著者:宮地 尚子[みやじ・なおこ] (1961-) 文化精神医学。医療人類学。ジェンダー論。
NDC:493.74 機能的神経疾患.神経症
【目次】
はじめに [i-xi]
本書の構成/「心のケア」について
目次 [xiii-xv]
第1章 トラウマとは何か 001
1 トラウマという概念 003
心の傷と三要素
トラウマ体験
トラウマ体験の分類
事件の最中と直後の反応
2 トラウマ反応とPTSD 013
PTSD
PTSDの四症状群
回復の障害
PTSD以外の反応や症状
解離
喪失・悲嘆
3 何がトラウマで、何がトラウマでないか 029
線引き問題
トラウマのメカニズムの解明と「心のモデル」の問い直し
4 なぜトラウマか 033
拷問
いじめ
第2章 傷を抱えて生きる 039
1 埋もれていくトラウマ 041
〈環状島〉というモデル
震災とトラウマ
孤独に抗う
語られにくいトラウマ
秘密にするということ
語られないトラウマはどうなるか
2 子どものトラウマ 061
子どもへの虐待
アタッチメントの問題
虐待の長期的影響
3 恥と罪の意識 068
依存症
自傷
サバイバーギルト
第3章 傷ついた人のそばにたたずむ 077
1 そばにいるということ 079
自分自身の傷つき
代理外傷や燃え尽き
当事者との関係の変化や葛藤
ただそばにいることの難しさ
傍観者
2 トラウマ治療の実際 088
トラウマ臨床と専門家の役割
精神医療におけるトラウマの位置
効果的な治療?
医療現場におけるトラウマ
緩和ケアや緩和医療
治療共同体や自助グループ
どんなことが行なわれているか
3 トラウマを負った人にどう接するか 107
「語られないこと」を聞くことはできるか
聞く力
第4章 ジェンダーやセクシュアリティの視点 111
1 ドメスティック・バイオレンス(DV) 113
DVの実態
支配―被支配の構造
なぜ問題にされずにきたのか
加害者の「病理」
DVの子どもへの影響
デートDV
2 性暴力 130
一番遅れている対策
性暴力のPTSD発症率はなぜ高いのか
性暴力被害はなぜ理解されにくいのか
身体的暴力が伴わない場合
法の問題点
加害者が知人である場合
疑似恐怖
疑似恐怖と二次被害
恋愛の中の性的傷つき
男性、男児の性被害
子どもへの面接システムの確立
ワンストップセンター
3 ジェンダー視点の可能性 150
ジェンダーとトラウマ
PTSDの性差の研究
トラウマ反応の性差の生物学的な研究
社会文化的な性差
ジェンダー・センシティブに
ジェンダーの可塑性
第5章 社会に傷を開く 165
1 マイノリティとトラウマ 167
マイノリティであるということ
自己の尊厳を奪われて
二重の差別
マイノリティと狭義のトラウマ体験
トラウマに「慣れる」ことはない
2 「加害」を可能にするものと「正しさ」について 179
意図しない場合
暴力や支配を容易にするもの
正当化の理由
命令と実行の分離
正しさのもつ危険性
開き直りの正当化
3 グローバル社会の中で 198
グローバル・メンタルヘルスとトラウマ
紛争と難民
トラウマやPTSDへの文化的・社会的批判
生活文化の中の治療的要素
精神医療の底上げ
グローバル文化の変容とトラウマ
そして日本は?
沖縄戦とトラウマ
トラウマと集団との関係
不在のものを見る
第6章 トラウマを耕す 221
1 トラウマから学べること 223
耕すということ
人間の弱さと不完全さ
創造力の源泉
アートは何ができるのか?
修復的アート
現代史の生き証人
2 トラウマを昇華させる 234
解離とアート
アートと社会的メッセージ
秘密のアート
詩の言葉
文学の力
映画で追体験
フォトジャーナリズム
マンガの創造性
闇を見つめる
プロセスの重要性
あとがき(二〇一二年一二月 宮地尚子) [253-256]
主要引用・参考文献 [1-8]