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『感染症ワールド――免疫力・健康・環境[第3版]』(町田和彦 早稲田大学出版部 2010//2005)

著者:町田 和彦[まちだ・かずひこ] (1944-)  予防医学、健康福祉医療政策、環境保健学、血清疫学。
NDC:493.8 感染症.伝染病学


感染症ワールド[第三版] | 早稲田大学出版部


【目次】
目次 [i-vi]
はじめに [001-004]


第一章 感染症と人間、その壮絶な戦い 005
1 人類の進化と感染症 005
2 古代社会と感染症――古代社会からギリシャ、ローマヘ 006
3 中世と感染症――ペスト、天然痘、麻疹(はしか) 008
4 近世と感染症――コレラの出現、パスツールとコッホ 009
5 二〇世紀と感染症――ウイルスの発見、抗菌剤の開発 012


第二章 病原微生物と免疫の世界――敵を知り己を知る 016
1 さまざまな病原体 016
  微生物の分類と大きさ
  光学顕微鏡と電子顕微鏡
  寄生虫と真菌
  原虫
  原核生物と真核生物
  細菌の仲間
  マイコプラズマ
  リケッチア
  クラミジア
  ウイルス
  プリオン
2 病原微生物の侵入とその排除機構 026
  感染経路
  非特異免疫能
  潜伏期・感染発症指数
3 免疫の仕組みと微生物の排除 030
  生体防御機能に関係する細胞
  リンパ球とマクロファージ
  Tリンパ球・Bリンパ球・キラーT細胞
  サイトカイン
  メモリーB細胞
4 活性酸素と人間生活 034
  予防医学の重要性
  ライフスタイルと生体防御機能
  貪食細胞(好中球・マクロファージ)と活性酸素
  ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
  スカベンジャー 


第三章 日本の感染症対策――伝染病予防法と感染症法 040
1 一〇〇年以上も続いた伝染病予防法とは 040
  伝染病予防法
  感染症
  伝染病予防法と感染症法の違い
2 一類感染症 043
3 二類感染症 043
4 三類感染症 048
5 四類感染症 048
6 五類感染症 049
7 新感染症と指定感染症――将来に備えて未知の感染症のために 051
8 感染症法施行後も別の法律で届出を義務づけられている疾患――食中毒と食品衛生法 054
9 結核 054


第四章 日本人を襲うさまざまな感染症 053
1 ワクチンの徹底――子供の伝染病 057
  MMRワクチンの問題
  日本脳炎ワクチンの問題
  集団接種か個別接種か
2 抗菌剤の発達、そして感染症の逆襲 061
  抗菌剤(抗生物質)の開発
  抗菌剤の乱用
  弱毒から強毒へ
  耐性菌の出現と院内感染
3 成人病と感染症 065
  肝癌と感染症
  他の癌と感染症
  白血病感染症
  ヘリコバクター・ピロリ菌(胃潰瘍・十二指腸潰瘍、そして胃癌)
  癌以外の成人病と感染症
4 高齢者と感染症 070
  多様な風邪ウイルスとインフルエンザ
  老人と風邪と肺炎ノロウイルス


第五章 終わらない性感染症エイズ 073
1 性病 073
  梅毒
  淋病
2 性感染症 075
  青少年の性交経験率の増加
  性感染症
  クラミジア
  咽頭からの感染
  癌と性感染症
3 エイズの出現 078  
  エイズの起源
  エイズの蔓延
  日本のエイズ
  中国とインドのエイズ
  世界のエイズ
  これから危惧されること
4 変わってきたエイズ 085
  HIV感染――そのときからだの中で何が起こるのか
  エイズウイルスの生体内動態
  急性症状
  無症候性キャリアー期
  エイズの成立
  治療法の進歩
  新型ウイルスの出現的
  G型肝炎ウイルスのHIVウイルス抑制
  それでも蔓延するエイズ
5 エイズと社会 092
  エイズ治療薬をめぐる問題
  ブラジルの成功
  アフリカでの治療薬
  ワクチンの問題
  薬剤エイズ
  血友病患者とC型肝炎
  エイズ感染の可能性に身に覚えのある人はう


第六章 環境の変化と感染症 100
1 衰えない昆虫と動物が媒介する感染症 100
  海外の昆虫媒介感染症
  マラリア
  西ナイル熱(ウエストナイル熱)
  日本脳炎デング熱など
  黄熱病
2 気をつけて! 海外生活 105
  狂犬病・リッサウイルス感染症
  海外生活(赴任・留学)のためのサイト
3 新たな感染症が次々と世界を襲う――新興感染症 109
  環境破壊と感染症
  エボラ出血熱
  マールブルグ
  その他の出血熱・中南米の出血熱
4 先進諸国でも続々と出現 115
  大腸菌の変異(O157の出現)
  劇症型A群レンサ球菌感染症(人食いバクテリア
  ライム病
  ハンタウイルス肺症候群
  レジオネラ症(在郷軍人病)
  人のプリオン
  狂牛病からBSE牛海綿状脳症、新変異型CJD)の出現


第七章 二一世紀の感染症の世界は? 126
1 二一世紀にも新たな感染症の脅威 126
  SARS(サーズ)
  ニパウイルス
  鳥インフルエンザウイルス(高病原性鳥型インフルエンザウイルス)
2 突然起こった新型インフルエンザH1N1の出現 132
3 経済の混乱と再興感染症の拡散 134
4 環境破壊、地球の温暖化と航空機による伝染病の拡散 135
5 生物テロの恐怖 136


おわりに―― 二一世紀の人々と感染症 [141-143]
付四類・五類の感染症の説明 [144-165]
参考文献 [166-171]
人名索引 [8]
語句索引 [5-7]
病原体・病名索引 [1-4]




【図・表・写真の一覧】
表1-1 人類の発展と感染症の拡大 007
表1-2 古代社会の感染症(人骨、歯、ミイラ、パピルス、粘土板、木簡より類推) 007
表1-3 ペストとその影響 009
表1-4 病原体の発見 011
表1-5 化学療法剤の発達 013

表2-1-1 寄生体(寄生虫と病原微生物)の分類と主な特徴 017
図2-1-1 微生物の種類と大きさの比較 018
図2-1-2 光学顕微鏡と電子顕微鏡の原理(『人間生活と極微の世界』1961年より) 019
写真2-1 ブドウ球菌とその分裂の様子および回帰熱ボレリア(〃) 020
表2-1-2 人に寄生していろいろな病気の原因になるもの 021
表2-2-1 病原微生物の感染経路 027
図2-2 微生物の侵入と生体反応 028
表2-2-2 病原微生物の潜伏期と感受性指数 029
表2-3 生体防御に関係する細胞 031
表2-4-1 活性酸素フリーラジカル)の生体への影響 036
表2-4-2 活性酸素を打ち消す物質(スカベンジャー) 036
図2-4-1 ラットに自由運動を行わせたときの貪食率と活性酸素生産率との関係(「ラットの自発走運動モデルの基礎的検討および健康指標に及ぼす慢性影響」より) 037
図2-4-2 心理的ストレス負荷ラットとその対照群の貪食率と活性酸素生産率(『臨床スポーツ医学』19巻11号より) 038

表3-1 旧法定伝染病の大流行時の患者数、死亡者数および致命率と現在の状況の比較対象 041
表3-2 感染症法で指定された感染症(1) ―― 一類感染症 044-045
表3-3 感染症法で指定された感染症(2) ――二類感染症 046
表3-4 感染症法で指定された感染症(3) ――三類感染症 047
表3-5 感染症法で指定された感染症(4) ――四類感染症 048
表3-6 感染症法で指定された感染症(5) ――五類感染症 050
表3-7 感染症法で指定された感染症(6) ――新感染症と指定感染症
表3-8-1 食品衛生法により届けられた食中毒 052
表3-8-2 食中毒を起こす病原微生物の特徴 053
図3-9 主要年次別、年齢階級別の結核死亡率の推移 055

表4-1 定期の予防接種 059
  ※『図4-1』は見当たらない。
図4-2 感染症撲滅と耐性病原体 064
表4-3 ヒト悪性腫瘍に関連するウイルスとほかの感染症 066
表4-4 風邪と肺炎を起こす病原体の種類と特徴 071 

表5-1 旧性病予防法に指定されていた性病 074
表5-2 主な性感染症 076
表5-3-1 エイズの起源と蔓延 080
表5-3-2 平成21年現在[当時]のHIV感染者数およびエイズ患者の国籍別、性別、感染経路別報告数の累計 082
表5-4-1 通常の免疫システムとエイズウイルス侵入時の免疫システム 087
表5-4-2 エイズ治療薬 089
表5-5-1 エイズ治療費をめぐる問題 093
表5-5-2 薬剤エイズ関係史 096-097
表5-5-3 エイズが心配な時は? 098

表6-1-1 世界中の主な感染症による感染と死 101
表6-1-2 マラリアの一般的症状と種類 102
表6-2-1 海外で感染する主な疾病とその原因・対策 106
表6-2-2 地域別とくに注意したい感染症 107
表6-2-3 海外へ行く前にチェックしたいサイト 108
表6-3-1 エボラ出血熱の発生から現在まで 111-112
表6-3-2 マールブルグ病(Marburg Disease) 114
表6-4-1 腸管出血性大腸菌の種類と特徴 116
表6-4-2 腸管出血性大腸菌の集団発生 116
表6-4-3 HUS(溶血性尿毒症候群)の患者の平均的臨床経過 118
表6-4-4 狂牛病感染の危険度 125

表7-4-1 生物兵器の歴史 137-138
表7-4-2 生物兵器に使用される可能性のある病原体 139
表7-4-3 遺伝子組み換えウイルスの危険性 139





【抜き書き】
・図表は割愛した。


p. 65

◆耐性菌の出現と院内感染

 一方、フレミングの予言どおり、次々と開発された抗菌剤はいずれも数年もたたないうちに耐性菌を見るようになり、抗菌剤により一時は征圧も容易と見られていた疾病も耐性菌に悩まされ続けてきている(図4-12参照)。 近年、アメリカのエイズ患者に蔓延している結核では六剤耐性などという耐性菌も出現しているし、MRSAの院内感染の横行により時々集団感染による死亡が問題になっているばかりでなく、最後の切り札といわれているバンコマイシンの耐性菌も現実のものとなってきている。有史以来人類を悩ませてきたマラリアさえも、蚊の殺虫剤に対する耐性やマラリア原虫の抗菌剤に対する耐性からいまだに世界中で毎年数億人の患者と数百万人の死亡者を出している状態であることを考えると、病原微生物の制圧などと軽々しく言えるものではないことをわれわれは肝に銘じておかなくてはならない。