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『子どもの脳を傷つける親たち』(友田明美 NHK出版新書 2017)

著者:友田 明美[ともだ・あけみ](1987-) 小児発達科学、小児精神神経学。
編集協力:彌永 由美[やなが・ゆみ]
図版作成:高田 紗英子[たかだ・さえこ]
図版作成:道下 優子[みちした・ゆうこ]
図版作成:吉村 時子[よしむら・ときこ]
シリーズ:NHK出版新書;523
NDC:369.4 社会 >> 社会福祉
NDC:493.937 小児科学(神経系)


https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000885232017.html


 「子どもの前での夫婦喧嘩」、「心ない言葉」、「スマホ・ネグレクト」に「きょうだい間の差別」──。
 マルトリートメント(不適切な養育)が子どもの脳を「物理的」に傷つけ、学習欲の低下や非行、うつや統合失調症などの病を引き起こすことが明らかになった。脳研究に取り組む小児精神科医が、科学的見地から子どもの脳を解明し、傷つきから守る方途と、健全なこころの発達に不可欠である愛着形成の重要性を説く。


【目次】
目次 [003-007]


序章 健全な発達を阻害する脳の傷つき 009
こころと脳の密接な関係
傷つく子どもの脳
子どもの減少に比例しない虐待数
子ども虐待の社会的コスト
脳科学から見守る子どもの発達


第一章 日常のなかにも存在する不適切な養育 023
こころの発達障害とは
こころの発達を妨げる不適切なかかわり
マルトリートメントという考え方
どんな親でも経験があるマルトリートメント
身体的マルトリートメント~体罰は「しつけ」なのか?
屈辱という「こころ」への暴行にもつながる体罰
性的マルトリートメント~表面化しにくい被害に苦しむ子どもたち
子どもと性のかかわりについて親が考えるべきこと
ネグレクト~子どもの健康と安全を脅かす
脳の健やかな発達を促すスキンシップ
ネグレクトなどによる「愛着障害」を防ぐには
スマホ育児をネグレクトにしないために
精神的マルトリートメントとは
子どもの人格を否定する言葉は「しつけ」にならない
子どもは親からの評価があってこそ健やかに育つ
面前DV~両親間の暴力・暴言を見聞きすること
より脳に大きなダメージを与える言葉のDV
外から見える傷はなくても脳は傷ついている
代理ミュンヒハウゼン症候群~注目を浴びたいために子どもを傷つける


第二章 マルトリートメントによる脳へのダメージとその影響 071
トラウマが子どもの発達を妨げる
体罰によって萎縮する前頭前野
性的マルトリートメントによって萎縮する視覚野
ダメージが起きやすい脳の感受性期
暴言によって肥大する聴覚野
面前DVによって萎縮する視覚野
報酬ゲームから見えてきた愛着障害の弊害
生き延びるために適応しようとする人間の脳
マルトリートメント経験のあるなしによる脳の違い


第三章 子どもの脳がもつ回復力を信じて 109
脳の傷は治らないのか
薬物療法心理療法
子どものこころを支える「支持的精神療法」
記憶や感情を整理し、新たな意味づけを行う「曝露療法」
遊びを通してトラウマを克服する「遊戯療法」 トラウマ処理のための新療法
レジリエンスを伸ばすための研究
外傷後成長を促す

ケーススタディ 138
 ① Cちゃん(三歳・女児)、両親間のDV目撃による心理的なマルトリートメント
 ② Dくん(一〇歳・男児)、Eくん(八歳・男児)、母親からのネグレクト・心理的マルトリートメント
 ③ Fくん(一四歳・男子)、父親からの厳格な体罰
 ④ Gさん(一二歳・女子)、両親間のDV目撃、性的マルトリートメント


第四章 健やかな発育に必要な愛着形成 157
愛着とは
愛着の三つの形「安定型」「回避型」「抵抗型」
愛着形成のプロセス
愛着障害とは
反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害
愛着障害発達障害との違い
愛着の再形成を促す
必要とされる親へのケア

ケーススタディ 186
 ① Hちゃん(六歳・女児)、母親の死、娘と向き合えない父親との愛着障害
 ② Iくん(九歳・男児)、親の養育困難による愛着障害
 ③ Jくん(一二歳・男児)、父親の激しい体罰による愛着障害


終章 マルトリートメントからの脱却 199
負の連鎖を断ち切るために
マルトリートメントを予防するための新しい試み
親の「養育脳」を育むオキシトシン
子どものためにできること
求められる養育者支援
社会全体で見守りたい子どものこころの発達


あとがき(二〇一七年七月 友田明美) [214-216]
参考文献 [217-221]





【関連記事】


・本書でも言及されている、「代理ミュンヒハウゼン症候群」について書かれた新書。
『代理ミュンヒハウゼン症候群』(南部さおり アスキー・メディアワークス 2010)


・次の本は本書とスコープが異なっていて、家庭の養育者ではなく学校の教育者の問題について取り上げている。学校における部活動指導者による児童・生徒への虐待・暴力の事例と防止への取り組みを紹介している。
『反体罰宣言――日本体育大学が超本気で取り組んだ命の授業』(南部さおり 春陽堂書店 2019)


・虐待は直接の焦点ではないので関連度は低いかもしれない。近現代日本の教育・しつけのあり方や、現代の偏狭な「しつけ言説」なども取り上げている。
『日本人のしつけは衰退したか――「教育する家族」のゆくえ』(広田照幸 講談社現代新書 1999)





【メモランダム】
・査読偽装についての報道。『毎日新聞』 。
福井大・査読偽装 米ワイリーも論文撤回「自ら不正認める」 | 毎日新聞
・友田明美 教授が橋本謙二 教授と協力し、投稿した学術論文の査読に自ら関与する「査読偽装」をした疑いがある問題についての続報。

 ワイリーはホームページで「査読が操作されたと確認できる証拠を受け取った」と明らかにし、査読に不正があったと認定。その上で「著者と学術誌の編集長、ワイリーが撤回に合意した」と説明した。この問題で撤回された論文は2本になったが、友田教授側が撤回に合意したことが明らかになるのは初めてで、自ら不正を認めた形だ。