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『代理ミュンヒハウゼン症候群』(南部さおり アスキー・メディアワークス 2010)

著者:南部 さおり[なんぶ・さおり] 法医学。
NDC:367.6 児童・青少年問題


「代理ミュンヒハウゼン症候群」 南部 さおり[角川新書] - KADOKAWA


【目次】
はじめに [003-009]
目次 [010-014]


第一章 代理によらない「ミュンヒハウゼン症候群」 015
  ほら吹き男爵ミュンヒハウゼン
  多発性内分泌腫瘍症2型の天照さん
  ミュンヒハウゼン症候群
  腸閉塞のトーマス
  40歳女性、尿路性敗血症と膀胱膿瘍


第二章 代理ミュンヒハウゼン症候群とは 029
  Münchausen Syndrome by Proxy
  メードゥによる症例報告
   【ケース1】尿路感染症のケイ
   【ケース2】高ナトリウム血症のチャールズ
  2人の母親の共通点
  母親のミュンヒハウゼン症候群
  病気にするために、彼女たちがすること
  心配性の親との違い
  他の虐待との違い


第三章 MSBPの母親の特徴とは 094
  キャシー・ブッシュ事件
  キャシーの刑事裁判
  MSBPの母親のプロファイル
  「母親の特徴」は「診断基準」ではない


第四章 子どもを病気にするために、彼女たちがすること 073
  MSBPの二大手口
  赤ちゃんの突然死の歴史
  ワネタ・ホイト事件
  MSBPと窒息
  毒を盛る母親
  プリシラ・フィリップ事件
   【最初の養女ティア】
   【2人目の養女ミンディ】
  冷静な行動力と華やかな演出


第五章 日本で報告された代理ミュンヒハウゼン症候群 095
  どのくらい起こっているのか?
  日本のMSBPの加害者像
  MSタイプの母親
   【ケース1】
   【ケース2】
   【ケース3】
  日本社会と母性愛神話
  自己犠牲の美徳
  「私を、認めて!」
  ウソの上塗り
  日本人が感動する母親像
  父親の役割


第六章 「病気」か「犯罪」か 121
  「ぶっちゃけ、責任能力はあるの?」
  MSBPは児童虐待の一類型
  メードゥ医師の注意書き
  仙台筋弛緩剤点滴混入事件
  「代理による虚偽性障害
  診断基準としての動機
  MSBPと否認
   【アンソニー事件】
  「児童虐待病?」
  動機と殺意
  演技性人格障害とMSBP
  人格障害責任能力
  筆者の考え


第七章 点滴汚水混入事件 157
  初のMSBP裁判員裁判
  事件の概要
   [次女]
   [三女]
   [四女]
   [五女]
  本件の争点
  MSBPについて
  精神鑑定の内容
  検察側と弁護側の最終意見
  判決 (1) 犯行について (2) MSBPについて (3) 量刑


第八章 MSBP概念はどこに行くのか? 193
  喜びと悪夢
  「殺人容疑で逮捕します」
  再度の再審請求、そして無罪
  メードゥによる魔女狩り
  がけっぷちの小児科医たち
  メードゥの失脚、そして
  MSBPのこれから
  MSBPは「症候群」である
  PCFとFDP
  MSBPは、もうなくなるの?
  児童虐待のさまざまな局面
   [介入の第1段階]
   [介入の第2段階]
   [介入の第3段階]


あとがき(二〇一〇年七月 南部さおり) [225-229]
参考文献 [230-231]





【抜き書き】


・第三章第三節「MSBPの母親のプロファイル」より、ある要因の重みづけについての推測。全括弧[ ]は引用者の付加した部分。

 しかし、MSBP加害者がほとんど常に母親であるということの原因を、ジェンダーの弊害としてとらえる考え方には、異論も唱えられている。例えば、法医小児科医であるローゼンバーグ[Rosenberg, Donna Andrea]は、『虐待された子ども』(前掲)の中で、精神科医のシュライアーたちが「MSBPの母親の背景要因」として強調する、「幼い頃に親に蔑視され情緒的にネグレクトされた体験の深刻な影響、および社会におけるさらに規模の大きい女性蔑視」という分析について、以下のように切り捨てる。

 しかし、同じ社会に生活している女性のほとんどがMSBPの加害者にはなっていないという事実は、MSBPの加害者は「男女差別という憎むべき害悪」と関係しているというよりも、「女性(母親)という立場の自分勝手な、ひねくれた濫用」と関連があるといったほうがいいだろう。

 母親によるMSBPをジェンダーで説明することはが容易であるが、しかし安易でもあるというローゼンバーグの指摘には、かなり説得力がある。