原題:Fonder la morale(1996)
著者:François Jullien (1951-)
訳者:中島 隆博[なかじま・たかひろ] (1964-) 東洋哲学、比較思想史。
訳者:志野 好伸[しの・よしのぶ] (1970-) 近代中国哲学、中国文学。
NDC:150.23 倫理学.道徳
備考:下記目次でルビは〔 〕に示した。
『道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ』(フランソワ・ジュリアン,中島 隆博,志野 好伸):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部
【目次】
日本の読者へ(二〇〇一年六月十五日 パリにて フランソワ・ジュリアン) [003-009]
訳者による序(中島隆博) [010-013]
目次 [015-020]
緒言 [023-025]
I 憐れみをめぐる問題 027
第1章 忍びざるものを前にして 028
1 ある王の逸話 028
なぜ羊ならよいのか
2 無関心であること 030
井戸に落ちそうになっている子供
親を埋葬する理由
3 仁と義の定義 034
道徳性の拡充
第2章 基礎づけか比較か――あるいは基礎づけのための比較 036
1 西洋における道徳の基礎への問い 036
神に権威づけられた道徳
懐疑論の展開
2 カントとニーチェ 041
ニーチェによる懐疑
3 マルクスとフロイト 046
4 中国との比較 048
なぜ中国か
比較から対話へ
第3章 憐れみの「神秘」 053
1 根源的憐れみの感情 053
憐れみの根源性
憐れみが広がる
2 ルソーの限界 057
憐れみに必要な想像力
憐れみは利己主義である
個人主義に囚われたルソー
3 ショーペンハウアーによる神秘化 063
神秘としての憐れみ
形而上学的な解決策
4 中国の道具立て 066
孟子の忍びざる反応個人横断的な存在
それは弱さではない
第4章 道徳心の徴候 073
1 カントによる道徳の基礎づけ 073
カントによる憐れみの放棄
なぜ道徳律を求めるのか
2 孟子の四端 080
四端
3 端緒から遡る 083
憐れみは範例か
孟子に内なる声はない
II 性と生について 091
第5章 人性論 092
1 孟子以前の性説 093
性=生
はじめての哲学論争
2 孟子の反駁 097
水の比喩
「内」の意味
3 天と性 102
孔子とソクラテス
天に根ざした本性
第6章 善か悪か 109
1 二者択一の論争 109
人間は悪か
2 荀子の性悪説 111
道具としての道徳
3 荀子の孟子回帰 115
道徳の社会的次元
荀子の孟子回帰
4 荀子とホッブス 120
欲望から定義する荀子とホッブス
契約の欠落
第7章 失われた性を求めて 127
1 失われた本性 127
カントとルソーの解決策
心で実感すること
2 今、塞がれている本性 131
失われた森の話
3 自明なる道徳性 135
本性を思え
道徳は当為ではない
おのずと得られる道徳性
4 理想的な便宜主義 141
便宜主義の肯定
「権」の重視
III 他者への責任 147
第8章 人間性、連帯 148
1 人間的(仁)であること 148
「人間」という不当な前提
仁と人間的であること
2 万物はわたしの中に備わっている 153
万物との関わり
痺れの比喩
3 道徳と政治 159
利と仁
政治的な道具の不在
第9章 天下を憂う 164
1 聖人の憂い 164
舜の憂い
2 この世を肯定する憂い 168
憂うる心の展開
3 この世に対する責任と神に対する責任 171
カント的な責任主体性と良心の呵責
IV 意志と自由 177
第10章 妄想的な意志? 178
1 意志は自明のものか? 178
中国における意志の欠如
意志は自明なものか
2 意志することと為すこと 183
選好も熟慮もない「志」
「できる」と「為す」
3 善をもたらす条件 189
選択肢の不成立
欲望を減らせ
4 悪は克服できるのか? 194
植物の発育というモデル
舜を殺そうとする弟
第11章 自由の観念無しに 200
1 自由に基礎づけられた道徳 200
中国における自由の欠如
自由な行為という先入見
2 道徳的価値観の超越性と「ほとんどない」違い 207
尊厳と平等
人間と動物の違い
3 二元論を越えて 212
カントの二元論のゆくえ
二元論を知らない孟子
心も一つの器官である
V 幸福と道徳の関係 223
第12章 正義は地上に存す 224
1 地上の報い 224
徳は幸福にならないという二律背反
神なき地上に正義は存す
2 仁は利に優る 230
徳があれば得るものがある
利を語れば国は滅びる
3 徳の効力 235
君子の徳は風のように伝わる
王の誘引する力
4 不可避的な成功 240
熟した果実
第13章 地は天に肩を並べる 244
1 仁徳による勝利 244
カントとマキャベリの両立
容易な勝利
2 王朝の創設 250
始まりの徳
3 地上の天 254
天吏としての王
乱も天の中
4 民は天を代弁する 260
民に尋ねよ
第14章 これは中国的教理〔カテキスム〕ではない 265
1 孟子の後退 265
悪を患わない
孟子のストア的後退
2 ストイシズムの幸福 273
内面的な平静
3 憂患に生き、安楽に死す 278
天への懐疑
天が与える試練
第15章 道徳心は無制約者(天)に通じる 286
1 心を尽くして天に事える 286
自由と形而上学
本性から天へ
2 個別性を越えて広がる 294
気を広げる
3 内在の果ての超越 298
自然な超越
注 [304-308]
訳者解題――存在と道徳への問い直し(二〇〇二年三月二十四日 東京 訳者を代表して 中島隆博) [309-334]
解題(二〇一七年七月 金沢にて 中島隆博) [335-357]
一 ポスト世俗化の時代に
二 弱い規範
三 普遍化すること
四 孟子ルネサンス
五 二〇〇〇年以降のジュリアンの著作
訳者解説コラム1 経験と理性 044
訳者解説コラム2 内在と超越 108
訳者解説コラム3 実定性と天与のもの 121
訳者解説コラム4 自由と決定論(可知的と可感的) 216
訳者解説コラム5 無制約者と天 291