原題:Environmental Justice: Creating Equality, Reclaiming Democracy (Oxford University Press, 2002)
著者:Kristin Shrader-Frechette(1944-)
監訳:奥田 太郎[おくだ・たろう] 博士(文学)。 現在, 南山大学社会倫理研究所教授。
監訳:寺本 剛[てらもと・つよし] 中央大学大学院文学研究科博士後期課程修了。 博士 (哲学)。
監訳:吉永 明弘[よしなが・あきひろ] 千葉大学大学院社会文化科学研究科修了。博士(学術)。
訳者:山本 剛史[やまもと・たかし] 慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。現在,慶應義塾大学教職課程センター他非常勤講師. 序文・謝辞
訳者:熊坂 元大[くまさか・もとひろ] 第1章 一橋大学社会学研究科修了(博士: 社会学). 現在, 徳島大学大学院社会産業理工学研究部准教授.
訳者:宮崎 文彦[みやざき・ふみひこ] 第2章 東京工業大学社会理工学研究科価値システム専攻博士課程単位取得満期退学(博士: 公共学).
訳者:田中 さをり[たなか・さをり] 第3章 千葉大学大学院自然科学研究科情報科学専攻博士後期課程単位取得満期退学(博士: 学術). 現在, 千葉大学大学院工学研究院特任研究員.他,編集・文筆業を営む.
訳者:竹中 真也[たけなか・しんや] 第4章 中央大学大学院文学研究科博士後期課程修了 (博士: 哲学),現在, 中央大学兼任講師。
訳者:齊藤 宣之[さいとう・よしゆき] 第5章 中央大学大学院文学研究科博士後期課程修了 (博士: 哲学). 現在, 中央大学文学部兼任講師, 日本大学大学院総合社会情報研究科非常勤講師.
訳者:青田 麻未[あおた・まみ] 第6章 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(博士: 文学). 現在, 日本学術振興会特別研究員PD (成城大学).
訳者:猪口 智広[いのくち・ともひろ] 第7章 東京大学大学院学際情報学府博士課程在学中.
訳者:佐藤 麻貴[さとう・まき] 第8章 東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了 (博士 グローバル研究). 現在, 東京大学教養学部東アジア藝文書院 (EAA) 特任准教授.
訳者:寺本 剛[てらもと・つよし] 第9章
装丁:ル・アートワタベ
NDC:519.5 環境工学・公害
【目次】
序 [i-iv]
謝辞 [v-vi]
目次 [vii-x]
凡例 [xi]
地図 [xii]
第1章 序論 001
環境保護主義と生命中心主義 002
環境保護主義から環境正義へ 005
環境不正義を理解する 007
本書の概要 029
第2章 分配の正義、参加の正義、当座の政治的平等の原則 035
概要 036
〈当座の政治的平等の原則〉と分配の正義 037
〈当座の政治的平等の原則〉と参加の正義 042
〈当座の政治的平等の原則〉に対する反論 045
〈当座の政治的平等の原則〉に対する功利主義からの反論
〈当座の政治的平等の原則〉に対する経済学からの反論
〈当座の政治的平等の原則〉に対するテクノロジーを根拠とした反論
配慮なき科学の使用がいかに環境不正義を助長しているか 054
立地をめぐる連邦統制と地方統制の対立――公平性と効用の釣り合いをとる 059
集権的な意思決定 対 草の根の意思決定
戦争遂行権限、専有、州際通商、土地収用権
事例研究 066
海洋エネルギー技術の規制
海洋エネルギー技術に関する補償されない三つの現地コスト
査定において現地コストを算定せずにおくこと
負の影響に関する価値判断
特定の場で生ずる不平等を無視したことの帰結
結論 077
第3章 アパラチア地方の人々、土地へのアクセス、手続き的正義 079
概要 080
第一の議論の舞台:カリフォルニア州の農家 082
環境不正義のもう一つの事例:アパラチア地方の農家 087
手続き的正義と結果状態原理 089
手続き的正義を根拠として資源の所有権の制限を擁護する議論 090
資源取引、自発性、そしてロック的但し書き 091
土地の財産権を制限するための提案 101
土地利用規制論に対する反論 103
資源の所有権を制限することについての第二の擁護論 105
第二の擁護論に対する反論 108
結論 112
第4章 アフリカ系アメリカ人、現地不承諾土地利用、自由なインフォームド・コンセント 115
コールマン師とサウスサイド 115
概要 120
事例研究:ルイジアナ州ホーマー 121
ルイジアナ州への設置は倫理的に正当なものではなかった 125
自由なインフォームド・コンセント
ルイジアナ・エナジー・サービス社による、自由なインフォームド・コンセントの侵害
平等な待遇と補償とを受ける権利の侵害
反論と応答:環境面で公正なエネルギー政策 139
反論と応答:当該工場に対する経済的なニーズはない 150
追記 153
第5章 公平性と将来世代に対する義務――ユッカマウンテンの事例 157
概要 158
平等な待遇を支持する当座の論拠 159
功利主義に基づく反論 160
将来世代に対する義務 166
同意と将来の人々 174
将来の人々のための正義に影響を与える実践的・法的な考慮事項 188
結論 193
第6章 先住民の人々とパターナリズムの問題 195
植民地主義と先住民に対する搾取:シェルオイル社の事例 197
概要 202
パターナリズム、同意、参加の正義 204
メスカレロ・アパッチ族、パターナリズム、廃棄物処理 208
環境正義とメスカレロ族 212
地理的な不平等、分配の正義、メスカレロ族 216
放射性廃棄物問題の歴史 217
放射性廃棄物問題に関連する科学 220
結論 222
第7章 リスクのある労働環境、ダブルスタンダード、正当な補償 225
概要 227
ダブルスタンダード 228
歴史的背景 229
補償賃金格差理論 232
補償賃金格差理論の論拠:〈福利論〉
補償賃金格差理論の論拠:〈市場効率論〉
補償賃金格差理論の論拠:〈自律論〉
補償賃金格差理論の論拠:〈搾取回避論〉
補償賃金格差への反対論 248
補償賃金格差は存在しないかもしれない
補償賃金格差を受け入れることは無辜の人々を傷つけうる
補償賃金格差と一貫性のないリスク態度
事例研究:六〇万人の米国エネルギー省労働者 255
〈福利論〉と原子力作業員
〈市場効率論〉と原子力作業員
〈自律論〉と原子力作業員
〈搾取回避論〉と原子力作業員
結論と代替案 272
第8章 途上国、保護の平等性、道徳的英雄主義の限界 275
概要 278
社会の進歩論法 280
血まみれのパン論法 282
安全に対する権利の侵害とミル
有害技術は有益か?
同意論法とそれに対する道徳的応答 289
経済の現実論法とそれに対する道徳的応答 296
環境正義に対する市民の責任 300
能力に応じた責任
共犯による責任
自分を大切にする責任
結論 309
第9章 行動を起こすこと――環境不正義に対する公衆の責任 311
概要 311
環境正義の擁護者になること 313
偏った社会条件 314
政府のバイアス
産業界のバイアス
学術界のバイアス
客観性、中立性、バイアスへの対応
環境正義の擁護活動を支持する帰結主義的論拠 329
環境正義の擁護活動を支持する義務論的論拠 332
環境正義の擁護活動が制限される場合 333
具体的なステップ:非政府組織と協働する 341
結論 346
監訳者あとがき(二〇二二年初春 監訳者一同) [349-353]
原注 [25-97]
訳注 [16-24]
地名索引 [14-15]
人名索引 [10-13]
事項索引 [4-9]
訳者一覧 [2-3]
【抜き書き】
・「監訳者あとがき」から。
本書を一言で説明するなら、二一世紀に差し掛かる一〇年間に北米において展開した環境倫理をめぐる動きのなかでも中核となる「環境正義」について、関連諸領域に広く関わる様々な実証データと政治哲学・倫理学的な研究蓄積を縦横に駆使して、地に足のついた筆致でその内実を理論的に解明した、 記念碑的な応用倫理学の研究書である、ということになろう。
〔……〕
さて、ごく簡単に本書の構造を提示しておくと、本書全体の内容を概説した第1章の後、鍵となる基本的な理論的枠組みが示される第2章が続き、さらに、第3章から第8章にかけて、実際に生じている具体的な環境不正義の問題が、一つずつ丁寧に分析されていく。そして、すべての章を読み終え本書を閉じた後に読者一人ひとりがどのような態度をとるべきか、つまり、環境正義の擁護者になるための指針が、結びの第9章で示される。