著者:廣野 由美子[ひろの・ゆみこ](1958-) 英米文芸構造論(イギリス小説)。
装幀:水戸部 功
校閲:髙松 完子
DTP:山田 孝之
NDC:930.268 18-19世紀英米文学史(作家の個人伝記[作家研究])
件名:Austen, Jane, 1775-1817
NHKブックス No.1246 深読みジェイン・オースティン 恋愛心理を解剖する | NHK出版
【目次】
プロローグ [003-010]
ジェイン・オースティンを「深読み」すること
「認知の歪み」とは何か
恋愛小説への認知的アプローチ
目次 [011-015]
第1章 作家と作品――オースティンの〈スキーマ〉を探る 017
1 作家の人生――「喪失」と「価値の剝奪」の痕跡 017
謎の多い人生
単調な人生経路
「喪失」と「価値の剝奪」によって形成された〈スキーマ〉
2 「制限」の文学――〈スキーマ〉を乗り越えて 033
オースティンの芸術理念
「二インチの象牙」にすべてをこめて
ミニマリズムとミステリー性
オースティンの「自分だけの部屋」
第2章 平凡な女の冒険――『ノーサンガー・アビー』048
◆あらすじ
作家の死後出版された初期作品
1 ヒロイン願望――「私は平凡」というスキーマ 054
アンチヒロイン
ロマンス願望――ドン・キホーテ的遍歴
2 本当は怖い『ノーサンガー・アビー』――虚構と現実の認識のずれ 066
自国の現実が見えていないミーハー
誘拐・拉致もどき
ヒロインの放逐――ティルニー将軍の正体とは
3 幻想から現実へ――ハッピー・エンド、だけど片思い 077
失恋、そして片思い
脱ヒーロー
新しいヒロインの誕生
第3章 耐える女の報酬――『分別と多感』 086
◆あらすじ
勝利するのは「分別」か「多感」か?
1 「裁断する」ことと「比べる」こと――「多感」への眼差し 089
監視者・裁断者としてのエリナ
妹との比較
「私はお手本」という〈スキーマ〉
2 「軽蔑」を糧とするエリナ――恋敵との戦い 100
喪失体験と悲しみ
怒りと自己憐憫、そして軽蔑
ルーシーとの対決
姻戚の襲撃に耐える
エリナの邪推
3 「分別」はいかに失われるか――エリナの臨界点 118
エドワードをめぐるミステリー
分別を失うエリナの物狂おしさ
忍耐の報酬
第4章 賢い女の野望――『高慢と偏見』 134
◆あらすじ
エリザベスの〈スキーマ〉
1 〈スキーマ〉の形成――「私は成上り」 138
ぎくしゃくした母娘関係
安心感の欠如
父によって焚きつけられた野心
エリザベスがもって生まれたもの
2 エリザベスは「成上り」に対してどう振る舞ったか――二人の求愛者 156
ウィッカムとコリンズの共通点
コリンズに対する軽蔑――低レベルの「成上り」への嫌悪感
ウィッカムとの恋の戯れ――「成上り」との共謀
傷つかなかったプライド
ウィッカムはどの程度出世したのか
3 ダーシー獲得への道――〈スキーマ〉の痕跡 171
〈スキーマ〉から生じた「偏見」
戦略としての「偏見」
打ち砕かれた「虚栄心」とその蘇り
愛の目覚めと「成上り」としての勝利
第5章 おとなしい女の正体――『マンスフィールド・パーク』 189
◆あらすじ
「おとなしい女主人公」の造形
1 ファニーはイノセントか?――悪の観察者 195
不義の発覚――サザートン訪問
芝居の観客は何を見たか
2 押し込められた情念――失恋・嫉妬を描く 204
恋はいつ芽生えたか
最初の失恋
恋敵への憎悪
3 ファニーは俗物か?――家族・環境の問題 218
家族への失望
貧困への生理的拒絶感
ファニーの世俗性
作者の戦略
ファニーは怪物?
第6章 わがままな女の錯誤――『エマ』 €30
◆あらすじ
誤解の反復パターン――ミステリー仕立てのテキスト
1 「高慢」による錯誤――エルトンをめぐる誤解 236
誤解の表層――思い込みと解釈の片寄り
誤解の深層――階級意識
2 「偏見」による盲点――フランク・チャーチルをめぐる誤解 244
誤解の原因――虚栄心と嫉妬
フランクとジェインの密会
秘密の手紙
謎を解くナイトリー
3 「私は正しい」という〈スキーマ〉――ナイトリーをめぐる誤解 262
誤解の原因
根本原理の崩壊と目覚め
技巧の功罪
第7章 あきらめられない女の夢想――『説得』 275
◆あらすじ
オースティンの変化の兆し
1 隠された過去――語り手による隠蔽 280
影の薄い女主人公
曖昧な過去
2 蘇る想い――情報の制限と意識の流れ 286
視野の制限
曖昧な語り
3 失われた時を求めて――隠されているものは何か 298
時の力とは何か
「正しいか間違いか」を超えて
参考文献 [305-311]
作品
書簡集
関連文献
エピローグ(二〇一七年(オースティン没後二〇〇年)三月 廣野由美子) [312-318]