原題:Refuge: Rethinking Refugee Policy in a Changing World (Oxford University Press, 2017)
著者:Alexander Betts(1980-)
著者:Paul Collier(1949-)
監修者:滝澤 三郎[たきざわ・さぶろう](1948-) 〔序章、第1章〕 難民問題、日本の難民政策。
監訳:岡部 みどり[おかべ みどり] 〔第3章、第8章〕国際関係論、人の国際移動研究、地域統合 (主にEU) 研究。
監訳:佐藤 安信[さとう やすのぶ] 〔第2章、第5章〕UNHCR法務官、UNTAC人権担当官、EBRD弁護士。
監訳:杉木 明子[すぎき あきこ] 〔第4章、第6章〕国際関係論、 現代アフリカ政治。
監訳:山田 満[やまだ みつる] 〔第7章、第9章〕国際関係論、国際協力論、平和構築論。
訳者:金井 健司[かない けんじ] 〔第7章〕University College London 経済学修士課程在学中。
訳者:佐々木 日奈子[ささき ひなこ] 〔第1章〕2023年秋よりコロンビア大学国際公共政策大学院に進学予定。
訳者:須藤 春樹[すとう はるき] 〔第5章〕東京大学大学院経済学研究科修了(経済学修士)。 現在、日系金融機関に勤務。
訳者:春 聡子[はる さとこ] 〔第2章〕国際基督教大学修士。国際関係学、政治思想、人権問題。
訳者:古川 麗[ふるかわ うらら] 〔第8章〕東京大学総合文化研究科博士課程。 国連難民高等弁務官事務所。
訳者:松井 春樹[まつい はるき] 〔第4章〕弁護士(森・濱田松本法律事務所)。
訳者:松本 昂之[まつもと たかゆき] 〔第3章〕サセックス大学大学院修士課程。
訳者:宮下 大夢[みやした ひろむ] 〔第9章〕博士 (社会科学)。 国際関係論、平和紛争研究、 国際協力論。
訳者:山本 剛[やまもと つよし] 〔第6章〕国際関係論、国際協力論。
装丁:清水 肇[しみず・はじめ](1967-) (有) prigraphics
難民の国際的保護制度は、1951年の難民条約とUNHCRに基礎を置くが、その制度は「迫害」から逃げる人々が念頭にあり、内戦や暴力による「命への危険」から逃げる人々に対処できていない。また、貧困・失業から逃れる経済移民が難民制度を利用することにも対応できない。
他方で、開発途上国に残る90%の難民は忘れられている。最も脆弱な人々である残された難民は、自由のない難民キャンプで教育も受けず仕事がないまま何年も何十年も過ごすことになる。
本書では、90%の難民の留まる周辺国で、難民に就労機会と教育を提供することで難民の自立を推進することを提唱する。
難民の自助努力を支援するアプローチ、受け入れ社会への貢献、さらには出身国の再建を可能にするオルタナティブなビジョンをA.ベッツとP.コリアーという著名な専門家が提示した重要な1冊。
【目次】
日本語版への序文(オックスフォード、2023年3月31日 アレクサンダー・ベッツ) [003-011]
監修者まえがき(訳者を代表して 2023年3月31日 滝澤三郎) [012-015]
目次 [016-019]
図表 [020-022]
この本を書いたきっかけ [023-027]
イントロダクション 029
避難の目的
壊れてしまったシステム
新しいアプローチの必要性
第I部 なぜ危機は起こるのか
第1章 世界的な混沌 045
何が強制移動や外国への避難をもたらすのか
なぜ脆弱性は増加しているのか
「相互確証破壊」の終わり
民主主義的平和
私たちにはできる
資源ブーム
イスラム過激派
集団暴力の現実化
避難するという選択肢
避難所
第2章 難民制度の変遷 067
冷戦時ヨーロッパの難民制度
ヨーロッパ中心主義のグローバル化
1951年難民条約の沈黙
誰が難民とみなされるべきか?
見つからない保護提供者――誰が負担すべきか
見つからないモデル――なぜ難民キャンプは不十分なのか
UNHCRと21世紀
危機と改革への機会
第3章 大混乱 099
危機の火種――シェンゲン体制
火花
ローマでの幕開け
シリアへの飛び火
シリア難民危機の第一段階(2011年~2014年)――心なき頭
シリア難民危機の第二段階(2014年11月~2015年8月)――新たなランペドゥーザ
シリア難民危機の第三段階(2015年9月~2015年12月)――頭なき心
シリア難民危機の第四段階(2016年1月~)――心なき頭の復活
現在までの整理
第II部 再考
第4章 倫理を再考する――救済の義務 143
難民を救済する義務
心の第一原則――思いやり
頭の原則――比較優位と負担分担
心の第二原則――国際的連帯
高所得国の倫理的なジレンマ
頭なき心のもたらす悪影響
移住の権利はあるのか
取り残された人たちの人権
心の第三原則――必要性
なぜ選別が重要か
統合する権利と義務
暫定的な小括
第5章 避難所を再考する――すべての人に手を差し伸べる 179
なぜ「出身国への近さ」が最も重要であるのか
人道的サイロの失敗
都市難民の放置
開発の機会としての難民
中米のサクセスストーリー
お互いに得をする機会
第6章 難民支援を再考する――自立を回復するために 215
難民の経済生活
ウガンダ例外主義
自立の影響
繁栄するか生き延びるか?
ヨルダンはウガンダではない
別のアプローチ
ヨルダン・コンパクト
難民のためにグローバリゼーションを活用する――どう機能させるか
グローバルなプロトタイプとは?
難民問題を超えて
第7章 紛争後を再考する――復興の促進 245
なぜ復興が重要なのか
紛争後のリスク軽減
復興の促進
回復を遅らせる
第8章 ガバナンスを再考する――機能する制度とは 267
目的を再考する
責任を再考する
法の限界
地域主義のリフレーミング
実践的なパートナーシップ
国家(政府)を超えて
多国間主義を超えて
人道主義を超えて
組織を再考する
改革プロセス
第III部 歴史を変える
第9章 未来への回帰 297
シリア難民危機の再現
世界を取り巻くその他の危機
私たちのアプローチの明確化
未来の再生
注釈 [309-323]
索引 [324-331]
著者・訳者紹介 [332-334]