著者:山竹 伸二[やまたけ・しんじ] (1965-) 作家。評論家。
筑摩書房 こころの病に挑んだ知の巨人 ─森田正馬・土居健郎・河合隼雄・木村敏・中井久夫 / 山竹 伸二 著
【目次】
目次 [003-008]
序章 日本の心の治療を支えてきた人々 009
1 日本における心の治療の歩み 011
黎明期の日本の精神医療
戦後日本の精神病理学
精神医療現場の変化
心理学から生まれた心理臨床の専門家
2 人間存在の本質的解明へ 022
心の治療の現場はどのように変わるのか?
五人の心理的治療者の人間論に学ぶ
第1章 森田正馬――思想の矛盾を超えて 029
1 心の病はなぜ起きるのか?――森田理論の原理 031
森田正馬の生涯
神経質とヒポコンドリー性基調説
精神の交互作用
森田理論の核心――“思想の矛盾”
「あるがまま」に生きる
〈気分本位〉と〈事実本位〉
2 森田療法の実践 051
森田療法の治療プロセス
神経質の治療法
強迫観念の治療法
3 森田正馬の人間論 063
生の欲望と死の恐怖
森田理論の問題点
自己観察と自己了解
森田療法の可能性
第2章 土居健郎――「甘え」理論と精神分析 075
1 精神療法と精神分析 077
「甘え」理論はいかにして生まれたか?
精神療法(精神分析)の目的
治療者の感情を活かす
抵抗の解釈
洞察と「甘え」の問題
土居健郎の治療例
2 「甘え」理論と治療への応用 095
『「甘え」の構造』を読む
甘えと現代社会の病理
「わかる」患者と「わからない」患者
「甘え」理論から見た治療論
3 土居健郎の人間理解と治療論 108
自然科学的な枠組みを超えて
なぜ患者の感情を感知できるのか?
一般存在様式としての「甘え」
第3章 河合隼雄――無意識との対話 119
1 日本人の心の深層 121
臨床心理学からの挑戦
日本社会の中空構造
ユング派の昔話論
『昔話と日本人の心』を読む
2 カウンセリングとそのプロセス 133
初期のカウンセリング論
若き日の事例
事例の検討――心理臨床家の役割
成熟モデルと自然モデル
3 深層意識の構造と心理療法 150
深層意識と自己
自己実現と物語
治療者の態度と逆転移
4 日本人論と治療の本質 160
日本人への心理的治療
クライエントは自分で治るのか?
心の治療の本質
第4章 木村敏――現象学から生命論へ 173
1 自己と「あいだ」の思想 175
思想家と臨床家のあいだ
「あいだ」の思想の原体験
うつ病の罪責感から見た日本人
統合失調症と“自己”
現象学的直観診断
「あいだ」の病としての統合失調症
2 精神病理の時間論 192
統合失調症の時間意識
うつ病の時間意識
精神病理における二つの存在構造
永遠の現在を生きる祝祭の精神病理
時間と自己
3 生命論と人間論 208
生命論と医学的人間学
共通感覚とアクチュアリティ
「時間」と「自己」からみた人間論
生命論の問題点と可能性
第5章 中井久夫――「世に棲む」ための臨床 221
1 統合失調症の病理論 223
臨床の着地点
統合失調症論
発病から寛解、あるいは慢性化へ
慢性化の危険性
2 治療者の態度と精神療法 234
「心の生ぶ毛」とベース・チェンジ
「あせり」から「ゆとり」へ
風景構成法の考案
3 統合失調症の治療プロセス 245
治療的合意と信頼関係 発病の論理」と「寛解の論理」
急性精神病状態の治療原則
治療の終結と社会復帰
発達論と思春期問題
4 治療の背景にある人間像 259
治療者の主観性と対人関係
中井久夫の人間論
人間存在と心理臨床
終章 文化を超えた心の治療へ 271
1 治療論と人間論の共通性 273
心の治療と人間理解
人間の欲望と不安
〈自己了解〉は生じているか?
治療者の内面性
2 日本人論から見た心の治療 289
日本人論を超えた関係性の原理
人間論から治療論へ
あとがき(二〇一七年一二月 山竹伸二) [299-302]