著者:小塩 海平[こしお・かいへい](1966-) 植物生理学。
NDC:493.14 内科(アレルギー性疾患.膠原病.体質異常)
目はかゆく、鼻水は止まらない。この世に花粉症さえなければ――。毎年憂鬱な春を迎える人も、「謎の風邪」に苦しみつつ原因究明に挑んだ一九世紀の医師たちの涙ぐましい努力や、ネアンデルタール人以来の花粉症との長い歴史を知れば、きっとその見方は変わるだろう。古今東西の記録を博捜し、花粉症を愛をもって描く初めての本。
【目次】
はじめに [i-iii]
目次 [v-ix]
第1章 花粉礼賛 001
1 偉大なる創造物 003
花粉の誕生
花粉はなぜ飛ぶのか
風を愛する花、虫を愛する花
2 花粉発見史 008
世紀の顕微鏡学者たち
植物にも性がある!
自然の神秘
花粉への讃歌
3 日本での事始め 021
最初に花粉をみた日本人
花粉という日本語
サムサノナツハオロオロアルキ
第2章 人類、花粉症と出会う 029
1 ファースト・フラワー・ピープル 030
花粉は情報の宝庫
シャニダール洞窟での発見
ネアンデルタール人は花粉症だった?
2 最初の花粉症患者は? 036
アテネのヒッピアス説
聖書の花粉症
クレオパトラとエジプト医学
アッシリアのナツメヤシ授粉作業
日本最古のナツメヤシ
古代中国の伝承
3 バラ風邪の発見――古代から中世へ 047
医学の父、ヒポクラテス
天才ラーゼス
詩に謳われたバラ風邪
第3章 ヴィクトリア朝の貴族病?――イギリス 055
1 花粉症論文、初登場――ボストック 056
嘲笑の「新・文明病」
花粉症、医学会に初登場
ボストックの第一講義
ボストックの第二講義
諸説紛糾した病因論
ドイツ人気質の研究者ヒューブス
2 花粉症研究の父、ブラックレイ 067
実験的研究が突き止めた「黒幕」
無謀な実験
空中の花粉量を測定する
ダーウィンからブラックレイへの手紙
「貴族病」の説明
3 名誉ある病に昇格 079
ステータスシンボルとしての花粉症
優生学的発想への誘惑
花粉症は神経衰弱?
松下禎二と病原菌説
ワクチン開発の試み
第4章 ブタクサの逆襲――アメリカ 089
1 花粉症の選ばれし家、アメリカ 090
モリル・ワイマン医師と「秋カタル」
犯人はブタクサ?
2 フロンティア開発とブタクサ 096
広がるブタクサのフロンティア
花粉症リゾートの形成
鼻持ちならない花粉症学会
ビアードのアンケート
ヘミングウェイと花粉症リゾート
3 アメリカ人とブタクサの攻防 107
世界初の空中花粉地図の作成
エアコンとインドアライフ
「道徳雑草」への出世
スーパーウィードへの変身
第5章 スギ花粉症になることができた日本人 117
1 花粉症への「あこがれ」 118
枯草熱の記憶
アメリカで花粉症になった日本人
ジェームス原の花粉症研究
民族性をめぐって
GHQと花粉症
2 初症例から花粉症裁判まで 130
花粉症患者、ついに出現
田淵幸一選手の引退
スギ植林政策を問うた花粉症裁判
3 2人に1人が花粉症 135
スギ花粉症は日本人の証明?
誇るべき罹患率
第6章 花粉光環(コロナ)の先の世界 139
1 花粉症の効用 140
病気にかかるというアドヴァンテージ
衛生仮説と消毒思想
共生への道
スギは日本の秘宝!
シーボルトが愛したスギ
無花粉スギ・少花粉スギ
2 私の研究遍歴 148
"鳥もち作戦"
スギ花粉との苛酷な闘い
スギ花粉だけを「自殺」させる
シドウィア・ジャポニカに対する苦言
花粉症軽減モデル都市の夢
3 花粉症と人類の将来 154
いくつかの予言
花粉光環を眺めよう!
あとがき(二〇二〇年一一月 小塩海平) [159-162]
【関連記事】
『感染症と文明――共生への道』(山本太郎 岩波新書 2011) - contents memorandum はてな