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『ジャーナリズムを学ぶ人のために[新版]』(田村紀雄,林利隆[編] 世界思想社 1999//1993)

編者:田村 紀雄[たむら・のりを] (1934-)
編者:林 利隆[はやし・としたか] (1939-)
著者:大井 眞二[おおい・しんじ]
著者:吉岡 至[よしおか・いたる]
著者:浜崎 紘一[はまざき・こういち]
著者:原田 三朗[はらだ・さぶろう]
著者:前澤 猛[まえざわ・たけし]
著者:土屋 礼子[つちや・れいこ]
著者:塚本 三夫[つかもと・みつお]
著者:植田 康夫[うえだ・やすお]
著者:上田 裕[うえだ・ゆたか]
著者:権田 萬治[ごんだ・まんじ]
著者:小宮山 惠三郎[こみやま・えさぶろう]
著者:後藤 嘉宏[ごとう・よしひろ]
著者:藤岡 伸一郎[ふじおか・しんいちろう]
著者:中北 宏八[なかきた・こうはち]
著者:佐藤 正晴[さとう・まさはる] 



【目次】
はしがき [i-ii]
目次 [iii-ix]


第1章 大学におけるジャーナリズム教育[田村紀雄] 003
1 ジャーナリズム教育と新聞学 003
  ジャーナリズムという言葉
  コミュニケーション史のなかの新聞学
2 コミュニケーションの発達を背景に 007
  メディアの技術革新と民主主義
  大学におけるジャーナリズム教育
  コミュニケーション学のなかのジャーナリズム論
  アメリカのジャーナリズム・カリキュラム
  なぜジャーナリズムを学ぶのか
参考文献 019


第2章 メディアの自由の歴史――英米の理論の系譜[大井眞二] 020
1 古典的自由論の起源 020
  J・ミルトンの自由論
  古典的自由論の意味
  ジェファソンの共和主義的自由論
2 古典的自由論の変容 025
  J・S・ミルの自由論
  公共圏の変質
3 現代的自由論の展開 029
  社会的責任論
  知る権利
  アクセス権
4 現代的自由論の新たな課題 034
  メディア環境の変化
  メディア理論の欠陥
参考文献 039


第3章 社会的情報としてのニュース[吉岡至] 040
1 ニュースとは何か  040
  ニュースの特質1 レリヴァンス
  ニュースの特質2 リアリズム
  ニュースの特質3 アクチュアリティ
2 何がニュースとなるのか 047
  ニュース要因――出来事の特質
  ニュースバリュー ――ニュース報道の実践
  ニュース内容――社会的現実の構成
3 ニュースはどんな働きをしているか 053
  マス・コミュニケーションとしてのニュース
  ジャーナリズム活動としてのニュース
  疑似環境を形成するニュース
4 現実のホログラム 060
参考文献 061


第4章 国際報道の実際と今後の課題[浜崎紘一] 062
1 国際報道の新環境 062
  世界情勢を日本人の視点で
2 新聞社の海外取材網 064
  特派員の配置
  特派員はどのように働いているか
3 国際報道の課題 071
  速報競争との決別
  情報の洪水
  新しい発想の国際報道を
  「自社世界取材網」の欺瞞
参考文献 077


第5章 取材報道活動と法・倫理[原田三朗] 078
1 取材報道活動の構造 078
  取材ということ
  取材の過程
  ニュースの意味づけ
2 取材報道と法的規制 082
  言論の自由とその限界
  知る権利と取材の義務
  名誉とプライバシー
  わいせつと危険な煽動
3 ジャーナリズムの倫理 089
  倫理の構造
  表現の倫理
  取材活動と倫理
4 ジャーナリストの職業倫理 093
  利益の衝突
  ジャーナリズムの自制
  追記
参考文献 097


第6章 「記者クラブ」制度とジャーナリズム[林利隆] 098
1 記者クラブをめぐる今日的論議 098
2 記者クラブの機能と活動 104
  情報カルテルの形成
  情報源との密接な関係
3 記者クラブの歴史 107
  言論統制による自主的活動の禁止
  GHQの指導と警告
4 記者クラブの問題性 110
  認められた外国記者の正式加入
  「知る権利」の規制
5 記者クラブ制度の将来 114
参考文献 117


第7章 メディア監視とアカウンタビリティ組織[前澤猛] 118
1 メディアの役制「ウォッチ・ドッグ」 118
  第四権力とメディア・アカウンタビリティ
  メディアの公共性と双方向性
2 メディア監視機構の必要性 120
3 メディア監視、三つの機関 123
  (1) 新聞(プレス)評議会
  (2) オンブズマン
  (3) 紙面審査機構
参考文献 131


第8章 メディアにおけるマイノリティとジェンダー土屋礼子] 132
1 メディアにおける少数派 132
2 民的マイノリティとメディア 133
  メディアが描いてきた民族的偏見
  民族的マイノリティとエスニック・メディア
  エスニック・メディアの新しい潮流
3 メディアにおけるジェンダー 141
  近代メディアの成立とジェンダー
  表現におけるジェンダー・バイアス
  送り手としての女性の進出
参考文献 145


第9章 権力と新聞[塚本三夫] 146
1 「権力と新聞」問題へのアプローチ――いくつかの前提 146
  問題のたて方
2 「権力と新聞」――基本的内保軸としての対抗関係の歴史性 149
  権力―支配―服従関係
  対抗関係の歴史性
  「対抗関係」の尺度としての「対抗値」
3 『近代における「対抗関係」の特質 154
  ヨーロッパ近代における権力―新聞関係
  日本「近代」における権力―新聞関係
4 権力―新聞関係の規代 157
  戦後新聞メディアの変質と対抗性のありか
参考文献 160


第10章 新聞と文化[植田康夫] 161
1 文芸欄に端を発する文化欄 161
  文芸と論壇を二大柱に
  「文学新聞」と呼ばれた読売
2 漱石が作った朝日の文芸欄 163
  編集者的役割果たした漱石
  「文藝」欄創設で漱石を独占
3 大阪毎日新聞と都新聞の場合 165
  毎日の「文学欄」新設
  呼びもののコラム生み出す
  人気のある「大波小波
  文芸ジャーナリズムの機能
4 出版文化や演劇界への影響 168
  新刊書批評の開拓
  費用がかかる読書欄
5 新しいジャンルを扱う現代の文化欄 170
  作りにくくなった文化欄
  活字こそ文化の本流
6 現代にいる文化欄の機能 172
  文化欄のもつ特色
  現象を理念的にとらえる
  編集という行為によって
参考文献 175


第11章 余情報産業としての新聞社[上田裕] 176
1 社会の到来 176
2 幅活動の構造と余暇情報 178
  余暇とは何か
  「余暇活動」の条件
  余暇情報とは何か
3 余暇情報と新聞 183
  余暇情報産業の成立
  メディア・イベンターとしての新聞社
  生活総合情報紙としての新聞
4 余暇情報産業としての新聞社の課題 186
参考文献 188


第12章 新聞の技術革新[権田萬治] 189
1 デジタル化時代の新聞 189
  電子新聞の現状と問題点
2 戦後の新聞の技術革新の歩み 193
  コンピュータによる新しいCTS
  CTSによる新聞製作の基本的な作業工程
3 技術革新と新聞編集 197
  ワープロ入力の浸透と校閲部門の縮小
  進むページネーションのネットワーク化
  新聞文字の拡大
4 印刷面での技術革新 200
  定着したオフセット印刷とキーレス化の進展
  進む新聞用紙の軽量化
5 これからの新聞製作の技術革新 20
参考文献 203


第13章 エレクトロニクス化と新聞[小宮山惠三郎] 204
1 新聞社の情報ネットワーク化の背景 205
  新聞社の経営課題
  媒体をめぐる競争の激化
  技術の進展と高度情報ネットワーク化の出現
  広告市場の変化
2 新聞社のエレクトロニクス化とネットワーク 209
  新聞社の技術導入の経緯
  新聞社のネットワークと融合化
3 新聞社のエレクトロニクス化の現状 214
  データベース
   (1) 日本経済新聞社 
   (2) 朝日新聞社 
   (3) 毎日新聞社 
   (4) 読売新聞社 
   (5) 共同通信社  
   (6) 地方紙、スポーツ紙、業界紙
   (7) その他のデータベースサービス
  パソコン通信
  CATV(ケーブルテレビ)
参考文献 220


第14章 データベース産業としての新聞社[後藤嘉宏] 221
1 新聞社のデータベース産業化の背景と問題点 221
  データベースの定義
  データベース産業化の背景
  原紙とデータベース記事の相違
  原紙とデータベース記事の目的の矛盾
2 新聞社のデータベース・サービスの歴史 226
  日本経済新聞社が先行
  新聞社のデータベースへのさまざまな関わり
  新聞記事データベースの前史
3 新聞社のデータベースの現状 229
  データベース・サービス全体に占める新聞社のデータベース・サービスの位置づけ
  合衆国の新聞記事の検索の事情
  新聞各社の記事データベースの現状
  縮刷版とデータベース
  電子新聞とデータベース・サービス
4 新聞社のデータベース産業化の社会的意義 234
  データベース化の意義と問題点
  報道への影響
参考文献 237


第15章 読者・視聴者とジャーナリズム――ジャーナリズムに向き合う「私たち」の諸問題[藤岡伸一郎] 238
1 読者・視聴者=「私たち」の変化 238
  送り手・受け手の不思議な体験
  つくり手とテレビ・メディアの変化
  雑誌・新聞にみる読者と対話
2 メディア・リテラシーと「私たち」の視点 244
  ジャーナリズムと向き合う
  メディア・リテラシーとおとな
3 新しい「私たち」の向き合い方 248
  「Vチップ」問題と新・視聴者運動
  「メディア・アクセス」と発言の場
参考文献 253


第16章 ジャーナリズムと地域社会[中北宏八] 255
1 新聞、出版と地域社会 255
  全国紙と地方紙
  記事内容の違い
  全国紙の地域問題への取り組み
  地域出版・タウン誌と地域文化
2 放送と地域社会 260
  日本の放送産業の構造
  地方民放「炭焼き小屋」論
  元気なローカルFM
3 ニューメディアと地域社会 264
  「ニューメディア」の失敗
  CATVも苦闘
  インターネットで地域復権
参考文献 267


第17章 職業としてのジャーナリスト、その労働市場[佐藤正晴] 268
1 ジャーナリストの条件 268
  ジャーナリストの素質
  ジャーナリストに向いている人間とは
2 ジャーナリストの基本的性格 271
  ジャーナリストであることの意味
  言論の自由とジャーナリスト
  放送とジャーナリスト
3 これからのジャーナリスト 274
  メディア・ジャーナリストとフリー・ジャーナリスト
  ジャーナリストのプロフェッショナル教育
  ジャーナリストの将来
参考文献 279


付参考文献目録(吉岡至・作成) [281-300]
 1 講座・入門書・定期刊行物など 
  (1) 講座・シリーズもの 
  (2) 入門書・概説書 
  (3) 定期刊行物等 
 2 テーマ別の参考文献 
  (1) ジャーナリズム史
  (2) ジャーナリズム論 
  (3) 言論・法制 
  (4) 文化・産業
執筆者 [302-304]



【抜き書き】


□106頁。林利隆[執筆] “第6章 「記者クラブ」制度とジャーナリズム”から抜粋。

◆情報源との密接な関係
 このような仕組みのうえに成り立つ組織としての記者クラブは、当然のことながら、情報源ときわめて密接な関係を構築する。その接点となるのが情報源の広報部門である。記者クラブのメンバーに対するさまざまな便宜供与・サービス提供の窓口となるとともに、情報源の広報戦略を立案し、記者クラブに発表する情報の形式と内容を整え、タイミングをはかるのが広報部門の主要な任務とされる。かりに、記者クラブへの便宜供与・サービスが過度にわたれば、それは、情報を提供する側と収集する側の「癒着」と呼ばれる不明朗な関係になるだろう。現実に、そうした腐敗現象が陰に陽に語られることもかつてあった。つけ加えていえば、政治家と政党関係の記者クラブに所属する政治記者との間でも、政治情報の流通をめくって、癒着とみられるような関係状況がしばしば指摘されて、今日に至っている。
 また、すでに述べたとおり、情報源‐公共機関の広報が活発になればなるほど記者クラブの対応は受動的にならざるをえない。広報の活発化は広報資料の量的増大のみを指すわけではなく、むしろ、その戦略的重要性がひろく認識されてきた結果、それが高度にシステム化、操作化してきた傾向をもいうのである。端的にいえば、情報源にとって都合の悪い情報、ニュース・メディアに知られたくない情報については隠したり、故意に歪曲したりする反面、知らせたい情報、アピールしたい情報は積極的に実質的価値以上に誇張してつくりあげたりする意図をもった広報が増大するのだ。かねて指摘されているのは、こうした戦略性をもった情報源の広報体制に、密接な関係を維持する記者クラブが組み込まれ、情報操作の対象になっているということである。ジャーナリスト倫理に違背するかのような癒着を一方の極とすれば、他方で、情報源の広報に組織としての記者クラブがシステマティックに荷担するという状況もひとつの癒着構造をあらわしているといえるだろう。