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『社会科学のリサーチ・デザイン――定性的研究における科学的推論』(Gary King, Robert O. Keohane, Sidney Verba[著] 真渕勝[監訳] 上川龍之進ほか[訳] 勁草書房 2004//1994)

原題:Designing Social Inquiry: Scientific Inference in Qualitative Research (Princeton University Press, May 2, 1994)
著者:Gary King(1958-) 計量政治学政治学方法論。
著者:Robert Owen Keohane(1941-) 国際政治学
著者:Sidney Verba(1932-2019) 政治学、司書。
監訳:真淵 勝[まぶち・まさる](1955-) 行政学、公共政策分析。
訳者:上川 龍之進[かみかわ・りゅうのしん](1976-) 政治過程論、政治経済学、現代日本政治論、行政学
訳者:松尾 晃孝[まつお・あきたか] 政治学、データサイエンス。
訳者:辻 陽[つじ・あきら] 地方自治論。
訳者:松本 俊太[まつもと・しゅんた] 政治過程論(現代アメリカ政治、現代日本政治)。
訳者:藤井 禎介[ふじい・ただすけ](1972-) 政治過程論。
訳者:中村 悦大[なかむら・えつひろ] 数理モデル行政学政治学への応用。
装丁:板谷 成雄[いたや・しげお](1955-) 装丁、編集、エディトリアルデザイン
件名:社会科学--方法論
NDLC:EA3 社会・労働 >> 社会科学 >> 社会科学方法論
NDC:301.6 社会科学--理論.方法論


社会科学のリサーチ・デザイン - 株式会社 勁草書房


【目次】
訳者はしがき(2003年8月 監訳者) [i-v]
はしがき(ギャリー・キング ロバート・O・コヘイン シドニー・ヴァーバ Massachusetts州Cambridge) [vii-ix]
目次 [xi-xvii]


第1章 社会科学の「科学性」 
第1節 はじめに 001
第2節 研究設計の主要な構成要素 013
  1 研究の問いの改善
  2 理論の改善
  3 データの質の改善
  4 既存データの利用の改善
第3節 本書のテーマ 034
  1 理論とデータをつなぐ観察可能な含意を用いること
  2 てこ比を最大化すること
  3 不確実性を報告すること
  4 社会科学者のように考えること


第2章 記述的推論
第1節 一般的知識と個別的事実 042
  1 「解釈」と推論
  2 「固有性,複雑性,そして単純化
  3 比較事例研究
第2節 推論:データ収集の科学的目的 055
第3節 定性的研究の数式モデル 059
第4節 データ収集の数式モデル 061
第5節 細かな歴史的事実の要約 063
第6節 記述的推論 066
第7節 記述的推論の判定基準 075
  1 バイアスのない推論
  2 有効性


第3章 因果関係と因果的推論
第1節 因果関係の定義 091
  1 因果関係の定義と定量的研究の例
  2 定性的研究の例 
第2節 因果関係のその他の定義 101
  1 「因果メカニズム」
  2 「多重因果関係」
  3 「対象的」因果関係と「非対象的」因果関係
第3節 因果的効果を推定するために必要な仮定 108
  1 単位同質性〔ユニット・ホモジニティ〕の仮定
  2 条件付独立〔コンディショナル・インディペンデンス〕の仮定
第4節 因果的推論の判定基準 115
第5節 因果的理論を構築するためのルール 118
  1 ルール1:反証可能な理論をつくること
  2 ルール2:内的に一貫した理論を立てること
  3 ルール3:従属変数を注意深く選ぶこと
  4 ルール4:具体性を最大化させること
  5 ルール5:可能なかぎり包括的に理論を述べること


第4章 何を観察するか
第1節 不定な研究設計 142
  1 観察の数よりも推論の数が多い場合
  2 多重共線性
第2節 無作為選択の限界 150
第3節 選択バイアス〔セレクション・バイアス〕 154
  1 従属変数に沿った選択
    (1) 研究者が引き起こす選択バイアスの例
    (2) 現実世界が引き起こす選択バイアスの例
  2 説明変数に沿った選択
  3 その他の選択バイアス
第4節 観察の意識的な選択 168
  1 説明変数に沿った観察の例
  2 従属変数がとる値の範囲の選択
  3 説明変数と従属変数の両方に沿った観察の選択
  4 鍵となる原因変数が一定となるような観察の選択
  5 従属変数が一定となるような観察の選択
第5節 むすび 179


第5章 何を避けるべきか
第1節 測定誤差 182
  1 体系的な測定誤差
  2 非体系的な測定誤差
    (1) 従属変数における非体系的な測定誤差
    (2) 説明変数における非体系的な測定誤差
第2節 関係のある変数の排除 201
  1 変数無視のバイアス〔オミッティッド・ヴァリアブル・バイアス〕の計測
  2 変数無視のバイアスの例
第3節 関係のない変数を含めること:有効性の低下 217
第4節 内生性 221
  1 バイアスのある推論の補正
  2 従属変数の分解
  3 内生性の問題を変数無視のバイアスの問題に転換する
  4 内生性を回避するための観察の選択
  5 説明変数の分解
第5節 説明変数の値の割り当て 234
第6節 研究状況の制御 237
第7節 むすび 245


第6章 観察の数を増やす
第1節 因果的推論のための単一観察設計 248
  1 「決定的」事例研究
  2 類推〔アナロジー〕による説明
第2節 どれくらいの数の観察があれば十分か 253
第3節 少数の観察から多くの観察をつくる 257
  1 同じ測定,新しい観察単位
  2 新しい測定,同じ観察単位
  3 新しい測定,新しい観察単位
第4節 むすび 270


References [273-284]
  参考文献のうち邦訳のあるもの
索引 [285-287]
著訳者略歴 [288]





【抜き書き】


・本書における科学的研究の定義から得られる、科学者へのインプリケーション(p. 9)。本文の傍点による強調箇所は太字で代用した。

科学が最もよい状態にあるのは,科学が社会的な営為となっているときである.研究者あるいは研究チームは,知識にも洞察にも限界があるなかで努力しており,間違いは避けられないものである.しかし,間違いは,他の研究者によって指摘される.科学は社会的なものであることを理解すれば,批判されないような研究をしなければならないという拘束から研究者は解放される.研究課題の記述に貢献するか,その概念化に貢献するかのいずれであれ,また理論に貢献するか,理論の検証に貢献するかのいずれであれ,研究が重要な貢献をするために,批判されることのないような研究をする必要はないことがわかるからである.自身の研究が学界の関心事に明示的に取り組み(もしくは学界の関心を新しい方向へ向け直し),公開された手法を用いて,自分が利用できる情報と科学的ルールとに矛盾しない推論を作り出すかぎりにおいて,その研究は学界に貢献していると考えられる.たとえマイナーなものであるとしても,机の引出しやコンピューターの中に永久にしまわれたままの「大作」よりは,学界に対し,より大きな貢献をしたといえるのである.