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『倫理とは何か――猫のアインジヒトの挑戦』(永井均 ちくま学芸文庫 2011//2003)

著者:永井 均[ながい・ひとし](1951-) 
解説:大澤 真幸[おおさわ・まさち](1958-)
NDC:150.23 倫理学史・倫理思想史(西洋)
備考:『倫理とは何か――猫のアインジヒトの挑戦[哲学教科書シリーズ]』(産業図書 2003年)の文庫版。


筑摩書房 倫理とは何か ─猫のアインジヒトの挑戦 / 永井 均 著


【目次】
目次 [003-005]
はじめに [007-012]


序章 アインジヒトとの遭遇 何が問題か? 015
  (1) M先生の講義に対する不満 
  (2) 道徳的善悪の原型――天気の事例 
  (3) 「哲学」の使命 
  (4) 道徳の自立は自己破壊的である 
  (5) 哲学の使命 
  (6) 倫理学の課題 


第一章 

M先生の講義 I  プラトンアリストテレス(真の幸福について) 029
1 プラトン――調和と恋 029
  (1) グラウコンの挑戦 
  (2) ソクラテスの応答 
  (3) イデアとは何か 

2 アリストテレス――幸福と中庸 039
  (4) プラトンとの対立点 
  (5) イデアとカテゴリー 
  (6) 最高善としての幸福(エウダイモニア) 
  (7) 人間に固有の働き 
  (8) 習慣と中庸 
  (9) 思慮と意志の弱さ 
  (10) 配分的正義と調整的正義 
  (11) 友愛 
  (12) 観照 


アインジヒトとの議論 I  人はみな自分の幸福を求めているか? 056
  (13) グラウコンの挑戦とソクラテスの応答の関係 
  (14) 健全な悪人と不健全な善人 
  (15) いくつかのプラトン批判 
  (16) 擁護論としての倫理学 
  (17) 「中庸」論の真の価値 
  (18) 言葉の解釈の問題 
  (19) 道徳と幸福は内的な関係にあるか 
  (20) アクラシアにおける《今》と利己主義における《私》 


第二章 

M先生の講義 II ホッブズとヒューム(社会契約について) 081
1 ホッブズ――社会契約説の原型として 081
  (1) 「近代」の倫理的課題 
  (2)  ホッブズ道徳哲学の要 
  (3) 「意志」とは何か 
  (4) 自然状態のありさま 
  (5) 自然法自然権 
  (6) 道徳哲学上の不可避な構造の政治哲学的表現 
  (7)  ホッブズ思想への疑問――ロックとバトラー 

2 ヒューム――社会「黙約」説 093
  (8) 情念に従属する理性 
  (9) 感情に直接くみこまれた一般性 
  (10) 「美徳」の分類 
  (11) 正義規範はどのようにして成立したのか 
  (12) 共感の構造の内にある一般性 


アインジヒトとの議論 II 社会契約は可能か? 106
  (13) 社会契約はそもそも可能か 
  (14) 囚人のジレンマ 
  (15) 行為は一般性の選択ではない 
  (16) 二種類の利己主義の対立 
  (17) 社会契約はその前後を見渡せない 
  (18) 社会契約とは本当は何をすることなのか 
  (19) 自然的美徳としての「誠実さ」 
  (20) 社会契約はつねにすでに成功している 
  (21) ヒュームに対する不満 


第三章 

M先生の講義 III ルソーとカント(「自由」について) 131
1 ルソー ―― 一般意思としての「自由」 131
  (1) ルソーの問題意識はホッブズやズヒュームのそれとは違う 
  (2) 理性への自己服従としての自由 
  (3) 「一般性」の位置価 
2 カント――断えざる社会契約としての「自由」 139
  (4) 善意志――「愚かな善人」の可能性 
  (5) 傾向性と義務、合法性と道徳性 
  (6) 定言命法――普遍的な法則になることを意志しうるように行為せよ 
  (7) 命法によって表現される義務の分類 
  (8) 自然の斉一性の要求に対応する理性の普遍性の要求 
  (9) ヘーゲルのカント批判1 
  (10) 不完全義務の場合 
  (11) 一般性選択の根拠 
  (12) 「目的」としての「人格」――定言命法のもうひとつの定式 
  (13) カント哲学全体のなかでの倫理学の位置づけ 
  (14) ヘーゲルのカント批判2 


アインジヒトとの議論 III 功利主義の普遍化は不可能か? 160
  (15) ルソーが問えない問い 
  (16) 義務と傾向性の対立をめぐるカントの議論はつまらない? 
  (17) 「内面の法廷」の意義 
  (18) 悪事は単なる分業か 
  (19) 「祐樹のテーゼ」の最初の提示 
  (20) 可能な経験は類例をもつ 
  (21) 「祐樹のテーゼ」の再提示 
  (22) 利己主義の普遍化は可能か 
  (23) ヘーゲルのカント批判はカントにホッブズでもあることを要求する 
  (24) カントの利己主義批判は無効である 
  (25) 道徳について哲学することの固有の困難 
  (26) 他人をあたかも自分であるかのように 
  (27) 意志的に道徳に従わない自由 
  (28) 善人は幸福であるべき? 


第四章 

M先生の講義 IV ベンサムとミル(利己主義について) 191
  (1) 直接的善悪によって道徳的善悪を定義する 
  (2) 道徳それ自体に価値はない 
  (3) 功利性原理の「証明」 
  (4) 「証明」の第一段階前半とムーアのミル批判 
  (5) ムーアの批判からミルを擁護する 
  (6) 「証明」の第一段階後半――究極目的としての幸福 
  (7) 実現のための手段ではなく一部分 
  (8) 「証明」の第二段階 
  (9) ミルにおける普遍化(一般化)のプロセス 
  (10) 問題点(1) 平等・自由・真理 
  (11) 問題点(2) 測定方法 
  (12) 問題点(3) 総量に意味があるか 
  (13) 修正案(1) 消極的功利主義 
  (14) 修正案(2) 規則的功利主義 
  (15) 修正案(3) 権利論 
  (16) 帰結主義の分類 


アインジヒトとの議論 IV 利己主義と《魂》に対する態度 219
  (17) 義務論と帰結主義 
  (18) シジウィックと直観主義 
  (19) 自然主義の誤謬ではなく普遍化の誤謬 
  (20) 道徳的価値の直接的価値への組み込み 
  (21) 「よい」は正反対の意味を同じ意味として持つ 
  (22) 道徳的動機は利己主義に包含されねばならない 
  (23) 言うことに意味がないと同時に言われるべき必然性のある主張 
  (24) 「今」は一般的な時点の一つではない 
  (25) 利己主義と利今主義の相違点 


第五章 

アインジヒトのはじめての講義 ニーチェキリスト教道徳 247
  (1) 二種類の悪――本当に悪いのはどちらか 
  (2) キリスト教道徳の構造 
  (3) ニーチェの仕掛けた闘い 
  (4) 生存上の必要から「真理」を捏造すること 
  (5) 錬金術の不可能性と生きる意味の問い 


第六章 

M先生の講義V 現代倫理学(メタ倫理学と正義論) 263
1 メタ倫理学――実在論反実在論、内在主義と外在主義
  (1) 初期のメタ倫理学 
  (2) 現在のメタ倫理学 
  (3) 道徳的反実在論と道徳的実在論 
  (4) 内在主義と外在主義 
  (5) 反実在論者への実在論者の反論 
  (6) 内在主義的な道徳的実在論 
  (7) 外在主義的な道徳的実在論 
  (8) M先生による内在主義的実在論の擁護 

2 正義論――リベラリズムリバタリアニズムコミュニタリアニズム
  (9) 歴史的経緯 
  (10) ロールズリベラリズム 
  (11) ノジックとリバタリアニズム 
  (12) マッキンタイアとコミュニタリアニズム 


アインジヒトとの議論V これからの論議のどこがつまらないか? 290
  (13) なぜ友達を殴ることは悪いことなのか? 
  (14) 外在主義的な反実在論と偽善の可能性1 
  (15) 無知のヴェールと利己主義の普遍性 
  (16) 権力現象としての道徳 
  (17) 外在主義的な反実在論と偽善の可能性2 
  (18) 道徳上の悪魔だけが本質的な意味を持つ 
  (19) プリチャードの問題提起と外在主義・内在主義 
  (20) 理由にかんする外在主義・内在主義 
  (21) 事実確認には価値判断が内属しているか? 
  (22) アインジヒトの主張と祐樹のテーゼの接合 


第七章 

アインジヒトとM先生の直接対決 なぜ道徳的であるべきか? 319
  (1) 子供の幸福だけを願って育てる事例 
  (2) 行為功利主義の大変さとの類比 
  (3) アインジヒトとM先生の存在論上の対立 
  (4) ギュゲスの指輪に類するものは実在する 
  (5) 極端に利己的で犯罪的な生き方とは 
  (6) 犯罪は概しては割りに会わない 
  (7) 見せかけであるメリットと見せかけでないメリット 
  (8) 善人の幸福はどこから生じるのか 
  (9) もともとの「してはならなさ」はいつ成立したのか 
  (10) 道徳的生が生み出す新たな幸福 
  (11) イワン・イリッチと毒もみのすきな署長 
  (12) 逆の収斂の破れ 


第八章 

アインジヒトとの最後の議論 語りえぬことについては黙ってやらざるをえない 347
  (1) 祐樹のテーゼの千絵によるパラフレーズ 
  (2) 直接的価値を道徳的価値の内部に位置付ける 
  (3) 言えない善さ 
  (4) 祐樹のテーゼの時間バージョン 
  (5) 悪を弁護する側の議論が存在しない理由 
  (6) アインジヒトとは誰か 


あとがきにかえて [363-366]
あとがき [367-369]
解説 非・人間の倫理学大澤真幸) [371-384]
索引 [386-390]