」〔李賢京〕 281
一 はじめに 281
二 韓国キリスト教の海外宣教活動 282
1 韓国キリスト教の海外宣教が積極化した背景 282
2 日本における韓国系キリスト教会の概要 287
三 調査対象と分析視覚 290
1 調査の対象 290
2 分析の視覚 292
四 韓国系教会の日本人の獲得状況――「韓流」へのニーズと宗教的ニーズ 293
1 「韓流」を求める日本人たち 293
「韓流」のみを求めた事例
宗教的「救済」と「韓流」を求めた日本人信者たちの事例
2 宗教的「救済」を求める日本人信者 301
五 教会メンバーの複層化とその要因 307
1 複層化されたメンバーの類型 307
2 教会メンバーの複層化を促進する要因 310
六 おわりに――現代日本社会と韓国系キリスト教 312
注 313
引用文献 317
第一二章 在日大韓基督教会と韓国系キリスト教会の日本宣教〔中西尋子〕 321
一 はじめに 321
1 韓国キリスト教会の土着化 321
2 在日大韓基督教会と韓国系キリスト教会 323
3 比較にあたって 324
二 韓国プロテスタント教会の流入の背景 325
1 第一期――日韓併合による渡航者の増加と教会 325
2 第二期――韓国における海外渡航自由化とニューカマーの流入 328
三 大阪西成教会と大阪オンヌリ教会 331
1 大阪西成教会と大阪オンヌリ教会の信者数 331
2 大阪西成教会 332
概要
礼拝における言語
礼拝での日本語使用の推移
3 大阪オンヌリ教会 336
概要
在日韓国人、ニューカマー、日本人信者の割合
公式言語としての日本語
四 民族主義の教会と普遍主義の教会 339
1 在日大韓基督教会の民族主義的性格 339
韓国語使用を禁止された歴史 独立運動への言及
2 オンヌリ教会の普遍主義的性格 342
五 おわりに 345
注 346
引用文献 348
第一三章 沖縄における韓国系キリスト教会の展開――在日大韓基督教会沖縄教会と純福音沖縄教会を事例に〔吉野航一〕 351
一 はじめに 351
二 在日大韓基督教会沖縄教会の展開 353
三 純福音沖縄教会の展開 359
四 キリスト教信仰と沖縄の宗教文化――純福音沖縄教会の信者を事例に 367
五 おわりに 371
注 372
引用文献 375
第一四章 韓国キリスト教によるホームレス伝道〔白波瀬達也〕 377
一 はじめに 377
二 寄せ場、釜ヶ崎における韓国系プロテスタント教会の野宿者支援 378
三 東京都心部における韓国系プロテスタント教会の野宿者支援 382
1 地の果ての教会 383
2 東京中央教会 387
教会内外の合意形成
多様なサービスの提供
役割の提供
四 野宿者の支援を行う韓国系プロテスタント教会の特徴 391
1 支援方法と野宿者観 392
2 野宿者の減少に対する効果 393
注 394
引用文献 396
第一五章 ある韓国系教会のカルト化――聖神中央教会を事例に〔櫻井義秀〕 399
一 韓国系福音派・聖霊派教会 399
1 韓国系教会 399
2 教会のカルト化 402
3 韓国系教会の弟子訓練 404
二 ハラスメント事件と教会 406
1 ハラスメント 406
2 聖神中央教会 408
三 悪魔論に見る世界観と救済論 410
1 救済の分析方法 410
2 悪魔論 411
3 人間の堕落と救済 413
4 地獄 416
5 携挙 417
6 サタン・悪霊との戦い 418
7 神を欺くもの 419
8 従順と福音的信仰 421
9 ユニバーサリズムの時代における裁きと救い 423
四 教職者セミナーに見る宣教方針 424
1 教職者セミナー 424
2 宣教方法 425
3 信者すなわち伝道者 426
4 信仰と結婚 429
5 教説の特徴 430
五 宗教的言説の影響力 431
1 横浜裁判 431
2 牧師の否認と判決 433
六 キリスト教会の階層性と生活文化 435
1 聖神中央教会の社会的基盤 435
2 教会組織の共同体化 437
注 440
引用文献 440
おわりに〔櫻井義秀〕 443
1 日韓宗教文化の越境とは何か 443
宗教文化の移入と定着
韓国における日系新宗教の布教状況
日本における韓国の民族宗教文化の定着状況
日本における韓国系キリスト教会の定着状況
2 今後の宗教文化研究 453
宗教文化からポップカルチャーまで
東アジア宗教文化研究の課題
あとがき(二〇一一年九月一一日(東日本大震災から半年を経て) 李元範・櫻井義秀) [459-461]
索引 [5-8]
編者・執筆者紹介 [1-4]
【抜き書き】
・55頁から。
今日、グローバル化の流れは〔……〕。それは宗教多元主義(religious pluralism)を日常的かつ普遍的なものとして受け入れている現実を表している。宗教多元主義とは、他の宗教の世界観、価値観、道徳などを単純に認める慣用的な立場を超え、それらを積極的に受け入れる価値意識を持つことである。(1)
註(1) もちろん多元主義とは、本来、哲学的・認識論的意味として存在と対象を認識する見解が多数存在し、普遍妥当性を持った真理を認識する絶対的・客観的見解は存在しないということである。したがって、多元主義は社会科学の人間の思考と行為に対する認識と判断にあっての相対主義(relativism)と不可分の関係にあり、現代思想において逆らうことのできないパラダイムと認識されていると言える。