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『臨床心理学における科学と疑似科学』(Scott O. Lilienfeld, Steven J. Lynn & Jeffrey M. Lohr[編] 厳島行雄,横田正夫,齋藤雅英[監訳] 岡部康成ほか[訳] 北大路書房 2007//2003)

原題:Science and Pseudoscience in Clinical Psychology (Guilford Press, 2003)
編者:Scott Owen Lilienfeld(1960-2020) 
編者:Steven Jay Lynn(1946-2024) 
編者:Jeffrey Mark Lohr(1946-2021) 
寄稿:Carol Tavris(1944-) 
著者:Howard N. Garb 
著者:Patricia A. Boyle
著者:John Hunsley 
著者:Catherine M. Lee 
著者:James M. Wood 
著者:Joseph T. McCann 
著者:Kelley L. Shindler 
著者:Tammy R. Hammond Natof
著者:John P. Garske
著者:Timothy Anderson
著者:Margaret Thaler Singer
著者:Abraham Nievod
著者:Timothy G. Locke 
著者:Elizabeth F. Loftus 
著者:Elisa Krackow 
著者:Wayne Hooke
著者:Richard Gist
著者:David F. Tolin
著者:James MacKillop 
著者:Stephan A. Lisman
著者:Allison Weinstein
著者:Deborah Rosenbaum
著者:Harald Walach 
著者:Irving Kirsch 
著者:Daniel A. Waschbusch 
著者:G. Perry Hill
著者:Raymond G. Romanczyk
著者:Laura Arnstein
著者:Latha V. Soorya
著者:Jennifer Gillis
著者:Gerald M. Rosen 
著者:Russell E. Glasgow 
著者:Timothy E. Moore 
著者:Nona Wilson
監訳:厳島 行雄(1952-) 監訳,01章,16章
監訳:横田 正夫(1954-) 監訳,緒言,04章,08章
監訳:斎藤 雅英(1966-)  監訳,07章,13章
訳者:岡部 康成(愛媛女子短期大学 講師) 02章,05章
訳者:篠竹 利和 (日本大学文理学部 准教授) 03章,06章,09章
訳者:伊藤 菜穂子 (日本大学文理学部 助教) 10章
訳者:室井 みや (群馬大学教育学部・講師) 11章~14章
訳者:工藤 多恵 (金城学院大学現代文化学部・講師) 15章
カバーデザイン:下谷 純代
件名:臨床心理学
NDC:146 臨床心理学.精神分析
NDLC:SB231
メモ:翻訳がまずい(誤訳が多いのと、ごやくでない箇所も全体的に日本語としてぎこちない)。あと校閲・校正漏れも多い。


臨床心理学における科学と疑似科学 - 北大路書房 心理学を中心に教育・福祉・保育の専門図書を取り扱う出版社です


第二版が2014年に刊行。表紙には「2nd ed.」と書かれていないが。


【目次】
編者について [/]
緒言 科学者―実践家のギャップの広がり:架け橋からの視点(Carol Tavris) [i-x]
序文(スコット・O・リリエンフェルド スティーブン・ジェイ・リン ジェフェリー・M・ロー) [xi-xii]
目次 [xiii-xvii]


第1章 臨床心理学における科学と疑似科学:思考の出発点,展開,改善策 001
  科学者-実践家の溝とその源 002
  過度の開明派と過度の懐疑派の間での妥協案 003
  なぜ疑似科学的な技法が害を与える可能性を持つのか 004
  科学と疑似科学の差異:入門 005
  問題を処理する建設的な努力 010
  本書の到達点 011


  第I部 評価と診断における論争 

第2章 臨床家が疑似科学的手法を用いる理由:臨床的な判断に関する研究からの知見 015
  臨床経験や訓練の真価 016
    経験の豊富な臨床家と経験の劣る臨床家
    臨床家と大学院生
    大学院生の縦断的変化
    臨床家や大学院生の判断と素人の判断
    経験のある特別な訓練を受けた臨床家
    まとめと議論
  経験から学ぶことの障壁 022
    判断における認知プロセスと認知的誤り
    臨床実験でのフィードバックの性質
  まとめと議論 028
  用語解説 030


第3章 論争の的になる疑わしい査定技法
  心理検査 033
  検査構成と精神測定原理 033
  査定技法の妥当な使用と妥当でない使用の特徴:あるいは,検査が検査でないとき 035
  問題があり疑わしい評価技法:いくつかの例 036
  ロールシャッハテスト 037
    標準化
    基準
    信頼性
    妥当性
    結論
  主題統覚検査 043
    標準化と基準
    信頼性と妥当性
    結論
  投映描画法 046
    標準化と基準
    信頼性と妥当性
    結論
  解剖腑分け人形[ADD] 049
    標準化と基準
    信頼性と妥当性
    結論
  マイヤーズ・ブリッグズのタイプ指標 054
    標準化
    基準
    信頼性と妥当性
    結論
  結論と提案 057
  用語解説 058


第4章 専門家証言の科学と疑似科学
  法廷における科学的証拠の許容性 061
    法的規範
      ◆フライテスト
      ◆連邦証拠法[Federal Rules of Evidence]
      ◆ドーバート基準[Daubert standard]
      ◆ドーバート後の裁定
      ◆さまざまな裁判権にわたる許容性の基準
    専門家証言の職業的規範
  専門家証言の一般的領域 069
    心理検査と査定
    暴力行為の予測
    目撃証言
    バタードウーマン[Battered woman (syndrome)]
    レイプトラウマ症候群
  異論のある症候群と診断 077
    依存症[sexual addiction]
    同性愛パニック[homosexual panic]
    ブラックレイジ[brack rage]
    ロードレイジ[road rage]
    月経前不快気分障害
    性的倒錯強制障害
    共依存[codependency]
    代理による虚偽性障害[factitious disorder by proxy]
    新生児殺し/幼児殺し症
    小児の性的虐待適応症候群[child sexual abuse accommodation syndrome]
  現存する基準のもとでの適切および不適切な専門家証言の同定 085
  用語解説 086


第5章 解離性同一性障害:多重人格と複雑な論争
  解離性同一性障害:歴史の概略 089
    解離性同一性障害に対する初期の概念
    解離性同一性障害の大流行の始まり
  解離性同一性障害:記述的特徴と関連 091
    主要な診断的特徴
    人口統計や家族歴との関係
    交代人格
    「多重人格」に関する論争
  病因:競合する2つのモデル 094
    解離性同一性障害の「実在」:疑似的論争
    論争の核心:病因に関する2つの競合するモデル
      ◆心的外傷後モデル
      ◆社会的認知モデル
  解離性同一性障害の社会的認知モデルを支持する証拠 100
    典型的な治療業務
    心理療法の前後の解離性同一性障害患者の臨床的特徴
    臨床家間の症例の分布
    ロールプレイング研究
    比較文化研究
    まとめ
  病因:幼児虐待論争 107
    虐待報告の確証
    幼児虐待と解離性同一性障害の関連についての解釈
    まとめ
  結論 113
  用語解説 116
  謝辞 117


  第II部 心理療法における一般的な論争

第6章 科学的心理療法研究:現況と評価
  定義と専門用語 122
  効力と効果 124
  心理療法の効果と効力研究の参入 126
  否定的結果 129
  研究を意味あるものにする方法:メタ分析 130
  プラセボ統制と共通因子 132
  疑似専門家の治療と経験的支持のある治療 134
  影響力を発揮する心理療法家とそうでない心理療法家 137
  効果研究 140
  科学的な心理療法研究のすすめ 142
  結論:心理療法の科学は可能か? 144
  用語解説 146


第7章 ニューエイジ療法
  ニューエイジ療法評価の基盤としての説明責任 148
  「第3の革命」 150
  ニューエイジ療法の歴史的な文脈 152
  「どこに行っても,あなた自身がいる」――ヨギ・ベラ 154
  ニューエイジ療法の魅力 156
    包含 対 排除
    変容
    浄化
    意思決定の正当化
  ニューエイジ療法の説明責任とクオリティに関する問題 160
    倫理上および法律上での説明責任
    受託者に適用する基準で判断されるべきニューエイジセラピスト
    説明責任の相対的もしくは専門職的基準
    説明責任の外在化
    ニューエイジ療法と法的説明責任
  ニューエイジ療法に関する法的なケース 166
    インフォームドコンセントのケース
    悪魔儀式虐待:パトリシア・バーガス,「悪魔の女王」のケース
    解離性同一性障害:エリザベス・カールソンのケース
    宇宙人:マイラ
    多重人格ニューエイジ療法:エレン
    最近の専門家の動向
    道を踏み誤った心理療法
  結論 172
  用語解説 173


第8章 過去の出来事の想起:心理療法における問題となる記憶回復技法
  臨床的技法 177
    イメージ誘導
    ソースモニタリングの視点
    誤った記憶の暗示
    催眠
    初期記憶の探索
    年齢退行
    催眠を用いた年齢退行
    過去の人生への退行
    症候解釈
    偽の人格解釈
    夢解釈
    身体症候解釈:身体記憶
    読書療法
  個人差 195
    一般の公衆:流行の信念
    実践家
    個人差測度
  文献批判 196
  誤った記憶創造の仮説的道筋 199
  心理療法家は記憶回復に携わるべきか 199
  結論 201
  用語解説 202


  第III部 成人の特定の障害への治癒論争

第9章 心的外傷後ストレス障害の新奇で論争となっている治療法
  外傷とその影響 207
  PTSDの認知行動理論 208
  認知行動理論に基づくPTSDのための治療 209
    暴露法
    認知療法
    不安管理訓練
    要約と結論
  不安と外傷のための新奇な治療 212
    EDMR[Eye Movement Desensitization and Reprocessing]
      ◆治療の解説と理論的根拠
      ◆治療における非特異的要因の効果の統制
      ◆EMDR構成要素の統制
      ◆妥当な治療あるいは妥当な治療の構成要素との比較
      ◆新規で独特な治療としてのEMDR
    思考場療法
      ◆治療法の解説
      ◆TFTの理論的根拠
      ◆効能研究の要約
    非常事態ストレスデブリーフィング
      ◆介入の理論的根拠
      ◆介入手続き
      ◆効能研究
  結論 225
  用語解説 227


第10章 アルコール依存症の治療法に関する論争
  アルコール症者自主更生会:本当に効果があるのか? 231
  ジョンソン介入法 235
  ジスルフィラム薬物療法 236
  節酒の訓練と統制された飲酒 238
  プロジェクトDARE 240
  アルコール症の効果的な治療:科学の地位 241
  社会的学習理論:認知/社会技能訓練 242
  再発の防止 244
  オペラント条件づけ:コミュニティ強化アプローチ 245
  動機づけ強化療法 247
  夫婦・家族療法 249
  短期介入 250
  結論 251
  用語解説 253


第11章 ハーブ治療と抗うつ薬治療:類似データ,拡散的結論
  抗うつ薬治療 256
  精神疾患のハーブ治療 260
    オトギリソウ科植物
    イチョウ[Ginkgo biloba]
    カバ[Kava / Piper methysticum] 
    痛みに対する植物薬学
    バッチフラワー療法
  抗うつ薬治療とハーブ療法の類似点 272
  用語解説 273


  第IV部 特定の子どもの障害の治療における論争

第12章 注意欠陥/多動性障害の子どものための実証済みの治療法,有望な治療法,および実証されていない治療法
  実証済みの治療法 278
    精神刺激薬治療
    行動変容
    刺激薬と行動療法の併用
    多面的ADHD治療(MTA)研究
  有望な治療法 283
    非刺激薬治療
    集中行動療法プログラム
    教室を基盤とした介入
  支持されていない治療法 287
    効果のない治療法
      ◆認知訓練プログラム
      ◆食事管理
      ◆栄養サプリメントと食事サプリメント
    ほとんど研究されていない治療法
      ◆心理学的治療
    神経学的治療法
      ◆栄養学的方法
      ◆生理学的治療
      ◆ホメオパシー療法
  支持されていない治療法に関する挑戦と問題 294
  結論 296
  用語解説 297


第13章 異論のある多くの自閉症治療法:効果に対する決定的評価
  自閉症の特徴 299
  一般的な治療方法の再検討 301
    教育的・経験的方法
      ◆ファシリテイティッド・コミュニケーション
      ◆感覚統合療法
      ◆聴覚統合訓練
      ◆発達,個人差,関係基盤モデル
      ◆イルカ介在療法
    生物学的手法 314
      ◆セクレチン
      ◆食事療法
      ◆ビタミンB【※ B_6】療法
  自閉症に対する効果的な治療法 321
  用語解説 322


  第V部 自助とメディアに関する論争

第14章 自助療法:科学と心理学をばらまく商売
  1970年代における自助への心理学の貢献 329
  自助の限界 330
  出版ラッシュ 331
  1980年代および1990年代の心理学と自助 333
  いくつかの成果 335
    サブリミナル自助テープの真実
    自助本の評価
  アメリカ心理学会と自助 338
  自助の将来 341
  心理学者と消費者のためのガイドライン 343
  用語解説 346


第15章 精神保健問題の商業化:娯楽,広告,心理学の助言
  現代の助言産業 348
    トーク番組
    1980年代以降の「自助」
  市場価値 356
    娯楽
    知性より感覚が勝るとうこと
    共通の反応をターゲットに
  広告 364
    広告としての助言
    市場の拡大
  市場価値の妨害 371
    娯楽と専門的心理学
  広告と専門的な心理学 375
  結論 378
  用語解説 378


第16章 臨床心理学における科学と疑似科学:結論的考察と構成的改善策 380
  謝辞 383


事項索引 [448-452]
人名索引 [453-458]
監訳者あとがき(2007年8月初旬 米国ワシントン州シアトル市,大学外のホテルにて 監訳者 厳島行雄) [459-461]
訳者一覧 [462]
監訳者紹介 [463]





【メモランダム】
・第二版(2014年)で新たに参加する著者たち。

著者:Whitney Taylor 
著者:Brandon A. Gaudiano 
著者:Kristy L. Dalrymple 
著者:Lauren M. Weinstock
著者:Monica Pignotti 
著者:Bruce A. Thyer 
著者:Manuel Barrera Jr. 
著者:Richard Gist 
著者:Brett Deacon 
著者:Grant J. Devilly 
著者:Tracey Varker 
著者:Joshua C. Gray 
著者:James G. Waxmonsky 
著者:Laura B. Turner 
著者:Melina Sevlever 
著者:Jennifer M. Gillis 
著者:Jean Mercer 
著者:Anthony Petrosino 
著者:Pamela MacDougall 
著者:Meghan E. Hollis-Peel 
著者:Trevor A. Fronius 
著者:Sarah Guckenberg 


【些細なメモ】

・既に、誤訳が多いことは指摘されている。

 以下、匿名のAmazonレビュー(2009年8月6日)から抜粋。行数は引用者が追加した。

「i.e.(=つまり)」を「たとえば(p.124,最下行)」と訳したり、「burden of proof(=立証責任)」を「証明の重み(p.7,16行目)」と訳したり、「“heads I win, tails you lose” reasoning(=表が出ればオレの勝ち、裏が出ればお前の負け)」を「「頭は勝つ、尻尾は負ける」式の推論(p.9,下から5行目)」と意味のよくわからない日本語にしたり、など、英語を日本語に翻訳するのに不慣れな人が訳したような印象をうけます。
 さらに、「peer review(=査読)」を「再調査(p.6,24行目)」と訳したり、「population(=母集団)」を「標本(p.70,下から6行目)」と訳したり、「artifact(=アーティファクト)」を「すぐれた美術品(p.132,12行目)」と訳したり、「confounding(=交絡)」を「混同(p.217,3行目)」と訳したり、「learning principles(=学習原理)」を「規範を学習すること(p.297)」と訳したりするなど、心理学を勉強した経験や、心理学の研究に携わった経験のない人が翻訳したかのような誤訳が散見されます。


・私が気になった誤訳。
 ◇78ページの見出し。第4第(横田正夫[訳])。

  依存症

 原著の見出しはsexual addictionなので、正しくは「性依存症」。この項の範囲の本文も、依存症一般のテーマではなく、性依存症をテーマに書かれたものだった。




・悪訳。
 ◇p. vi. 「緒言」(横田正夫[訳])から。下線は引用者による。

プール(Poole et al., 1995)は,合衆国およびイギリスに登録されている心理療法家のほとんどの少数派が,子どもの時期の性的虐待の抑圧された記憶を「回復」するために,虐待の状況に関連した,催眠,夢分析,イメージ誘導のような主観的で高度に影響的な技法を使用していたことを見出した。

 この訳文を読んだ人は「心理療法家のほとんどの少数派が」という部分を、「心理療法家のほとんど」と読むべきか、「心理療法家の少数派」と読むべきか、すぐに判断できるのだろうか? 
 原文が透けて見える人には問題ないが、それで済ましては訳する意味がなくなる。

 原文はこちら。下線は引用者による。

Poole, Lindsay, Memon, and Bull (1995) found that large minorities of registered psychotherapists in the United States and England were using subjective, highly influential techniques such as hypnosis, dream analysis, and guided imagery related to abuse situations to "uncover" repressed memories of childhood sexual abuse.

【訳例】 D. A.プールらの研究によれば、米国と英国の登録された心理療法家のうち半数には満たないものの、多くの心理療法家が、幼少期の性的虐待の抑圧された記憶を「暴く」ために、虐待の状況に関する催眠・夢分析・誘導イメージなどの主観的で影響力の強い技法を用いていた(Poole et al., 1995)。

 上の訳例ではlarge minorities of... を「半数には満たないがかなり多くの……」としたが、こちらのウェブサイトには、仮に具体的な割合でいうと「25%より多く50%より少ない」だろうという意見があった。おおむね妥当だと思うが、もちろん例外ケースもありえる(例:第一党45%、第二党30%、第三党20%、第四党5%の場合。)。
 なんにせよ「最大派閥ではない」かつ「そこそこの数である」ことが伝わればいい。テーマと文意から「非主流派のうちの最大派閥」としてもいいかもしれない。
 なおlarge minority of ... も使用例が多い。



・索引の誤り。
 「バタードウーマン」(pp.74-76)には、本文で学習性無力感が登場する。そして巻末の事項索引では「学習性無気力  76」とされているが、実際は75ページに載っている。



・構成。
291頁に「神経学的治療法」という項が立てられているが、内容からみても構成からみても、階層はもう一つ分深い場所のはずだ。

  ほとんど研究されていない治療法
    ◆心理学的治療
  神経学的治療法   
    ◆栄養学的方法
    ◆生理学的治療
    ◆ホメオパシー療法



【抜き書き】

298頁。12章の末尾。

 この章において各著者は等しく貢献している。著者の順序はコインを投げて決定した。