監修:岩波 明[いわなみ・あきら](1959-) 精神科医。精神生理学(うつ病の薬物療法、統合失調症の認知機能障害、精神疾患と犯罪など)。
著者:小野 和哉[おの・かずや](1960-)
著者:林 寧哲[はやし・やすあき](1966-)
著者:柏 淳[かしわ・あつし](1963-)
著者:本田 秀夫[ほんだ・ひでお](1964-)
著者:松岡 孝裕[まつおか・たかひろ](1988-)
著者:横井 英樹[よこい・ひでき]
著者:鈴木 慶太[すずき・けいた]
著者:高山 恵子[たかやま・けいこ]
編集協力:佐々木 とく子[ささき・とくこ] フリーライター。
NDC:493.76 内科学
おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線 岩波明/監修、小野和哉、林寧哲、柏淳 ほか | 光文社新書 | 光文社
【目次】
はじめに(岩波明) [003-009]
目次 [011-016]
第1章 成人期発達障害とは何か
1 発達障害とは何か 019
「発達障害」という概念の形成
生物学的な分類と、理念的な分類「カテゴリー」
発達障害はカテゴリーを超えた包括的概念
発達障害と精神障害を網羅する「ESSENCE」
2 成人期発達障害の課題 025
成人期発達障害の診断における課題
成人期発達障害の治療における課題
3 発達障害における基盤障害の探索 030
実行機能障害仮説から神経ネットワーク機能障害仮説へ
デフォルト・モード・ネットワーク障害仮説
DMNと脳の成熟過程の遅れ
4 ADHDとASDの関係 039
併存すると重症度が高まる
ADHDとASDの関係はグラデーション
ADHDとASDを併存の有無から分類する
ADHDとASDの併存の仕方による経過の違い
5 成人期ADHDの特性と連続性
子ども時代にADHDではなかった成人期ADHD
成人期ADHDの特徴とこれからの課題
6 発達障害と精神障害における今後の展望 057
発達障害と精神障害の関係
発達障害とゲノムワイド研究
変動する状態としての発達障害
第2章 成人期発達障害診断の現在地と課題
1 成人の発達障害の患者さんが診断に至るまで 069
患者さんが受診する四つのきっかけ
成人の発達障害の患者さんは、受診先に困っている
2 成人期発達障害の診断に関する現状と課題 075
過剰診断と過小診断の問題
二次的問題の不可避性
愛着課題と複雑性PTSDについて
精神障害との鑑別診断と重複診断について
ASDとADHDの本質とは
発達障害の診立てにおけるポイント
第3章 成人期発達障害診断の実際――運動ならびに視覚認知機能発達の偏りにも着目して
1 操作的診断基準に沿った成人期発達障害診断について 099
成人期における発達障害診断の難しさ
当院における発達生育歴聴取の実際
2 成人期発達障害診断における客観的検査について 109
そもそも発達障害とは何か
当院で行っている客観的検査について
電気生理学的検査
神経心理学的検査
画像検査
運動機能発達と視覚認知機能発達の偏りに注目して
3 発達障害診断の今後について 126
データに見る患者さんの実態
発達障害診断はどこへ行くのか
第4章 子どもから大人への発達障害診断
1 発達障害の診断基準において、私が考える課題とは 135
「発達障害とは何か」「併存症がどのように生じるか」を診てきて
「社会生活上の支障」は、生物学的基盤に基づいた診断基準ではない
「他者から見た行動」では、見逃されるケースがある
特性が併存している人たちの実態がつかみにくい
「時間とともに変化する」という視点が盛り込まれていない
2歳から20代半ばまで変化を追ったNさんの事例
2 生育環境とパーソナリティ形成の関係について 150
パーソナリティ形成には、大人になるまでの育ち方が影響する
どの時点で切り取るかによって、特性の見え方が変わる
発達障害の特性が目立つかどうかは、環境との関係による
第5章 薬物療法の現状と課題
1 発達障害診療における当科の取り組み 159
一般精神科医を「対応医」として育成
対象年齢の拡大によって初診待機期間を減らす
2 症例に見る薬物療法の実際 162
発達障害の治療薬として使用可能な薬剤
併存する情緒的障害に対する薬物療法
症例1 : ADHD+ ASDの20代女性(Aさん)のケース
症例2 : ADHD+ASDの20代男性(Bさん)のケース
症例3 : ADHDの20代男性(Cさん)のケース
3 薬物療法の現状と問題点 177
診断の確からしさと中枢刺激薬の選択
薬物療法は全体のごく一部である
第6章 成人期発達障害の心理社会的治療――デイケアでの取り組みについて
1 成人期発達障害の治療とリハビリテーション 183
当院における心理社会的治療
発達障害専門プログラムの目的
2 ASDプログラムについて 187
ASDプログラムの概要
ASDプログラムの対象者
3 ASDショートケアついて 190
ASDショートケア参加者の特徴
ASDショートケア参加者の「困っていること」
4 ASDデイケアについて 194
ASDデイケア参加者の特徴と目的
ASDデイケアの内容と効果
5 ADHDショートケアについて 196
ADHDショートケアの内容
ADHDショートケア参加者の特徴
ADHDショートケア参加者の「困っていること」
6 心理社会的治療における課題 200
発達障害専門デイケアの立ち上げ
プログラムの導入と内容
家族への支援
OB会やサークル活動の役割
人に慣れるきっかけとしての機能も
第7章 民間における就労支援の現状と今後の予想
1 当社のサービスの特徴 209
当社が提供する三つのサービス
診断名を重視しない
スタッフ教育で重視すること
環境を整えるための基本
2 当社のプログラムについて 215
基本は「自己理解・職業訓練・就職活動」の三つ
穴埋めや動画を利用しての就労支援
3 今後の障害者雇用の動向について 218
障害者雇用の大きな流れ
サテライトオフィスを始めた理由
就労支援対象者の多様化
多様な就労支援対象者にどう対応するか
10代以降の子を持つ親向けの勉強会を開催
第8章 えじそんくらぶの活動――20年の支援で見えてきたもの
1 NPO法人えじそんくらぶの成り立ちと概要 227
えじそんくらぶの設立
えじそんくらぶの活動内容
2 これまでの支援で見えてきたキーワード 229
見立てと適切な支援
母親による支援と自立
早すぎる自立の目標
教育虐待と過剰適応
3 発達障害のある人への支援の課題 234
安全基地としてのゲーム
親の支援
神経心理ピラミッドを用いた支援
学校での配慮
女性と発達障害
監修者・著者紹介 [240-243]
【図表一覧】
図1-1 神経発達症群 023
図1-2 過小診断リスク 027
図1-3 実行機能と報酬系の「二重経路モデル」 031
図1-4 「三重経路モデル」 033
図1-5 脳の成熟過程の比較 037
図1-6 健常群、ADHD群、ADHD・ASD並存群の比較 042
図1-7 社会性やコミュニケーションの課題の比較 045
図1-8 ADHDに特有の症状の比較 046
図1-9 ADHDとASDの並存の仕方による、小児期から青年期にかけての経過の違い 048
図1-10 ADHD・ASD並存群の症状の発現過程 050
図1-11 成人期ADHDの症状の特徴 055
図1-12 エピジェネティックランドスケープ 059
図2-1 横浜市内クリニックにおける標榜実態 073
図2-2 「発達」障害であること 082
図2-3 精神障害との鑑別診断と重複診断 086
図2-4 精神発達の立体構造(滝川一廣) 089
図2-5 成人期発達障害診断プロセス 094
図3-1 MSPA[Multi-dismensional Scale for PDD and ADHD] 107
図3-2 fMRI画像のサンプル 112
図3-3 DTI画像のサンプル 113
図3-4 「Nature Medicine」掲載図。rs-fcMRIによる脳の機能的結合の評価 113
図3-5 発達障害の患者さんの訴えの内容 128
図3-6 発達障害の患者さんの診断(件数) 130
図3-7 発達障害の患者さんの診断(パーセンテージ) 130
図4-1 ASとADHの強弱と重複のイメージ 142
図4-2 小児期に見られる発達特性は、将来どうなる? 144
図4-3 個と環境の相互作用による特性の現れ方の推移 153
図5-1 ADHD特有の症状に対して使用可能な薬 164
図5-2 薬物両方は全体のごく一部 178
図6-1 ASDプログラム 188
図6-2 ASDプログラムの対象者 189
図6-3 ADHDプログラム 196
図6-4 発達障害専門プログラム 203
図8-1 神経心理ピラミッド 237