著者:松尾 匡
装幀:芹澤 泰偉
装幀:児崎 雅淑
NDC:331 経済学.経済思想
NDC:333 経済政策.国際経済
ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 | 松尾匡著 | 書籍 | PHP研究所
【目次】
まえがき [003-006]
経済学の巨人たちの共通点とは
目次 [007-016]
第1章 30年続いた、経済政策の大誤解 017
「小さな政府」の二つの路線の行き詰まり
1970年代までの世界の見取り図
国が経済に介入する体制が行き詰ったわけ
「小さな政府」路線の誤解
「資本vs労働」の国家予算をめぐる攻防
転換に抵抗した旧左翼と転換を誤解した「第三の道」
1970年台からの「転換X」への誤解が、現在の混乱を招いている
注 032
第2章 ソ連型システム崩壊が教えてくれること――コルナイの理論から 035
ソ連型システムとはどんなんものだったのか
「ソ連では競争がなかったからみんな怠けた」は間違い
ソ連型システムが崩壊した理由は慢性的な不足経済
経営者が責任を取らないシステムが混乱を生んだ
福島第一原発事故の「失敗の本質」
日本型株式会社=無責任経営!?――「そごう問題」の例
リーマンショックはソ連崩壊と同じ原理で起きた
沿岸漁業が漁業者の「自己経営」である合理的理由
労働運動や住民運動の必要性
生協・労働者管理企業・医療法人が存在するわけ
注 066
第3章 一般的ルールか、さじ加減の判断か――ハイエクが目指した社会とは 071
ケインズと対立した自由主義の巨匠・ハイエク
ハイエクの「社会主義経済計算論争」の骨子
「事件は現場で起きている!」というハイエクの主張
ハイエク的な国家の役割とは何か
「前もって決まっている形式的ルール」を提唱したハイエク
判決の積み重ねで自然と決定されるルール
ハイエクの望む競争社会の姿
国家の役割は民間人の予想を確定すること
役所を民間企業のようにせよ、という大きな誤解
注 093
第4章 反ケインズ派のマクロ経済学者たちの革命――フリードマンとルーカスと「予想」 095
反ケインズ革命の旗手・フリードマン
ケインズ派とフリードマンの主張の違いとは
ケインズ政策批判の要点=インフレ予想を加速させる
フリードマンも「不況下の金融緩和は必要」としていた
ノーベル経済学賞・ルーカスの「合理的期待」革命とは
経済学に大きな変化をもたらしたルーカスの「島モデル」
モデルが政策無効となるカラクリ
「合理的期待」と景気対策が効くかどうかは関係ない
合理的期待が説明する「バブル」のメカニズム
注 122
第5章 ゲーム理論による制度分析と「予想」――日本型雇用がとらわれたわけを題材に 125
画期的手法「ゲーム理論」の起こり
ゲーム理論の発展から導かれた「制度」の研究
青木昌彦らの「比較制度分析」
欧米企業と日本企業で求められるスキルが異なる
「企業特殊的技能」を身に着けさせるためのしくみ
日米企業文化の違いは「ゲーム理論」で読み解ける
多数者の戦略に合わせると制度は再生産される
「あなたが不幸になったのは自己責任」という論が間違っているわけ
日本型システムは何故終わりを迎えているのか
企業別労働組合と「スーパー人事部」の存在理由
日本で株式持ち合い・メインバンク・行政指導が広まったのはなぜか
マグリブ型システムとジェノア型システムの制度モデル
「男は働き女は家庭を守る」をゲーム理論で説明すると
注 161
第6章 なぜベーシックインカムは左右を問わず賛否両論なのか――「転換X」にのっとる政策その1 163
政府は「人々の予想を確定させる」役割を担うべし
転換Xにのっとった政府の役割とは
右にも左にも賛成者と反対者がいる「ベーシックインカム議論」
労働と所得は切り離さない
ベーシックインカムによって、社会福祉が減らされる?
行政担当者個人の判断が要らないのが本質
ベーシックインカムがあれば安心して企業できる
現行の「措置制度」支持者からのベーシックインカム批判
あまりにもひどい生活保護の判定システムの実情
現行の措置制度では「リスク・決定・責任」がずれる
ベーシックインカム導入で、景気を自動的に安定させる力が作用する
ベーシックインカムがあれば「逃げる」だけで世の中がよくなる?
「何も決めなくていい」のが一番の長所かつ限界
注 189
第7章 失業とたたかう「ケインズ復権」と「インフレ目標政策」――「転換X」にのっとる政策その2 193
ケインズ政策は経済成長が前提だって?
「成長しない社会」をそもそも想定していたケインズ
ケインズ死後の「物価が下がらない」という解釈
「価格」に対する見方が陣営を分けた時代
デフレは不況の悪化を招く
「流動性のわな」が起きると、デフレが人々の予想に組み込まれている
デフレがデフレを呼び、インフレがインフレを呼ぶスパイラル
ノーベル経済学賞・クルーグマンが提唱した「インフレ目標」
構造改革派vsリフレ派の時代
「流動性のわな」モデルはみなインフレ目標政策と両立する
インフレ目標政策時代の労資の政策対抗
ナチスの完全雇用実現の教訓を思い出せ
注 231
第8章 「新スウェーデンモデル」に見る、あるべき福祉の姿――「転換X」にのっとる政策その3 235
「第三の道」と呼ばれた、ブレア政権の社会政策
「新スウェーデンモデル」は「第三の道」か?
新スウェーデンモデルは「大きな政府」である
金融緩和で雇用を増やしたスウェーデンの社民党時代
NPOや協同組合を公的資金で支えるのが政府の役割
なぜ社会サービスの担い手はNPOや協同組合がふさわしいのか
「効率」の名のもとの非効率とは
新スウェーデンモデルで重要なのは個人の参加
実質的に当事者のさまざまな意見を汲み上げることが重要
リーダーに決定と責任が集中するフェーズとその終わり
リーダー主導と一般当事者合議の繰り返しを通じて
注 262
終章 未来へ希望をつなぐ政策とは 269
左派の側からの「転換X」にのっとる政策
ルールとしての政策には、世界的なすり合わせが必要
これまでの誤解を解く合理的な政策配置はこれだ
注 280
あとがき(二〇一四年一〇月 松尾匡) [282-286]