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『反体罰宣言――日本体育大学が超本気で取り組んだ命の授業』(南部さおり 春陽堂書店 2019)

著者: 南部 さおり[なんぶ・さおり] 法医学、刑事法学、スポーツ危機管理学。医学博士。
序文:松浪 健四郎[まつなみ・けんしろう](1946-)  スポーツ人類学。教育学修士。元・レスリング選手。元・政治家。現・日本体育大学理事長。
デザイン:WHITELINE GRAPHICS CO.


反体罰宣言 日本体育大学が超本気で取り組んだ命の授業



【目次】
体罰・反暴力宣言(学校法人 日本体育大学 理事長 松浪健四郎) [002-004]
目次 [005-007]


はじめに 008
  部活動問題ブーム
  研修会での罵詈雑言
  当事者たちからの語り


第1章 法医学教員だった私が日体大に行った理由 015
  柔道事故被害者からの問い合わせ
  「こんなに死んでるの……?」
  子どもを「死なせた」学校の非情な対応にあぜん
  倉田久子さんとの出会い
  誠実さを貫いた学校・教育委員会
  冊子「部活動の安全指導」
  日体大学長からの、突然のアポイントメント
  「スポーツ危機管理学研究室」の教員に
  「日体大から加害者を出さない!」


第2章 学校・部活動における重大事故・事件から学ぶ研修会 043
  授業で扱う「体罰問題」
  いよいよ行動を起こす


case file 1 日体大卒のバレー部顧問による不適切な対応で死亡した草野恵〔くさのめぐみ〕さん 51
  恵さんとママ
  合宿所へ向かう朝
  合宿1日目
  合宿2日目
  合宿3日目
  病院で
  学校による隠蔽
  バレー部員たちの話
  裁判、そして和解
  その後、今日まで
  《日体大生へのメッセージ》――草野とも子さん
  《日体大生たちの感想》


case file 2 中学強豪柔道部の顧問から「なぶり殺し」にされた村川康嗣〔むらかわこうじ〕君 082
  中学入学、柔道部に
  常識外れの練習方法
  事件当日(2009年7月29日)の練習内容
  目隠し、Tシャツでの寝技練習
  地獄の乱取り練習
  顧問自らが「とどめを刺す」
  「康嗣は今、生きるために頑張ってるんや!」
  診断「右急性硬膜下血腫」
  手術後
  永遠の別れ
  逃げ出した顧問、厚顔無恥な学校
  地域との確執
  《日体大生へのメッセージ》――村上弘美さん
  《日体大生たちの感想》


case file 3 剣道部顧問の暴力指導により、「内臓が煮えて死んだ」工藤剣太君 111
  剣士の父、パフォーマーの母
  体育大卒の顧問
  夏休み中の部活動
  事件当日
  「もう無理です」
  「演技じゃろうが!」
  病院へ
  医療ミス
  司法解剖
  通夜、告別式
  保護者会
  懲戒処分が軽すぎる!
  戦いは終わらない
  《日体大生へのメッセージ》――工藤奈美さん
  《日体大生たちの感想》


case file4 灼熱の中、ラグビー部の顧問からの執拗な「罰走」により「体温43度」で死亡した宮脇健斗君 141
  ラグビーどの出会い
  川西中学校ラグビー
  事故当日
  地獄への一報
  熱中症による多臓器不全
  「お手上げ状態です」
  「生まれてきてくれてありがとう!」
  通夜、告別式
  世間との戦い
  顧問に対する刑事告訴
  子どもの人権オンブズパーソン
  顧問との面談
  民事訴訟
  健斗君の『生きた証』を実践する
  《日体大生へのメッセージ》――宮脇勝哉さん
  《日体大生たちの感想》


case file 5 野球部で仲間が受ける体罰に耐えられず、死を選んだ山田恭平君 177
  共感性の高すぎる子
  努力家の野球少年
  工業高校野球
  技能オリンピック
  「もう、高校生活をあきらめた」
  「部活を辞める」ということ
  「トランプ事件」
  「今まで、すみませんでした」
  廃車置き場で
  通夜、告別式
  学校の対応
  部員たちの聞き取り
  手紙
  その後
  《日体大生へのメッセージ》――山田優美子さん
  《日体大生たちの感想》


case file 6 「友だちにお菓子をもらって食べただけ」で、死に追い詰められた 大貫陵平〔おおぬきりょうへい〕君 216
  アウトドア大好き兄弟
  小学校時代
  両親の離婚
  面会交流
  野球部での体罰事件
  キャッチボール
  「お菓子」と生徒指導
  「親に言っておけ」
  「臨時学年集会」での「決意表明」
  「自爆だよ」
  真夜中の電話
  地域て評判の「いい学校」
  PTA合同委員会でのバッシング
  「こんなに起きているんだ」
  「指導死」
  「指導死」としての桜宮高校バスケットボール部主将自死事件
  《日体大生へのメッセージ》――大貫隆志さん
  《日体大生たちの感想》


case file 7 「いじめから友達を守れなかった」悔しさから命を絶った篠原真矢〔しのはらまさや〕君 255
  美しすぎる遺書
  友達思いの愛されキャラ
  友達へのいじめ
  「いじり」
  「教科書事件」
  最後のSOS
  「絶対に扉を開かないでください」
  「真矢が亡くなった」
  それぞれの悲しみ
  調査委員会
  「産声」
  「生き方報告書」
  その後
  《日体大生へのメッセージ》――篠原真紀さん
  《日体大生たちの感想》


第3章 日体大に来て、見えてきたこと 285

1 日体大生」「日体大卒」と体罰 287
  「理不尽」というノスタルジー
  日体大という「役割期待
2 なぜ体罰は残り続けるのか 290
  暴力の世代間連鎖
  体罰と「即効性」
  「熱さ」の押し売り
3 体罰の免罪符である「信頼関係」とは? 293
  「信頼関係」とはなにか
  体罰とDV
  インフォームド・コンセントがない
4 体罰はなぜいけないのか 297
  スポーツと暴力は相容れない
  体罰の裾野
5 フォローのできない教師と「指導死」 300
  「指導」は生徒と教師の相互作用
  教師の権威
  四つの「権威」
  生徒の伴走者になるために
  「指導死」を生む教師
  「指導」はコミュニケーション 
  「いじめ」加害者としての教師
6 なぜ学校は「隠蔽」しようとするのか 315
  文科省「学校事故対応に関する指針」
  「学校事故隠蔽あるある」
    ①教師の身分を守るため
    ②校長が定年間際である
    ③人事考査制度
    ④在校生の保護
7 教育委員会は悪の巣窟か? 321
  記者会見でおなじみの人たち
  教育委員会とはなにか?
  学校事故被害者の「敵」か「味方」か
8 学校部活動の語り尽くせぬ問題点 325
  部活動と「軍隊教育」
  部活動と「自主性」
  顧問の専制君主
  アスレチックトレーナーの活用
  外部指導員
  これからの部活動


おわりに(2019年1月 南部 さおり) [332-335]




【メモランダム】
・この本を分類するに、「教育」「刑事法」「法医学」のいずれに収めるか悩ましい。




【関連記事】

『代理ミュンヒハウゼン症候群』(南部さおり アスキー・メディアワークス 2010)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20110409/1302274800


『柔道事故』(内田良 河出書房新社 2013)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20130729/1375023600


『性と柔――女子柔道史から問う』(溝口紀子 河出ブックス 2013)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20140117/1389884400_1


『「ハッピーな部活」のつくり方』(中澤篤史,内田良 岩波ジュニア新書 2019)
https://contents-memo.hatenablog.com/entry/20191029/1572275800





【抜き書き】

   おわりに

 本書で、様々な家族の物語を書かせて頂いた。これまで、本書に登場頂いた皆さんのお話は何度も直接うかがう機会があり、私はそれぞれの事件・事故のあらましを知っているつもりでいたが、いざ自分の言葉で書くとなると、想像を超えたとてつもなく重い作業となってしまった。
 本書を書くにあたり、できるだけ読者に「リアリティをもって」「自分事として」それぞれのストーリーを読んで頂きたいと考えたため、可能な限り、生前の子どもたちの姿を再現しようと努めた。
 〔……〕
 生前の子どもたちの姿を追求すればするほど、私は一人ひとりの子どもたちが愛おしくて仕方がなくなった。どの子も素直で天真爛漫、笑顔のとても似合う、親思い、友達思いの優しい子たちばかりで、原稿を書き進めるうちに、やがて死の場面を描かなければならないということが、とてもつらくなってきた。この子たちを死に追いつめる教師たちを、心の底から憎んでいた。
 〔……〕
 遺族の皆さんは、自分の亡き子のことが本になると聞いて、本当に喜んでくださっていた。人は、肉体が死んだ時に一度目の死が訪れ、人から忘れ去られることで二度目の死が訪れるといわれている。
 本当に幼くしてわが子を亡くしてしまった遺族の方々は、いずれも、わが子がどう生きたのか、そしてどう死んでいったのかということを、一人でも多くの読者の方々に知って頂き、そして「どうすればこの子は死なずにすんだのか」、「どうすれば、今後同じような被害者を出さずにすむのか」ということを少しでも考えて頂ければ、わが子の二度目の死は訪れないはずだと信じている。〔……〕。

 ただ、私は本書を書き上げた今も、変わらず自分の無力さを痛感している。なぜなら、私がここに記したストーリーは、遺族の皆さんが心を込めて語る言葉に比べてあまりにも軽く、人の心を動かすにはまったく十分ではないということを嫌というほど思い知らされたからだ。
 だから是非、読者の皆さんには、毎年秋から冬にかけて開催される、本学の『学校・部活動における重大事故・事件から学ぶ研修会』に参加し、当事者の言葉に直接耳を傾けて頂きたいと心から願っている。例年、10月と11月、2月に1回ずつ、計3回開催している。詳しい日程等は、9月頃から日体大のスポーツ危機管理研究所のホームページを見て確認して頂きたい。
 そして皆さんには、事故当事者の方々のお話に熱心に耳を傾け、涙する日体大生の姿をもあわせて見てほしい。その日体大から、今後も、日本の学校部活動の悪しき暴力の根を摘み、生徒を「生かす」指導をする素晴らしい教師・指導者を輩出し続けていきたいと考えているのだ。本学の「本気」を、是非直接確認して頂きたいと思う。
 〔……〕
 そして、本書を手に取ってくださった皆様にも、熱く熱くお礼申し上げたい。是非、このご縁をきっかけにして、今後の日本の学校部活動や指導者、教師や子どもに関わるすべての大人のあり方について、多くの知恵を拝借したいと考えている。


  2019年1月 南部 さおり